〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~   作:すっごい性癖

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本日三話目です

前話のラストはその内加筆するかもしれません


かぐや姫の引退ライブ 下

 

 私の提案した作戦――というほどでもないが、まぁ案はこんな感じのものであった。

 

『私がライブ中、かぐやちゃんのコスプレをするって言うのはどうかな?』

 

 ……そもそも問題となっていたのは戦力として不安定な私の存在だ。もしあの時のように自身の身体が戦闘に適すれば私自身、今回の戦闘では確かな戦力となれると思ってはいる。それほどまでに前のライブでの戦闘技術は光っていた。

 

 だけれども一方で、そんな奇跡が起きなければ。

 

 普段のような、どんくさくて何もできない状態の私のままであれば何の役にも立たない。いや、役に立たない程度ならまだよくて、最悪の場合、足を引っ張ってしまうこともあり得た。

 

 だからこそ私を戦場に配置すべきか、それとも除外するか。それが議論の的であったのだけれども……

 

『私がかぐやちゃんのコスプレをすればさ、いくらからは相手の思考を乱せられると思うんだよね』

 

 そりゃあここがリアルの世界であったら無理がある。私とかぐやちゃんの体格差ははっきりとしており、遠目からでも別の存在であるとバレてしまう。

 

 しかしてここはリアルに非ず。空想と幻覚で作り上げられたバーチャルの世界なれば……。スキンや体格のパラメーターをいじくるだけで、かぐやちゃんらしい見た目に擦るだなんて朝飯前のことだろう。

 

『それに私、ヤチヨカップの時にかぐやちゃんのコスプレ一回やってるからねぇ。本番まで短期間でも、全然仕上げられる範囲だよ』

 

 もちろん、ただ恰好を真似すればかぐやちゃんになるわけじゃない。

 

 かぐやちゃんをかぐやちゃんたらしめているのは、その明るい性格と優しい心。そして何より何物にもとらわれない自由さにある。

 

 それらすべてが兼ね備わった精神が肉体に宿った時、初めてかぐやちゃんとなるのだ。コスプレをするうえで重要な、そのキャラクターになりきるための期間で換算すれば、おそらく彼女のマネをするだけで一か月は必要となる。

 

 だが今回に限り、その期間はズルできる。

 

 前にコスプレしたことがある、っていうのもあるのだけれども。それ以前の話として。

 

 私はかぐやちゃんと、地球で二番目に長く接してきたのだ。一番は当然同棲している彩葉だろうが、その次くらいにはずっと彼女と一緒に居た。

 

 あの子のことなら、それなり以上には知っているつもりなのだ。

 

『それにさ……』

 

 それに加えて。陽動的な役割としての偽かぐやちゃん作戦だけれども……。

 

 これはもしもの保険ともなる。

 

『もし私がヤチヨとのライブの時みたいに戦えたら……。最後の最後、敵がかぐやちゃんの前に来た時の防波堤にもなれる』

 

 敵の数、そしてその規模は不透明だが想定される条件はおそらく多くて、広いというもの。小手調べであれだけのことをしてきたのだ、本番ではそれを上回っては来るはず。

 

 そんな相手に対してこちらの戦力は十人未満。当たり前だが戦力は足りなさすぎる。

 

 これでは相手が面で攻撃してくれば、ひとたまりもない。単純計算で全方向から敵が現れる場合、一人あたり六十度分の方向の敵すべてを殲滅しなければいけなくなる。

 

 敵が千人で、それが全方向から来るのなら一人あたり百六十ほどの対応数だ。

 

 それらを一切の内もらしなく守り切る、というのは難しいと言うもの。

 

 もちろん送させない為にライブ会場は防衛に向いた形状に整えなければならないが、だからと言ってすっごく大変が、かなり大変に落ちる程度の作用であり、やはり厳しいものは厳しい。

 

 そんな時のための、使えるかもわからないが置けるだけ置いておく保険としてなら戦力として不安定な私も意味はある。

 

 普段は保護対象とともにいて、かぐやちゃんを守っていれば自ずと私も守られ戦闘の邪魔とはならず。

 

 あくまで私が戦力になると言うのは運が良かった時のサブプランであり、メインは相手の陽動を行うための替え玉となること。

 

 ――これが私の提案のすべてであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ……と、そんな風に意気込んでライブにもう一人のかぐやちゃんとして乗り込んだはいいのだけれども。

 

(いやぁ、運が良かったら戦力になれるかもって言ったけど……。今回はダメそうだなぁ)

 

 あの、まるで神に憑りつかれたかのような全能感が今回はまるっきりない。全部が全部、私の力、百パーセントって感じだ。もし敵がここまで来ても、前みたいに刀で切り伏せる、なんてのは出来なさそう。

 

(自分のことながら恥ずかしい……。ここぞっていう時で私は毎回ダメな方を引いてしまうんだよね)

 

 遠くの方で爆発が見える。

 

 ここからはあまりよく見えないが、おそらくみんなが月の住民たちと激しい戦闘を繰り広げているのだろう。

 

 先頭は……、彩葉だろうか。今ちょっとだけ青っぽい影が見えたような気がする。その後ろに居るのは赤い影だし、お兄ちゃんがサポートしてあげている感じだろうか。

 

 他にも後ろからは様々な色の残像が青と赤の閃光を追いかけるようにして駆け巡っている。みんな、各々が各々の出来る限りを全うしてくれているのだ。

 

 ……でも。

 

(これは、ちょっとマズそうかな?)

 

 一人後ろに籠って歌って踊って偉そうに、と言われかねないがそれでも引きの眼で見ているからこそわかるものがある。

 

 明らかに戦線がこちら側へと押されてきている。敵の顔がよりくっきりと見えるようになってきているのだ。

 

(まぁ、顔って言うほどのモノじゃあないけど)

 

 提灯頭であったり、白面であったりとした風貌で人の顔、というほど個性は無い。まるでコピーアンドペーストをして生み出されたかのような風体で、だからこそその数は無尽蔵なのかと思わされ恐怖する。

 

(……かぐやちゃんは)

 

 ちらり、と歌いながら愛しい妹の方を向く。

 

 その表情は満面の笑顔。きっと彼女自身、今の劣勢を見て取っているだろう。内心はどこか不安であるのだろう。当たり前だ、彼女が愛したみんなが今まさにやられそうなのだから。

 

 しかしそれでもそのような感情を一切表には出さない。彼女自身が定めた、完璧なハッピーエンドを生み出す為に彼女は只管に笑い続けているのだ。

 

 この戦いが勝っても、負けても。全て幸せであったと言えるような結末にするために、ただ笑い続ける。いつか、あってほしくない未来で『彼女は最後まで笑顔で楽しそうだった』なんて嘯かれるために。

 

 ……そんな残酷な話があっていいだろうか。

 

 彼女の人生はまだまだこれからだ。彼女は常々言っていた。

 

 まだまだやりたいことがあると。

 

 まだまだしたりないことがあると。

 

 まだまだ地球に居たいのだと。

 

 そんな願いを持っている子から、未来を奪い取られて本当にいいのか? そんなことを許容してしまっていいのか?

 

 

 

 

 ――いいわけがない。

 

 

 

(私も、覚悟を決めようかな)

 

 その行動がどれだけの意味を産むのかは分からない。確かな成果に結び付くとも限らない。そもそもこんな作戦、成功するかどうか自体が不透明だ。

 

 それでも、やっぱり。

 

(きっと二人が知ったら怒られるんだろうなぁ、前みたいに)

 

『言ったでしょ、三人一緒にって!』

 

 そう言ってくれたのは、彩葉であったか、かぐやちゃんであったか。それともその両方であったか。

 

 十分だ。その言葉だけでもう、私は十分だ。

 

 今回のライブで私は私自身の原点を思い出せたし、夢まで叶えてもらってしまった。叶えてもらったと言うには、おこぼれにあずかり過ぎてはいるけれども……。それでも、叶うはずのなかった夢が現実となったのだ。

 

 思い残すことなんて他にない。

 

(無いんだったら――)

 

 ……欲しい子に、あげちゃってもいいんじゃないかな。

 

 私はぎゅ、と懐にしまい込んでいた能面を強く握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと……、待ってよ。まだっ、まだッ!!」

 

 戦況は決した。敵の膨大な数、そして異常なまでの火力に結局私たちは敵わなかった。

 

 天守閣の上でかぐやが月人たちに囲まれている。まるで彼らの本当のお姫様かのように、礼をとられながら粛々と。

 

 私はその光景を遠方から眺めて、叫ぶことしかできない。

 

 体力は尽きた。武器もどこかへと飛んで行ってしまった。戦うための要素の全てはこの場から消えてしまっている。

 

 けれども私の心の奥で燃え盛る、この闘志だけは掻き消えない。まだ負けていない、今すぐその首を叩ききってやると全身で吠えて、吠えて、吠え叫ぶ。

 

 ……しかしどんなに私が吠えようとも、相手からすればそれはまさしく負け犬の遠吠え。その場から動きも出来ない私に目線もくれることなく、仕事は終わったとばかりに興味も抱かない。

 

「あ……。あぁ……」

 

 嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!

 

 帰ってほしくない。居なくならないで欲しい。ずっと地球に居たっていいじゃないか。今さら迎えに来るなよ、無責任な。

 

 私は、まだ……、かぐやと一緒に……。

 

「あぁ――」

 

 そう願っても、口にしても……叶うことはなく。

 

 月人たちに囲まれたかぐやは彼らに促されるまま連行され、天へと昇っていく。どんどん遠くへと消えていく。

 

「――ッ!!」

 

 ――最後に見えたのは羽衣を掛けられ、目から光を失ったかぐやの姿であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 敗戦処理と言うのは、こうも惨めなモノなのか。平和な時代を生きる私はついぞ知らなかったけれども。こんなこと、知りたくも無かった。

 

「みんな、今日はありがとう」

 

 かぐやを守るための戦役は終わってしまった。それはライバーとしてのかぐやの引退ライブ終了をも意味しており、彼女が地上に居たという痕跡が肉体と同時に掻き消えたことを意味している。

 

 私はそれが……。

 

「その……」

「えっと」

 

 芦花と真美がこちらを心配そうに見つめてくる。その表情は真っ青と言った様子で、きっと彼女たちにとっても大切な友人であるかぐやが連れ去られたことがショックなのだろう。

 

 きっと、そうだ。

 

「えっと……。今日はもう帰る――」

 

 そんな雰囲気が耐えきれなくて。もしかしたらかぐやは何処にも消えていなくて、家のどこかに隠れているかもしれないだなんて思って。

 

 〈ツクヨミ〉からログアウトをしようとしたその瞬間、視界の端に現れた白い人影に気が付いた。

 

 その恰好はまるでこの国における神道を踏襲したようなデザインで、荘厳。身にまとうただならぬ雰囲気と、その怪しい雰囲気からして……

 

「まだッ、まだ残ってたの――!!」

 

 明らかに、月人だ。

 

 戦闘中に見かけなかった姿だが、間違いない。ご丁寧に顔に腹の立つ能面なんかしやがって。化け物の様な恰好をして、こちらをバカにしているのか。

 

 まるでホラーゲームから引っ張って来たかのような、通常ではありえない造形はまさに先ほどまで切り裂いていた月の奴らにそっくりだ。

 

「――ッ!」

 

 武器を手慣れた操作で出現して、その月人に駆ける。今この身体を埋め尽くす、鬱憤を原さんとばかりに全身の力を武器に込めて振り上げる。

 

 その首をスッパリと断ち切ろうと――

 

 

「ちょっ、ちょっと待って!?」

「――えっ?」

 

 

 そして私は思わず、間抜けな声を漏らしてしまう。

 

 けれどもそれも仕方がないだろう。こんなことが起こるなんて、思ってもいなかったのだ。

 

 月人、いや、月人らしき存在は私が攻撃しようと向かったと同時、顔に張り付いていた能面を両手で必死に剝がそうとして、しかしなかなか剥がれない。何らかのノリか何かで張り付けたかのように強固に。

 

 しかし私がたどり着く前になんとか間に合ったのか、凄い音を立てながら面を剥がしきる。

 

 その、やっとのことで剥がした面の下から現れた顔は……。

 

 

 

「か、かぐや……ッ?!」

 

 

 

 つい先ほど月へと連れ帰られてしまったはずのかぐやのものであった。

 

「そんなッ!?」

「何でっ、かぐやちゃんはさっき、確かに!?」

 

 後ろの方から聞こえてくる驚愕の声。当然だ、私もそれくらいに驚いている。だってさっき見ていた光景は現実だったはずだ。VRの世界ではあるけれど、起きた事象については確かなことであったはず。

 

 だがそれでは帳尻が合わない。

 

 かぐやは確かに連れ去られた。けれどここにはかぐやが確かに居る。それはおかしい。計算が合わない。一から一を引けばゼロになるのが当たり前で、一のままであるのは道理に反している。

 

 でもそれじゃあ、さっき連れ去られたかぐやは……。

 

 かぐや、は――。待って、嘘。

 

 嘘、嘘、嘘ッ!?

 

 

「アレはまさか!?」

 

 私と同様の結論に達したのか、兄が後ろで大声で叫ぶ。他の人たちはまだピンと来てはいないようだけれども、私たちならわかる。いや、私たちだからわかるのだ。

 

 ここで何があったのかが。あの人がどんな行動をするのか、が。

 

 だって私たちはあの人の――。

 

 眼前のかぐやが驚愕に顔を歪ませる。

 

 かぐやはすぐさま泣きそうな顔をして、けれどそこで泣いていては何も始まらないと顔を一度横に振り……、肺を膨らませて……。

 

 

「ゆい姉がかぐやの代わりに月に連れて行れちゃった!!」

 

 

 この場所で先ほど、何が起こったのかを簡潔に叫ぶのであった。

 

 




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ようやくオリジナル展開が書ける……
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