〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~ 作:すっごい性癖
この中編は基本的に彩葉が主役となります(本編で見せ場を結葉とかいうヤツが奪ってしまったので)
タイトルに深い意味はありません
……あと、本編よりも百合要素強いので苦手な人はご注意を
「ね……、…………は?」
私は結局、彼女のことをどう思っているのだろう。あの月から来た、太陽の様な女の子のことを、私の心はいったいどう捉えているのか。
それが私自身わからない。
「ねぇ、い……は?」
好きなのは、そう。あの日、彼女が月へと帰ってしまった日に自覚したけども、私は彼女と一緒に居ることを望んでいる。口では出ていけ、帰れ、などと言ってしまっていたが、私の気持ちはとっくの昔からそうではなかった。
一緒にご飯を食べて、一緒に寝て、一緒に暮らして。
一緒に遊んで、一緒に笑って、一緒に泣いて。
時間で言えば半年程度の付き合いだけれども、その時間はとても濃密でかけがえのないモノであった。最初は邪魔でしかなかった存在も、今ではなくてはならない支えのようにさえなっている。
だから……、そう。
私はきっと、彼女のことを好いている。彼女と言う存在を気に入ってしまっている。
けれどそれはいったい、どういう意味であるのか。それが自分自身でさえ分からない。
好きには種類がある、だなんて子供でも知っていることは当然、私も知っている。ライクとラブの違い、なんて題材は古今東西使い古されている議題だろう。
隣人として好き。友達として好き。家族として好き。そして――。
私はその先が知りたくて、だけどその先は怖くて。一歩を踏み出そうとして、いつもその一歩を踏みとどまる。
それは、その先に踏み入ったらもう戻ってこれないと悟っているからだし、今が上手くまとまっているのなら、それでいいじゃないかと思ってしまうからだろう。
下手をして今の平穏が崩れ去るのなら、私は動かないでいた方が幸せだったと後悔する。そして後悔の中に居ながらも、『でもあの時、動けないままの臆病な自分では無くて良かった』なんて自分を心の中で美化して、それで心の中の平穏を保とうともする。
そんなのは嫌だ。今を失う私も、自身を自己弁護する私もどちらも欲しくはない。
だから私は今日も、今まで通りで居たいと過ごして――
「ちょっと、聞いてるの彩葉!?」
「……うぅん?」
そんな思考の沼から私は引き抜かれる。真っ黒な坩堝な中に居たはずであった私の目の前に居るのは……。
「かぐや……?」
「やっぱ彩葉ってばボーっとしてた! せっかくの雪パーティーなのに、ダメでしょ!」
えいっ、とそう言って私のおでこを軽くデコピンするかぐや。額にはヒリヒリと、まではいかず若干の甘い痒さが広がる。
「ごめんごめん、ちょっとね」
「むー、勉強のし過ぎなんじゃないの? また倒れちゃったりしたら本気で怒るからね?」
そう口では「怒る」と言いながらも、心配そうにこちらの瞳を覗き込んでくる彼女。美しい、宝石の様な双眸が視界に飛び込んできて思わずくらりとする。まるで魅了の魔法でもかけられたような錯覚だ。
「単純に気が抜けてるだけでしょ、情けない」
「もー、イロってば彩葉に辛辣なんだから~。大丈夫、彩葉~?」
少し離れた位置に座るイロが私のそんな醜態を見て笑う。あの様子ではきっと私が何を考えていたのか、全てわかっているのだろう。八千歳の違いがあろうと自分の考えは自分には筒抜けということか。
一方でヤチヨはこちらを心配そうに見つめている。その不安そうな表情や、美しい瞳はかぐやと瓜二つで、容姿は違えど同じ存在なのだなと再確認させられる。
……しかしまあ、情けない、か。
私も自覚はある。一歩を踏み出せないで言い訳ばかりしている自分の存在など、誰だって自分が一番許せないはずだ。
特に彼女はその一歩を踏み出した後の私だ。いろいろとあの時の騒動では事態をかき混ぜてくれた存在だけども、そもそも彼女があんな行動をとってしまったのは私と違って自身の想いに気が付いたから。私が踏み出せない一歩の、その先を知った彼女だからイロは暴走してしまった。
自身の存在よりも、かぐやとヤチヨの幸せを願った暴走。
お姉ちゃんは彼女の行動を『独り善がりのハッピーエンド』と表現していたか。
実にピッタリな表現だ。もしあの時、あの結末で終着していたとして、それを心の底から悦べたのなんてイロ本人以外に存在しない。
ヤチヨは八千年を共にした存在を失い、私とかぐやは見知らぬ誰かの掌の上で踊らされて、姉は知らず知らずのうちに妹を失っていた。本当に、独り善がりが過ぎる。
だけども。
それでもそんなあり得ない選択肢であっても、私は。
私だけは思ってしまう。
――あぁ、いいなぁ……、と。
あの選択肢はやっぱり、彼女が自身の気持ちに踏み込めたからこそのモノ。言ってしまえば、自己満足、独り善がりを押し通せるだけの自身の衝動を自覚できたのだ。
その点、ただ一点のみで私とイロとは違っている。
過ごした時間の差や、持っている経験値、蓄えている知識の差ではない。そんなもの、私が同等の時間を獲得すればいつかは追い付けるだろう。
私たちの違いはそんな甘いものではない。時間が勝手に解決してくれるほどに優しくも、時間を言い訳にしていいほどに緩くもない。いくら時間があろうと解決するかは己次第。
私と彼女との違い。それは、ただ一つ。
自分の想いに踏み込めるだけの、勇気。ただそれだけ。
私がかぐやのことをどう思っているのか。私の好きがいったいどういう意味で、私は彼女をどうしたくて、自分たちはどうなりたくて、そして今から私はどうしたいのか。
全てが不透明な今を、確かな形にするための一歩を……、私は…………。
――やはり、踏み出せない。
でも、まあ今はいい。
まだ私は学生で、もうかぐやは月に帰ることもない。時間はまだまだ、たくさんある。焦って下した判断は、基本どこかでミスを産む。
踏み出さねば、と。そう自分を急かして踏み出した一歩にきっと意味はない。足元も見えぬままに一歩目を踏み出せば、きっと踏み込むのはガラスや薄氷の上だろう。踏み込めばきっと容易く割れ砕けるだけのもの。
だから今は、まだ、まだ……。
自分の中の未確定から目を背けるくらいは許して欲しい。
きっといつか私はこの想いとぶつかろうと思うから。それが一年後なのか、二年後なのかはわからないけども、それでも絶対勝負する日は約束するから。
だから今だけは私の弱さを見逃して欲しい。今の平穏を失いたくないと言う、私の弱さを。
私は今の生活を気に入っているのだから――。
「……なにアレ?」
――しかし忘れてはならない。ハッピーエンドはすぐに砕け散ることを。
不意に手に入れた幸福は、同様に、不意に失ってしまうモノなのだと言うことを決して忘れてはならないのだ。
私たち人間は時間があるのならば、余裕があるのならば止まってはいけない。
言い訳とか、自己弁護とか、正論とか、詭弁とか、エトセトラとか。
そんなものを並べている暇があるのであったら、さっさと一歩目を踏み込めばいい。一歩踏み込めるのならば、つまりは一歩後退だって余裕だろう。方向転換して一歩進めば逃げることなんて容易でしょう。
だから踏み込む。まずは踏み込む。怖くても踏み込む。恐ろしくても踏み込む。
とにかく……、踏み込む。踏み込まなければいけない。
手遅れになってしまっては遅いのだから……。
私はそんな事すら知らないでいたのであった。
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なおこの中編は5~10話くらいを予定
〈雪パーティーについて〉
かぐや初めての雪に大興奮したため、〈ツクヨミ〉プライベート空間にて雪を生み出しみんなで景色を楽しみながらパーティーを行っていた
現実でない理由は風邪をひかないためと、ヤチヨとイロの参加のため