〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~   作:すっごい性癖

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本日第二話です

もう後二、三話で最終回だと思います

今回短めです


FUSHIを追いかけ三千里

 

「ちょっ、ちょっと待ってよFUSHI! いったい何事なの!?」

「うるせえ! 黙ってついてきやがれ!」

「うぇえっ、FUSHIも彩葉も速いよ~~!」

 

 目の前を駆けていくFUSHIに振り切られぬよう、全速力で追いかける。あの小さな身体でなんという速度だ。下手したら自転車よりも速いのかもしれない。

 

 事の発端は今から数十分ほど前。かぐやが帰ってきた翌日、二人で〈ツクヨミ〉にログインしていたときのこと。

 

 突如現れたFUSHIが「ついてこい!」と、それはそれは尊大な言い方で私たち2人に告げたことがスタートの合図となったのだが……。

 

「ねぇっ! 私たちは何処に向かってるのっ!?」

「着けばわかる!」

「さっきからそればっかりじゃん!」

 

 ……と、何が何なのか一切の説明はないままだ。なんで走っているのかも、どこに向かっているのかも、何もかもが不透明。

 

 けれど、これは恐らくヤチヨ関連の話だと私は踏んでいる。理由は二つ。

 

 そもそも、FUSHIがこんな風に私たち個人に会いに来ること自体があり得ないと言うのが一つ。過去にあったどんなイベントでもこんな例はなかったし、そもそもリアルで移動なんてこと自体が妙だ。

 

 そしてもう一つの理由なのだけれども……。

 

(最近のヤチヨの配信は、ちょっとおかしかったよね)

 

 〈ツクヨミ〉の世界ではその世界の管理人であるヤチヨの配信が絶えず流れている。大きな町の、おっきなスクリーン。小さな路地裏の小さなモニター。大小問わず、〈ツクヨミ〉の、文字通りどこででも見られるのが管理人であるヤチヨの配信。

 

 当然、ヤチヨだっていつも配信をしているわけでは無いから、配信がない時間帯は過去のアーカイブ映像を再放送しているのだけれども……。

 

(最近の放送はほとんどが再放送だった……)

 

 かぐやの引退ライブの頃からだろうか。日に日にヤチヨのリアルタイムの配信が減少してきて、過去のアーカイブばかりが流れるようになり出したのは。

 

 自他ともに認める配信好きのヤチヨにとってこの事態は、本来あり得ないことだろう。一日に二回、三回の配信だって当たり前だった彼女だ。流石におかしい。

 

 だから、何かあるとしたらヤチヨ関連だと私は思うのだ。

 

 ヤチヨにはこの一か月近く、かぐやの引退ライブやなんやとお世話になりっぱなしであった。ライブ会場の用意もそうだし、お姉ちゃんのお願いもそう。それに裏で月人の対応も大分忙しそうであったのを覚えている。

 

 ならば今、ヤチヨが困っているというのならば力にならなければならないだろう。

 

(――とか、言っちゃっても。ね?)

 

 力にならねば、とか。そんなカッコつけなくてもね。

 

 ヤチヨの大ファンである私がヤチヨの身に何かがあると知って、何もしないなんてことの方が無理ってだけなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家を出て三十分ほど経っただろうか。途中、電車にも乗ってなかなかに移動してきたのだけども……。

 

 辺りは繁華街と言うよりは住宅街と言えばいいのだろうか。

 

 右に、左にと入り組んだ道を曲がりに曲がって、路地の奥へとやって来た私とかぐやとFUSHIの二人と一匹。マンションやアパートが並び立つ、住宅街よりの場所。

 

 私たちはとあるアパートの前までやって来ていた。

 

「――えっ、ここって」

 

 ピタリ、と私は足を止めたどり着いた建物を見上げる。

 

 いったいなんで。コレは、おかしくないか?

 

 そういった思考が脳内を埋め尽くす。

 

 私はFUSHIに着いてやって来たはずだ。別に自分の意志でここに来たわけではないのに。なんで、ここに……。

 

「おいっ、なにボサッとしてやがる!」

「あっ、ごめん!」

 

 しかしそんな私の呆けた状態にイラついたのか、FUSHIはぴょんっ、とその場で大きく跳ね上がりながら、こちらに大声で怒鳴りつけてきた。

 

 私はそんなFUSHIの姿に押されるように、自身の疑念を押しのけて彼を追って階段を上る。

 

 

 

 

 

 

「……ここで良いの?」

「あぁ、入れ」

「ねぇ、彩葉。このアパートって……」

 

 あぁ、やっぱり。かぐやも疑問に思っているようだ。すごく混乱した顔をしている。

 

 確かに私も何が何だかさっぱりだ。どうしてFUSHIに着いてきて、このアパートにたどり着くこととなるのだ。都内に賃貸何て、それこそ無限にあると言うのに。

 

 代表して私がFUSHIの案内した部屋の扉のドアノブを握る。ドアには鍵も何もかかっておらず、いとも簡単にノブが回った。

 

 先にうっすら開いたドアの隙間からFUSHIが部屋の中へと入っていく。当然、私たちではそんな僅かな隙間では部屋に入れないから、さらに扉を開いて……。

 

 

 

「――え?」

「ウソ……。アレが、なんでここにあるの!?」

 

 

 室内は日中だと言うのに真っ暗で、カーテンも閉め切られており光源と呼べるものは仄暗く光る部屋の中央に置かれた水槽くらい。

 

 

 

「水槽の中に……、たけのこ?」

 

 

 

 まるでSFの世界に飛び込んだかのような配線に彩られたハードの世界。あちらこちらに置かれた機材が何の役割を果たしているのか、高校生でしかない私にはわからない。

 

 モニターらしきものがある。コードらしきものが伸びている。あれは、パソコンか? あっちのゴツい機材は全くわからない。マイクっぽいモノも、おいてある気がする。もしかしたら違う機材かもしれないけども。

 

 ――この光景を見て、何を言えば良いのか私はわからない。いったいどんな言葉が正解なのだろう、この場では。

 

 ……それがわからなかったから、私は代わりにこの建物に着いてからずっと抱いていた疑念を口から放った。

 

 

 

「なんで、お姉ちゃんの住んでいるアパートにこんな部屋があるの……?」

 

 

 

 私はブルりと、身体を震わせるしかなかった。

 

 




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