〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~   作:すっごい性癖

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本日一話だけです

中編が五~十話で終わるだなんて言いましたが大嘘になりそうです まだプロットの四割も終わっていません


チート・ダメ・ゼッタイ

 

「チートって……、あのチート?」

 

 イロの口から出た一つの単語に引っかかり私は疑念をぶつける。この戦場においてなんとも縁がなさそうと言うか、なんというか。チートって……。和風な世界に洋風な横文字はあんまりピンと来ない。

 

「そう、そのチート。ここだって〈ツクヨミ〉の一部、電子の世界だしそんな驚く話でもないでしょ?」

「いや、まぁそうかもだけど……。そういうのってヤチヨが弾いてるんじゃないの?」

 

 ねぇ? と振り返りヤチヨに問いかける。どこかのインタビューで見たが、この〈ツクヨミ〉内での不正行為は彼女の管理者権限の名のもとに厳しく監視されているという。そんな世界で月の住民であるアイツが不正を行えるだなんて思わないのだけれども。

 

「うん、彩葉の言う通りチートとかはヤッチョがだいーぶ厳しくチェックしているんだけれども……」

 

 そう言い右手を空中に掲げコンソールパネルを開くヤチヨ。ヤチヨ本人もまさかそんな……、といった表情を最初はしていたのだけれども。

 

「――あれっ!? あれれっ!?」

 

 次第に顔を驚愕に染め、信じられないものを見つめるような表情で画面を見ていた。ただでさえ白い顔が今では真っ青なくらいだ。

 

「言ったとおりでしょ?」

「……どうなの、ヤチヨ?」

 

 イロはさも当然だ、と言わんばかりに。そして私はもしかして、と恐る恐るとヤチヨに声をかける。

 

 ヤチヨは口元をわなわなと震わせながら説明に入った。

 

「えっとね、そもそも〈ツクヨミ〉の管理って基本私の許可がないとできないんだけどさ……?」

 

 そう呟くヤチヨの発言に、そりゃあそうだと内心で頷く。この世界の主、言わば神は創造主であるヤチヨだ。彼女はは自身のファンを神々、などと評するが実際の立場で言えば彼女こそが電子世界〈ツクヨミ〉の女神。

 

 かぐやの頃から類まれなるプログラミング技術を持っていた彼女が生み出したこの世界を管理する上で、その頂点に彼女が立っていること自体に疑念を抱く存在などいるはずがない。

 

「面倒な言い方をイロイロと省いちゃうと……。アイツの周りだけ、〈ツクヨミ〉の管理人がアイツになってる」

「それって……。あり得る話なの?」

「あり得ないよっ、本来なら! 引退ライブの時は歴史の流れを歪めない為にヤッチョが小細工したけど、ヤッチョが本気を出したらアイツ等の干渉を防ぐことだってできるし! ……、いや、そのつもりだったん、だけど……」

 

 次第に言葉の語気が掻き消え、声が消沈していくヤチヨ。自身の発言に自信が持てないと言った様子だ。

 

 それもそうだろう。実際問題として、ヤチヨ曰く的に〈ツクヨミ〉の運営権限の一部を奪われているというのだから。

 

「アイツ……何者? 月に居た頃、あんなのは居なかったはずだけど……。って、ヤッチョがそう言っちゃったらおしまいかぁ」

「ヤチヨが知らないってなるとねぇ。それイコール、誰も知らない、だからねぇ」

「まぁそこら辺はどうでもいいんじゃない? アレが何、とかあんまり役に立たない知識だし」

 

 それもそうか、とお姉ちゃんの言葉にうなずく。確かにアイツが何か、と言うことがわかったところで事態は好転しない。

 

 アイツがどうやってかは知らないがヤチヨの権限を一部奪い、〈ツクヨミ〉の防衛機能を無効化していてチートを使っている。その結果としてウチの最高戦力であるイロとも互角以上の戦いができていた。

 

 ここくらいまでわかれば情報としては十分すぎるだろう。

 

 後は、そうだな……。

 

「直接戦闘していたイロから見てアイツはどう? 弱点とか隙とかあった?」

 

 イロは私達三人の目線を受け止め、ふむ、と少し考える様子を見せてから口を開く。

 

「弱点ってほどじゃないけど……。みんなも近づけばわかるだろうけど、アイツが行動する度に大量のチートコードが表示されるんだけど……」

 

 チートコードの表示、と言うと今ヤチヨが開いているコンソールパネルの様なものが複数も浮かぶと言うことか。距離が離れていたことと、一瞬だけってところから気が付けなかったがそんなものが出ていたのか。そりゃあイロもアイツの違和感にすぐ気が付くはずだ。

 

 と、そんなことよりも。イロが言いたいのはつまり……

 

「あぁ、なるほど。その表示がアイツの行動を教えてくれると」

「そ。アイツが動くたびにチートが働くってことは、逆に言えばチートが発動したら動くってワケ。だから……」

 

 アイツがチートコードを出したタイミングで回避行動をすれば攻撃は当たらない、と。

 

 なるほど、わかりやすい。言ってしまえばある種のリズムゲームのようなものか。コードを視認した瞬間に避ける。アイツが動くよりも前に回避すれば、そりゃあ当たらない。

 

 でも……

 

「それは回避だけの話でしょ? アイツはこっちの攻撃もチートで避けてるし。それはどうするの」

 

 イロの初撃は今思い返しても完璧であった。非の打ちどころのない攻撃、とはかくあるべし、と言ったような究極の一撃。アイツの防御が間に合うはずもない絶死の一太刀であった。

 

 だがアイツはそんな攻撃を弾いた。チートを使い、防御の速度を異常値に跳ね上げることで不可能を可能へと押し上げた。

 

 そんな奴に攻撃など通じるのか……。そう思わずにはいられない。

 

 しかしそんな私の懸念をイロは「はっ」と鼻で笑うと、

 

「バカ、何のための人数だと思ってるの?」

 

 と、そう言った。

 

「何のための人数って……。えっ、アンタ、まさか――」

 

 私はその発言を聞き、嫌な予感がし聞き返す。

 

 あぁ、嫌だ嫌だ。アイツが自分だって嫌々ながらに思い知らされる。アイツが何を言いたいのか、たったそれだけの言葉でわかってしまう自分が嫌だ。

 

 いや、嫌なのはそこではない。アイツが何を考えているかが手に取るようにわかることが嫌なのではない。

 

 嫌なのは、ただ――。

 

「当たらないんだったら、当たるまで攻撃すればいいでしょっ!」

「あー、もうっ、やっぱり!」

 

 こういう時、割とパワープレイを選択しようとする自分の頭が嫌なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、いい? ――行くよ」

 

 応、と皆でイロの発破に頷く。交換していた武器は既に元に戻した。やはり私にはこちらのブレードの方が手に馴染む。

 

 作戦は単純だ。近距離攻撃部隊として私とイロ、中距離をヤチヨが担い、後方での支援をお姉ちゃんが行う。普段のKASSENでの組み分けとなんら変わりない。各々が各々の得意で動く、ってだけ。

 

 奴も休憩は終わったのか、こちらを向いて敵意を剝き出しにしている。

 

「――ッ!!」

 

 まず私とイロがその場から走り出す。両足に力を籠め、跳ねるように真っ直ぐに。今回の移動距離は大した距離ではないから、私とイロとの速度差も大きくは現れない。

 

 私は右手に握ったブレードを振り上げながら、攻撃モーションに入る。接敵と同時に奴の腰辺りを叩き斬るつもりで。

 

「ハァッ!!」

 

 横薙ぎ一閃。

 

 持ちうる限り、全霊の力を込めて放つ一撃。確かにヤツの胴体を引き裂くための攻撃を私は打ち付けた。

 

 ――だが。

 

(クソ硬いなぁ、おいっ!)

 

 得られた結果は横に割けたヤツの腹などではなく、まるで岩オブジェクトを誤って武器で叩きつけたかのような音声と反動のみ。ダメージなど一切入ってはいないであろう手応えだけだ。

 

 しかしこれが……

 

「あぁもうっ、こんのクソチート! ズルって言ったって限度があるでしょっ!」

 

 イロの言っていたことか、と嫌なほどまでに実感させられた。

 

 攻撃を当てる直前、確かにヤツの身体の周辺に無数にポップしたチートコード。プログラムの知識は一般常識程度でしか持っていないから、完璧になんと書かれていたのかまでは把握できなかったが、それでも何となくの意図はわかる。

 

 あぁ、しかし、もう。『防御力無限上昇』だなんて頭の悪いプログラムもあったものだ。十や二十では足りない表示全てがアイツの身体の硬さを上げるためのものだったことを考えると、やっていることは子供のソレだろう。

 

 何重にもクソ強いバフを重ね掛けすれば負けない。あぁ、そりゃあそうだろうともさ。

 

 だがそれをしてはみんなが面白くないから、だから禁忌とされているズルを恥じずに行えるその厚顔さが言ってしまえばヤツの強さの最たるものだろう。

 

「――って、ヤバッ!」

 

 内心で毒づいていると、アイツの腕の周辺に無数のプログラムを視認。書いてあるのは今度は一転して『攻撃力無限上昇』×いっぱい。あと、『攻撃速度無限上昇』×いっぱいも追加で。

 

 あぁ、ほんとに頭の悪いことで!

 

 私はアイツの攻撃が自身のいる今の位置に降り注ぐ前に回避を行う。横に跳ね、今の位置から少しでも距離を取る。

 

 瞬間、移動を終えた直後。私のつい先ほどまで居た場所に光速の一撃が降り注ぎ、足場にはクレーターが誕生した。

 

(……これは、一撃でも掠ったら終わりだな)

 

 ごくり、と味のしない唾液を飲み込む。

 

 回避こそ上手くいったが、その一撃の余りもの威力に、バーチャルであると言うのに私は死の予感を悟ってしまう。背筋に冷たいものを感じた。

 

「ボサッとしない! ――ッ!!」

 

 そんな私の恐怖を看破したのかイロは大声で喝破をかけながら、日本刀でヤツの首を狙った一撃を放つ。

 

 しかしそれもヤツの重ねたチートにより防がれてしまった。再度、硬化したヤツの首の皮がイロの放つ鋭い日本刀の一撃をも弾く。それはまるで蓮の葉が雨粒を弾くように、あっさりと、嫌になるほどに。

 

「――てやッ!!」

 

 イロの喝破で正気を取り戻した私はブレードでヤツの脚を狙い斬りつける。弾かれる。

 

 いったいどこに眼が付いていると言うのか。身長が五メートルもあるくせして、足元の攻撃に気が付くなっつうの!

 

「イロも彩葉もヤケにならないのっ。ヤッチョ達も居るんだから、それっ!」

 

 中距離支援のヤチヨが自身の持つ鉄傘を擲ち、奴の胴体を穿つ。だがやはり金属同士が削れ合う音を放ちながら、ヤツの身体には一切の傷がついていない。

 

「こりゃあ、長期戦になりそうだなぁ」

「出来れば長期戦は避けたいんだけどね……、ッ!」

 

 今私たちの周囲に誰も居ないのはヤチヨとお姉ちゃんとの隕石攻撃のおかげだ。遠方にはまだ、当初と比べればわずかだが、それでも多い敵が残っている。

 

 そいつらがココまで到達してしまえば、数に頼った戦いをしているこちらとしては不利も不利になってしまう。

 

 可能ならばアイツらがたどり着く前に、コイツを倒したいのだけれども……

 

(……行けるか?)

 

 頭の中で冷静に彼我の戦力を分析する。

 

 敵の増援が来るまで後五分と甘く見積もって、その五分の間に四人でコイツを倒し切れるか……。

 

(微妙だな……)

 

 攻撃を避けるだけなら問題ない。アイツも飛び道具は持っていないことから、主に攻撃を避けるのはイロと私。イロは言うに及ばず、私も既にアイツの攻撃を避けるだけならもう慣れたし、被弾する可能性はゼロに近い。

 

 だが、倒し切れるかと言われればそれは難しいと言わざるを得ない。

 

 未だに私たちはコイツに、有効打の一つも浴びせられていないのだから。

 

(どうする……。このままだとジリ貧だけど)

 

 焦りながらもヤツの身体に一撃を入れる。しかし無傷、無意味、無価値の三段の返事のみ。

 

 ――アイツの殻さえ砕いてくれる手段があれば。

 

 贅沢にも、そう思わずにはいられない。アイツのチートで強化される無限の防御力さえ消えてくれればまだ勝ち目はあるのに。

 

 だが、そんな手段はどこにも……。

 

「――ん?」

 

 ふと、天を見上げる。自身の身体が大きな影に覆われていたことに気が付いたからだ。

 

 その影は次第にドンドン大きくなっていく。最初は私の上に重なるだけであったサイズの影も、今では五倍ほどの大きさに。

 

 これは……。

 

(って、おい! なんでアンタがそこに居るの!?)

 

 頭上に見える、豆粒サイズの人の姿。〈ツクヨミ〉のミラーボールの様な月をバックに落ちてくる自由な鳥の化身。もしくはウサギやカニでもよい。とにかく自由なヤツ。

 

 私は痛む頭を押さえるように、この想いを吐き出すまま目の前の敵に一撃を放つ。

 

 ヤチヨが隠したのは、万が一のためだってわかってるだろうになんでここに来たのか。小一時間問い詰めてやりたい気分だけれども。

 

 しかし、あぁ、だがしかし。アイツならそりゃあ来るだろう、とわかってしまう自分が本当に嫌だ!

 

(あぁ、もう、本当に! 全然言うこと聞いてくれないんだから、もう!)

 

 

 

「四人してかぐやちゃんを置いていくとは何事だコラ~~ッ!!」

 

 

 

 そう叫びながら、かぐや姫は自身の得物であるハンマーで敵を打ちぬいた。

 

 




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