〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~   作:すっごい性癖

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本日一話だけです


チート対チート

 

 唐突の一撃で巻きあがった砂煙が辺りを満たす。それを見て私たちは後ろへといったん下がった。

 

「ちょっ、あんた何考えて――!」

「んへへ~~、来ちゃった?」

 

 てへ、と舌をペロッと出しながらそう言うかぐや。振りぬいたおなじみのハンマーを今は肩に掛けながら、それはそれは清々しそうに堂々と。

 

 ヤチヨが何を思って自身を隠したかもわかっているだろうに、この子は……。

 

「アイツらの目的がかぐやだったらどうするの! 今度こそ連れ帰られちゃうかもよ!?」

「うーん……、それは無いんじゃないかなって思うけど」

 

 こちらの心配をよそに、軽い口調で答えるかぐや。

 

 何故そうも簡単に言いきれるのか。月の奴らが来る理由なんてそれこそ、かぐや関連しか思いつかないのだが。前の件だってそれ関連だったし。

 

 なんでそんな風に思うのか、私はかぐやに尋ねてみると……

 

「だってかぐや、今も絶賛月で社畜しているはずだし」

「……あっ」

 

 帰ってきたのは凄く簡潔な答えで、しかし納得のいくもの。私はそんな簡単なことに気が付かなかった自身に呆れ、思わず声を漏らした。

 

 そうだ。そういえばそうなのだ。

 

 今でこそかぐやはこうして帰ってきてくれたが、ここに居る彼女は今より何十年も先の彼女が時間を渡って帰ってきた存在。月での仕事や引継ぎを終わらせた未来の彼女が隣に今立つかぐやなのだ。

 

 決して月に行った彼女がトンボ帰りの形で地球に戻ってきた存在ではない。

 

 今だって月で彼女は、地球に戻るための作業に勤しんでいるはずで、つまりは月にはかぐやという存在は既にいる。そんな状態で奴らが地球にまで来て、かぐやを連れ戻そうとする理由はない。

 

 しかしそうなるとこの襲撃はいったい……?

 

「多分アイツら、イロたった一人に月が征服されたのが気に食わなかったって奴らだよ。ほら、たった一人に月が負けた、とか現地住民的にはうげぇ、って感じになるでしょ?」

「あぁ、メンツとかそういう……。えっ、マジ?」

「いやぁ、実際のところはどーだかわからないけどね? でも多かれ少なかれ、かぐやの予想通りだと思うよ」

 

 確かにそれなら納得は行くけども。確かに自分だって、余所の国の兵士がたった一人で日本を征服した、だなんて言われて「あぁはい、そうですか」と納得できるかと言うと、それは難しい。

 

 だからってこうやって襲撃を行うか、と言われたらそれはないと思うけども、血気盛んな人ならばそういうコトをする人が居てもおかしくはないかもしれない。

 

 アイツらはつまり、イロ一人に月が負けた、という事実が気に食わなくて、そんな奴らが徒党を組んで地球まで報復に来た、と……。

 

 それってさぁ、あんまり言いたくないけど。

 

「身から出た錆過ぎない……?」

 

 ジトリ、と近くに引いてきたイロに眼を向ける。かぐやの予測が正しいだなんて保証はどこにもないけども、少なくとも今この場で最も強力な説は彼女のものだ。

 

 イロは若干気まずそうにしながら顔をそむける。おい、こら。こっち向けや、おい。

 

「まぁ、そんな残党たちが勝手にやってることだろうから、かぐやもアイツらのこと全く知らねーのよね。こちとら社畜をバリバリやっている真っ只中だってのにさ」

「あぁ、そっか。かぐや的には今回の件も昔起こった事件ってことになるのか。……ややこしいな、まったく」

「ねーー」

 

 はぁ、とため息をつきながら再度武器を構える。かぐやの急襲で出来た休憩時間はどうやらおしまいらしい。

 

 砂埃は消え去り、あのデカい月人も準備万端と言った様子。まだまだ戦闘は続くらしい。

 

 私は先ほどまでの会話で緩みかけていた空気を、気を引き締め直す意味も込めて頭を横に強く振った。

 

 ……って、かぐやさんってば何をそんな驚いた顔をして敵を見ているんですか。

 

「……なんでアイツノーダメなの?」

「そこからかいッ」

 

 あぁもうっ、急な一撃と言い、敵の思惑の看破だったりカッコいいと思ったらこれか。

 

 見せ場を作ったらそれと同じだけのポカをしなきゃ気が済まないのかこのお姫様は!

 

「……とりあえず私が時間を作るから、その間にかぐやに説明してね」

「あ、うん……」

 

 私はそう言って一人敵に向かっていくイロの背中を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……つまり、アイツはチートをめっちゃ使ってきて、攻撃が全然通らない、と」

「そっ。んでもって、こっちが被弾したら一撃死だし、そもそも攻撃を当てるの自体がクソムズイ」

「う゛え゛~~。ズルっこじゃん、そんなん!」

 

 そう言って心底嫌そうな顔をするかぐや。強かな面を見せることもあるが、基本真面目……、というか素直な彼女からしてみたらチート行為というものがお気に召さないのだろう。

 

「本来ならヤチヨが組んだ〈ツクヨミ〉の防衛機能で防がれるはずなんだけど、どういう訳かアイツはそれを無効化しているんだって」

「ヨヨヨ~、ヤッチョが組んだシステムは完璧とは言わないけれどもそれに近いレベルまでは頑張ったつもりだったのですが……。面目次第もありませぬ~」

「いやいやっ、ヤチヨの防衛機構のレベルの高さは〈ツクヨミ〉ユーザーならみんな知ってるから! それすら上回ってくるアイツが異常なんだって!」

 

 〈ツクヨミ〉の総ログイン人口は一億と言う数字を叩きだしながらも、他界隈と比べて異常なまでに民度が良いのはそれこそ彼女の組んだシステムのおかげだ。一パーセントの人間がズルをするとして、一億人も居ればそれだけでズルをする人間は百万人ともなる。

 

 だが実際はそうなっていない、というのは彼女の尽力のおかげと言うほかにない。

 

 逆に言えばこんな風にチートを使うヤツと戦うのなんて初めてだから、未だに感覚がつかめないのだけれども。そんなのは贅沢な願いか。

 

「……って、かぐやってばどうしたの急に。武器、変えちゃうの?」

「ん~~? 違う違う、そーじゃないよ」

 

 唐突に自身のトレードマーク的ウェポン、ハンマーをしまうかぐや。まさかのこの土壇場で武器変更をしようと言うのか。あんまり慣れない武器を使うのは推奨したくないけども。

 

 しかし私の疑念を彼女は「まっさか~」と否定。そのままこちらにズイッ、と顔を寄せてはニンマリと悪い顔を向けてくる。顔が良いからこうも近づかれると心臓に悪い。

 

「にっひっひ~、彩葉さんってばお忘れかな? かぐやちゃん、第一の特技を!」

「かぐやの……特技?」

 

 そう言われてまず脳内に思い浮かぶのは、料理だろうか。いや、この場で料理だなんて絶対に関係ないけれども、私の中でかぐや、イコール、料理の図式が成り立ってしまっている。

 

 他に特技と言うと……、なんだ? 人を笑顔にすることとか? いや、絶対違うな。

 

 答えがわからず、かぐやに言葉の続きを促す。かぐやはこちらがピンと来ない様子に割とショックを受けたのか「私のイメージって……」、とか、「もしかして私、おバカだと思われてる?」と呟く。

 

 しかしイロが一人で稼いでいる時間を無駄にするわけにもいかないと彼女もわかっているのか、すぐさま落ち込むのは止めにし解答を口にする。

 

「まー、要するにですねぇ……」

 

 一拍を置くかぐや。こんな場面でも演出を忘れないのは配信者根性か。しかし流石にくどいと思ったのか、すぐさま続きを言い放つ。

 

「今回はハンマー美少女かぐやちゃんではなく、天才ハッカー美少女なかぐやちゃんなのですよ!」

 

 えいやーっ! とそう言って両手を天に掲げるその姿に思わず絶句する。

 

 あぁ、そう言えばそうだった。最近、めっきりその能力を見せてもらう機会がなかったから忘れてしまっていた。

 

 そもそも、やっぱりかぐやとヤチヨはイコールの存在であり、そして犬DOGEを作ったのも彼女自身。プログラムやなんやなど、それこそ確かに彼女の一番得意とする領域だろう。

 

「そんじゃ、まぁッ、いっくよ~!!」

 

 そう言って眼前にキーボードの様なもの空中へと表示させるかぐや。彼女はそれに、自身の白魚の様な指を乗せ、神速で何やらを打ち込み始めたのであった。

 

 




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