〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~ 作:すっごい性癖
クソ短いです そしてエイプリルフールなのでこれを最終回と言い張る案も考えましたが、流石にここまで付き合ってくださった皆様を騙すには露悪的すぎたのでやめました
いったい全体何がどうなっているのか。私の知っている世界とのズレが日に日に大きくなっている。
最初はほんの小さな差異であったのに、今では決定的な差となってしまった。
「どういうことなの? 教えてよ……、彩葉」
私は結局、八千年経ったからってその本質はほとんど変わっていないから。こういう、論理だてて何がどうなって、今こうなっているみたいな推理は得意じゃない。
そういうのが得意だったのは……。私じゃなくって、大好きだったあの子の方。
「わかんない、わかんないよ……。私は、いったい誰なの?」
本来の歴史であるのならば、私はあの引退ライブの日に月へと帰っているはずだった。大好きな子と別れるのは悲しかったけども、それ以上に迷惑を掛けたくなくってさ。
楽しかった毎日の記憶も失っちゃって。ただ毎日、毎日、昔のように仕事だけをする機械みたいになっちゃって。
でも、そこで奇跡が起こってさ。愛しい人の歌声が、どこからか聞こえて気がして。失った記憶も取り戻しちゃったりもしてね。
もう堪らない、やっぱり会いに行きたい! ってなって、仕事も爆速で終わらせてさ。体感、今までの五倍くらいの速度でこなしちゃうくらいにパワフルで。
そんでもって、そんでもって……。
最後の最後にドジっちゃって。その結果、私は今ここに居ると言うのに。
けれど……。
「この時代の私は月に帰るのが一か月遅くなって……、その結果ドジることもなく無事に戻ってきている」
既にそのことは〈ツクヨミ〉のログイン履歴で確認している。そもそも、過去の私があの日に帰ることなく終わったときから、ずっと恐れていたのだ。あの日私が帰らなかったら、事故も何も起きないんじゃないかって。
だって、そうだよ。私の出せる最高スピードで仕事を終わらせて、安全確認もせず、出来る限りの速度で地球に戻る準備をして起きたのが私の事故だ。あれが私の出せる最高速度。
そして、私が私であるのなら。あの子のことを思い出したら絶対に、最高速度で仕事を終わらせるはずだ。
じゃあスタート地点を変えちゃったら、最高速度が同じな以上終着点も異なってくるのが道理ってやつだ。そんなのは小学生でもわかる、簡単な算数のお話。
一か月もあれば、トラブルの要因である……隕石なんて、どこか遠くへ移動しているだろう。
でも、それじゃあ。それじゃあ、さ……
「私は、誰だって言うの……?」
かぐや姫は月へ戻ってしまいましたが、地球の少女との美しい愛のおかげで無事もう一度帰ってくることが出来ました。二人はそれからも毎日仲良く過ごして、笑顔絶えない日々を送るのでした。ちゃん、ちゃん。
あぁ、なんてすっごいいいお話。私も、それがやりたかった。八千年前に思い描いていたハッピーエンドそのものじゃないか、って。そう羨む。
……でもさ。でもさ、でもさ?
この時代の彼女が戻ってきたんだったらさ? 私は……。
過去に戻ったかぐやである、月見ヤチヨはなんで存在しているって言うのだろうか。
「かぐやは月に帰って、そして地球に戻ってきて。今も彩葉と楽しく暮らしていて……。いいですね、ハッピーですね。……それで」
――私は?
過去の世界に戻っていないかぐや姫と、過去に戻ったかぐや姫であるこの私。
その両者がどうして成り立っているって言うの? かぐやは確かに今、ああして彩葉の横で笑っているのに。
じゃあ、じゃあ、じゃあ。私は誰なの? かぐやじゃないの? かぐやじゃなかったの? 自分のことをかぐやだと勘違いしているだけの、イタイ女の子でしかなったのかな?
いや、いや、いや。そんな事よりも、そんな事よりも。自分が誰なのか、ってことも大切だけどそれ以上に。
「――ずるいよ」
そんなのは、ずるいでしょ。おんなじかぐや――私が本当にかぐやなのかはもう、疑問的だけども――なのに、なんでこうも違うの?
あの子と私、何が違うって言うの?
あのかぐやは望んだとおり、彩葉と無事会うことができて、幸せな生活をしていてさ。私なんて、何回も彩葉を手放してきているっていうのに。何回も、何回も彩葉を失ってきているのに。
そんなのは、ズルじゃん。ズルっこじゃん。
それもこれも全部、全部……、
「酒寄結葉って誰だっていうの!?」
知らない。私は知らない。酒寄結葉なんて存在、私は知らない。
私の時には居なかった。自分のお姉ちゃん的な振る舞いをしてくれて、甘やかしてくれて、いろいろ褒めてくれて、いろいろ買ってくれて、そして――。
最後の最後に私と彩葉とを救ってくれたようなそんな人、私の時には居なかったのに。
あぁ、もう。本当に何もかも分からない。まったくもって、何が起こったのか、今はどういう状況なのかわからない。
AIライバーなんて名乗って来たけど、その真実はただの一人の女の子だから……。シャーロックホームズみたいなすべてを照らす名推理はできないんだよ。
そしていつも、私に出来ないことを嫌だって最初は言いながらも、結局やってくれた。そんな優しい子が、私は大好きで……
「助けてよ……彩葉ぁ。私は、誰なの……?」
――答えはまだない。彼女の部屋の扉は開かない。しかしそれでも変わったものは一つある。
『……』
そんな辛そうな主の姿が見ていられなかった八千年もの忠臣が、そっとその部屋から姿を消した。
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なお明言しておきますが、この物語はハッピーエンドを目指しています