〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~   作:すっごい性癖

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本日二話目です


キツネさんとタヌキさん

 

「で、結局……」

「あれを見た結論がそれ、と……」

「うん! 名付けてかぐやスペシャル!」

 

 ストリートライブ予定の小さな橋の上、ふりふりと動いてみせるかぐやちゃん。どうやら何かを掴んだらしい。

 

「ダンスって歌う時、邪魔になるだけなんじゃないかな~って思ってたんだけどさ? ダンスって、自分の気持ちを表現するのにメチャクチャぴったりなんだね!」

「まぁそれはそうなんだろうけどさ……」

 

 今回の件とは関係ないけども創作ダンスの世界ではもろにそう言うことをメインとした派閥もあるらしいしねぇ。自己表現にダンス以上に向いているものも無いのかもしれない。

 

「けどさ、ダンスってもっと可愛かったり、優雅だったりするものじゃん……。でもかぐやのダンスは、なんというか……」

「うん~~? なになに彩葉、褒めてくれるの?」

 

 きゅるん、と期待に満ちた瞳で彩葉に踏みよるかぐやちゃん。その表情は可愛らしいけれどもね。その文脈だと答えは……。

 

「なんというか、見ていてうるさい」

「なんだと~っ!!」

「あははっ、そんなポカポカ叩いても痛くなーい!」

 

 あぁ、やっぱり。彩葉ってば、友達にはあんなにやさしいのに……。かぐやちゃんだけにはなんでかああいう態度ばっかり。好きな子にイジワルする男の子じゃないんだから。

 

 彩葉が着ているキツネの着ぐるみに衝撃が吸収されてるからか、楽しそうにかぐやちゃんの攻撃を受けているし。

 

「むぅ……。ズルいぞ彩葉~! 着ぐるみを脱げ~!」

「脱ぐわけないでしょ。ってかリアルネームを言わないで」

 

 まぁこの着ぐるみは身バレ防止のためだからねぇ。そこで本名を出してちゃ意味がないし。

 

「配信者として成りあがろうとしている奴のところでアバターや本名晒してたらバカそのものでしょ? 手伝ってもらえてるだけで感謝してよね」

「それに身バレ防止以外にもかぐやちゃん以外が目立たないように、ってのもあるしね」

 

 ライブこそ初めてだけれども、配信者としては着々と知名度を上げているかぐやちゃんだ。そんな彼女の下で個人情報を開示するというのは流石に怖い。そう言う判断を私も彩葉もしたわけだね。

 

 というわけで私も着ぐるみ参加です。もちろんタヌキです。アバターもタヌキですから。ちなみに何がとは言いませんが妹は赤ではなく青いキツネです。私も緑ではなく紫のタヌキです。お間違え無く。

 

 ちなみにかぐやちゃんは本名のかぐやちゃん呼びで問題ありません。ライバー名もかぐや、と本名で活動しているので。顔バレ、本名バレしている新人バーチャルライバーとはいかに……。

 

「じゃあなんて呼べばいいの?」

「何って、普通にプレイヤーネームは本名じゃないからそれで呼べばいいでしょ?」

「えぇ~……。なんかヤダぁ……」

「私はレイヤーネームが良いかなぁ。万が一身バレしてもいいように」

 

 私のコスプレイヤーとしての活動名は普通に本名をもじった『ゆい』なのだけど、それならばれても痛手じゃないしね。

 

「うぅ……」

 

 しかし何かが不満なのかかぐやちゃんは眉を顰める。そこまで悩むことだろうか、現代一般的なネットリテラシーの話だと思うけれども。

 

「まぁ他には役職名を付けるとか? 例えば彩葉はかぐやちゃんの楽曲制作をしているわけだから、つまりはプロデューサーってことだしね。そのままプロデューサーって呼んだりさ」

「げぇっ、お姉ちゃん急に何言ってるの!? 私、普通にめちゃくちゃその呼び方嫌なんだけど」

「え~、どこが~? かわいくない? 着ぐるみのプロデューサーってさ、子供向けアニメみたいで」

「プロデューサーってなんか、めちゃくちゃ成金みたいじゃん!」

 

 いやいや、そんなことはないでしょうよ。なんかの変な漫画や小説に毒され過ぎじゃないかなぁ。私もコス活動で何回かプロデューサー的な人に会ってきたけど、三割くらいしかそう言う人いなかったし。

 

「三割いるなら十分でしょ!?」

「そうかなぁ?」

「ほんっと、気を付けてよね! お姉ちゃん、そんな感じじゃいつか酷い目にあうかもよ!」

「あははっ、気を付けるよ~」

 

 たしかに友達にもそう言われること多いからなぁ。そこまで私、抜けてるかなぁ。たしかに凡人な私は彩葉とかと比べたら思慮が足りないけども、それでももう大学四年生なわけで。人並みくらいには大丈夫だと思っているんだけども。

 

「プロデューサーかぁ……」

「かぐやちゃん?」

 

 そんな私たちのやり取りは置いておいて。かぐやちゃんは私の提案が何か気になったのか、口元に人差指を立てて添えて何かを考えている。

 

 何を……、って。目が輝いたぞ。何か思いついたのか――。

 

「いろP!」

「うぇ、なにそれ?」

「何って、彩葉の呼び方。彩葉プロデューサーで、いろP! これなら私的にめちゃ可愛いからオッケー!」

 

 そう言うと嬉しそうに「いろP! いろP!」と何回も言いながら彩葉の周りを飛び跳ねだす。まさにウサギのように、ぴょんぴょん、ぴょんぴょんと。自身で着けた名前をかみしめるように。

 

「ちょっと、私まだその呼び方許したわけじゃ――」

「まぁまぁ。本名とかよりは全然いいでしょ? 私も可愛いと思うよ、いろP?」

「もうっ、お姉ちゃんまで……」

 

 はぁ、と肩を落とす彩葉。もとよりそこまで反抗するつもりも無かったのだろう。そこまで声に嫌悪感は無い。どちらかというと、急遽つけられたあだ名に照れてるだけだろう。多分。

 

 傍から見るとキツネの着ぐるみが肩をすくめているわけだから無性に愛らしいけれどもね。

 

「よっしゃ、彩葉もオッケーくれたし今日から彩葉はいろPだ!」

「あぁもうッ! いろP呼びはもう別にいいけどっ、それなら〈ツクヨミ〉で本名出すな!」

 

 ぎゅーっ、とキツネをウサギが強く抱きしめる。キツネは暑苦しそうにしながらも、ウサギを跳ねのけずその抱擁を受け入れていた。

 

(そういうところだぞ~……)

 

 そこで全く拒まない当たり、彩葉も満更でないってことだからねぇ。口では何を言っていても、結局受け入れるトコロ。たぶん、かぐやちゃんが彩葉に懐いているのも、もとをたどればこの部分を気に入ったんじゃないかな。

 

 なんて、もはや何様目線? 的な親目線的サムシングで見つめていた私だけれども……

 

「んじゃ次、結葉!」

「ふえっ、私も?」

 

 どうやらお次のターゲットは私らしい。

 

「でも私、役職ないよ? ただの雑用係みたいなものだし」

 

 彼女の配信活動の手助け自体はいくつかやってきたけど、メインはかぐやちゃんと彩葉の二人だし。

 

「雑用だからZ……。ゆいZは流石にダサくない?」

「ぷふっ。なんかのゲームの必殺技みたいじゃん。いいじゃん、ゆいZ」

「も~、いろPのイジワル~……」

 

 えぇ。私的にさすがにゆいZはダサいのだけども。もしや、最近の女子高生的にはアリなのか? うぇ、若さってわからね~。

 

「でもほら、お姉ちゃんを役職に割り当てるとしたら多分パトロンとかでしょ? それだとP被りだよ?」

「私、かぐやちゃんと彩葉のパトロンだったの!?」

 

 たしかに少なくない金額は出してきたけども……。

 

「ゆいPかぁ……。うんっ、かぐや的にはいろPとゆいPコンビ、めちゃくちゃアリかな! なんかかわいい!」

「いやっ、ゆいPは流石に……」

 

 ちょっと言いずらいんだけども。コンビでゆいPって、さぁ? 何がとは言わないけどもね? うん、言えないんだけど、それはまずいって。確かに関西出身だけどもね?

 

「お姉ちゃん、それはまずいと思うなぁ……」

「??? なんで?」

「なんでだろうねぇ……」

 

 言えないかなぁ。

 

「むぅ……」

「やっぱお姉ちゃんにはゆいZしかないって。諦めて受け入れなよ、ゆいZを」

「それを受け入れたら女の子として大切な何かを捨てることになる気がする……」

 

 私、超戦士でもなければロボットでも無いからさ。あくまで普通の女の子としては、Zだなんてたいそれたアルファベット、使えませんって。

 

「そんじゃあ、さ?」

「おっ、かぐやちゃん何か思いついた? 何々、聞かせて?」

「こんな圧が強いお姉ちゃん初めて見たかも。どんだけZが嫌だったの」

 

 それはもう、とんでもなくだよ。

 

 と、もうZは置いておいてさ。かぐやちゃんに何を思い付いたのか、と……

 

「結葉は私たちのお姉ちゃんみたいな感じだしさ? ゆい姉ってのは?」

「ゆい……、ねぇ?」

 

 ……。

 

 思わず思考が止まる。かぐやちゃんの言葉を聞いて、文字通り私の全身の細胞が動きを止めたのだ。

 

 呼吸も止まった。思考も止まった。生命が止まった。

 

 だけれども、それでも私の中でいつまでも反響され続ける一つの言葉。

 

 『ゆい姉』という呼び名が、脳内でリフレインを続ける。

 

 

(ゆい姉……。ゆい姉……。ゆい、ねぇ……)

 

 …………ッ!!

 

「ああっ、もうっ! かぐやちゃんはっ、かぐやちゃんは本当にっ!」

 

 あぁもう本当に、本当に、本当に!

 

「きゃっ、ちょっと結葉~!そんな撫でないでよ、くすぐったいって……、あははっ!」

「本当に可愛いんだから~!!」

 

 全身からあふれ出る衝動のまま私は彼女の頭をわっしゃわっしゃと撫でに撫でる。タヌキの着ぐるみの手であるだとか、気にしない。この湧き出る愛情が私を止めぬのだ。 

 

 たしかに私はずっと内心、かぐやちゃんのお姉ちゃん的なつもりでいたけどね? でも、それはずっと隠し続けていた心と言うヤツで。

 

 まさか本人もそう思っていてくれただなんて、もうっ、もうっ!

 

「~~~ッ!!」

「あははっ。結葉ってば、聞いてよ~!」

「むぅ……」

 

 私、正直死んでもいいです。こんな可愛い新しい妹が出来たんですから。これ以上の幸福なんてないでしょう。酒寄結葉、今日から三姉妹の長女です。

 

 長女としてこれからも精進していきます。でも酒寄家の三女に迎え入れたからって長男の妹であることは認めません。なんかあの人の好み的に、かぐやちゃんのことメチャクチャ気に入りそうだし。

 

 ――だなんて、私自身自覚するほどに異常な興奮をし続けていると……。

 

 ギュっ。

 

「うん?」

 

 着ぐるみの腕の当たりを、掴まれ現実の引き戻される。掴んできた手は、当然とも言うべきかキツネの着ぐるみが出所で……。

 

「あっ、えっと……、これは……」

 

 そんなキツネちゃんは自分自身、なんでこんなことをしたのかと不思議そうに、しどろもどろになりながらあたふたしていて……。今の行動の理由が分からない、と。

 

 でも、今こう言う行動をする理由なんて一つしかなくって。

 

 それは、もう……、さぁ。

 

「あ~もうっ、彩葉も可愛いなぁ~!」

「ちょっ、お姉ちゃん!? やめ、ふぐっ!?」

 

 再度私の中の愛おしさが爆発し、今度は腕の中に彩葉を抱き入れてこれでもかと撫でに撫でまくる。

 

 着ぐるみが着ぐるみを撫でている、なんて珍映像であることなんで気にしない。今はそんなことどうでもいい。

 

 そんな事よりも彩葉だ。彩葉が大事だ。

 

 こんな、こんな、こんなっ。

 

(お姉ちゃんがとられちゃうって思っちゃったのかなぁ!?)

 

 自分自身の思考が気持ち悪いけれども、どうしてもそう考えるしかない行動だったし、そう思うと身体が止まらないのだ。目の前に可愛らしい猫が出てきた猫好きが我慢できるだろうか。いや、できない。そう言うことだ。

 

「あ~、もうっ! 二人とも超かわいい!!」

 

 

 ――この後、ライブは成功しましたが、それはそれとして。それはそれは二人からおしかりを受けました。今度は回るお寿司屋さんに行きます。

 

 




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……ちなみにそもそも第一楽曲を投稿している時点で概要欄に「いろP」の記載があったのではないか、と自分でも思いましたが、そこは最初はプレイヤーネームだったが後からいろPに変更されたと思ってください
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