〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~ 作:すっごい性癖
本編では気が動転した彩葉の思考の為、情報が整理しにくくなっているため後書きで軽く纏めます
「は……? 何を、言って……」
「だからあの月人の正体はかぐやだって言ってるの。あの仮面の下の顔を見た私が言っているんだから間違いない」
何を言っているのか点でわからない。相手が話しているのは日本語か? よく似た全く違う言語では無いのか?
もしくは私はこの一瞬で日本語と言う言語を綺麗さっぱり忘れてしまったのか?
脳が理解を拒絶する。
「……やっぱりか」
「うん、FUSHIもわかってたんだね」
「あぁ……、あの泥はかぐやの記憶を攻撃していたっつうよりも、むしろ……」
「そう、FUSHIの言った通り羨んでいただけ。攻撃するつもり何て一切なくて、ただ暗闇の中で見つけた灯りに引き寄せられていただけなの」
ふらり、と眩暈がしてその場に崩れ落ちる。
「彩葉!?」
私の異常に気が付いたお姉ちゃんが駆け寄り、背中をさする。この世界に触覚などと言う機能は備え付けられておらず、一切の影響を私には与えないはずだが、それでも私はその暖かな手の感触を背中に感じる様な気がした。
あぁ、もう。いったいなんだと言うのか。かぐやが意識を失い、ヤチヨが行方不明になっただけでも手いっぱいだと言うのに、更には敵の主戦力は月に居るかぐやだと言うのか?
何なんだ。本当に、いったい何なんだよ、畜生。
「……なんで」
「うん?」
「なんで月で仕事をしているはずのかぐやが私たちを襲ってきているの……? そんなの、そんなのって……」
あり得ないじゃん。だって、かぐやは言っていたはずだ。私の歌を聞いて地球での記憶を思い出してから、彼女は地球へと帰るため仕事を死ぬ気でやっていたって。一秒でも早く帰る為に、命を削るくらいの気持ちでって……。
そんな彼女が、私たちを襲って来るだなんて、そんなこと……。
(あ……)
そう疑問に思う中、私の中でイロとFUSHIとの会話の一節を思い出す。先ほどまでは二人の会話の根幹が一切私にはわからなかったが、今、敵の正体がかぐやであることを考慮すると一つだけ引っかかるワードがあった。
それは……
「だから……、かぐやの記憶を……、羨んでいる?」
あぁ、自分で口にして嫌になる。
先ほどまで自身の中に燻っていた『かぐやが敵として襲ってくるはずがない』という疑念が、私の中の仮説を仮に真だとすると綺麗すぎるほどに辻褄があってしまう。それが私は嫌で嫌でしかたない。
お願いだ。お願いだからこの私の推測は外れていてくれ。私の思い過ごし、考え過ぎで、すぐさまイロとFUSHIで「そんなわけないでしょ」と笑い飛ばして。
だが……
「……」
「嘘、でしょ……?」
二人は何も言わない。
私はその沈黙で、自身の中の仮説が彼女たちの考えと一致していることを理解してしまう。
これまでテストなんかでは一問でも正解を増やそうと死ぬ気で勉強してきたけれども、生まれて初めてだ。問題への解答が外れていて欲しいだなんて願ったのなんて。
つまりは、こういうことだろうか?
私たちがつい先ほどまで戦っていたのは……、月で働いていたはずのかぐやで。私たちを襲ってきた月人たちに再度記憶を奪われていて。そんな彼女の影響を受けた泥は、自身が失った……、いや、奪われた記憶を羨み地球に居たかぐやの中の記憶サーバーに澱みとして滞在してしまって。そのせいでこちらのかぐやは意識を失ってしまった、と。
そういう……、ことなの?
「多分、月のかぐやが狙われたのはあの類まれなコーディング能力に眼を付けられたからだろうね。もちろん、私たち……、正確には私とかぐやとの関係を知っていたからの意趣返し的な意味もあっただろうけど」
あぁ、確かにあの月人は他の奴らと違って確かに強力だった。私たち複数人で攻撃してもなかなか倒せなかったし、〈ツクヨミ〉の防衛機構を無効化しながらのチートなどまさしく無法そのものだったと今でも思う。
……そうか。そう言えばヤチヨも本来ならば〈ツクヨミ〉の防衛機構が無効化されるはずがないと焦っていたが、これもそういうことだったのか。いかにヤチヨと言えど、その防衛機構を組んだ張本人が敵であるなどあの場ではわかるはずもない。
例えば、だ。ヤチヨがそれらの管理権限に本人確認のフェーズを挟んでいたとしても、かぐや本人であるのならば無効化などしなくても、余裕でパスできてしまうことになる。本来ならば手に入れることなど不可能なヤチヨの生体情報も、かぐや本人であれば用意できてしまうのだ。だって同一人物なのだから。
「……ふ」
身体の震えが止まらない。全身が揺れて、揺れて、揺れ動く。
恐怖からではない。恐れ、慄いたがための震えではないのだ。
これは……
「ふざけないでよッ!!」
これは、怒りからの震えだ。私は勢いそのままに立ち上がる。
「つまりはそれって……、かぐやが月人に兵器にされたってことでしょ!!」
あぁ、そうだ。ふざけるな。ふざけるな。こんな事、あっていいはずがない。
その能力に眼を付けられ、邪魔だからと奇跡的に思い出せた記憶を抹消され、戦闘に適した身体へと書き変えられて。
要は私たちを攻撃するためだけの武器に作り替えられたってことではないか。
そんなの、そんなのって……
「どんな権利があって、そんなことを!!」
いいや、権利云々の話ではない。たとえ人を武器に作り替えていいなんて非人道的な権利がこの世に存在していたとして、かぐやがその対象になるだなんてことだけはあってはいけない。許してはいけないのだ。
あぁ、許せない。許してはいけない。あの月人どもを私、酒寄彩葉は許容できない。
誰の許可があってかぐやに手を出しているのだ。
「勇ましいのは結構だけど……、で、具体的にはどうするつもり?」
そうイロが尋ねる。その言葉は疑念的な文面だ。
だが一方でその表情は一切の疑問を抱いていない。『もちろん、決まっているよな?』と、そう断言するように象られている。
あぁ、もちろんだ。決まっている。私のこれからの道など一択だけ。他に道などない。
「月に行って……、かぐやを助ける」
「なっ、彩葉っ、イロ!? 正気なのか!? 今から月に向かうだなんて!」
「正気だよ、FUSHI。むしろ攻めるなら今しかない。敵の戦力の回復を待っていたら今度こそ負けるし……、なによりヤチヨが心配だ」
「だがイロッ!?」
あぁ、マズイ、マズイ。この流れはヤバすぎる。
彩葉は先ほどまでの激高から見て取れる通り、大分頭に来ているから話を聞いてくれないし、イロも口調こそ冷静だがこっちはこっちでかなりキレている。
むしろ下手したらイロの方がキレているかも……。かれこれ八千年の付き合いだ。そう言う雰囲気はわかる。
そりゃあイロの気持ちもわかるさ。目の前で大切なヤチヨが自身を犠牲にする形で姿を消したのだ。今すぐにでも月へと向かってヤチヨを探したくてたまらないのだろう。その気持ちはよーくわかる。
姿を失い、安全も保障されていない月へと消えたヤチヨ。意識を失い、目を何時覚ますかわからないかぐや。月人どもの手で兵器へと変えられたもう一人のかぐや。
そりゃあキレるさ。自分だって大分アイツらには頭に来ている。
だがそれにしたってみんな冷静さを失いすぎだ。今から月に向かうって言ったって、そこは敵の本拠地だ。ホームグラウンドの〈ツクヨミ〉でギリギリの攻防を行っていた相手にそれは、あまりにも……。
せめて、せめて他にも戦力を……。急ぐ気持ちはわかるが……!
「ねぇ、FUSHI……?」
「ッ!? なんだっ、結葉!! やっぱり……」
唐突の呼びかけに身体をぴょこん、と跳ねさせながら応答する。
あぁ、どうやら結葉は冷静だったようだ。
そうだ、そうだよな。今、このまま月に向かうだなんて負けに向かうような――
「お願いがあるんだけど……、いい?」
「え……?」
しかしこの時、自分は失念していた。
基本的に穏やかで、おおらかな性格をしている結葉であるがその実、その性格は確かにあの彩葉やイロの姉であるのだと言うことを。
「ちょっとお姉ちゃん……、これは流石に許せないかなぁ……」
かぐやの身代わりの件も、自身の裏に居たイロを無理矢理、表舞台に引き出した件も、そして今回の戦闘でヤチヨと行った隕石モドキの件も。
そして今回も……。
基本的に、酒寄結葉と言う人間はタガが外れると異次元な行動をしだす、そんな人間なのだということを。
忘れてしまっていたのだ。
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〈この中編での設定について〉
本編にて彩葉に平定された月だが、その住民の内の幾らかがたった一人の地球人に負けたという事実を受け入れられず徒党を組む。
だが月での敗北からわかる通り、そのままではイロには勝てないと思案。その時に白羽の矢が立ったのが月で仕事中のかぐやであった。
月の中でも類まれな能力を示すかぐやであれば電脳世界であれば無敵――本編中でのチート使用などを用いて――であり、更に憎きイロにとっての弁慶の泣き所でもあるため満場一致で月のかぐやが狙われた。
中編開始の前話、『嵐の前の兆し』にて仕事中のかぐやは月人に襲われ記憶を再度奪われ、本編中の巨大な月人の姿へと変えられてしまう。
そして本編にて彩葉たちの敵として顕れたかぐや改め巨大月人は月人達の目論見通り、その能力を発揮し彩葉たちを圧倒。
本来ならば〈ツクヨミ〉の防衛機構でチートの使用などは弾かれるが、かぐや本人であるため〈ツクヨミ〉の防衛機構に干渉でき、チートコードの使用が可能となっていた。
そして地球のかぐやは月のかぐやとの勝負に押し負け、彼女の無念を帯びた泥を体内に蓄えることに。
月人たちに再度記憶を奪われた月のかぐやの無念は、地球のかぐやの中にある自身が奪われた記憶を羨み、それらが保存されている記憶サーバーに群がってしまったため地球のかぐやは意識を失ってしまった。
以上、です。本当に好き勝手してごめんなさい。