〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~ 作:すっごい性癖
『お~っと、気が逸ったファンが飛び込んだのかと思いましたが! なんとなんと、飛び入り参加したのは有名コスプレイヤーのゆいだ!』
『どうやら帝とは顔見知りのよう! ぶっちゃけ実況とかどうでもいいから、どんな関係か教えてくれ~!』
「ちぃ、外した!」
「ちょっと待てって結葉! お前、そんなキャラじゃないだろ!?」
「うっさいねん、このバカ兄ぃ! 黙って首差し出しぃ!」
ぶん、ぶん、と思うがままに日本刀を振り続け鬼の首をただ只管に求める。今まで行ったことがない操作だから細かな調整とか、正しい振り方とか、そういうのは分からない。
けれどもそこら辺は私の怒りが後押しをしているのか、身体が勝手に動く。どこをどう動かせば次の一撃に映るのか、本能的に伝わるのだ。
「ちょっ、おまっ、落ち着けって! このっ、地味にイヤらしいとこ狙いやがって、っと危なッ!?」
「だいたい何やそのキャラ設定! もともと陰キャやろっ、ムリすんなやッ!」
「誰が陰キャだっ! あぁくそっ、昔っから彩葉よりもお前の方が厄介だなッ!」
あぁもう、ムカムカする。目の前のチャラチャラ、イケイケ、オラオラの権化が自身の兄だと思うと恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。
「大方どうせ、かぐやちゃんのファンになったのはホント何やろ! でも、どうやってコラボ誘えばいいか分かんなくて、キャラ設定風のコラボ依頼で誤魔化してぇ! だっから根が陰キャや、ゆーてんねん!」
「だぁッ、クソ! 営業妨害だぞ、営業妨害ッ! 畜生っ、結葉がかぐやちゃん側に居るのわかってたのにあんなメッセージ送ったオレのミスだッ!」
別に目の前の兄が嫌いなわけじゃないし、嫌いになったわけでもない。昔っから尊敬しているし、今でも家族として愛してもいる。
それはそれとして首を狩り取りたいだけ。むしろこれも愛の一種だと受け入れてほしい。というか、受け入れろ。
「がんばれ~帝ちゃん。素人に負けたらダサいぞ~」
「コレも身から出た錆……。甘んじて受け入れろ」
「あぁもうっ、メンバーのくせにリーダーを見限りやがって!」
刀を振る、振る、振る。ただ只管に振り続け、鬼の首を狙うだけ。
(不思議だな……)
何故だか一刀振るごとに刀が手に馴染み、一体となったかのような錯覚が全身を浸す。まるで私は、長い年月を刀に捧げた剣豪であるかのように、身体が錯覚し進化していく。
あくまでそんな気分だけれども、しかし確かにの太刀筋は更なる美しさを獲得しだしていた。
「おい彩葉ッ! 結葉のヤツ、素人だよなぁッ!? なんか少しずつ動きが洗練されてってんだけど!?」
「そ、そのはずだけど。あんなお姉ちゃん、私も見たことないし……」
「わ~、ゆい姉つっよー! そのまま帝の首、断ち切っちゃえ~!」
「かぐやちゃんも物騒だなぁ! こんな新解釈、いらなかったなぁ!!」
次第に帝の動きが緩やかに見えてくる。最初は余裕そうに避けていた兄だが、今では大分苦しそうだ。まるで未来視かのように次に相手が動くであろう動線が視界を埋め尽くす。
(右、左下、少し下がってしゃがみ、横に回転……)
いったいどうしたのだろうか、私の身体は。眼も身体も脳みそも、未だかつてないほどにフルで活動している。ここまでの全能感を感じたことは無かったほどに、今ならなんでも行えそうだ。
「ウチの妹に手を出した報い!」
「お前の妹ならオレの妹でもあるからセーフだろうが!」
「セーフなわけあるかぁ! 法律学びなおせッ!」
「そもそも、かぐやちゃんは私の妹だけど、お兄ちゃんの妹じゃないから! そこんとこ、勘違すなぁ!!」
「お前のそう言うところッ、お兄ちゃん昔っから分かんないよ!」
妹の妹は兄にとっても、妹って言うのは法律的には正しい包含関係なのかもしれない。けれども私とかぐやちゃんとの姉妹の絆は法律を超えた魂の姉妹の関係。勝手に第三者が挟まっていいわけがないのだ。それがたとえ実の兄だったとしても。
「あっ、やべっ……」
「その首、もらったぁ!!」
完ぺきにとらえた鬼の隙。後ろに下がった際、段差に僅かに躓いた瞬間を決して逃さない。落ち込んだ重心、立ち直りは不可能な姿勢、明け透けと晒された首回り。
そこへと光速の刃が近づいて……。
「はーい、オイタはそこまでだよ~~」
「ッ!?」
しかしその首を断つ瞬間、横から差し込まれた鉄扇に刃が弾き飛ばされた。
くるくると回転しながら遠くへ飛んでいく私の得物は、そのまま地面へ深々と突き刺さる。
この声は、まさか……。
「月見ヤチヨッ!?」
「う~ん、この場面、そのテンションで名前を呼ばれるとまるでヤッチョがラスボスみたいだなぁ~」
そう言いながら宙に浮かぶ〈ツクヨミ〉界のアイドル。乙姫の様な海洋生物をデザイン元としたような優雅な着物を揺らしながら、天よりこちらを睥睨する。
「まぁ、ゆいさんのお怒りポイントもヤッチョ的にはわかるんだけどねぇ? このままだと配信序盤に帝様の首が落ちる、という大事件が起きて配信が見劣りしかねないのでストップかけさせてもらったよ~。それと……、エイッ!」
「ぐぅっ!?」
ぶん、とヤチヨが腕を上から下に振るった瞬間、どこからか現れた謎のウナギの様なデザインをした縄で全身が縛られる。棒立ちするミノムシのように、腕も足も使えない。
「いくら、かぐや・いろPチャンネルの関係者でも視聴席からの飛び込みはダメだよ~? 他にマネする人も出てきかねないしね~」
まぁそれはそう。
流石にここまでのことになったら私も大分頭に登ってきていた血も冷めて、なんなら背筋がヒエッヒエだ。
いや、お兄ちゃんに対する追及は一切の後悔はないけれども、さすがにコラボ配信という場で自分が抑えられなくなったのは恥ずかしすぎるし、迷惑過ぎた。
あはは……。コレは、やったか?
「という訳で、心苦しいけどちょーっと、お外行ってね?」
そう言いながらヤチヨは動けない私を掴み上げ、謎のワームホール的なものを生み出す。
あれは……。管理者権限を用いたワープゲートだろうか。
「……私は酒寄結葉なんて知らないからね」
(それは、どういう……?)
その言葉はいったいどういう意味なのか。どんな意味を帯びているのか。まったくわからない。
ヤチヨはただ、そう、わざとらしいほどに大きな声で呟くと私をその穴の中へと入れ込む。
――次に気が付いたとき、私は〈ツクヨミ〉から弾き出されていた。
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本編だいぶ言葉が強いですが結局、結葉がお兄ちゃん大好き娘だったので今のオレ様系お兄ちゃんには解釈違いを起こしているだけです