〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~ 作:すっごい性癖
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目指すはより完璧なハッピーエンドを……
(今回は導入なので短めです)
始まりは一通のメッセージ
『助けて』
それは夏のとある夜のこと。
スマホ画面にメッセージアプリの通知が表示された私は、きっと大学の友人からの連絡だろうと気軽な気分で確認をし、ぞっとした。
『助けて』、の四文字だなんてよくある通知だと私は思う。私たち、大学生にとっては特に。
大学生として普通の交友関係を築いていれば、課題がやばい、テストがやばい、就活がやばい、卒論がやばい、アルバイトがやばい、なんかが理由で周囲に助けを求めてこんな雑な救援信号を送られることは珍しい事でもないはず、というのが私の見解であり、実際私も何回もこの言葉を送られ、また、送ってきたようなごく普通の大学生である。
けれどもこの通知は違う。そんな、世にあふれてしまった何となくの軽い言葉ではない。
正しく死中、たった今命を失おうとしている人間が零す真の救いを求める声だ。殺される前の命乞い、高所で足を踏み外した時のあっけない声、自殺寸前の最後の自己主張。
そう、まさしく。まさしくそれらに匹敵するほどに重い言葉が私にたった今、送られてきた四文字に込められている。
何故、そんなことがわかるのか。あくまで私の手元に送られてきたのはたったの四文字だけだというのに。
決まっている、送り主が送り主だからだ。大学やバイト先の関係者であれば私だってこんな風には思わなかった。またかぁ、と内心で悪態をつきながらも『どしたの?』なんかとこちらも短い返信をしていたはずだ。
また、兄や実家が送ってきたとしたら一家族として心配には思うが、それはそれとしてこんな風に驚愕を覚えることにはならない。なるほど、私の家族がピンチなのか、助けなければ、とその程度であって、まさか殺されるのではないだろうか、だなんて大げさな反応は示さない。
ただ一人。たった一人だけだ。私が、助けを求めたことにこんな風な心配を覚える相手は。
『わかった 今すぐ向かうよ』
素早く返信を書き込み送る。ぽこん、と音を鳴らしながら画面に表示され、すぐさま既読の文字がついた。
手短に机の上からカバンを持ち上げ玄関に向かう。カバンの中には財布と車のキーが入っているから、最低限、急ぐのであればコレがあれば十分だという判断。
この部屋から彼女の暮らすアパートまで凡そ二、三十分。それまでに自体が悪い方向に進んでいなければいいのだけれども。
駐車場に止めていた車に急ぎ飛び込むように乗り込み、エンジンを動かす。暗い車内の中に僅かな明かりがともった。
「あ、やっば……。下ろすの忘れてた」
ちらり、と助手席の方を向けばそこには紙袋の中にこれでもか、と詰め込まれた私の趣味、兼、仕事道具の姿が。つい最近、年に二回の大きなお祭りがあったから、それ用のヤツなんだけれども、うっかり下ろし忘れていたみたいだ。
今日帰ってくる時も下ろそう、と思っていたのに完全に忘れていた。
まぁ、仕方がない。今からこれを部屋にまで持っていく時間は惜しい。この先、車が必要な展開になったとしてもそこまで邪魔にはならないはずだ。後部座席なんかに投げてやれば、それで済む。
「よしっ」
ギュ、とハンドルを強く握りしめる。自分自身に活を入れるように、それこそ全身全霊の力を込めて。
これから向かうのは死地だ。それはメッセージの送り主がきっと死中であるから、の話ではない。いや、そう言う意味でもあるがそれ以上に私、酒寄結葉という人間にとっての死地なのだ。
せっかく彼女が勇気をだして手を伸ばしてくれたのだ。助けてほしい、と。
それを掴まずして何が姉だと言うのだろうか。
絶対に、絶対に、離してはいけない。失敗してはいけない。生れてこの方、兄や妹と違って出来の悪い人間ではあったが、それでも酒寄家の長女を張ってきたのだ。その地位に立ってきた以上、責務を放置していいわけがない。
かわいい妹が助けを求めているのならば、なんとしてでも力になってあげなくては。
「待っててね、彩葉ッ!」
私はアクセルを強く踏み込んだ。
――この時、私は思ってもいなかった。まさかこの夜の一通のメッセージが星の規模を超えた壮絶な物語の始まりとなり、そして……。
――私という無色な人間が、自身の夢を思い出すことに繋がるだなんて。そんなこと、思っても、いなかったのだった。
「助けてお姉ちゃん、赤ちゃん拾っちゃったの! そこのゲーミング電柱で!」
「えぇ……?」
〈キャラ設定〉
・酒寄結葉
現在二十一歳の大学生四年生であり、早稲田大学商学部に通っている。
優秀な兄や妹とは異なりあくまで凡人な彼女だが、唯一の遺伝である容姿の良さと献身的な姿勢から高校時代に高い評価を獲得してAO入試で進学した。
既に卒論は完成しており、内定も獲得しているため時間を持て余し気味でいた。
趣味はコスプレ。