〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~ 作:すっごい性癖
「そういえばこの家の中で寿命あるのって彩葉だけだよね~」
「あ~、そういえばそっか~」
リビングでかぐやちゃんとゲームをしていたのだが、唐突に思いついたのか彼女はそう発言。私も確かに~、と同意の言葉を零しながら、地方の物件を買い占めた。収益が倍になるのはとても美味しい。
「……なんか人外みたいな会話してるし」
「おっ、彩葉も降りてきたなぁ。勉強終わったの? 一緒にゲームやる?」
「やんないし、終わってない。喉渇いたから来ただけ」
「ちぇーっ」
かぐやちゃんは最愛の彩葉がやってきたからか立ち上がってテンション爆上げ! みたいな感じでしたが、相手にされずぶーっ、と頬を膨らませている。
この子、みんなにやさしい子、オタクにやさしいギャル、みたいな感じに思われてるけど割と反応で好き嫌いがわかるんだよね。基本の好感度が高いから表に出にくいけど、割と根っこは辛辣って言うか。
言っちゃうとメチャクチャ彩葉の前だけでは猫かぶっちゃうし。声のトーンも上がっちゃうし、動きもぴょんぴょん、とそれこそウサギみたいに可愛くなる。いやまぁ、高感度高い相手に対応が変わるってのは当たり前なのだけれどもね。
逆にお兄ちゃん相手だとそれっぽさ前面に出てくるし。主に言葉遣いとか、対応とかで。
そう言う点で言うとヤチヨもそういうところは全然変わっていないんだよな。ただ被っている猫の皮が八千年で磨かれに磨かれて、先入観無しではまったく気が付かないってところだけども。好きな人とそうでない人との扱いの差はかぐやちゃんそのものって感じだし。本人だから当たり前だけど。
……と、思考がズレていた。今はかぐやちゃんの乙女フォームについての話じゃなくてあくまで私たちの寿命の話であったか。
「まぁ彩葉の言う通り、私たちみんな人外みたいなものだしね~」
「そーそー。かぐやは月生まれのでしょ~、ゆい姉は身体が機械だし~」
そうそう。それで後は……。
と、続けようとした時、近くに置いてあったモニターがブレ始める。この感じは……、聞いてたな?
「私とヤチヨは情報生命体みたいなものだしね」
「ヤッチョは八千歳のAIライバーで~、イロは八千歳の大ウソつきだもんね~」
「うぇ、ヤチヨってばもしかしてまだ許してくれてない?」
「ん~~? 何のことか、よくわかんないな~。八千歳にもなるとボケちゃったのかも♪」
ぶぅん、とそれらしい音を立ててモニターに浮かび上がった二人の人物像。配信者のライブ画面のように3Dのモデルの上半身が浮かびながら、左右に揺れて楽しそうに話している。まぁ片方は相方のブラックジョークに困惑しているけども。
「も~、二人とも聞いてたんだったら一緒にゲームしてくれてもよかったのに」
「そーだー! 二人で百年設定はハッキリ言って無謀だったって後悔してるんだから!」
このゲームってほとんど最初の十年で決まるって言うか、最初に差が付けられたらもう巻き戻せないしなぁ。それもプレイヤーが二人となると足の引っ張り合いも起きないし、一度天秤が傾いたら反対側にはよほどのことがないと傾かない。
つまりは残りの九十年はほとんど何も変わらない惰性のものになるわけで……。だからこそかぐやちゃんも私も、降りてきた彩葉に新しい刺激を求めていたのだけど。
「しかしそっかぁ、寿命かぁ……」
話題になって今更自覚したけども、そう言えば私ってば寿命と言う寿命が無いんだった。イロがそんなことを言っていたけども、ちょっと実感がなかったなぁ。
寿命、ないのかぁ私。死なないんだ、老衰じゃ。
……。
「…………なんか、怖くない?」
いや、なんかっていうかメチャクチャ怖い気がしてきた。
「私ってばついこの間まで普通に大学卒業して、普通に就職して、普通に働いて、普通に結婚して、普通に子供を産んで、普通におばあちゃんになって、普通に死んでいくって思ってたんですけど」
「おぉう、やけに普通を連呼していたなぁ」
そりゃあそれが私のアイデンティティだったしね。私=普通。それが絶対的な等式で生きてきていたし。
「えっ、私って死なないってことはつまり不老? じゃあ私の人生設計どこかおかしくなって、就職した後は一生社会の歯車? 退職することなく、永遠に社員Aとして生きるの?!」
「永遠に社員をしているんならせめて社員Aじゃなくてもっと出世してる妄想してよ」
「無理ぃ~~」
自分が出世している姿とか、想像できないし。ずっと部屋の隅っこでコピー取ってるイメージの方がよっぽどピッタリな私じゃないですか。最近のミスの多さを思うと首になっていないだけセーフな気もする。
「まぁ、長寿もそんな悪いモノじゃないよ? ねぇ、ヤチヨ?」
「まぁねー♪ ヤッチョはどこかのおバカさんが姿を隠すまではずっと大好きな人と一緒に居れたから楽しかったな~」
「やっぱりヤチヨ、まだ怒ってない!?」
「あははっ、まさかー」
画面内では二人が姦しく騒ぎ合う。二人はやっぱり八千年と言う時間を過ごしてきたからか普段はどこか飄々とした、まるでアニメの上位者の様な振る舞いをするけども、こうして蓋を開けるとやっぱり彩葉とかぐやちゃんのままだなぁ、と実感させられた。
いやまぁ、ヤチヨの言ってることもわかるのだけどもねぇ。
「それってヤチヨとイロの二人が居たからじゃん……。私はこのままだと……、ひぇえ……っ」
ずっとそのまま私だけ一人で一生生きていくところを妄想して、か細い叫び声をあげる。別に結婚願望がある、とか、恋愛がしたい、ってわけじゃないけども一生一人で生きていくとか怖すぎない?
なんなの、私ってば実は仙人かなにかだったの? 霞で生きていく系女子を狙うべきかな。いや、もう二十を超えて女子を自称するのは痛いだろうか。
……もう何もかもが世知辛いなぁ、と思ってしまう私であった。
「まー大丈夫だよ、ゆい姉が一人のままでも私とイロとヤチヨはいるしさ? それよりも問題は……」
「……へ? 私?」
とんとん、とコントローラーを置いたかぐやちゃんが私の背中をさすってくれ、背中が何だか暖かい。その温かさに励まされて私は視線を上に向けると、かぐやちゃんは彩葉とじっと見ていた。
「彩葉もこっち側に来ない~? 永遠の美しさが手に入っちゃうぞ~?」
「さっきから発言がイチイチ魔王側なの何なの!? ってか、私人間辞めたくなんだけど!」
「え~~ッ! でもこのままじゃあ私と彩葉だけ百年後とかにお別れだよ!? よぼよぼおばあちゃん彩葉とピチピチギャルかぐやちゃんでお別れ! いいのっ、それで!?」
そう言いながら「バッドエンドはんたーい! 死に別れ、デッドエンドはもれなくバッドエンドだ~!」と叫ぶかぐやちゃん。
言葉尻じたいはすごく気楽な、普段の軽口のようなモノ。
けれど私だけは気が付いている。これはきっと彼女の本心に近い言葉なのだ。普段表に出さない彼女の不安の様なものが少しだけ顔を出している。
だって先ほどに比べて、私の背を摩る力の強さが何倍にもなっているのだから。不安を押しとどめようと、力んでしまっているのだろう。
……まぁ、だがしかし
「でもさ、彩葉もまだまだ高校生だし。この先の話は早いよ~。来年のことを言うと鬼が笑うらしいし、そんな先のことを話してたら鬼さんも笑い死んじゃう」
そんなすぐさま決めることでもないし、そもそも決める必要がある話題でもない。いつかはきっと落ち着くべきところに落ち着く話題だろう、こんなもの。
だってなんだかんだいって人生は長いんだから。
「かぐやちゃんを拾ってからまだ半年もたってないしね~。まだまだ先はあるよ~」
そうそう。そんな、人生の終わりに眼を向けるよりも今は……
「彩葉は進路の方が先だもんね~」
「……もうっ、ヤなこと思い出させないでよお姉ちゃんってば」
「えへへっ。ごめーん」
高校生活の終わりに眼を向けていた方が、いくらから有用ってモノなのだろう。たぶん、おそらく。コッペパン一個分くらいは有用なはずだ。
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