〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~   作:すっごい性癖

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超かぐや姫!の女オリ主もの少ない……
これも彩葉とかいう完璧人間がいるからキャラで勝てないせいなんだ……


妹が高校生で子持ちになっちゃった

 

 ウチの家系は所謂、その、持っているタイプの家庭であった。

 

 つい最近まで就活業界に居たので、それらしい言い方をするのならば一級の人材ばかりであると言える、そんな家庭。

 

 経歴、金銭、才能。そういった、人間を評価する上で用いられる尺度において、我が家の面々は皆どれかしらに優れたものを持ち合わせており、正しく、『何かを持っている』人たちが集まった家族だ。

 

 ただ一人だけの欠陥品を除いて、の話だけれども。

 

 ……だなんて、暗い思い綴りは数年前、高校卒業当たりでバイバイしているので置いておきまして。辛気臭いことこの上ない。

 

 そんな我が家の中でも飛びぬけて優秀、まさに完璧としか形容しようのない存在がありました。

 

 それこそが酒寄彩葉なる少女。私の可愛い妹。

 

 彼女の持つ能力を列挙するだけで日が暮れるのではないだろうか。そう錯覚するほどの完璧ぶりで容姿端麗、頭脳明晰、運動神経バツグンだなんて当たり前。あの件以降やってはいないようですが、音楽関係もバッチ来い。精神なんか大人顔負けなほどに冷静で、論理的。

 

 まさしく才女。才ある人を『持つもの』、と形容するのであれば、彩葉は『持ちまくる人』と言って差し支えないでしょう。

 

 もちろん、私は彼女の努力を知っている。彼女の、言葉通り命をかけた不断の努力が彼女の能力を裏付けていることを確かに知っている。

 

 それでも。

 

 それでも私はあえて、こう形容します。彼女こそ、『持ちまくる人』であると。彼女の努力と才能とは別問題で、確かに彼女は群を抜いた才能を持っているのだから。

 

 正直に告白をすれば、大人げないことに嫉妬してしまっている。醜いことに、彩葉を羨ましく思い続けてしまっている

 

 幼い頃からずっと、自分よりも幼い、愛すべき妹に対して私は向けるべきでない、汚らしい羨望の眼差しを向けてしまっているのだ。

 

 それは今も、ずっと。自分が嫌でも、どうしても、やめられない。

 

『私も持ちたかった。同じ家族である以上、私だって持っているべきであった。そんなにたくさん持っているのなら、一つくらいお姉ちゃんにくれたって良かったのに』

 

 こんなことをずっと、私が彩葉を天才として認識してからずっと考えてしまう。

 

 何か一つだけでも、私が私、『酒寄結葉』という人間が。人間だけが持つことができる最強の矛を手に入れられたら、それはどんなに心強い事だろうか、だなんて。

 

 兄や妹は、持っていた。自分の中の最強を。だから一人家を出て、そして一個人としての成功を二人ともに収めている。

 

 対して私は、そんなものを持ってはいない。

 

 持っていないから、どこにでもいる替えの効く人間パーツとして、社会に溶け込む以上の生き方に勇気が持てない。胸を張って、自分が酒寄結葉であると主張ができない。

 

 自由に生きてみたい、だなんて心の中で想っても、そのための一歩すら踏み出せない。

 

 ……あぁ、でも。ちょっとだけ、違ったような気がする。

 

 私は確かに、他人に誇れるようなものは持ってはいない。私こそが酒寄結葉であると言い張れる武器を腰に据えてはいない。

 

 けれども昔たしかに、私の胸にはあったはずなのだ。

 

 自分こそが酒寄結葉であると、そう言い張れるだけの度胸をくれるそんな大きな自信が。自身につながる、何か、大切な夢が。

 

 あった、はず……、なのに。

 

 

 

 もう、私には思い出せない。それがなんだか悲しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、持つ側だなんだ、なんてこと。考えてはいたけどもね?」

「どうしよう、お姉ちゃん!?」

 

 正面には珍しく慌てふためく妹の姿。彼女の暮らすアパートの一室、その中央で目の真ん中をぐるぐると巻きこんで視線を右往左往とさせている。

 

 あぁ、本当に『どうしよう』。

 

 視線を目の前の慌てる妹。正確にはその胸当たり、組んだ腕の中へと向ける。その中には……、

 

「まさか、赤ちゃんまで持ち出すなんて……。どうなってるの、ウチの妹?」

 

 すやすやと眠る、赤ん坊の姿がありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、アルバイトから帰ってきたら家の前の電柱が七色に光ってね! 扉も出てきてさ! 私は抑え込もうとしたんだけど、抵抗叶わず……」

「赤ん坊が出てきた、と……」

 

 車を走らせてやって来た妹の部屋。来たのは……、三日ぶりだろうか。何かと足りてないものはないだろうか、と食料だなんだと持って来たのは記憶に新しい。

 

 ピンポーン、とチャイムを鳴らしてノータイムで出てきたあたり、本当に困っているらしく急いで事情を聴くことにしたんだけれども。

 

 それよりも先に妹が抱きかかえる見慣れぬ存在に頭が真っ白になった私であったが、彩葉の鬼気迫る解説に次第に正気を取り戻し、ふんふん、と彼女の説明を脳内で纏めていた。

 

 要約すると、ゲーミング電柱からベイビーがどっかーん、らしい。いや、脚色なく、本当にこんな感じらしいから頭からのストップ信号が止まらないけれども。

 

「警察には?」

「最初に電話したんだけど、『は? 何言ってんだ?』って感じの反応されたよ……」

「まぁ、そうだよね」

 

 時間も時間、こんな夜にかかってきた異常な電話の内容だなんて、どこかの酔っ払いのおふざけだと思われても仕方がない。普通に考えて赤ん坊が電柱から出てくるはずがないのだ。

 

「その状況だと親御さんが誰かも分からないよね?」

「うん……。――あの、お姉ちゃん?」

「ん? どうした?」

 

 いったいどうしたものか。警察に頼るのが一番なのに、状況が状況過ぎて警察に頼るのが正解だとも思えない。2030年にもなって前時代的な、と思われそうだが、こんなの宇宙人やUMA的なあれとしか思えないし……。

 

 そんな風に頭を悩ませていると、彩葉が不思議そうな顔をしながら私の顔を覗き込んでいた。

 

「その、こんな話……。信じて、くれるの?」

 

 眉を下げ、声をくぐもらせながら上目で尋ねてくる彩葉。その表情はまさしく不審、といった風で……。

 

 あぁ、なるほど。

 

(そりゃあ、普通は信じてくれないと思うよね。言ってる本人だって)

 

 警察が彼女の通報を信じなかったように、彼女自身も、自分の発言を信じてもらえるだなんて思えないのは当たり前だ。超常現象は、常識を超えているからこその超常。常識に生きる人間の範疇には無い。

 

 きっとおかしいのは、彼女の発言のすべてを一切疑わずにいる私の方なのだろう。でも、

 

「信じるよ」

 

 疑うはずがない。嘘をついているはずがない。騙そうとしているはずがない。私は、彩葉を絶対的に信じている。

 

「それは……、どうして?」

 

 どうして。

 

 そんなもの、常日頃から言っているだろうに。きっと、言い足りなかったのだろう。

 

 だって、それが彩葉だ。全部を自分で出来るがゆえに、全部を自分でやろうとしてしまう彼女にはそれこそ、耳がタコになるまで言って聞かせなければわかってはくれない。

 

 私は最低な姉だけど。ずっと、ずっと妹を嫉んでしまっている酷い姉だけど。

 

 それでも確かに、

 

「お姉ちゃんだからだよ」

 

 私は酒寄彩葉の姉、酒寄結葉なのだ。姉が妹の言うコトを信じないで、何を信じると言うのか。世界中の人間が嘘つきだ、と指をさそうとも。それでも彼女の後ろから背を押し、横に並んで手を繋ぎ、前に立って盾となる。

 

 それくらいの無茶を成し遂げないで、姉だなんて名乗れない。

 

「それは、まぁ。お兄ちゃんも一緒だろうけどね?」

 

 きっと今と同じ状況になったとして、兄である酒寄朝日も同じように一切疑うことなく彩葉を信じるだろうし、もし私が同じようなことを言っても、彼は私の弁を疑うことなく信じると思う。

 

「お姉ちゃん……」

 

 ぽう、と頬が赤く染まる彩葉。さっきまで、夏だと言うのに突然の出来事に顔を青ざめさせていたが、ようやく熱が戻ってきてくれたらしい。

 

 うん。彩葉はやっぱり、笑っている方が何倍も可愛いよ。

 

「まぁ、そもそも彩葉はそんな冗談言える子じゃないしね?」

「ちょっと?」

 

 あははっ、とわざと大きめに声を出しながら笑う。お隣さん、こんな時間にごめんなさい。

 

 それでも暗めだった空気を明るく、厳しかった空間を緩くするためにも必要なことなので許して欲しい。

 

「とりあえず、こんな時間じゃ出来ることも少ないから今日は寝ようか? 明日からは三連休だしさ」

「……そう、だね」

 

 よくよく見れば彼女の瞳には疲れがありありと浮かんでいて、眼もうつろうつろだ。きっとまた、ムリのあるスケジュールを組んでいたのだろう。

 

 私が無理矢理にでも彼女の食生活やなんやに介入してマシになりはしたけれども、それでもまだまだ一高校生が送るには、いや、一人間が送るには無理がありすぎるというもの。

 

 このまま衝撃イベントに突き動かされていては、きっといつか倒れてしまう。

 

「とりあえず、今夜はもう帰るから。明日、また来るね?」

「うん、ありがとう。お姉ちゃん」

 

 赤ん坊の親を探すにしろ、どこか警察などに頼むにしても、脚、つまりは車はあった方が良いだろうし、どんなに優秀でも女子高生でしかない彩葉だけではいろいろと不都合も出てくるはず。

 

 大学生とは言え、成人済みの人間が居るのと居ないのとでは大違いだ。

 

 

 

 

「じゃあ、また明日。何かあったら気にせず電話してね?」

 

 フリフリ、と手を振りなが彩葉の部屋の扉を閉める。彼女が心配な気持ちはなくならないけれど、このままこの場所に居ても出来ることは限られている。

 

 それよりも先に。

 

「えっと、どこ行けばいいんだろう?」

 

 カツカツ、と指先で叩くようにスマホで検索エンジンを走らせる。題目は『赤ちゃん 製品 どこで買う?』。生れてこの方、母親になったことがない私で走り得ない情報だからネットの知識様に頼るしかない。

 

 これはもしかしたら思い過ごしかもしれない。もしかしたら明日にはあの赤ん坊の両親が見つかるかもしれない。

 

 けれども。

 

(もしも見つからなかったら……)

 

 その場合、あの赤ん坊は長期間、彩葉の部屋に居ることになるかもしれない。そうなったら責任感の強い彼女のことだ。ただでさえ厳しい家計から、育児用品を買いそろえようと無理をするだろう。

 

 そうなったらもう無理だ。あの頑固な彩葉を説き伏せることは難しい。ただでさえ、妹の方が私よりも頭が良いのだし。

 

 だから前もって買っておくしかないのだ。先に買っておけば、あの彩葉でも跳ねのける様なことはしないはず。

 

 ……はず、だよね?

 

 まぁとにかく、タイミングは今しかない。突然の出来事でてんてこ舞いな今しか、彩葉の思考を出し抜くことなんてできやしない。

 

「よーし、お姉ちゃん。がんばっちゃうぞぅ!」

 

 久しぶりにお姉ちゃんらしいことが出来たからか、それとも単純に夜遅くだからか。

 

 変にハイテンションで私は車に乗り込んだ。

 

 




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