〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~ 作:すっごい性癖
中途半端ですが温泉会は今回でおしまいです この話の後はみんなで夜ご飯を食べて、川の字で寝て、お土産買って帰ったと思っていただければ……
「ふぁ~、生き返る~……」
「止めてよお姉ちゃん、歳よりくさいよ」
湯の中に身体を沈ませ、自然と漏れ出た感嘆の声。長時間の運転で悲鳴を上げていた腰が今はなんだか心地いい。ポカポカ、ジクジクと責めてきているようで甘い快感。酸性寄りの泉質なのか肌がピリピリするこの感覚も気持ちよさを加速させる。
まるで全身を直接邸刺激でマッサージされているような気分でどうしても声が抑えられない。
けれどもそんな私の様子がおばあちゃん風に見えたのか彩葉からは不評の声が上がりました。
「いやぁ、そうは言うけど彩葉さぁ。コレは我慢できないってぇ……。ん~、きもちいぃ……」
「ありゃりゃゆい姉、温泉の熱で溶けちゃったみたいになってる」
「昔からたまに人っぽい挙動してないな、って思ってたけどさ。ネタを知っているとマジで溶けてたのか、ウチのお姉ちゃん」
うへぇ。そう言えば前々から彩葉から「お姉ちゃんはたまにバグる」とか言われてたっけねぇ。かぐやちゃんにも「どっちが宇宙人か分からない」って言われたし。ヤな伏線回収だぁ……。
『私、そんな機能つけたかなぁ……? 胎内回帰用の設定がバグを起こしているとか?』
『ん~。今更ながらに思うけど、イロの計画って大分猟奇的だったよねぇ。ヤッチョ、八千年過ごしたパートナーなのにイロのこと全然分からないかも』
そう言えば私が生まれたときって一度お母さんのおなかの中に入っているはずなんだよね。それなら確かに身体を小さくしたり大きくしたりする機能も含まれていたのかもなぁ。
ちょっとそこら辺の絵面を想像するのは苦しいモノがあるから、今は考えるの止めておこうかなぁ。今は目の前の温泉が第一。
それにしても私って見方によってはお母さんと彩葉との間の娘になるの?
やばぁ……。
「うっへへ、こんだけおっきいお風呂だと泳げちゃうねぇ」
「あ~もう、やると思った! みっともないからやめてよね、かぐや!」
「え~? 彩葉も一緒に泳ごーよ? きっと楽しいよ~」
「やらない」
そう言ってかぐやちゃんの誘いを断る彩葉。困った娘だ、とこちらに同意を求めるように目くばせをしてくる。そう言う振る舞いは、なんだか子を持つ親みたい。女子高生にして子持ちの風格。
しかし温泉で遊泳かぁ……。
「ん~……。あんま良い事じゃないけど閑散期なこともあって私たちしかいないし、人が来るまでならいいんじゃないかな? あくまで、人が来るまで、だけどね?」
そこのところは気を付けてね? と脚をパシャパシャとバタ足させているかぐやちゃんに聞けば「はーい!」とそれはそれはいい返事。ウチの子は素直なところが可愛いのですよ。
『ね~ね~ゆい姉? ヤッチョも泳ぎたいなぁ……?』
「あらら、ヤチヨも?」
脳内で人差指を口元にやりながら「私、羨ましいです!」とアピールする我が家のかぐや姫、その二。八千年の時を経て落ち着きを得てはいるけども、やっぱり根っこの部分はかぐやちゃんの頃から変わってないのだろう。
そういえばコスプレするために見せられた配信でもだいぶ好き放題やっていたしなぁ。もしかしてこのお姫様、声や見た目でお淑やかに思わさせられていて、中身はだいぶファンキーなのでは?
しかしまぁ、可愛い妹がいうのであれば仕方がない。お姉ちゃんは妹に甘い生き物なのだ。基本、どんな時も。
『はい……、これで身体の所有権がヤチヨに移ったでしょ?』
「ん~! ありがと、ゆい姉!」
そう言う訳で私は自身の身体の所有権を一時的にメモリ内のヤチヨへと移し替える。
瞬間私の髪色は彩葉とお揃いの黒髪からヤチヨ由来の白髪へと移り変わった。天然ロープライスコスプレである。中身が本物の場合、コスプレと呼んでいいのかは微妙だけども。
「ほらほら、彩葉も一緒に泳ごう? かぐやとヤッチョも一緒だから恥ずかしくはないですぞ~?」
「うへっ!? あっ、あのそのっ……。えっと……」
一時的に身体を獲得したヤチヨは彩葉へと向かいその両手をとって遊泳のお誘いをした。彩葉はそんなヤチヨ相手に顔を赤くしながらしどろもどろとしている。
『あちゃあ、推しの突然供給で頭がパンクしちゃってるよ……』
『幼い自分ながら情けない……』
そんな彼女の顔を私とイロは脳内で観察しながら品評会。メモリーの中の視界と言うのは大スクリーンに映る映画みたいな感じなので、半ばリアルでの視界よりも壮大。だからこそ妹の限界顔も大アップで、なかなかに見ごたえがある。
「ね? 泳ご、彩葉?」
「はひっ……。泳ぎましゅ……」
結局簡単に落ちてしまった我が家の妹の幼い方。顔は真っ赤で瞳にはハートマークが浮かぶほどにデレデレだ。かぐやちゃん=ヤチヨの構図を得てもオタクはそうそう治らないらしい。
しかも隠そうとしながらも視線がチラチラと顔から下の方へ向けようとしているのが丸わかりで……。
『妹よ、勘違いしちゃうのはわかるがその身体は私のモノなんだ……』
『情けな……』
その顔から下の――いや、そもそも髪を除いて顔自体もなんだけども――首や胸や腰や脚も全部姉由来のボティパーツなんだ。多分、後で後悔するのは彩葉だからそこら辺にしておきなさい。実の姉の身体に限界化していたって、多分だいぶダメージデカいぞ。
……というか、私ちょっと前にヤチヨのコスプレした時に胸がどうこう、と彩葉からかだいぶ指摘されたんだけども。中身が本物なら解釈違いは起きないと言うことですか。納得いかぬ。
「む~! 彩葉ってば何ヤチヨにデレデレしてるの!? かぐやちゃんっていうこんな可愛い娘を放っておいて!」
「あらら~、ジェラっちゃったかな~?」
デレデレしっぱなしの彩葉にカチン、と来たのか泳ぐのを止めてざぶん、ざぶんと湯を掻き分けて向かってくるかぐやちゃん。そのままガシリ、と彩葉の左腕を掴んで引っ張っている。
『おーおー、彩葉ってば両手に華だぁ。にっくいねぇ?』
『…………』
『あらま、こちらにもジェラってる子が一人ですかぁ』
そんなかぐやちゃんの様子が面白かったのかヤチヨが彩葉の右腕を引っ張って状況はまさに「この子は私のモノ!」みたいな感じだ。二人の女の子が一人の女の子を奪い合っている様子。
そんな大好きな子が二人とも奪われちゃったみたいな光景にムスー、としている娘の様子は可愛らしいけれどもちょっと寂しそう。対象が自分自身とはいえねぇ。過去の自分自身に嫉妬する何てだいぶレアケースな気もするけど。
『しゃーないねぇ。役者不足かもしれないけど、お姉ちゃんがさびしんぼのイロを慰めてあげましょう!』
『うぇっ!? ちょっ、お姉ちゃん!?』
『ほらほら、恥ずかしがりなさんな~。ほれほれ~』
ぎゅう、とメモリー内の情報体とは言えそれでも身体の様なモデルは獲得している私たち。やろうと思えばこうやって抱きしめるのだってなんでもない。
まぁイロは暇さえあればヤチヨと触れ合っているから当然、知っているだろうけども。
『ん~、イロは温かいねぇ、やわっこいねぇ~』
『情報体のままじゃまだ感覚とかわかんないでしょ!』
『まーまー。そこはフィーリングってヤツだよ~』
そう言えば彩葉やかぐやちゃんはこうやって抱きしめる機会はあったけども、イロを抱きしめるなんてことはなかった。
イロはこれまで私の裏側に隠れるように存在してきていたし、一緒に生活するようになっても私がこちら側にやってくること自体があんまり無かったし。
そう言う意味でもせっかくの機会だ。ここは役得として楽しませてもらおう。
『ほら、イロ~。イロもお姉ちゃんに甘えな~』
『……はぁ。今更だけどなんでこんな人格に育っちゃったんだろう。私の身体がベースなのに』
いやぁ、それは自分でもそう思うけどもね? 多分それは彩葉が可愛かっただろうなあ。
昔っから妹に嫉妬してしまっていた私だっていうのに、それでもお姉ちゃん、お姉ちゃんって懐いてくれていたのが彩葉だから。あんな純粋な子を嫌いになるなんてありえない。一番こじらせていた頃も、苦手ではあったけど嫌いではなかったし。
つまりは、まぁ――
『一周回って自業自得だから、黙ってお姉ちゃんに可愛がられなさいな~』
私はそれはそれはイロをもみくちゃにしてやりました。
「む~……」
「ヤ、ヤチヨさん? なんかすっごい顔をしていますけども……?」
「なんでもないっ!」
「そう……?」
「むぅ、浮気者……というにはヤッチョが煽ったのが悪いんだけども、あっちはあっちでお楽しみみたいだなぁ。しゃーない、それじゃあ三人で泳ごうか~」
「おっ、ヤチヨもやる気みたいだねぇ。よっしゃ、誰が最初にあっち側に着くか勝負だ。んじゃ、よーい、ドン!」
「あっ、ちょっとズルいよかぐや!」
「あははっ、そんじゃあ彩葉はヤッチョとゆっくりゴールを目指しますかぁ」
「……そだね」
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