〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~ 作:すっごい性癖
かぐやちゃんのライバー活動は一言で表現するのであれば、順調そのものであった。
活動をはじめたばかりにもかかわらず、その人気は正しくうなぎのぼり。日に日に増していく彼女のファンの数に驚かされている毎日だ。
当然、そうなった理由はいくつかある。
まず第一に、かぐやちゃんという人間――、人間? ちょっと定義が微妙だけれども、彼女という生き物自体、存在そのものの強さが理由として挙げられる。
明るく、元気で、純粋で、優しい。
まるで子供……、というかつい最近まで本当に子供であったのだが、ある種宝石の様に美しい彼女の在り方は、多くの人間への特攻となる。
そもそも生き物は遺伝子的に、子供という存在が好きだ。そうでなければ、種の発展はあり得ない。今日まで発展してきた人間という種族が、子供嫌いなわけが無いのだ。
次にあげられる理由なのだけれども、これは、まぁ、ちょっとしたズルが関係している。
そもそも彼女がライバー活動を始めるきっかけとなったものがヤチヨカップなのだが、その発表会場にてかぐやちゃんは大勢が見ている前でそれはそれは大啖呵を切って見せたという。
それが何でもない、ただの〈ツクヨミ〉内の掲示板前だとかであればなんてことは無かっただろう。
しかし、彼女が目立ったのはライブ会場。しかもそれは、かの超人気ライバー、月見ヤチヨのライブ会場だ。
その場にいる人間だけでもどれだけの数が……、となるほどだろうに、ライブ中継によって見ていた数を含めればその数はさらに何倍、下手したら何十倍と跳ね上がるだろう。
つまり彼女はライバー活動を始めるその前から、最強の広告活動を行っていたことになる。
実際、彼女の最初の配信でもコメントでその点を指摘されていた。
ヤチヨのライブで大声を出していた子。
言ってしまえばそれだけなのだけれども、ライバーの数が増えすぎているとさえ言われる現代で、何らかのとっかかりを持っていること自体が強みになる。
もちろん、そんな話題性だけでファンを保持することだなんて難しいし、配信内容で自身のファンとして取り込んだのはかぐやちゃん自身の力だ。
それにヤチヨの話題から流れてきた、ということは、つまりヤチヨのファンである可能性が高くもなる。
つまり間接的にだが彼女はトップライバーとの競い合いを行ったことになる。ファンの奪い合い、だなんて言うつもりはない。この界隈、二推し、三推し、なんてのはザラだから。
それでもヤチヨの配信で目が肥えている視聴者を虜にする、だなんていうのは彼女にそれ相応の魅力がなければとてもじゃなければ不可能なことも事実。
そう言った点で言えばかぐやちゃんは最強の広告を行っていたと同時に、大爆発しかねない爆弾を抱えてもいたわけだ。
なんという賭けだろう。本人にその自覚が無いのが逆に怖い。
しかし結果だけを切り取れば彼女は勝利したのだ、その賭けに。賭け金まるまる、倍率マックスに、払い戻しは最高額で。
この二つあたりが彼女の成功の主な理由。
視聴者の呼び込みを大賭けで行い、獲得した視聴者を自身の魅力でファンへと取り込んだ。言うだけなら簡単だけども、同じことをしろと言われて同じことができる人間がいったいどれだけ居ることか。
まさしく、ライバーはかぐやちゃんにとっての天職であったということだろう。
ただ、この成功にはもう一つ、大きなきっかけがある。
それは、なんというか、下世話と言うか。先ほどまでの賭けだ、魅力だ、だなんていった綺麗な成功への道じゃなくて、もっと俗物的な話なんだけれども。
――かぐやちゃんは自身の初配信で操作ミスを行い、自身の姿を配信にのせてしまった。
言うまでも無いが、かぐやちゃんは美少女だ。それも超絶級の。
世界というモノは何処まで行っても非情なモノで、やっぱりバーチャルだなんだ、と言ってもリアルの力がどこまでも強いのが現実。
顔が良い、というのは何時の時代も最強の武器なのだ。クレオパトラに楊貴妃、小野小町……は日本だけであったか。
それに本人は顔バレ自体をまったく気にしておらず、実写系の配信も抵抗なく行う。最初に行ったメントスコーラの配信も、てっきり手元だけを映すのかと思ったら普通に顔を出していた。
これはコスプレイヤー、という人前に出ることを前提にしたものを趣味にした人間としての発言なのだけれども、やっぱりどこまで行っても顔の良さは何よりも強い。
コスプレにあまり力を入れず、自身の顔をメインに押し出した写真のいいね数が力を入れたコスプレイヤーの投稿のいいね数を上回るだなんてのは良くある話だ。
SNS上で出回ったかぐやちゃんのリアルの姿が呼び水となって人を呼び込んだ、というのは紛れもない事実ではある。
まぁそう言った意味も込めてきっと、かぐやちゃんの天職だったのかもしれない。ライバーというのは。
現実的な話、彼女には戸籍というモノがない。彩葉命名、ゲーミング電柱から拾われた彼女の立場を証明するものが、日本国内には存在していない。
彩葉は度々、『はやく迎え来てくれ~』とか、『さっさと帰れ~』とか心にもない悪態をづいているが、実際に月から迎えがいつ来るのか、そもそも来てくれるのか自体が先行き不明状態だ。
何でも話によれば収益化も余裕で通ったらしいし、そうなればかぐやちゃんの活動にも幅が出てくるし、また、彩葉の生活にも余裕が出てくる。
これまでは食費や光熱費、配信関連の出費は彩葉が支払ってきた。
私が払おうか? と聞いても、本人が私にはこれ以上払わさせたくない、と言ってきかないのだが、そもそもがギリギリであった彼女の生活にプラスアルファを許容する余裕は殆ど無い。貯金を切り詰めて行えた時間制限付きのムリの様なものだ。
願わくば二人三脚のように、彼女たち二人互いが互いを助け合う、そんな生活をしてほしい。
二人のお姉ちゃんとしては、そんな風に思ってしまうのでした。
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