「う~ん!…今日も良い修業日和だ!」
早朝、キュアット探偵事務所からそらなが出てくる。そらなは事務所の近くで一通り修行をし、休憩に入った。
「朝から精が出るわね」
そんなそらなの耳に最近聞いた女性の物と思われる声が聞こえてきた。
「あっ、るるかちゃん、マシュタン!おはよう!…って、あれ?」
そらなの目の前にいたのは先日出会った少女、るるかと妖精と思われるマシュタンだった。だがそらなの目に入ったのは、るるかが抱きかかえている幼い少年だった。
「その子、るるかちゃんの弟?」
「全然知らない子。道端で倒れてたからここに連れてきたの」
「どうもお腹を空かせているみたいよ」
「それって大変じゃん!何か食べさせない…と…!?」
そらなは急いでるるかから少年を託されるが、少年の姿を見ると表情が一変した。
少年は猿の尻尾の様な物が生えていたが、そらなが驚いた要因はそこではない。少年の顔と髪型がそらなにとって『馴染み深い人物』と同じだったからだ。
「そらな?」
「どうしたの?顔色が優れないみたいだけど…」
「…あっ、この子に尻尾が生えてたから驚いちゃった!へへ!」
「そう…」
「それにしても不思議ね。アタシも尻尾の生えた人間は初めて見たわ」
「ふぁ~…そらな、どうしたの~…?」
すると事務所の方からパジャマ姿のあんなが出てきた。おそらくそらな達の声が聞こえてきて、気になって出てきたのだろう
「あ、姉ちゃん!実は…あれ?」
そらなはるるかから少年を託されたと教えようとしたが、いつの間にかるるかとマシュタンの姿が消えていた。
「るるかちゃん?」
「るるかちゃん?最初からそらなしかいなかったよ…?」
「おっかしいな~。どこに行ったんだろ…って、それより大変なんだ!」
そらなはあんなに事情を説明し、少年を連れて事務所へ戻るのだった。
「ごめ~ん!寮を出る手続きで時間掛かっ…えぇっ!?」
寮を出て事務所に住む事にしたみくるがやって来たのだが、当のみくるは事務所の惨状を目の当たりにして驚愕してしまった。
何故なら床にはお菓子の袋が散乱しており、すぐ側では例の少年がお菓子をすごい勢いで平らげていたからだ。
「あ~!食った食った~!」
「ま、また僕のおやつが~…」
「わぁ…なんだかそらなみたい…」
「ポチ~!」
「ど、どうしたのコレ…それにその子は?」
「あ、みくる!実はかくかくしかじかで…」
あんなは困惑しているみくるに事情を説明した。
「あんがとな!ここしばらく何にも食ってなかったから死ぬかと思ったぜ!」
少年がそらな達に礼を言っているが、そらなは少年の顔をじっと見ているだけだった。
「なんだお前?俺の顔に何かついてんのか?」
「う、ううん!何でもないよ!」
「…それで、お前は誰なんだ?どこから来たんだ?」
ジェットは少し警戒しながら少年に何者か、どこから来たのかと問いかける。
「ソラシド市ってとこだよ」
「ソラシド市…あ、まことみらい市から少し離れた場所にある街の事ね。あなた、一人でここまで来たの?」
「…知らねぇ」
「知らない?」
「ああ。これ持ったらいつの間にかこの町にいたんだよ」
そう言って少年は懐中時計のような物をそらな達に見せる。
「これって、懐中時計?」
「知らない材質で作られてるみたいだな…特にこの青い石、僕も見た事がないぞ」
「へぇ~、ジェット先輩にも知らない物があるんだね」
「僕にだって知らない事くらいあるぞ」
そらなとジェットがこのような会話をしている中、あんなとみくるは何やら考え込んでいるようだった。
「「…見えた!これが答えだ!」」
どうやらこの少年について何かわかったようだ。
「ねぇ、今何年かわかるかな?」
あんなは少年に訊ねる。
「バカにすんなよな!そんくらい知ってるし!…2027年だろ?」
少年が口にした西暦。この一言がそらな達を驚愕させた。
「2027年って…そらなとあんなが元居た時代じゃないか!」
「やっぱり…」
「な、なんだ?どうしたってんだ?」
「…落ち着いて聞いてね。ここは…」
「1999年!?ここって昔の世界なのか!?」
そらな達から真相を聞いた少年は当然驚愕してしまっていた。
「やっぱり驚くよね…」
「なんかこの前の僕と姉ちゃんみたいだね…」
そらなとあんなはどこか遠い目をしながらそう口にしていた。
「って事は…まだましろとクウが生まれてないって事じゃん。どうすりゃ良いんだよ…」
「ましろ?」
「クウ?」
「それって誰の事なの?」
「まぁ…俺の母ちゃん達みたいなもんだよ…」
そう言って少年はどうすれば良いのかと頭を抱えてしまっていた。
「…ねぇジェット先輩。この子も一緒に住ませても良い?」
「はぁ!?」
「私もはなまる賛成!」
「私も!」
そらなの提案にあんなとみくるは賛成する。しかしジェットはあまり乗り気ではないようだ。
「良いのか?」
「うん!僕と姉ちゃんと同じ境遇みたいだし、放っておけないよ」
「待てよ!僕は反対だぞ。どう見ても得体が知れないじゃないか!」
「何だよ!別に住むくらい良いじゃんか!このチビ助!!」
「チビっ!?あのな、これでも僕はお前よりずっと年上なんだぞ!」
「へっ!俺よりちょっと背が高いだけじゃんか。そんな事で自慢なんかするから背が伸びないんじゃねぇのか?」
「こ、こいつ~…!」
「「ジェット先輩!!」」
ジェットと少年が一触即発になりかけたところで、あんなとみくるがジェットに詰め寄った。
「ジェット先輩!年長者なら子供相手にムキになっちゃダメだよ?」
「そうよ!それでも先輩なの?」
「うぐっ…!」
「ジェット先輩…たぶん姉ちゃん達引かないと思うよ?」
「…たくっ、わかったよ」
ジェットは渋々だが、少年が事務所に住む事を許可したようだ。
「良かったね!えっと…」
「カカロットだ!よろしくな!」
どうやら少年はカカロットという名前のようだ。
「よろしくねカカロット君!私は明智あんなだよ!こっちは妹のそらなで、こっちは友達の小林みくる!」
「カカロット君…変わった名前ね」
「お父さん…?」
そんな中、そらなの口から出てきたのはこのような一言だった。
「お父さん?俺の事か?」
「えぇっ!?カカロット君があんなとそらなのお父さんなの!?」
「ち、違うよ!私達のお父さんに尻尾は生えてないよ!」
「そらな!どういう事!?」
「えっと…これはその…」
あんなとみくるの二人に詰められるそらなだったが、どう答えて良いかわからずにいるようだ。
「そこまでだ」
そんな中ジェットが手をパンと鳴らしながら二人を止めた。
「確かに今のは僕も気になるが、今は事務所の掃除からやろう。それでいいな?」
「う、うん…」
「確かにそうね…」
あんなとみくるは渋々といった感じでそらなから離れた。
「…よし!じゃあちゃちゃっと掃除を終わらせちゃおっか!おと…カカロット君はゆっくりしてて良いから。行こ!」
そらな達はカカロットを休ませ、事務所の掃除を始めたのだった。
「明智そらな…もしかして、あいつらと同じ…?」
カカロットはそらなを見て、そう呟いていた。