〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~   作:すっごい性癖

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本日二話目の投稿です

かぐやが来る前の二人はこんな生活をしていましたよ~、といった感じの番外編

※やおよろ→ヤオヨロに直しました また、時系列を勘違いしていたため夏の祭典から冬の祭典に移動させました 申し訳ありません


番外編
ヤチヨ・ノ・コスプレ!


 

「だ~か~ら~! ヤチヨは! そんなんじゃないって! 何度言わせるの!」

「あぎゃーっ!?」

 

 それは冬が猛威をふるいだす、少しだけ前。雪は降ることないけれど、肌を突き刺す寒さは毎日続くそんな日々。

 

 私と彩葉は来るマーケット的な祭典に向けて、それはそれは過酷な一日を過ごしていた。

 

「うぅ……。彩葉ったら暴力的ぃ……」

 

 先程キツく締められた帯を緩めながら、よよよ、と泣いたふりをしながら振袖で目元を擦る。腹部、というかもろに胃が締め付けられたからかとんでもない声が出た気がするが気にしない。

 

「お姉ちゃんが悪いんだからね! ヤチヨのコスプレする、って言ってるのに全然ダメなんだから!」

「ぐす……」

 

 妹がいつになく厳しい……。なんでこんなことに、って、まぁ私のせいなんですけどもさ。

 

 ――すべての事の発端は二か月ほど前だっただろうか。

 

 知り合いの同人作家にAIライバー、月見ヤチヨの本を出すから売り子をしてくれないか、と頼まれ了承した私こと酒寄結葉。

 

 せこせことその日から人物把握のためにヤチヨの配信を見るようにし、同時進行で衣装の作成をする日々をかれこれ少し前まで。満を持して衣装が一週間前に完成した……、までは良かったのだけれどもね。

 

 せっかく完成したのならばどれくらいの出来なのか。それを確かめる為に自他ともに認めるヤチヨの大ファン、酒寄彩葉にコスプレチェックをしてもらおうと連絡をしたのだけれども。

 

『……バカにしてはるん?』

 

 それはそれは冷たい声で言われましたよ。ひっさしぶりに聞いたよ、彩葉の方言。正直な話、泣きそうになったしさ。やっぱり彩葉もお母さんの娘だよ。絶対、それ言ったら口きいてくれなくなるだろうけども。

 

 そりゃあ私にも自覚はあったよ?

 

 私はこれまでやって来たコスプレは自分が好きで、自分がやりたいから、ってキャラクターを選んできていた。あのアニメのキャラクターが好き、このゲームのキャラがたまらない! なんていう選定理由。同人活動なんて、みんなそんなモノだろうけどもね。

 

 それに対して今回はスタート時点ではまったく知らない人物のコスプレだったわけだから、人物の読み込みが甘いって言う自覚はあったし。付け焼刃も付け焼刃、大ファンからしたら目につく粗はいくらでもあるだろうさ。

 

 けどさぁ……。

 

 総評として、『ただヤチヨの服を着ているだけのお姉ちゃん』とそりゃあすっごい酷評でしたよ。はっきり言って今でもトラウマです。

 

 それからは彩葉は『このままじゃ世に出せない!』とそりゃあもう猛りに猛って……。  

 

 結果として、私の月見ヤチヨコスプレに妹の完全監修が入ることになったのだけれども。

 

「まずさぁ、体型が全然ダメ! ヤチヨはそんな下品なソシャゲみたいに胸大きくない!」

「実の姉の胸に向かって下品って言わないでよぉ……」

 

 家系的には私は確かに大きく育った方だとは思うけどもさ。それでもまだ人並み、普通の範疇じゃないでしょうかね。

 

「というか、ヤチヨの体型って調べてもよくわからなかったんだよねぇ。だからイラストやモデルの視覚的情報から作ろうとしたんだけど……。媒体ごとにブレがあってさぁ」

 

 私だってコスプレイヤーだし、原作に寄せようと最大限の努力はした。しかし幾ら検索エンジンを走らせても、これだ! という正確な情報は一切なくて、公式からの供給からおおよそのサイズを見て取ろうとしてみたけども、それもうまくいかなかったし。

 

「ヤチヨの体型は普通に発表されてるけど」

「えっ」

 

 どこで……? 

 

 私、めっちゃくちゃ調べたんですけど。それっぽいサイトを踏んでは無収穫、踏んでは無収穫。果てには意味ないと解っていながら『月見ヤチヨの体型は? 年収は? 結婚している?』的な胡散臭いブログも開いたけど収穫ゼロだったんだけれども。

 

「ヤチヨがデビューして最初の頃の雑誌のインタビュー」

「調べても出てこないよ、そんな古いの!」

 

 というか、逆になんで彩葉は知っているのか。普通に調べてもそれらしい情報は上がってこなかったというのに。

 

「……まぁ、公式情報があるならそれに合わせるよ」

 

 女性コスプレイヤーにとって胸が小さい、大きいは割と死活問題といいますか、古くからのイチバンの敵であった。あのキャラになるには足りない、このキャラになるには大きすぎる、なんてのは何処でも聞く話題。

 

 おかげで今日ではいくらでもそれ用のアイテムを探せば何とかなってくれるし、先人さまさま、というお話だ。

 

「まぁ後は身長がヤチヨより高いけど、それはどうしようもないから置いておいて……」

 

 まぁ身長の高低もどうにかしようと思えばできなくもないんだけれどもね。ただ、それをするにはちょっと時間が足りないかな。

 

「あ、お姉ちゃん。当日まで可能な限り身体絞ってね?」

「なんで!?」

 

 お姉ちゃん、そんなに太ってるかな!?

 

 流石にコスプレイヤーとして、人様の前に出るのだから気を付けているんだけれども。

 

「いや、ヤチヨコスをしているお姉ちゃんを見て『あっ、月見ヤチヨって思ったより……』って勘違いをする人を一人でも減らさないといけないし……」

「お姉ちゃん、妹の推しへの愛が怖いよ……」

 

 流石にコスプレを見て元の人物に思いを馳せるような人なんて居ないと思うのだけれども。

 

 ……いない、よね?

 

「あとは声と喋り方はマストかなぁ。あの天性の魅惑の声と喋り方がなくては月見ヤチヨとは言えないよね」

「無理をおっしゃらないでください……」

 

 コスプレイヤーはどこまで言ってもコスプレイヤーなんです。モノマネは別畑なんです。あんな声、どうやったって出ません。声帯を何回手術しても絶対出ません。

 

「わかんないじゃん、ほらほらこれ見て」

 

 すっ、と横からタブレット端末を取り上げ彩葉が少し操作。こちらに画面を向けてきたかと思うと

 

『ヤオヨロー、神々のみんな。いつもニコニコ、ヤチヨだよ~♪』

 

 何かの配信のアーカイブか何かなのか。配信画面の真ん中で揺れながら彼女と言えば、の挨拶をする件の人物、月見ヤチヨ。

 

 確かにいい声だし、この独特の喋り方も癖になる。この二か月、彼女の配信をコスプレの為に聞いていたが、その短い時間の中でも虜になりかけているくらいには魅力的だ。

 

 しかし、だからこそコレのマネは無理だってわかる。

 

「ほら、やってみて?」

 

 けれども私のて以降なんてなんのその。妹様は私めの意見など聞く耳持たず、モノマネをしろとおっしゃってくる。本物の後にやらせるって、どんな罰ゲームですかね。

 

 ……。

 

 ただずっと黙っている訳にもいかないし、このままでは話が進まない。もともと、彩葉を頼ったのは私なのだし、彩葉がやれっていった事には従わなければ。

 

「や……、や、やっ」

 

 口を開いて、初めの音を探る。可能な限り、自分の喉から出せる最大限の月見ヤチヨを探っていく。

 

 その作業は正しくチューニング。見つけたような、見つけてないような。ヤチヨが喉に居たと思ったら、居なくなってるし、そもそも居たのが錯覚かもしれないし、もしかしたらずっとそこに居るのかもしれない。

 

 結論、よくわかんない。

 

 しょうがないから、自分の中でこれがヤチヨっぽいかなぁ? って感じの声帯の締め付け方を選んで声を出してみる。

 

「……やっ、ヤオヨロ~……」

 

 ……。

 

 …………。

 

 ……………………。

 

 暫し沈黙が私と彩葉との間に流れる。

 

 私はその時間が永遠かのように長く感じる。気まずい時間というのは、どうしてこんなに伸びて感じてしまうのか。

 

 いやもしかしたら実際に長い時間、二人は黙っていたのかもしれない。

 

 かたや、やったことないモノマネへの羞恥心で。かたやそれを聞かされたゆえの行動停止で。

 

 ――しばらくして、彩葉は感想がまとまったのか口をゆっくりと開いていく。口角が上がって、赤い口内が露わに……。

 

 

 

 

 

「ダメだね、全然」

「知ってたよ!!」

 

 

 

 

 ――その日は結局、彩葉指導の下のヤチヨのモノマネ講座が始まり、終わったのは最初のモノマネから十時間後のこととなるのであった。

 

 

 

「やっ、ヤオヨローっ!」

「色気と神秘さが足りない! もう一回!」

 

 




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