さよならエトワール   作:人格分裂

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隷属・文明・己の不徳と向き合う空間

 春休みまで、残り一週間が残っている。

 大学で講義を受けなくてはならない期間が残り五日分だけ残っていた。

「着いてきてほしい」

「……正気?」

 自身のクレジットカードで取り寄せた服に身を包んだ少女は、常に一つしかないベッドの上を陣取っている。

「私、腕無いのよ?」

 口に差し込まれるスプーンを抵抗なく受け入れながら、彼女はそんなことを言った。

 数日生活して分かったが、この少女は本当に他人が困っている顔を見るために一切手段を択ばない性質がある。

「だからだよ。貴方、うちにいる間に何もできないでしょ。俺の家は腕がある前提だし、俺が補助をしてあげられないし。目の届く範囲に居てくれた方がよっぽど安心できる」

 二口目。

 高級なグラノーラ。浸す牛乳は安くても妥協して貰えたが、その購入費は勿論家主の男の自腹であるし、彼自身は同じグラノーラでもスーパーで売っているような在り来たりのものしか口にできない。やはり理不尽である。

「そうかしら。案外一人でもなんとでもなるものだけど。私がこの十年、どうやって生きてきたと思ってるのかしら」

「でも貴方昨日上手くズボン下せなくて」

「うるさいわね」

「夜中に洗濯」

「うるさいわよ」

 数日生活して分かったが、この少女は義手と、恐らくは家にいる大量のお手伝いさんによって生活していて、全く補助なしで手を使わない生活はほぼ不可能な状態にある。

 あまりに酷い。彼女は腕を無くしたことでより鋭利に、より美しくなったが、同じく腕を無くした所為で真っ当に自立した生活ができないでいる。この二項対立は彼女の尊厳を常に苛んでいて、その生涯を哀れなものに見せている。

 その程度で折れない女だとは分かっているのだが。それでも、内心がどれほど気丈であろうと、それが外側の在り方に全く動かされないという事は無いだろう。年齢・性別的な面を考慮すると、その辺りの摩擦が最も強い属性である。

 昨日の粗相を掃除されている時の殺意に満ちた瞳は忘れられない。

「……あんまり、こういうことを言いたくは無いんだけどね。貴方俺の家に一人でいたところで退屈でしょ。テレビないし、パソコンは持ってくし」

「……それもそうね」

「ご飯食べられないし、作れないし。……昨日みたいなミスも有り得るかもしれない」

「…………否定はできないわね」

 見下す彼女の足元で正座をする。

 お姫様に傅くのとほとんど変わらない姿勢の低さから、彼女を見上げている。

「今は、俺が貴方の腕の代わりを担っている訳で。今の貴方を一人でいさせたくない。俺は友達が少ないから、貴方にあまり好奇の目線を向けさせるようなことは殆ど無いと約束する」

「何。プロポーズでもしているつもり? 気持ち悪いわね」

「そりゃそうだろうけど、貴方はこれくらいしないと動いてくれないでしょ」

「そうね。……自分の不如意くらい、自分で分かっているわよ。折れてあげる。その代わり、というか──どうせ連れ出すなら、不自由させないことね」

「努めるよ。でも、アレだよ。いつでも帰って良いんだからね。引き留めるとかはしないから」

「当然よ。……まあ、そのうち。ね」

 

 彼女には、快も不快も、その全てを口にして押し付けるという美徳があった。

 分かり易い。物怖じしない。接していて非常に気分が良い。

 今はすごく怪訝な表情を浮かべている。大方、こちら側の素直さに気持ち悪さを抱いていると言ったところだろう。

 

「……貴方、つくづく奴隷根性よね。昔、誰かに飼われてたりでもしていたの?」

「そんなことは無いけど、多分。俺は、何というか……人の為になりたいとは、ずっと思ってるんだよ。生憎その方法が解んなくて、腐ったままでいる訳だけど」

 まあ、誰だって積極的に加害性を持っていたいと思って生きているってことはないだろう。

 そこに、あまり自分の利益に頓着したくないという愚かな思想が追加されると、こんな無害なだけで醜い汚泥になる。

「貴方はどうして欲しいかを口にしてくれるから、助かる」

「そう。人の気持ちが考えられないのね」

「想像はできる。でもそれは絶対に正しいと確信できない。俺はそういう軋轢に、出逢っても無いのに気遅れする。臆病なんだよ」

「じゃあ、想像してみて。私の今の欲求」

「………………うーーーーーん」

 如何せん、視線を合わせられないのだ。

 そうしたとして微々たる差異でしかないとして。そんな相手の内情なんて猶更読めない。

「水が飲みたい」

「さっき飲んだわよ」

「ですよね」

 はあ、と、大仰な溜息を少女は吐き散らかした。

 呆れたような──という形容ですら生温い。それは絶殺の輝き、瞬き。心底相手を軽蔑しているというポーズ。

「貴方、自己嫌悪と内省はきちんとできる癖に、現実にそれを持ち込めないのね。どうにかならない?」

「どうにかしたいともどうにかしようとも思ってるんだけど。とにかく人間は面倒で鬱陶しいし厄介だし。中々難しい」

「貴方こそ一番面倒で鬱陶しいでしょう。種類は違うかもしれないけど」

「そうそう。種類が違うということは生きる世界が違うということだから」

「ああ言えばこう言う……」

 朝焼けが、遮光カーテンの隙間から差し込んでいる。

 高い櫛で彼女の髪の毛を漉きながら、倦んだ瞳でその光を睨む。少女の青い髪にその一欠片が触れていた。水面に揺れるエメラルドブルーのような透き通った色が見えた。

「ボランティアでもすればいいんじゃないの? 要するに、貴方は英雄になりたいんでしょう。どれほど小さくても、どれほど小規模でも、関係なく」

「英雄ねぇ……」

 ──確かに、そうかもしれない。

 求めている結果はそれかもしれない。

 けれど、その過程は大きく異なる。そんな気がする。

「……いや、駄目だね」

「そう」

「うん。英雄っていうのは、見ず知らずの人の為に戦える人のことを言うでしょ」

 多分、そうだ。

 そうではない例はたくさんあるだろうけれど、結果だけ見ればそうだ。

「俺は駄目だ。俺自身と、俺の周りにいる人の為以外には、自分の身体を使えないと思う。知らない人には興味は無い。勝手に生きて勝手に死ねばいいさ。一番死ねばいいのは、きっと、そんな俺なんだけど」

「……それは──」

 傲慢ね、とか。

 面倒ね、とか。

 また、そんな言葉が飛んでくる、そんな気がしていた。

「────少し、理解できるわ」

 

 

「……手が止まっているわよ」

「あ、……うん。ごめん……」

 

 どれだった?

 何が良かった? 何が正解だった?

 

 その瞳を覗きたかった。彼女の瞳がどんな色に変わっていたのか知りたかった。

 そうしたって微々たる差異でしか無いとして。何も分からなかったとして、そうしたかった。

 位置的にも、心理的にも、やはりそれは叶わなかったのだけれど。

 

 ▲▼▲

 

 地下鉄に乗る。

 この自治体では、一級身体障害者は本人とその介助者は無料で地下鉄を利用できる。だから、私と彼は無料でこの鉄の塊に乗ることができる。

 彼は改札を通る直前まで、普段通りに定期券を利用するかどうかで悩んでいたけれど。変なところで律儀だ。或いは、良心の呵責を背負いたくないだけなのかもしれない。

 

 うあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん。

 

 鉄の塊が走る。

 

 私はいつも、気分が悪くなる。人間の力はこんな鉄の塊を高速で移動させることも可能にした。丈夫な地下通路を作り上げるに至った。なのに、私は私の身体一つが抱く生存欲求すら、独りでは満足に満たせない。なんて欠損。なんて欠落。

 隣に座る私の両腕は、どの程度の距離が許されているのかを図っている段にあるのか、拳数個分の隙間を私との間に作っている。賢明な人間は好きだが、そこまで臆病であれとも言っていないつもりだった。その気の遣い方は気に障った。

 私は退屈だ。

 声が出せないから。

 会話ができないから。彼のように本は読めないし。

 

 そんな視線にふと気付いたのか、彼は自身のスマートホンとイヤホンを差し出してきた。

 黙って、音楽を聴くことにする。彼が好きだという曲を上から順に聞き流してみる。

 賢明な人間は好きだが、そこまで見透かされると腹が立つ。

 

 プレイリストは、恋愛の曲が並んでいる場所に到達した。

 彼も、恋をするのだろうか。人を愛するのだろうか。そんな内語が語り掛けてくる。

 陰気臭い垂れ目、それを半分程度隠している陰気臭い黒の前髪、微妙に邪魔くさい後ろ髪。髪も肌も物理的には綺麗なのに、漂うものはどうにも鈍くて死んでいる。少なくとも生きてはいない。清潔に腐っている。……凍っている? 仮死状態にある? そんな風に言えば良いのだろうか。

 その癖派手な耳飾りやら服やらを好んでいる。総じて、特徴的な容姿ではあるだろう。彼が自虐するほどは醜くは無い。

 ……まあ、異性愛として好かれるようなものではないのだろう。そういった感性に媚びるような容姿ではない。

 かと言って、私よりも数年長く生きている人間だ。全く恋をしない人生ということもないのだろう。要するに、悲恋ばかり経験しているのではないか、と私は思う。

 きっと、どうせ、好きとも言えないで勝手に拗ねているだけの生涯なのだ。私には何となく分かる。

 

 背中が痛い。眠い。

 彼の家に据え付けられた寝具はあまりに硬くて冷たかった。独房かと思うくらいだった。こんな場所で彼は普段眠っているのだと思うと、本当に何の嫌味も無く同情せざるを得ない。そんなのだから精神状態が脆い。人間の精神は高尚ぶっているようで、所詮肉体という内的な不快感に引き摺られ続ける程度には現金だ。地下鉄の座席の方がまだ柔らかい。

 

「……お姫様。起きて」

「…………あのね。外でその呼び方はやめなさい。メルトと呼んで良いって言ったでしょう」

「日本じゃあんまり印象変わって無いから」

 

 彼の肩の上で、目を覚ました。

 いつの間にか全てが取り払われて、私は立ち上がって歩くだけになっていた。相変わらず用意周到だ。

 

 彼が背中を支えるのに従って重心を動かした。喧しい靴音と電子的なアナウンスに混ざって、歩いてゆく。

 

「……貴方、私が身体を預けるように私を引き寄せたでしょう」

「隣の人に凭れそうになってたから」

「…………それなら、仕方ないわね」

 

 不愉快だった。

 何がかは分からない。どうしてこんなに気分が悪いのか分からない。私は生まれて初めてこんな感慨を抱いている。周りに人間がいなければ、はしたなく舌打ちを打っただろう。

 

 気持ち悪いくらいに呼吸を合わせて隣を歩く彼の爪先を踏んだ。彼が顔をしかめて、少しだけ疼痛はマシになった。

 

 ▲▼▲

 

 貴方は醜い。

 そういう醜聞は私の耳には届かない。何故なら私は綺麗だから。私を綺麗だと思わない人間の方が少数派だから。

 ……けれど、まあ。事実として両腕の無い私は、傍目には目立つし、あまり気持ちの良いものでは無いのだろう。

 どれほど俯いていたって、好奇の瞳は私に突き刺さる。

 

 大学構内を先行する彼は、没個性的に溶け込んで、誰にも注目されないでいる。のだろう。普段は。

 ……私が隣にいるせいで、少しだけ目立っているかもしれない。申し訳ないと思う訳ではないが、哀れだ。衆目に晒された彼は、普段纏っている孤独のベールを剝がされて、ちっぽけで頼りないものに見えてしまっていた。

 貴方という幻想の生き物は、現実という無慈悲さに弱い。

 産業革命以降のイギリスで流行らなくなってしまった御伽話(フェアリー・テイル)のよう。

 

「ねえ、貴方」

 小声で囁かれて、隣を見る。

 普段は空いている隣席に、少しだけ欠けた人間の重量があった。

「……どうしたの」

「何言ってるか分からないわ。業腹なことに。私に解説しながら授業聞きなさい」

「……いいよ」

 嚙み砕きながら、言語化しながら、静かな声で語りながら。

 生憎、広い教室の隅での吐息の会話はあまり目立たない。人生で最も有意義な時間を過ごしたような、そんな気がする。

 

「…………結局、人間は誰にも彼にも個体差があるって一言言えば済むことなんじゃないの?」

「それをどう説明するかは大切だよ。それこそ、その一言で全て納得できるような人間しかいないのならば、そこに個体差は無いと思う。そのことについて誰も彼もがその一言で説明できると思うのならば、やはりそこには個体差は無い。俺はそう思う。色んなアプローチがあって、どれに共感するかって考えることに、意義があるんだよ」

「……そうね。ええ。本当に、そう」

 

 

 なるべく人目の無い場所にいたかった。自身がそうだと思う以上に、彼女もそうだと思っていた。

 ──だから、どちらから提案するという事も無く、昼休憩の間は誰も来ないような校舎の屋上で過ごすことになった。

「寒くない?」

「このくらいは平気よ」

 依護メルティは何のために設置されているかも分からないようなベンチに腰かけて、購買の菓子パンを買ってくる彼を待っていた。

 標高が地上よりも少しだけ高いこの場所では、冷たい風が強く吹いている。

 一般的にそう形容して想定されるよりもよっぽど──よっぽど余った袖を力なく揺らして、長い蒼の髪をなびかせて、彼女は待っている。

 綺麗だ。

 口にはしないけれど。本当に彼女は綺麗なのだ。向こう側に見える淡い空の色が鮮やかだった。けれど、彼女はそれよりも青く見える。向こう側に黒い影が飛んでいる。学が無いから、種類までは分からない。彼女はそれよりも大きな一匹の鳥に似ている。この世界の何よりも、彼女は深遠だった。手が届かない程に。……それ以上に適切な表現は無いはずなのに、それはなんて皮肉な比喩なのだろうか。

「どれから食べる?」

「この中からなら……そうね、その左手の⋯⋯何?」

「これはピロシキ」

「そう。じゃあ、それにしようかしら。言っても気温は低いし。寄越して」

 薄いビニール越しに丸い小麦の塊を掴んで、彼女の胸の前へ。

 ぱくぱくと啄む様子は少しだけやはり、小鳥に似ている。

「貴方、こういうものよく食べるの?」

「一、二年前はよく食べてたよ。でも最近は金欠だからさ。あんまり食べられない」

「……で、今日の貴方は幾ら買ってきたの」

「六個。余ったのは俺が食べるよ」

 凄く疲れたみたいな顔で、少女は自身の顔を眺めていた。

 言いたいことは分かる。けれど不思議なことに、彼女に金を使うことは楽しかった。大半は親からの仕送りではあるが。

「貴方、救い難いくらい弱いのね」

「献身的な人間は嫌い?」

「好きでは無いけど、必要だもの。こんな身体だから」

 ばさばさと音がする。二つ目。

 俗っぽくて脂っぽい味でも、案外苦手では無いらしい。自身に向けられていないその視線は、少しだけ楽しそうに瞬いている。安心する。

 彼女の快不快は、己の快不快。

 自身の快不快よりも、よっぽど身を任せる価値がある。そう思っている。

「──俺はさ」

 そんな思考が、機能してなかった口から溢れた。

「自分の為に金を使うのが好きじゃない。気持ち良いとは思うんだけどね」

「…………はぁ。そうなの」

 よく分からないわね、と、彼女は言った。それに伴って行われるのは、ぎょろり──と形容するにはあまりに静かな瞳孔の平行移動。めろり? 充てるなら、そんな音だった。あまりに静かすぎて、一瞬だけ視線が噛み合ってしまった。

 数秒の沈黙が満ちた。

 何も言わなくて良いと思った。何も言えなかった。脳髄が感電していた。

「続きは?」

「良いの?」

「聞く程度なら」

 彼女の頭がこちらに向いた。首に巻いた灰色のマフラーがそれに応じて僅かに動く。

「生きるためには必要なことだし、人並みには趣味があるつもりなんだけど。その為に使う金っていうものを、あんまり有意義に使えてる気がしない。ただ浪費、消費をしているだけな気がする。お金を払ったという事実が残るだけで、あんまりちゃんとした意味がない気がする」

 焼却炉に、札束を押し込んでいるような気がするのだ。

 自分に価値を見出していないからだろう。自分の存続のために使われる金というのは、直接的に溝に捨てられているのと変わらないような気がするのだ。

「ああ。──だから服を買うのね、貴方」

 そんな自己陶酔の権化を見下げ果てながら、彼女はそんな言葉を吐き捨てる。

「形に残って、貴方を着飾ってくれるものが好きなのね。貴方は」

 身に纏った黒いコートを顎で示しながら。色彩の少ないながらに派手な文様を嘲笑いながら。

 刺激的な、電撃的な、蠱惑的な。唇の端を吊り上げて、そんな風に笑いながら。

「自分が嫌いな癖に、貴方は貴方自身を価値で塗り潰したいのね。じゃないと生きられないから。じゃないと、貴方は現実にいられないから。なんて可哀想な人」

「……うん。そうかもね」

 生きる生きない、現実がどうこう、その辺りのことはよく分からなかった。彼女は常に妙に詩的だった。

 

 三つ目のメロンパンを咀嚼しながら、少女は僅かにおとがいを傾けて、静かに空を見上げていた。

「生憎だけれど。私は、そんなにお金に苦労をした経験も無いから、お金をそんなに大事とは思えないの」

 お金で買えないものの方が多いもの。

 腕とか。

 唾液を飲むように加虐。

「……貴方、色は好き?」

 唐突に彼女が聞いたのは、きっと、視界に映る空が鮮やかだったからだろう。

「好きじゃないね。暖色は汚い。寒色は寂しい。無彩色は──それこそ、毒にも薬にもならない」

「そういった感性も、お金では買えないわ。……貴方にも、その程度の価値くらいはあるんじゃないの」

 風が吹いていた。 

 鳥が飛んでいた。

 水色の空は明るい。つまり汚い。

 逆光の小鳥は濃い藍色を呈している。つまり寂しい。

「……慰めてる?」

「そうよ。貴方のような憐れな生き物には、慈悲をくれてあげる。少なくとも、私が貴方に少しばかりの価値を見出していると教えてあげないと、私の価値まで相対的に下がるでしょう」

 

 唇の淵から、漏れた端から融け堕ちているかのような、細い声だった。

 

「疲れた?」

「いいえ。……あまり気遣われると癇に障るわ……」

 

 言いながら、その身体が傾いでゆく。こちら側に凭れるように。

「……お姫様? …………メルトさん?」

「んん……」

 むにゃむにゃと、不鮮明な言葉を漏らしながら──彼女は、眠っていた。

 可愛らしい寝息を立てて。

 

「……確かに、暖かいもんねここ」

 

 ……話がつまらなさすぎた可能性には、一旦目を背けておこうと思った。




読了ありがとうございます。感想や評価をくださると幸いです。
こんな話があとそこそこ続きます。ぜひお付き合いください。
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