〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~ 作:すっごい性癖
「ん、これって……?」
ふと気になり、手に持つスマホの画面に目を向ける。
表示されているのは現在再生されている動画のサムネイルであり、そのチャンネル主は可愛らしい第二の妹――勝手に認定しただけだけど――かぐやちゃん。
再生しているのは突如投稿された彼女のオリジナル楽曲なのだけれども……。
「コレ、どこかで聞いた様な……」
イヤホンから耳へと流れ込む見知らぬ楽曲。かぐやちゃんらしい、元気な歌声は聞いているだけで自身も元気づけらるのだけれども。
それ以上に私が気がかりであったのは、歌声の背景で流れるピアノベースの旋律であった。
「でもどこで……?」
本当に分からない。
頭の中であの曲か? それともこの曲か? だなんて風に似たような曲を思い浮かべては、いや違う、と自分で否定。
変な話なんだけれども、聞き覚えがないのに、聞き覚えがある。そんな謎の感覚だ。
あぁ、喉の奥がムズムズする。もうちょっとで出てきそうなのに、全然出てこない。いったい私はこの曲調をどこで聞いたんだったか……。
でも、思い出せないとなってもここまで既視感があるとなると……。
「えっ、もしかして……」
嫌な予感に背筋がゾッとする。まさかあの子たちに限ってそんなこと、と思うけれども……。
だけどもこの感覚、一番近いのはやっぱり。
「盗作!?」
「そんなわけないでしょ!?」
「だよねぇ、よかったぁ……」
恐怖に駆られた私は急ぎ彩葉の部屋に向かったのだが。それはそれはすごい剣幕で絶賛彩葉に怒られています。
「私てっきり、昔の名曲をAIにアレンジしてもらったとかなのかと……」
「やけに現実的な懸念が出てきたし……」
「前に知り合いの作家さんが締め切り間に合わなくてやっちゃって取り締まられてたの思い出してさ……」
あれは悲しい事件だった。普段からとてもやさしい方だっただけに、ショックも大きかったし。
あと三ページ、どうしても間に合わないから、と似た作風の漫画のコマを自身の書く漫画風にAIに変換してもらい、コピペして原稿を間に合わせていたのだったが……。当然バレて、お縄になったらしい。
「じゃああの既視感はいったい……」
「お姉ちゃん、ホントに覚えてないの?」
残念ながら……。記憶力の無い姉で申し訳ない。昔から物覚えがスッゴク悪いんだよ。お母さんに何度怒られたことか。数えきれないくらいなのはわかる、って程度だし。
昔から私は良くいろいろポカをしてきたからなぁ。特にお父さんが亡くなってからはそれはそれは怒られに怒られてたっけ。
それに対してお兄ちゃんや彩葉は容量が良かったから私ほどには怒られてなかったっけ。でもまぁ、言いがかりみたいなことはよく言われていた気がするけども。
そのせいで幼かった彩葉なんか委縮しちゃってね。昔は楽しそうに弾いていたピアノまで止めちゃってさ。
(お父さんが生きてた頃なんて一緒に作曲とかもしてて……。私もそれで……、って、あぁ!?)
「この曲、彩葉が昔作ってた曲か!!」
「やっと思い出しましたか、お姉さま?」
「ごめんって~!」
ヤバい、彩葉がすっごい顔をしている。今までに見たことないくらいにお怒りだ。
でもそれもそうだろう。人様が作った音楽をAIや盗作呼ばわりは流石に酷すぎる。今すぐこの場で首をたたっ切られても仕方ないくらいには私が悪い。大悪人じゃないですか、私ぃ。
「結葉ひっど~い。彩葉かわいそ~」
「うぅ……」
お土産のアイスを食べながら寝転んでいるかぐやちゃんにも非難されるが、何も言えません。この曲の完成においての土台が彩葉の作曲だとするのならば、支柱はかぐやちゃんの歌声だ。全面的にこの二人には頭が上がらない。
いったいどうすれば償えるのか、この大罪。十字架ですか、やっぱり。磔しかないですかね。
ぐぬぬ。
頭をフル回転して二人への非礼を詫びる手段を考える。が、浮かんでくるのは二千年前の偉人しか出てこないで進まない。この原罪並の私の罪はどうすれば雪げるのか。
悩みに悩み、そして私は口を開く。気分は判決を告げられる前の犯罪者だ。
「そのぅ……。夕飯、何食べます?」
私は逃げました、お金の力に。情けないです。
汚い大人になりました。謝罪の手段に平然とお金が混ざってくるようになってしまいました。
けれどそんな私の提案が思ったよりもクリティカルヒットであったのか。
寝転んでいたかぐやちゃんは思い切り立ち上がり、彩葉を後ろからハグしながら嬉々洋々と声を弾ませた。
対して私はその場に座り込み、謝罪の体勢をしています。謝罪の体勢は別の呼び方でどうやら土下座というらしいです。妹たちに土下座している姉、という肩書は情けなさすぎるので謝罪の体勢と呼ばせていただきますが。
「えっマジ!? 結葉のおごり!? やった彩葉、お寿司食べよ、お寿司!」
「バカっ、かぐや! お寿司は基本お米と魚、あと醤油で炭水化物とタンパク質が基本であとは少量の脂質と過分な塩分でしょ! せっかくの機会なんだから数日分の栄養を摂れるヤツがいいよ!」
「う゛ぇ!? 彩葉、それは流石に貧乏性過ぎるよ!」
お姉ちゃんもそう思いますよ、妹よ。その理屈だと美味しいモノ、だいたい却下されますから。てんぷらは揚げ物、ステーキは脂、みたいに。
「じゃあ彩葉は何が良いって言うの?」
「そりゃあ焼肉食べ放題でしょ! これなら自分の好きに注文できるから栄養選択も自由自在!」
「え゛っ!? 彩葉、焼肉行って野菜頼むつもりなの~?! 信じられないっ、焼肉へのぼーとくだよ、ぼーとくっ!」
そんなことないよ、かぐやちゃん。焼肉屋さんのお野菜、おいしいよ。玉ねぎとかピーマン、焼くと美味しいよ。かぼちゃも個人的には好きだよ。にんじんは嫌いだけど。
「でもでもかぐやっ、あの回るお寿司ってヤツ行ってみたい! めちゃおもしろそうじゃん!」
「あんたのそう言った知識はホントどこから持ってきてるの? そもそも回転寿司が回転寿司してたのなんて私、見たことないんだけど」
お姉ちゃんはギリギリ見たことあるよ、回転している回転寿司。
そっか、彩葉は見たことないんだ、回転している回転寿司。これもいわゆるジェネレーションギャップなのかな。件のパンデミックで全国から掻き消えてから結局ほとんど復活することなく今日まで来ているからね。
あっ、謝罪の体勢が甘くなっていますか。ごめんなさい、ちょっと直します。
「え゛~! じゃああれってウソなの!? サギじゃん! それって!」
「嘘って言うか……。一応、空港とかのごく少数の店舗はやってるんじゃなかったっけ? 観光客向けのパフォーマンス的な」
そもそも回転寿司、なんて言葉自体久しぶりに聞いたからね。
注文したら席にデリバリーされる形式がデフォルトになって久しい今、そんな言葉もう使わないから。
「んじゃ今回は焼肉かなぁ、かぐやも。みんなでお肉焼いて食べる、ってのも楽しそうだし」
「一応言っておくけど、生肉触った箸で取るんじゃないよ? 食中毒になったら酷いからね?」
どうやら今日の夕飯が決まりましたようです。さして問題なく決まってよかったです。
「それでは私めはこれから予約させていただきます……」
そう言って謝罪の体勢を解き、立ち上がろうとして……。
「み゛っ!?」
「うぉっ、びっくりした!?」
突然、全身を貫いた謎の信号に変な声を出してその場に崩れ落ちる。
あぁ、これは……。
「あし……、しびれた……」
ざっと謝罪の体勢をすること十数分。それだけで私の脚はどうやら敗北してしまったらしいです。
――今日の私、ダメすぎるなぁ。
そんなことを考えながら一人、床の冷たさを味わうのでした。
よろしければお気に入り登録、感想、評価などよろしくお願いします
〈おまけ〉
「つん……。つんつん……」
「あっひゃ!? かっ、かぐやちゃん! やめっ、さわらっ、っひゃあ!?」
「ちょっとかぐや、流石に止めなよ」
「え~、彩葉もやらない? こんな結葉、レアでしょ~?」
「まぁそうだけどさ……」
「うひっ、うひひっ!?」
「うわぁ……。なんか、ヤチヨ見てる時の彩葉みたいな声出てるよ」
「えっ、私こんな声だしてないでしょ!?」
「いや、かぐや的にはちょーそっくり」
「そんな訳ない! ほらっ、もっとよく聞いて!」
「ちょっ、ちょっと彩葉!? なに参加して……、うひゃっ!?」
「ほら、全然違う!」
「いーや、同じだよ!」