〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~   作:すっごい性癖

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本日一話目です


花火咲き乱れる裏側で

 

 あの日、あのライブの後からかぐやちゃんの様子がおかしい。

 

 それは体調が悪そうだとか、怪我をしていそう……みたいな意味ではない。何か、私たちに隠し事をしているような、そんな感じの様子のおかしさだ。子供が親に内緒を突き通そうとしているような、そんな違和感。

 

 あのライブの日からの異常、と言うと原因として考えられる最大の要因としてはあの変質者たち。頭の部分が提灯、というか今思い返すと行燈みたいな奴らなんだけれども……。

 

 確かにアイツらは何故かかぐやちゃんを狙う様にして動いていたが、その魔の手は全て私が切り落としていたし……。後でかぐやちゃん本人に無事の確認した時も一切手は出されなかったと言っていた。

 

 というか、あの件のすぐ後に行った無事確認では今みたいな違和感はなかったし……。となるとやはり、あの件は関係ないのだろうか。しかしあれだけの事件を何も関係がないと思うのも難しい。

 

 またヤチヨに聞いたところ、あれはやはり想定外の出来事らしく現在進行形で解析を行っているらしいとのことで……。もう、何もかもが今の時点ではわからない。何が何だかさっぱりだ。

 

 すべての点は繋がっていそうなのに、その点の一つ一つが何だか分からないから手の出しようがない感じ。不透明なことだけが透明な気持ちの悪さ。

 

 正直、手の出しようがない。かぐやちゃんに「何か隠しているの?」と聞いても多分私でははぐらかされるし、そもそも彼女の違和感自体ただの思い過ごしであるかもしれない。

 

 例えば、何かとんでもないやらかしをしてしまって、それが言い出せないだけ、とか。怒られるのが怖くて誤魔化しているだけ、とか。そんな、後になってみれば笑って済むだけの話かもしれない……、なんてのは心にもない言葉であろうか。

 

 わからないったら、わからない。

 

「……まぁ、そこら辺は彩葉にまかせるっきゃないかな」

 

 この件で誰よりも頭を悩ませているのは他でもない彩葉だ。

 

 短い期間ながら、濃密な日々を送り今では気の置けない同居人となった彩葉とかぐやちゃん。

 

 最初こそ赤ちゃんを拾ったことから始まったが、そこからは年齢の近い友人の様な、それでいてもっと深い家族の様な関係性を培っていた二人。

 

 頑固なところがある彩葉とわがままなところがあるかぐやちゃんという、一見して反発し合いそうな性格ながらも、今日まで破綻することなく続いていたのは二人の心のやさしさと、そして相性の良さの賜物だろう。

 

 そんな片割れが異常を醸し出していれば、もう一つの片割れは気が気でないって言うのは当然のこと。

 

 なんでも彩葉本人曰く、彼女の様子のおかしさに思い至る点があるらしいし……。

 

 今回の件で何もピンとくることの無いお姉ちゃんは、舞台の裏側に隠れている方がよろしいというものだ。つくづく、自身の頭と察しの悪さが嫌になりますよ。

 

「……お?」

 

 だなんて、行先の無い想いと感情を持て余していた私は周囲を散歩していたわけだったのですが……。

 

 人ごみの中に見覚えのある人影を見かけたような気がして……

 

「あれは……、うん、やっぱりそうだ」

 

 再度、今度はしっかりと見かけた人影を見つめて、勘違いでないことを確認。流石に人ごみの中で人違い、は恥ずかしい。

 

 特徴的な髪、確認。愛らしいお顔立ち、確認。今時ファッションスタイル、確認。すべての要素が人違いでないことを指し示す。

 

 だから私は足早に駆け寄って……

 

「おーい、芦花ちゃん!」

「えっ……。って、結葉さん!?」

 

 彩葉のクラスメイトである、綾紬芦花ちゃんに声をかけるのであった。

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、街中ブラブラしていただけなのにまっさか芦花ちゃんに会うことになるなんてねぇ……」

「私もびっくりしましたよ~」

 

 ところ変わって街中のカフェに移動。せっかくだからコーヒーでも飲みながらお話しよう、となったのだ。

 

「芦花ちゃんたちは明日から学校でしょ?夏休み終わっちゃうの、寂しい?」

「ん~……。ちょっとは寂しいですけど、やっぱり友達のみんなに会える方が楽しみかな? って感じです」

「あ~、わかるかも~。私も休みの最初はウキウキしてたけど、終わる一週間前位からははやく終わんないかな~、って感じだった~」

 

 あ~、懐かしい。高校の夏休みってそんな昔の話でもないのに、やけに遠い過去に感じる。私は彩葉と違って高校は地元だったから、東京ほど遊びに行く場所も無かったから、学校に行く方が楽しかったし。

 

「へ~、そうなんですね。夏休みって言えば大学の夏休みは長い、って聞きますけどどうなんですか?」

「いやぁ、ホント長いよ~? ほぼ二か月まるまる休み、みたいな感じで。私もあともう一か月くらい夏休みだし」

「え~。学校が恋しいって言ったばかりでアレですけど、そう聞くと羨ましいかも……」

 

 あははっ、と笑いながらアイスコーヒーをストローで口に含む。舌の上に広がる苦みと酸味。この店のコーヒーは酸味が強いタイプのコーヒーのようで、私好みでちょっと嬉しい。

 

「そう言えば結葉さんってどんな高校生だったんですか?」

「ん~? 気になるかぁ、女子高生だったころの若かりし酒寄結葉に?」

「若かりしって、結葉さんはまだ若いじゃないですか」

「お~、嬉しいこと言ってくれちゃってぇ。なんだなんだ、ロールケーキ食べちゃうか~?」

 

 注文パネルでフルーツ沢山のロールケーキを注文籠に入れて……、注文。もちろん数は二つ。私もコーヒーを飲んでいて甘いモノの口になっていたのです。

 

 いやぁ、それにしても私の高校時代かぁ……。

 

「そんな面白いモノじゃないよ~? こっち来る前だから今より方言も強かったし」

 

 それにあの頃はコンプレックス最盛期、って言っても差し支えなかったし。年下の妹である彩葉に事あるごとに嫉妬していたからなぁ。今になって思うと大人げないと言うか、酷いお姉ちゃんだな私。

 

 しかしそれを馬鹿正直に妹の友達に言う訳にもいかないし……。

 

「勉強とかは、まぁ普通に頑張ってたかな? 一応今の大学もAO入試で入ったから、評定を気にしてたし。言っても授業は真面目に受けて、テスト勉強は三週間前から、みたいな普通も普通って感じだけど」

「彩葉の真面目な所ってお姉さん似なんですか?」

「いやいや~、彩葉のアレに比べたら私なんてずっと怠け者だったよ~。お母さんにもよく怒られてたし」

 

 彩葉に比べてアンタは、とか、出来ないなら出来ないなりに頑張りなさい、とか。いやはや、まったくもってその通りって感じで。ウチのお母さんはその職業的にも責め立てるときに正論ばっかり言ってくるから勝ち目がないのが恐ろしいのだ。

 

「部活も別に強豪って感じじゃなかったからソコソコって感じだし……。よくある普通の学生だったねぇ」

「へぇ……。意外って言ったら失礼かもですけど、ホントに普通の高校生だったんですね~」

「そりゃあねぇ。我が家きっての普通ちゃんだったから。まぁどっちかと言うと、我が家の兄と妹の二人が濃すぎたってのもあると思うけども」

 

 上京してオレ様系配信者になっちゃった兄に、高校生にして学費と生活費を稼ぐことを条件に上京を認められた妹。アレは身内からしても大分濃いよ。どっちか一人がいるだけで、十分なくらいの濃さ。

 

 あれらが昔っから一緒に暮らしているんだから、天才ってのは元が違うんだなぁと思い知らせてきたよ。

 

 だなんて、しばらく私の高校時代の話を芦花ちゃんが尋ねて、私が答えるなんてことを繰り返して数十分。

 

 芦花ちゃんはここからが本番だ、と言わんばかりにゴクリ、と一つ唾を飲み込み、

 

「……それじゃあ、あの。恋愛、とかってどうだったんですか?」

「うへっ!? れっ、恋愛!?」

 

 それはそれは、特大の砲弾をぶっこんできました。

 

「れっ、恋愛かぁ……。そうだなぁ……」

 

 いや、まぁね。やってること女子会みたいなもんだし、そりゃあいつかはたどり着く話題でしたけども……。来ると解っていても衝撃は強いって言うか。

 

 撃たれることがわかっている弾丸だって、人間じゃあ避けられないし致命傷になるって感じで。

 

 しかし恋愛。恋愛、恋愛かぁ……

 

「正直、何もなかったなぁ……。生れてこの方、そういう話は」

「えっ、そうなんですか? 結葉さんって彩葉と似てて、すっごく可愛いし……。それにコスプレイヤーとしても有名だからてっきり……」

「お~い、てっきりとは何だ、てっきりとは~?」

 

 そんなに恋多き人生を送ってそうですかな?

 

 確かに私の顔は謙遜でも何でもなく、人並み以上には整っている自信はある。それは家系的な、血筋的なものだし、なんなら私が唯一酒寄の家の血を継いでいるって胸を張れる部分だからだけど。

 

「まぁ確かにね? お声がけされることは度々あったよ? それこそこっち来てからはナンパとか、お酒の席とかね? でも恋愛って言うとからっきし、ゼロだね、ゼロ」

 

 別にそういうのが嫌い、って訳じゃあないんだけどもさ。自分自身が恋愛をしている様子が想像できないって言うか。自分が誰かを大切に思っている姿が思い浮かばないって言うか。

 

「そもそも人を好きになる、って感情がよくわかんないや。……って、ごめんね。つまんなかったね」

「いえ、そんなことないですよ! 聞いたのは私の方ですし!」

 

 若干気まずい雰囲気を感じて謝ると、芦花ちゃんもこちらに慌てて頭を下げ始める。

 

 やっぱり前から思っていたけど、彼女はすごく優しい子みたいらしい。それはあの彩葉が気を許している、というところからも明らかなのだろうけども、こうして直接接しているとその温かさを直に感じる。

 

 ぱっと見今時のギャルで、軽そうな印象を与える外見だけども、その実はまるで真逆。しっかりとした思考と自分を持った、強い女の子だ。

 

 その様子は普段の彩葉の話からもわかる。あの子が今日まで生きてこれたのは間違いなく、芦花ちゃんの尽力にも依っている。

 

 彩葉から聞く彼女の行動の節々は、その全てが彩葉を気遣ってのことだってわかるし。

 

 というか、そんな娘とこうして恋バナ的なことをしている今の方がびっくりだ。

 

(こんなにいい娘があの子の友達として良くしてくれている、なんてとてもありがたいこと……)

 

 と、そこで私の脳裏に一つの可能性が思い浮かぶ。唐突な話題と彼女の存在が勝手に結びつく。

 

 何の脈略もない、ただの突飛な思い付きだ。理論として結びついているわけではない。確かな根拠からはじき出された結末でもない。

 

 それはまんま、今現在私にとっては不透明なかぐやちゃんの隠し事と全く同じで……。

 

 けれども今度の思い付きは、どこか私に強い確証を与えてきていて……。

 

「芦花ちゃん……。芦花ちゃんは、もしかして……」

 

 それ以上は口にしない。できない。してはいけない。

 

 むしろ、今口にしてしまったのが間違いであった。本来なら、もっと過程を重ねて。重ねに重ねて、その果てにたどり着くべき結論を今、私は漏らしてしまったのだ。

 

 私と彼女との関係はあくまで姉と妹の友達。決して親友でもなければ、家族でもない。

 

 だというのに、私は頭の中に通り過ぎた一つの可能性を抑えきれず好奇心で吐き出してしまった。今の私たちの間柄では決して許されない下世話な疑問を。

 

「ごっ、ごめんね! 今のは忘れ――」

 

 遅すぎる謝罪。遅すぎる訂正。何もかもが、致命的。

 

 本来なら糾弾されてもおかしくない私の罪は、しかし決して糾されることはなく。

 

 ――ただ彼女はこくり、と一度だけ頷いた。

 

 




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芦花をこれ以上出すと手癖でヒロイン化しそうなので登場は今回でいったんストップさせます

かぐやは月人に触られていないのに月の記憶をなんで思い出しているのかって?
かぐやにその記憶を思い出してもらわないと困る人物が居たのかもしれませんね……
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