〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~ 作:すっごい性癖
急遽、公式様から二次創作ガイドラインが交付されたので急いで確認していました
現状問題がなさそうで一安心しています
時間というモノはやはり等速度で過ぎ去るもの。私たちが地球の上に居る人間である限り、相対性理論は強固だ。
あれほど緊張をし、恐ろしく感じていたヤチヨとのライブも当然のように開幕の時間を迎え、そして今、閉幕となる。
歌った。踊った。笑った。泣いた。
自身の持ちうるすべてを表現しきったステージであったと、私はそう思っている。
具体的に自分がどんな動きをしていたのか、練習通りに動けていたかどうかは覚えていない。もしかしたら無様であったかもしれない。
声が出ていなかったかもしれないし、裏返っていたかもしれない。動きが遅れていたかもしれないし、そもそも間違えていたかもしれない。集中するあまりに顔が強張っていたかもしれないし、人様に見せられない顔をしていたのかもしれない。
しかしそんな私の疑念を、この身体に満ちる疲労感と満足感は否定するのだ。
他人がどう思ったかは分からないけれども、私は私が満足できるステージに立てたのだと。
今日まで短いながら濃い日々を過ごしてきた妹たちと、そして目標であったヤチヨとを合わせた四人で確かに満足できるステージを創り上げられたのだと。
そう、肯定して私の背中を支えてくれている。
――あぁ、さっきの考えが正しくて、そしてまた間違ってもいることが私にはとても悲しい。
時間は残酷にも時計で等間隔に刻まれるもので、あくまですべての人間が等しい速度に感じる確かな定義。地球の裏側の誰彼も、今ここにいる私も、腕に着けた時計は同じリズムで針が回る。
だけれども時間は非等速にも過ぎ去ってしまう。
ついさっきまで私が浸っていた時間の波は、今まで私が浴びてきた時の流れのどれよりも確かに早く、すぐに過ぎ去ってしまった。
楽しい時間はすぐに過ぎ去る。終わってほしくないものは終わる。迎えたくないゴールにも、やっぱりいつかはゴールする。
それは怯えていたライブのスタートがやはりやって来たかのように。
それが悲しい、寂しい、口惜しい。
迎えたくないゴールに無理矢理詰め込められるのは、ちょっと、すっごく残念だ。時間が無理矢理私の背中を押してくる。嫌だって言っても押してくる。
だけどもそれ以上に、華々しい想いが胸を満たしてくれるから。寂寥感を押しつぶすくらいの幸福感が身体を満たしてくれるから私は今も満面の笑みでいられる。
歌った。踊った。笑った。泣いた。
それが全部。それで、全部。私の……、全部。
全部を出し尽くせたんだから、もう、今日はいいんだ。
この寂しさの正しい使い方はきっと今の延長を求めることじゃなくて、続きをいつかに創り出す為だから。
――いつかまた、みんなでライブがしたいなって。そう思うくらいで今日は止めておくのだった。
「彩葉……、好き」
「はぁっ!? アンタ急に何言ってんの!?」
感極まった様子のかぐやちゃんが彩葉に自身の想いを告げる。その『好き』の意味の深さは推し量れないが、それでも決して浅いモノではない。
「もう私、彩葉と結婚しようかな~」
可愛らしくじゃれ合う二人を少し離れたところから眺める。私は決して近寄らない。今は私達三人の輪の時間ではない。彩葉とかぐやちゃんだけの時間だ。
私もあの二人とは他の誰よりも深くかかわっているけれど、それでもあの中に入っていいほど深くはない。あれは、一緒に暮らし、一緒に笑い、一緒に怒って、そしてまた一緒に笑った二人だけの特別だから。
「別に、生活費折半してくれるなら……。一緒に暮らすのは、いいけど」
別に私はあの二人の関係に、どうこうと口を出すつもりはない。十年前と違って、昨今はその手の話題だって大体は寛容だ。
あの二人がどんな結末を迎えるのか。
より接近するのか、今を維持するのか、少し離れるのか、大きく離れるのか。
それが突発的な喧嘩や事件で起きたものではなく、二人が話し合って、確かな合意のもとに得た距離感であるのなら私は何も言うつもりはない。
もちろん私はあの二人のお姉ちゃんだから、いつまでも二人は仲睦まじく居てほしいのだけれども。それでも何よりも重要なのは二人の納得だ。
二人は年齢こそ子供だけれど、その中身は大人のものだ。賢い、とか、経験がある、とかじゃない。そんな、時間が人間に必ず与える権能の話ではない。
二人は相手を思いやる心を持っている。相手が何を考えていて、それでいて自分は何を求めているのかを折り合いが付けられる間柄である。雑に行ってしまえば、すごく二人の相性はいい。
それだけで二人の間がこじれることなんて、外から強く叩かれでもしない限りあり得ないと、私はそう強く思う。
「ふふっ……」
こんなことを考えるだなんて、私はダメな姉なのかもしれない。妹たちが……、とかそんなの、健全な姉の思考じゃないだろう。
でもそんな社会通念とか、いわゆる常識なんかよりもよっぽど、二人の未来の方が重要だから。
いつまでも二人が笑顔であれる、そんな結末であってほしいと。そう願っている。
しかし幸福な時間は長くは続いてはくれなかった。
「……?」
突如、会場の雰囲気が一変する。幸福な後味が続いていた空気感が、一変して微妙な味わいへと変貌した。
(なんだこいつら、頭に提灯を付けたような……)
舞台に浮遊しながら近づいてくる数多いアンノウン。顔部分が提灯の様な形状をした、白い身体をする生命体。
(これもライブの演出……? 何も聞いてはいないけど)
そう思ってヤチヨの方を向くが、……なんだ、あの表情は。
辛そうで、悲しそうで、それでいて待ち望んでいたモノを見ているような。そんな不思議な感情を孕んだ表情。笑顔と泣き顔を重ね合わせたような不思議な面持ち。
その顔が何を物語っているのか、私にはわからない。ヤチヨが今何を考えていて、何を思っていて、何を願っているのか。それはわからない。
でもわかったことが一つある。
それは……
「かぐやちゃん!!」
この不審者は、決してライブの演出なんかじゃあないってことだ。
瞬間、また何かに憑りつかれたかのような感触を覚える。全身を満たす全能感、あの時の感覚。今なら何でもできそうな、その予感。
あぁ、いや、正確には違う。憑りつかれたんじゃない。この感覚は……、いや、今それはどうでもいい。
突如現れた不審者に彩葉もかぐやちゃんも動きを止めている。その表情は恐怖と驚愕に染まっていて、さきほどまで二人を包んでいた幸福感はどこかへと消え去っており、笑顔もまた、姿を隠した。
……プチン。
何かがどこかで弾けたような音が聞こえた。
不審者の両手がかぐやちゃんの腕へと伸びる。今すぐにでも、その腕を掴もうと言わんがばかりに近寄っている。二つの手で、今日のライブ衣装から伸びる白い腕を掴もうと……。
二人の距離はあともう、十センチほど。恐怖で動けないかぐやちゃんは普段の様な俊敏な動きで避けようともしない、できない。
だから……、
「ウチの妹に勝手に触んなや」
だから、私が代わりに対処する。
ライブ衣装の腰部分に例の日本刀を出現させ、コンマ一秒で刃を引き抜き、提灯人間の腕を断ち切る。
遠慮は無い。先に無遠慮にも妹の腕を掴もうとしたのはあちらの方だ。
「……ふっ」
返し刃で周りに立つ他の提灯も切り刻む。腕を、脚を、胴を、頭を。自身の身体が出来る最大限の動きで、最高速の速さで。
「お姉ちゃん!?」
「二人はそのまま動かんでいて! ここはお姉ちゃんが何とかするッ!」
断ち切る感触はまるではんぺんでも刻んでいるかのよう。人型の対象を切っているような感触では決してない。
そんな感覚が逆に恐ろしい。今私が前にしている存在が何なのか、まったくの理解が及ばないから。
〈ツクヨミ〉のバグなのか、インターネット上のウイルスなのか、誰かが仕組んだマルウェアなのか、はたまた……。
けれども感触が気持ち悪いからって止まる理由にはならない。背筋がぞくりとするだけなら、我慢すればいい話。
確かに私は提灯人間を切り伏せて、倒れたヤツらは起き上がらない。この事実さえあればそれで充分。
……ッ!?
「オイタはそこまでだよ~」
突如、目の前に構えていた提灯人間が後方へ弾き飛ばされた。
今のはいったい、と悩む間もなく聞こえてきたのはつい先ほどまで美しい歌声を紡いでいた歌姫のもので。
そして奇しくも私自身、つい最近言われたものであった。
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ライブシーンを文字で書くのは無理なので一気にスキップしましたが、流石に飛び過ぎなのでいつか加筆するかもしれません