〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~ 作:すっごい性癖
余談ですがハーメルンの機能で昨日までの今作投稿分をPDFに変換してみたのですが、なんか324ページありました
実は皆さん、ここまでで小説一冊から二冊ほどお読みになられているらしいですよ
「ここが……、かぐやの……」
移動を終え降り立った大地を見渡す。幼いころから育て続けた固定観念からかってに荒廃した場所をイメージしていたのだが……。
意外や意外。確かに地表こそ地上から観測できる土気色の岩肌だが、周りに並び立つ家屋の姿や植え付けられた植物の姿からは確かな生物の息吹を感じる。装いだけで見れば平安や鎌倉だとかそのくらいの日本風の造りか。
……いや、生物と呼ぶには奴らは情報体としての側面に寄り過ぎているか。生き物と呼ぶのはなかなかに問題がある存在だ。
ならばいったいどういう理由でこんな人が住むような場所を模したつくりをしているのか、それは私にはわからないけれども。まぁそこら辺はどうでもいいか。
今は……
「って、早速かい」
「まぁ、そっちの方が話が早いしこっちも助かるけど」
ジトリ、と周囲を見渡せば無数の数の月人、月人、月人。
月人の姿。小柄なヤツから大柄なヤツまで多種多様で、ヤチヨが連れ去って消えた残党の数よりも明らかに増えている。簡単に見積もって、三百近くはいるだろうか。いや、もっといるかも。
「どうする……?」
私は隣に立つイロに尋ねる。周囲に立ち並ぶ月人たちの処遇を。
正直な話、こいつら全員を倒すこと自体に何ら問題はない。〈ツクヨミ〉での戦闘でだいぶ勘を掴めたし、こちらにはイロもいる。はっきり言って負けることはないだろう。
ただ負けない代わりと言っては何だが……、単純に時間がかかることも決定的だ。
こちらとしてはコイツらなど放っておいて、兵器化されたかぐやや、姿を消したヤチヨを探したいのだけれども……。
「まぁ、倒すしかないんじゃない? この数を振り切りながら探すってのも難しいし」
「はぁ……、そりゃあそうか」
そもそも、私たちの……、いやイロの本命はおそらくヤチヨ探しだろうから私の本命であるかぐや探しはイコールであの巨大月人との戦闘を意味する。その時にコイツらに乱入されては〈ツクヨミ〉での二の舞だ。
「……というか、さ」
「何、急に……?」
私は周囲の敵を流し見て、最後にもう一つイロに尋ねる。
つい先ほど、FUSHIの手助けを得たことで月面へとやってきた私たちなのだけれども……。
ここに居るのは大量の敵と、それに囲まれた私とイロの二人。円状の陣形を組んだ奴らの中心でポツリと孤立した二人組の姿がきっと空中から俯瞰すればくっきりと見れるはずだ。
うん。
……明らかに人が足りていないよね。
「お姉ちゃんとFUSHI、どこかわかる?」
「……さぁ?」
首を横にゆっくりと振るイロ。その表情を見るに、嘘でも冗談でもなくマジで知らないらしい。
「まぁお姉ちゃん、FUSHIに何かを頼んでいたみたいだしそれ関連の準備でもまだ〈ツクヨミ〉でやってるんじゃないの?」
そう答えるイロ。
確かにそう言えばお姉ちゃんってば何かお願いがある、的なことを言っていたような気がするが。
お姉ちゃんはともかく、FUSHIは月への移動で先ほどまで一緒に居たというのに姿を消すだなんて……。
私は少しの引っかかりを覚えながら、しかし今は置いておこうと武器を構える。
「まぁお姉ちゃんにあんまり荒事をさせたくはないし、今のうちに私たちだけで……」
「そうだね。お姉ちゃんには悪いけど、ここは私たちだけで……」
そう言ってイロも出現させた武器を構え、敵を迎え撃つ。
とはいっても四方八方が敵だ。どこを向いても敵がいるのだから、どう構えても一定以上の効果はある。
私とイロは言葉を交わすこともないまま、自然と背中合わせの構図となりながら半円ずつ、敵を受け持つことを暗黙に了承し合った。
(……かぐや)
心の中であの娘の名前を呼ぶ。
地上では意識を失い、月では下種な月人に兵器へと変えられてしまったあの女の子を想って。
(絶対に、助けるから……)
ぎゅう、と手に馴染んだ武器を強く握りしめる。自身の中に渦巻く激情を握力へと変換して、この一時だけは暴走しないように自身を慰めて。
かぐやを助ける。
そのためにも――
「こいつらをまず、倒し切る……!」
私たちは敵に向かって駆け出し――
「……え?」
そして、敵へと襲い掛かるために地を蹴ろうとしたその刹那に視界に収めた光景に私は足を止める。
こんな、まさか……。しかし、なんで?
私は自身の目を疑う。まさか衝撃的な事実の連続で脳がとうとうぶっ壊れたとか?
でも、私の頭がおかしくなったからって見ている映像自体は確かなもので。月まで来て白昼夢を見ているわけでは無かろうし。
つまりこの光景は、やはり真実で……。
でも、本当に何でだ?
なんで、なんで……
「――月人同士が争っているの?」
私は奴らの円陣が崩れるその光景を呆然と眺めることとなった。
FUSHIに頼んだことは、言ってしまえばそんな難しい事ではない。
要はかぐやちゃんの引退ライブでのアレの応用だ。ヤチヨに私が頼み込んで自身のスキンの情報にかぐやちゃんのデータを引用させたアレとタネはおんなじ。
アバターのタヌキらしく、そしてコスプレイヤーらしく自身を全く別の存在へと変貌させた、作戦とも呼べないお粗末な考えの例のヤツ。
ただ今回コスプレさせてもらうのは……
『ハァッ、お前マジかよ!?』
〈ツクヨミ〉でのFUSHIの驚愕した顔を思い出す。まるで私のことを化け物でも見る様な目で見てきて。
確かに自分自身、今回の提案は中々に狂っている自覚はあった。少なくとも、一般的な思考から生まれるそれではない。
でも、それでも……
『妹の為だからね。当然……、マジだよ』
幸いと言うべきか、イロと彩葉のおかげでサンプルは無数にあったのだ。それを活用しない手はない。
彩葉もイロも、かぐやちゃんもヤチヨも。四人ともみんな可愛い私の妹だ。
私はそこまで自身の武力に自信はない。これまで何度か出した異常な戦闘力は、自身の裏側で眠っていたイロが表出したことで起きた現象。
言ってしまえば私はただのお荷物だ。それは〈ツクヨミ〉での戦闘でも如実に表れた事実でもある。
私程度の戦闘力では、あの月のかぐやちゃんを相手にしても役に立つことはないだろう。
自分の攻撃は通らないのに、相手の攻撃は避けられないから近づけない。陽動をしようにも技術が足りない。コスプレだってあそこまで実力差のある敵相手では一切の意味は示さないだろう。
あの娘と対等の勝負ができるのはきっとイロと彩葉の二人だけだし、そして彼女を救えるのはきっと彩葉だけ。
月のかぐやちゃんとの物語に、私の席は何処にもない。ちょっと前までの、イロとヤチヨが再開するまでの物語であれば私が座る座席もあったのだろう。言ってしまえば主人公を張れる、だなんて言ってしまえば自惚れが過ぎるかな。
でも今回の話に私の割り込む余地はない。
この話の主題は二人のかぐやちゃんと彩葉。そして消えたヤチヨとイロの二軸のみ。三軸目は存在しないし、これ以上は主題がブレる。
端役、モブ、村人A。あぁ、本当に凡人の私らしい役割だろう。と言うか、ちょっと前までが異常だったのだ。私は本来、そういうタイプじゃない。
けれど、そんな私でも唯一。たった一つだけみんなの手助けができる。
それは……
「お前たちは、私と一緒!!」
私は手に握った武器で周囲に無数に居る月人の、適当にその中から選んだ一体の首を断ち切る。
「この話の主題じゃない、ただのザコどもは引っ込みなさい!!」
主役の二人を一刻も早く、主題であるかぐや姫の元へと送り届けること。
それがこんな私でもできる、最低レベルで最大限の助力であるのだ。
「アレは……?」
敵の中で月人が隣に立つ月人の首を断つ。薙刀の様な武器を構え、躊躇なく、弱点の身を狙って。
まさか味方に斬られるなどと思っても居なかったであろう月人は一切の抵抗が許されないまま、地に伏した。
「月人同士で、なんで……?」
自身の目を疑う。いったい、なんだと言うのだ。
私は敵の中で暴れ出した月人に注視しようとし……
「……え?」
そしてその月人の姿を私はすぐさま見失ってしまう。
そんなバカな。見逃すまい、と瞬きもせず注目していたというのに他の月人の影に隠れた一瞬で私はヤツの姿を視界から逃がしたのだ。
これは……?
「ボサッとせんで、さっさと助けに行き!!」
「え……?」
「この声って……」
私は事態の急転に頭を悩ませようとするが、唐突に聞こえた声に意識を再浮上させる。
この声は……
「お姉ちゃん!?」
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