〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~   作:すっごい性癖

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本日第二話です


帰って来たかぐや姫

 

「……で、どういうことか。ちゃんと説明してもらおうか?」

「あっはは……。彩葉ってば、顔こわいよ……?」

 

 目が覚めたら裸の女の子が部屋に居た、リターンズ。

 

 いったいぜんたいどういう訳なのか。一週間前にお別れをしたはずのお姫様が、なんでかここに居るのだけれども。

 

「いやさ? いつでも帰ってきていい、とは言った。ここがかぐやの家だとも言ったよ? 言ったけどさ」

 

 もっと、こう。あるじゃん?

 

 あれだけ互いに互いを惜しみ合って、しかし最後には納得の元行ったお別れだというのに、ふたを開けたら一週間で帰ってくるって。それ、一般的には帰省って言うんだけど。

 

「むぅ。彩葉ってば、愛しのかぐやちゃんが帰ってきて嬉しくないのぉ?」

「嬉しいとか、嬉しくないってか……。マジで意味が分かんない。一週間で帰ってくるとは思わないし」

 

 はぁ……、とため息をつく。

 

 別に私だって嬉しくないわけじゃない。いや、本当のことを言えば今目の前にかぐやが居ること自体はジャンプして叫びたいくらいには喜んでいる。

 

 だがそれ以上の困惑が私の感動を塗りつぶして邪魔をするのだ。「よっしゃあ!」って感情が「なんでやねん!」という感情に押しつぶされる。そんな感じ。

 

 しかしそんな私の困惑なんてどこ吹く風のお気楽お姫様。

 

 帰ってきて早々おねだりして、作らせやがったパンケーキをそれはそれは美味しそうに頬張っている。

 

 ホント、美味しそうに食べるなコイツ。もうすっかり、私なんかよりかぐやの方が料理は上手いだろうに。

 

「あ~ん。んぅ~~ッ! うまぁっ!」

「そーですか、そーですか。そりゃあ、良かったですねぇ」

 

 別に映画みたいな感動の再会がしたかったなんて贅沢は言わないけどさ。

 

 それでも、今生の別れだと思っていた私たちがこうして再び会えたのだから、互いに笑顔を浮かべながら抱き合うくらいの展望は持っていたって贅沢じゃないだろう。もう、何もかも遅いけど。

 

「……で? もう一回言うけど、どうやって帰ってきたの? しかも一週間で」

「ん~っとねぇ。何から説明した方が良いんだろうなぁ……」

 

 そう言いながら右手に握るフォークの先端を自身の唇に宛がいながら、思考をめぐらすかぐや。関係ないけれど、最初の頃はスプーンの握り方もダメダメだったのに、よく成長したものである。

 

「んっとね。まずは彩葉が勘違いしてることがあるんだけどさ。彩葉から見たら私は一週間で帰ってきたように見えるかもしれないけど、私的には地球に来たの数十年ぶりなんだよね」

「……はぁ?」

 

 何を言い出すんだ、この宇宙人。数十年って、そんな時間が立っていたらかぐやはどうだか分からないけども、私はすっかり老年の域に達して……。

 

 いや、私からしたら一週間ってことは――

 

「もしかして、タイムスリップでもして帰ってきたって言いたいの?」

「おぉっ! さっすが彩葉、かぐやの言いたいこと完璧に理解してくれるね~! そうそう、そうなの!」

「……マジ?」

 

 いや、断片的情報から判断するのなら確かにそうだとしか思えない発言であったのだけれども。自分で口にしておいて、未だに自分がイチバン信じられていないぞタイムスリップとか。

 

 いや、でもそもそもが月と地球との移動を行っている技術がある文明だ。タイムスリップもあり得なくはないのか? 高校レベルの知識しかない私じゃあ、正しい判断ができない。

 

「んっとね。あの後月に帰った私はさ、地球での記憶が消されちゃって元のお仕事をやらされてたのよ。エブリデイ、エブリデイ。社畜よ、社畜」

「かぐやが社畜って……。想像つかないなぁ」

「ね~? 自由でかわいいがアイデンティティのかぐやちゃんが社畜って、自分でもイミフ~」

 

 てかサラッと言われたけどあの後、地球での記憶が消されてたのか。

 

 そう言えばお姉ちゃんが入れ替わった時も羽衣みたいなものを被せられてから様子がおかしかったし。そういう道具が月にはあるのか……。

 

 怖ぁ。いや、というかお姉ちゃんの記憶が消えたままとかじゃなくって良かった。帰ってきて最初の頃のお姉ちゃんは大分ボーっとしていたけど、最近は元に戻っているし。

 

 ……あ。というか、コイツが一週間で帰ってきたから約束の『お姉ちゃんを叱る』ができてないや。いや、帰ってきてすぐやろうと思っていたのだけども様子がちょっとおかしかったし。

 

 いや、まあ今はそれは置いておこう。今はかぐやの話だ。

 

「んでさぁ、仕事してたんだけど……。そしたらある日、歌が聞こえてきたの」

「歌? それってもしかして……」

「うん。かぐやと彩葉の、約束していた歌だよ」

 

 その答えは身に覚えがある、というか身に覚えしかないといいますか。だってそれこそ、昨夜までずっと月にいるかぐやに届けと願いながら歌い続けていたのだし。

 

 ――そっか。ちゃんと届いたのか。

 

「それを聞いてさ、記憶をなくしてたかぐやなんだけど。『あっ、これっ、彩葉との約束した曲だ! 完成させてくれたんだ! 好き! 彩葉に会いたい!』ってなってその時に記憶を思い出したのよ」

 

 ……すごいな、歌の力。いや、失った記憶を元に戻す効果とか普通、無いはずなんだけども。

 

 ちょっと顔が熱い気がする。たぶん、気のせいだ。気にしちゃいけない。

 

「んでんで、記憶を思い出して彩葉に会いたくなったかぐやなんだけどね? また勝手に月を出てきたらおんなじじゃん?」

「それは……、そうだね。また月の奴らがかぐやを連れ戻しに来るだけになる」

 

 だってそれは前と何ら変わらないし。というかむしろ、前科一犯でもっとひどいことになっていたかもしれない。

 

「だからかぐや、ちょー頑張って仕事も全部終わらせてさぁ。そんでもって引継ぎも完璧に終わらせてきたんだ~」

「えっ、それってありなの?」

 

 かぐやが今言ったのって、つまりは職場を円満退職してきたってことだけども。あんな大掛かりなお出迎えをしてまで連れ去ろうとしたかぐやが、そんな簡単に仕事を辞められるの?

 

 えっ、もしかして月って超ホワイト労働環境なの? 引継ぎ資料の完成さえすればどんな重要な役職であっても辞められるって。

 

 てか、そんな作業やってる時間なんてあるのか? だって私の歌を聞いて記憶を思い出したというのなら、その作業は一晩で終わらせたことに……。って、あぁ、なるほど。

 

「そこでタイムスリップってことか」

「そーそー。速攻で仕事終わらせて、そんでもって引継ぎのアレコレやってたら気が付いたら数十年経っててさぁ。そのまま帰ってきたら彩葉、おばあちゃんじゃん?」

「仕事を終わらせるのと引継ぎ作業をやって数十年って……。やっぱ月、ホワイトじゃなくてブラック労働環境かよ」

 

 あ~、突然世知辛い話になって来たぞ。私もなんか、急に甘いものを食べたくなってきた。

 

 あむり、と一口だけパンケーキを齧った。蜂蜜が甘くておいしい。パンケーキ自体は市販の粉で作られた、誰が作っても同じ味であろう感じのモノだけども。

 

「彩葉がおばあちゃんじゃ楽しくないでしょ? だから過去に戻って彩葉と別れた直ぐ後に会いに来たってわけ! 月の超技術パワーのおかげだよ!」

「はー。月って、なんかすっごい」

 

 そもそもを考えれば、最初の時点でゲーミング電柱から赤ん坊、をやってのける技術力だし、それくらいはお茶の子さいさいなのだろうか。ダメだ、地球の技術力視点で考えると何世代も後の話過ぎて、よくわからん。

 

「いやー、それにしてもビビったんだよね~」

「ビビったって何に?」

 

 あっはは~、と気軽に笑いながら自身の頭を掻くかぐや。その仕草から、なにか些細なミスでもしでかしたのかな、と思い問いかけると……

 

「いや~、かぐやさ? 早く彩葉に会いたくって仕事終わったら速攻で地球にタイムスリップしたんだけど、途中に隕石があってさぁ。もう少し早く出発してたら直撃してたよ、アレ」

「はぁッ!?」

 

 思った以上のトンデモ発言に私はその場から立ち上がってしまう。

 

「ちょっ、かぐや大丈夫なの!? 隕石って――」

「あーうん、大丈夫、大丈夫。かぐやはこうして五体満足だからさ。あくまで、もう少し出発が早かったら危なかった、って話だから」

 

 どう、どう、と席に座りながらこちらに落ち着くように呼び掛けるかぐや。しかし、逆に何でそんな冷静なのか私には分からない。いや、どう考えても超ビックリ案件なんだけど。

 

 それが全然わかんなくて、私はかぐやに問いかけてみると――

 

「色々理由はあるんだけどさ。こうしてかぐやは彩葉に会えたから良いかなぁって、そう思うんだ」

「――っ」

 

 なんだ、それは。なんなんだ、その心の底から安心したような表情は。

 

 ……いや、そうか。

 

 私からしたらたった一週間ぶりの再会であっても、かぐやからしたら数十年ぶりの再会。彼女の口ぶりからして長命そうな月人であっても、やはり数十年と言う時間はそれなりに長いものなのだろう。

 

 だから、帰る途中のトラブルにびっくりしたとしても。それでも今は自身の喜びが上回っているのだ。

 

 それこそついさっきまでの、喜びを驚きが上回っていた私のように。

 

「それで言うと、ゆい姉には頭があがんないなぁ。かぐやが隕石に当たらないで帰ってこれたの、たぶんゆい姉が先に月に行ってたからだし」

「それは、そうかも。一か月分だけ、本来の予定とズレが生まれたってことだし」

 

 きっとそれは本人も狙ったわけじゃないんだろうけども。それでも確かにかぐやはお姉ちゃんに守られたのではないだろうか、って私はそう思ってしまう。

 

 あの人は突飛な行動や、向こう見ずな行動をするけれども。

 

 それでもやっぱり、私たちのことを第一に思って動いてくれる人だから――。

 

 

 

 

「……ねぇ、かぐや?」

「なぁに、彩葉?」

 

 私は一度席を立ちあがり、キッチンの方へ向かいながらやや大きな声でかぐやに声をかける。

 

 私は話をしながら二つのマグカップにコーヒーの粉を入れ、お湯を注ぎ入れた。

 

「それじゃあかぐやが月で過ごした数十年の話、私に詳しく教えてよ?」

 

 棚を開いて砂糖を取り出す。ミルクは引き出しの中にあったはず。私はコーヒーはブラックでいいのだけども、かぐやは甘い方が好きだったから。

 

 だよね? と、そういう確認の意味を持って私は彼女の方を向くと。

 

 かぐやはポケー、とした表情でこちらを見ている。いったいどうしたのか。そう思って、尋ねようとするも、先に再起動したかぐやが口を開く。

 

「――つまんないよ?」

 

 それは、かぐやのきっと本音なのだろう。

 

 だってわざわざ抜け出してまで地球に遊びに来たかぐやだ。かぐやにとって月での生活は本当につまらないものなのだろう。けども……

 

「それでもいいよ。教えて?」

 

 時間はまだまだたっぷりある。無かったとしても、今日くらいは時間を作ってもバチは当たらないだろう。

 

 ことり、と完成したコーヒーを机の上に置いて立ち上がった椅子に座りなおす。座ってなんだが、クッションとか持ってくればよかっただろうか。まぁ、いいか。

 

「それは、……なんで?」

 

 心底不思議そうにするかぐや。彼女の価値観にとって、月のことを聞いて来るだ何て意味不明なんだろう。

 

 でも、彼女はちょっとだけ勘違いをしている。彼女は私が『月』に興味を抱いていると思っているみたいだけれども。そうではない。

 

「だって、かぐやの全てが知りたいから」

 

 私が知りたいのは『月』なんかじゃなくて、『かぐや』本人なのだから。

 

 

 




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