(お…お父さん…お母さん…っ!)
瀕死の状態ではあるが、かろうじて意識を保っていた少年、悟天の目には動かなくなった母親、そして父親と思われる人物が映っていた。
『ほう…確かに心臓を貫いたはずなのだがな。やはり孫悟空の息子というだけの事はある』
そんな悟天を見下ろすのは父親の姿をした男だった。
『ど…どうして…お父さんを…お母さんを…!』
悟天は男を睨むが、男は意に介していないようだった。
『何故?…それはあの二人、そして君が人間だからだ』
『人間…だから…?』
『そうだ。人間と言う愚かな害虫が、この世界を汚しているのだ。全ての人間が消え去れば、世界に真の美しさが蘇るのだ』
『そんな事で…っ!』
『そんな事…やはり人間には、私の崇高な理想を理解してもらえない様だ』
男はそう言いながら右腕を上げ、手に気のエネルギーで作った刃を纏った。
『安心しろ。君の父親の身体は私が有効活用させてもらう…だから君も安心して二人の元へ逝くといい』
そう言って男は、悟天に刃を振り下ろした。
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「あ、有り得ない…ハンニンダーが、あの様なベイビーに…!?」
ハンニンダーがそらなの蹴りで地面に倒れた事で、ニジーは動揺を隠せないでいた。そしてそれは、あんなとみくるも同じ事だった。
「あ、あんなさん…今の、見えました…?」
「ううん…そらな、あの一瞬でどうやって…!?」
「た、立て!立つんだハンニンダー!」
「ハ…ハンニンダァー!!」
ハンニンダーは立ち上がり、そらなを睨みつける。
(…この世界に転生して、姉ちゃんと母さんと出会って、僕は誓ったんだ。僕の大切な人を…何があっても守るって!)
転生し、今世での家族と過ごしてきたそらなは家族を守るべく、死に物狂いで修行をしてきた。前世で持っていた強さのほとんどは取り戻せていないものの、それでもそらなの最大戦闘力数は2万程だ。
「ハンニン…ダァー!!」
「そらなっ!!」
ハンニンダーの攻撃がそらなに迫り、あんなは声を上げてしまう。
しかし、ハンニンダーの攻撃が当たろうとした時、そらなの姿が消えてしまった。
「ハンッ!?」
「こっちだよ~!」
「ハンッ!?」
いつの間にか背後にいたそらなにハンニンダーはもう一度攻撃をするが、またもそらなの姿が消えてしまった。そらなは超スピードでハンニンダーの攻撃を避けているのだ。それからそらなは現れては消え、現れては消えを繰り返し、ハンニンダーをおちょっくているようだった。
「これでも…喰らえぇーーー!!」
舞空術で上空に移動したそらな。そこからそらなは二つの気弾をハンニンダーにぶつけた。
「す…凄い…!」
「うん…!」
この闘いを見ていたあんなとみくるは驚愕しながらも、どこか気持ちが高揚しているようにも見えた。
「…みくるちゃん。さっきそらなが言ってたよね?みくるちゃんは探偵気取りなんかじゃないって」
「は、はい…」
「私もそう思うよ。だってみくるちゃんには、まりさんを助けたいって気持ちがあったもん」
「あんなさん…」
そう言ってあんなはみくるに手を差し伸べた。よく見るとあんなの手も震えているようだった。
「…私もね、怖いよ…怖いけど、ティアラを取り返したい!困ってるまりさんを助けたい!みくるちゃんとそらなと一緒に!」
あんなの言葉を聞いたみくるは彼女の手を取った。
「一歩の勇気が…」
「答えになる!」
「ハンニン…ダァー!!」
「よっと!」
一方そらなの方はハンニンダーの攻撃を避けつつ、ハンニンダーの足元に蹴りを入れて転倒させた。
「あのさ、早くこいつを元のティアラに戻して返してくれないかな?これ以上やっても君達に勝ち目はないと思うよ」
「…フフッ、さっきも言っただろう?それは出来ない相談だってね!」
「ハンニンダァー!!」
起き上がったハンニンダーはニジーに意識を向けていたそらなを両手で捕えてしまった。
「形勢逆転だね…ハンニンダー!」
「ハンニンダァー!」
ハンニンダーはそらなを握り潰そうと手に力を入れる。
「っ…なんの!」
一方そらなはハンニンダーの手から脱出しようとしていた。
「「ハァーーーーッ!!」」
そんな時だった。どこからともなく二人の少女がハンニンダーを蹴り飛ばしたのは。その際そらなはハンニンダーから解放され、片方の少女にお姫様抱っこされて助け出された。
そらなをお姫様抱っこしている少女は紫色の長髪に紫色を基調としたドレスを着ており、もう一人の少女は桃色の髪に、ピンクを基調としたドレスを着ていた。
「二人とも、これって…?」
この二人が何者なのか、人の気を読むことが出来るそらなはすぐに理解できた。
「何者だ!?」
ニジーの問いかけを聞いた少女二人は、自分達の名を名乗った。
「どんな謎でもはなまる解決!名探偵キュアアンサー!」
「重ねた推理で笑顔にジャンプ!名探偵キュアミスティック!」
「「名探偵プリキュア!!」」
「私の答え、見せてあげる!」
「姉ちゃん、みくるちゃん!何その恰好!?」
「えっと…私にも何が何だか…」
「…これだ」
「みくるちゃん?」
「これが私のなりたかった、名探偵プリキュア!」
「こ、これが…!?」
「名探偵っていうより、魔法少女じゃないかな?」
「違います!間違いなく、今の私達は名探偵なんです!」
そらな達が盛り上がっている中、ニジーは表情を変えて三人を…いや、プリキュアとなった二人を見ていた。
「プリキュアだって?奴とは違う…新手か?」
「それじゃあ、さっさとあいつを倒しちゃお!えっと…アンサー、ミスティック!」
「うん!」
「行きましょう!」
「ハンニンダァー!!」
ハンニンダーはそらな達に向かってパンチをしようとしていたが、そらなはその拳を片手で軽々と受け止めてみせた。
「「ハァーーーッ!!」」
そらながハンニンダーの動きを止めている間に、アンサーとミスティックがハンニンダーに殴り飛ばした。
すると二人はあのペンダントを持ち、時計を彷彿とさせる長針を動かした。
「「これが私達の、アンサーだぁーーー!!」」
アンサーとミスティックは同時にハンニンダーへ向かっていき、そこから強烈なパンチでハンニンダーを貫いた。
「「キュアっと解決!」」
「ハ…ン…ニン…ダー…」
二人の攻撃を受けた事でハンニンダーは浄化され、元のティアラへと戻った。そしてティアラに宿っていたというマコトジュエルと共にアンサーの元へ戻ってきた。
「どうするの?まだやっちゃう?」
「くっ…今日は幕を下ろすとしよう!」
そう言ってニジーは煙幕を出し、この場から消えていった。
「消えた…」
それからそらな達はまりにティアラを返すことができ、無事に式が開かれる事となった。その式の様子をそらな達は屋根の上から見ていた。
「…そうだ!ねぇそらな、さっきのあれは何だったの!?凄い動きで闘ってたり、手からビームみたいな物を出してたし!それだけじゃない!さっきだって空に浮かんで私とポチタンを助けてくれたし!どうして今まで隠してたの!?」
アンサーはそらなに顔を近づけ、先程見せたそらなの力の事を訊いていた。
「アハハ…隠していた訳じゃなかったんだけどね…あれは」
「あの!」
そらなが自身の力の事を話そうとするが、ここでミスティックが話しかけてきた。
「プリキュアになれたって事は、探偵テストは合格ですよね!?1999年4月、とうとう私もキュアット探偵事務所の名探偵になれたんだぁーー!!」
「1999年?」
「いやいや、何言ってんのミスティック?今は2027年だよ」
「いやいや!今日は1999年の4月2日春です!ほら!」
ミスティックが指差した場所をそらなとアンサーが見ると、そこにあったのは満開の桜の木だった。
「…ねぇ、姉ちゃん」
「…何?そらな」
「今日の日付って、何月の何日だっけ…?」
「…今日は1月24日冬、私とそらなの誕生日だよ」
「僕達…」
「私達…」
「「タイムスリップしちゃったぁーーーーー!?」」
時は現代、そらなとあんなが元居た2027年1月24日に移る。
ここはソラシド市。そらなとあんなが住むマコトミライタウンから少し離れた場所にある街だ。
「タッ!トリャッ!」
とある一軒家の庭で幼い少年が修行をしていた。少年はとても特徴的な髪型をしていたが、一番目立つのは尻の近くに生えている『尻尾』だろう。
「お昼ご飯、出来たよ~!」
そこへ小豆色の髪の女性が少年に声をかけてきた。
「よっしゃ!メシだメシー!」
少年はテンションを上げ、すぐさま家の中へ入っていった。
「食べる前に手を洗うんだよ~!」
「わかってるって~!…あれ?」
そこから少年はリビングに行こうとするが、とある部屋から光が漏れ出ている事に気づく。ちなみにこの部屋は先程の女性の自室だそうだ。
机の上には絵描き道具とスケッチブック等が置いてあったが、光を放っていたのは青い宝石が埋め込まれてある懐中時計だった。
「これって…前にツバサ兄ちゃんが預けに来たって言ってた奴だっけ?」
少年は懐中時計を手に取る。
「わっ!?」
次の瞬間、懐中時計は眩い光を放ち、少年を包み込んだ。光は収まったが、少年の姿がこの場から消えていた。
「カカロットちゃん、どうしたの?…あれ?」