〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~ 作:すっごい性癖
本編は無事、今月中に終わりそうで一安心しています
ヤチヨの役割は妄想です 本編でなんで居なかったのか、便宜上の理由付けをしてみました
「――だから、かぐやを月に帰さないために力を貸してください」
彩葉からの緊急招集の元、〈ツクヨミ〉に集合した私たちであったが、そんな私たちを出迎えたのは彩葉からのそんな結びの言葉であった。
集まったのは私にヤチヨ、彩葉とかぐやちゃんの友人である芦花ちゃんと真美ちゃん。そしてBlack OnyXの三人。
各々は彩葉からなされた電柱から赤ん坊をとり上げ、それから今日にいたるまでの話に面食らっている様子である。確かにウソみたいな話だと、私もそう思う。
……だが、しかし誰一人としてそれを嘘だとは断じない。
それほどまでに彩葉の表情は真剣さを帯びていたということだろう。
「……最近のかぐやちゃんの様子がおかしかったのはそう言うことかぁ」
言われて思い出したけど、そう言えばそうだ。最初彼女を拾った頃は、お迎えが来るまでの保護のつもりであったのだったと今更ながらに思い出す。もうすっかり家族のつもりだったから、今さら迎えが来るだなんて思いもしなかった。
彩葉は普段、照れ隠しとして『早く迎え来てくれ~』だなんて言っていたから、引っかかる部分もあったのだろう。
「まさかホントにかぐやちゃんが月のお姫様だったなんてなぁ……。てかなんで彩葉と結葉が知っててオレに連絡なしだったんだよ。赤ん坊拾ったって、相当な出来事だろ」
「いや、宇宙人の赤ちゃんを拾ったとか有名人のお兄ちゃんに伝える方が問題だったし。……まぁそんなかぐやちゃん自身が有名ライバーになっちゃったから今更な話だけど」
最初の頃は本人も『このかわいいかぐやちゃんが捕まって解剖されちゃってもいいの!?』とか言ってたし。実際髪色とか肌色を自由自在に操れる能力とか、解剖されてたかもしれないと思う。
「まぁその辺は今はいいか。大事なのはかぐやちゃんが月に連れ去られないように、って方だな」
「連れ去りに来るってのはこの間のライブん時に出てきた変な奴らのこと?」
「多分、そうだと思う。あの日からかぐやの様子がおかしいし、それに」
そう言って彩葉は目線をヤチヨへと運ぶ。ヤチヨもそれに気が付き、コクリ、と一度頷くと
「ヤッチョもアレがどこからの干渉か調べてるけどサッパリ」
役立たずでごめんね~、と言いながら両手を上げている。まさに、お手上げ状態と言うことなのだろう。
「〈ツクヨミ〉の管理人であるヤチヨがお手上げってことは、多分そう言うことじゃない?」
「宇宙人からの攻撃だから犯人が探し当てられない……と。筋は通ってるし、あの異様な雰囲気も踏まえれば、アイツ等が敵だって思うのが妥当だな」
なるほど、と頷く兄とその耳元で何かを相談し合うメンバー二人。この距離では何を話し合っているかまでは聞こえない。
「というか逆に、それって武力で押し返せるもんなの?」
「私も芦花と同じこと思ってた。相手の戦力とか分かんないし、戦うよりも逃げる方が良くない? もしかしたら相手は〈ツクヨミ〉でしかかぐやちゃんを連れ去れないかもだしさ」
そう発言するのは彩葉たちの仲良し友達二人組。その表情は不安そうで、自身の友人でもあるかぐやが連れ去られると聞いて気が気でないのだろう。
そしてその発言は確かに的を得ている。前回のライブの時は明らかに、全力では無かった。ヤチヨの介入からすぐさま引き上げていたし、去る際もだいぶ諦めが良かった。
それに後から知ったがヤツらに全国的な電波障害も引き起こされていたという。それらを踏まえると、敵の余裕と戦力、また技術的優位性を感じ取らずにはいられない。戦う、というのは現実的に厳しい可能性も十分にある。
そしてそれらの疑念は彩葉も考えていたらしく、
「うん、それは私も考えてはいたんだ。戦うよりも良い手段はないかなって」
きっぱりと、理由をもってその考えを切り捨てた。
「……でも、そもそもかぐやを拾ったのが電柱だったことを踏まえると、多分相手は現実世界にも干渉できると思うんだ。そうなると、どんなに逃げても相手は何度もやってくるはず。それなら……」
「初めっからボコして、もう二度とかぐやちゃんを連れ去ろうなんて考えないようにするって? わぉ、彩葉ってば見ない間に暴力的になっちゃって」
「茶化さないでよ、お兄ちゃん!」
「ははっ、悪ぃ悪ぃ」
ガルルッ、とキツネが鬼に吠えるが鬼はどこ吹く風でいなして笑う。こうして二人が仲良く話しているのを見るのも、何気に久しぶりな気がする。兄が家を急に出てから、二人の関係はどこかぎこちなかったし。
それもこれも、やっぱりかぐやちゃんのおかげであったことを思うと、あの子にはとても頭が上がらない。
「そんじゃあまぁ、彩葉の真意もわかったことだから話を進めるが。ここに集められたのはつまり、月の奴らが来た時に迎撃をしてほしいってことだよな」
「まぁ何かとバトるってなった時、真っ先に戦力に居てほしいのがオレ等ってのはわかるしね~」
「然り」
そうして再度、Black OnyXの三人は顔を見つめ合わせ、うん、と一度だけ頷き合う。
きっと彼らにとっては、これだけで十分だったのだろう。長い付き合いをしている仲間とも、意思の疎通には。
「オレら、Black OnyXはその要請に乗っかるぜ。なんてったってかぐや姫と帝と来たんだ、手伝わねぇって方が嘘ってヤツだろ?」
「お兄ちゃん……」
そうしてかぐやちゃん防衛作戦のメンバー募集に、第一の手が挙がる。
「当然、私も真美も手伝うよ! かぐやちゃんは大切な友達なんだから、あんな変な奴らに連れ去られてたまるかっての!」
「そうそう! 来年また海行こうね、ってもう約束してるんだから! こっちの約束のが割きなんだから、順番守ってもらわなくっちゃ!」
「芦花……、真美……」
次いで第二の手。愛する友人を守り抜く、約束を絶対貫き通すと心に決めた二人の少女が怯えながらも勇敢に手を伸ばす。
「ヤッチョも当然、戦闘のお手伝いをさせてもらいます! と、言いたいのはヤマヤマなのですが……。それ以上に、当日は変なハッキングがされたりしないかをチェックしないといけなそうなので手伝えなさそうなのです。ごめんね~」
「いや、ヤチヨは仕方ないよ」
そして第三の手が……、と言いたいところであったが、挙手の連立はいったんストップ。
というか、当然と言えば当然の話でヤチヨはこの〈ツクヨミ〉の管理人だ。その彼女が、目の前で起こりうるであろう〈ツクヨミ〉の危機を放置できる筈がない。
相手が〈ツクヨミ〉に干渉してくる以上、それを防げるのもヤチヨ本人しかいないわけで、極端な話、相手にハッキングされて〈ツクヨミ〉を一面溶岩の世界に変えられたら、それだけで私たちに勝ち目はなくなる。
まずもって、私たちが奴らに戦いを挑める、といった最低限の条件は〈ツクヨミ〉内であることが必須。正確に言えば、KASSENのフィールドを適用できる場所でないといけない。
あくまで私たちは、リアルではただの一般人。軍事的な訓練なんて当然、何ももしてはいないし、格闘技の経験だってありはしないのだ。
そんな私たちが抗えるのは、あくまでVRの世界であるからであり、その条件はマスト。それを覆されたら何もできないし、だからこそ何があってもその条件だけは守り抜かねばならない。
そういった意味で、ヤチヨには当日私たちが戦いを続行できるだけの条件の維持に尽力してもらわねば、こちらが立ち行かない。
「ヤチヨは相手に〈ツクヨミ〉の制御が奪われないように。難しいかもしれないけど、頑張ってほしい」
「了解、まかされました! みんなが安心して戦えるよう、絶対にこの世界は守り通すよ!」
えい、とその場で敬礼をして要請の受領を表現するヤチヨ。どうしても話題が話題だけに重苦しかった場の空気が、彼女の一挙手一投足で和むところをみると、さすがトップライバーであるなと実感させられる。
「でさ結局、結葉はどうなんだ? この間のライブの時もそうだったけど、だいぶ戦力として期待できそうだけど」
そして当然この場で集まった面々の、私以外の役割が確定した今、回ってくる話題の対象は決まっている。
また、あの場でアイツらと戦ったのは私とヤチヨの二人だけ。お兄ちゃんの質問も当たり前のものなのだが……
「残念ながらダメだねぇ。また全然何もできない状態に戻っちゃったよ。戦力として不確定な私が作戦に参加するのはむしろ邪魔って感じかも……」
「マジかよ。お前、いつからそんなシリアルキラー染みた感じになったんだ?」
「実際さっき、私とお姉ちゃんとで軽く勝負してみたけど……。アレはまんま、素人の動きだったよ」
本当になんなんだろう、あの現象。
一回きりならまぐれだったんだろうけども、二回目も、となると流石に話は変わってくる。確かにあの時、私は周囲の行燈人間たちを切り伏せていた。それは確かな事実で、ライブの映像にもしっかりと残っている。
眠った侍の血が覚醒! とか、映画だったらあり得たのかもだけども。それで言うなら、ウチの兄や妹の方が覚醒しそうなものだし。
「しかし戦力はいくらあっても足りないということはない。この人数であるのならば、場に出てもらう方が幾分かは……」
「そう? 戦力的に不安なヤツが居るって方がオレとしては怖いけど。場を任せるに任せられないし」
「オレとしても乃依の意見に賛成だな。動けるときの結葉だったら戦力として申し分ないが、そうでないなら作戦を組むうえで障害にしかならない」
Black OnyXは今までの経験から培ってきた戦場を見定める冷徹ながら、正確な目線で私と言う手駒を評価する。そこに親愛の情は挟まず、いかに戦が有利に運ぶかだけを目的として。
「いっそのこと、結葉さんの職を変えちゃうとか? アタッカーとしては不安定でも、例えばヒーラーとしてなら居るだけでありがたいってことになるし」
「でも回避ができないヒーラーは相手の良い的になるかも……」
芦花ちゃんと真美ちゃんは逆に、あくまで〈ツクヨミ〉、KASSENでの話ならば、とゲーム的な目線でのフィードバック。あくまでカジュアルでのプレイでありながら、確かに効果のある一手を模索して。
――そうして各々が、私と言う扱いづらい存在に頭を悩ませる中。私は、それらを申し訳なく思いながら、一つの案を出した。
「これはあくまで提案なんだけどね。私は戦力としてじゃなくて……」
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……ちょっと本編が少し暗くなりそうなので明るい番外編を投稿します