〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~   作:すっごい性癖

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本日二話目です

短いです


忍者生活

 

 本当に手品のタネは簡単なものだ。

 

 かつて私はかぐやちゃんに成り代わった、だなんてことがあった。

 

 あの時は自覚をしていなかったのだけれども、あんなお粗末な作戦が上手く行った要因の一つとしては自分自身がかぐやちゃんに似た、情報体的側面を持っていたことが理由にある。

 

 私の身体はイロが作った人工的な肉体で、その中に存在するデータ的な知能が私だ。言ってしまえば私とかぐやちゃん、そして月人は良く似た性質をしていた。だからこそ、〈ツクヨミ〉でのデータ改造が直接的に、存在の改変と同意義だったわけだ。

 

 そしてこれは、その件の応用。ただ今、私が被るのは、かぐやちゃんの皮ではない。

 

 今回被るのは……、月人の皮だ。

 

 月人にも種類はたくさんあって、小さいヤツから大きいヤツまで居るのだけれども……。そういったのは全部解析できている。というか、私が無理を言ってFUSHIに解析してもらった。

 

 幸いと言うべきか、ヤツらの身体のデータサンプルは無数にあったし。〈ツクヨミ〉でイロと彩葉の二人がたくさん倒してくれた、その死体が無数にあったしサンプルとしては十分だろう。

 

 まぁ、タネは簡単だなんて言ったけど長くなったからまとめよう。

 

 つまりは……

 

「忍法、変化の術……ってね!」

 

 私はそう言ってまた隣に立つ月人を切り裂き、そして……

 

「――ふっ」

 

 別の月人の姿へと入れ替わるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど」

「イロ、わかったの……?」

 

 後ろに立つイロに問いかける。この異常な状況を私よりも先に飲み込んだであろう彼女に、解説を求めて。

 

「お姉ちゃんがFUSHIにお願いしたのはつまり……」

 

 ――月人へのコスプレ。

 

 そうイロに端的に告げられる。

 

 そして私はその言葉で何が今起きているのかをだいたい把握できた。

 

 あぁ、そうか。なるほど、そうだったのか。だから月人どうしで争いだし、そしてその異常な月人を私は見失ってしまったのか。お姉ちゃんが〈ツクヨミ〉でFUSHIに頼んでいたということ自体にも納得がいく。

 

 かつてのかぐやの引退ライブでのアレはヤチヨに手伝ってもらったと言っていたが、確かにヤチヨの分身ともいえるFUSHIであれば似たこともできるのか。

 

 使用しているデータは少し前に〈ツクヨミ〉に無数にあったヤツらの死体か。情報体であるアイツらの身体なら、解析さえすればそれこそかぐやのアバターと同様、模倣だって可能だろうし。

 

 思考をまとめよう。少し驚き過ぎて思考が弾み過ぎた。

 

 つまりは、こうだ。

 

 月人の中で月人を狩っている月人の正体こそ私の姉、酒寄結葉であり、その中に紛れ込んでいる手段はかつてと同じくコスプレ。まぁコスプレと言うか、データの改造に近いが今はコスプレと呼称しよう。

 

 そして一人で何百体もいる敵の中で暴れてもすぐさま取り押さえられるであろうが、お姉ちゃんはそれへの対策として敵を一体狩る毎にそのコスプレを変えている。小型の月人の姿で敵を倒した後はすぐに大型の月人へと転身し、多数の中に紛れ込んでいる。

 

 だから奴らも、そして私たちもお姉ちゃんであろう月人の姿を捉えられないのだ。一秒ごとに姿を変えられては、相手だってそりゃあ困惑する。

 

 そしてそんな無理を通しているのが恐らくFUSHIの助力と、〈ツクヨミ〉にあった敵の死体だ。FUSHIの解析力で無数の月人のデータを読み取り、そして書き出すことでお姉ちゃんはあの無限の変装を成しているのだ。

 

 月にやってきてお姉ちゃんとFUSHIの姿を見失ったのも、すでに二人はあの中に隠れていたからということか。

 

 ……でも、それって。

 

「お姉ちゃんってば、それは流石に無理があるよ……」

 

 だってお姉ちゃんが今やっているのは、月人の陽動だ。何百体もいる月人の注目を、たった一人で集めて……。

 

 そんなの、どう考えても無理がある。いくら今は敵が混乱しているから捕まっていないとはいえ、そんなのは時間の問題だ。

 

 はっきり言って、お姉ちゃんの戦闘力では月人一体と正面で対峙しても勝ち目は薄い。一度でも相手に掴まれてしまえば、それだけで敗北は必至だ。

 

 斬っては隠れて、斬っては隠れて、など無限に繰り返せるわけがない。

 

 私は再度武器を構えて、お姉ちゃんを助けようと……

 

「行けっていったのが聞こえなかったの!!」

「――ッ!?」

 

 しかし敵の中から聞こえる叱咤の声に私は足を止める。

 

 こんなお姉ちゃんの声、初めて聴いた。幼いころから、お姉ちゃんにこんな風に怒られたことなんて、それこそ一回も……。

 

「かぐやちゃんを助けられるのは彩葉だけ!! こんなところで時間を無駄にしている暇はない、そうでしょ!!」

「それは……、でもっ」

 

 お姉ちゃんの言いたいことはわかる。

 

 あのかぐやと戦う上でここで消耗してしまうのは得策ではない。それに時間が立てばたつほど、〈ツクヨミ〉での疲労を回復されてしまうことにもなるだろう。

 

 一秒でも早く、私とイロとでかぐやとの戦闘を始めるのがイチバンである。それはわかっているのだけど……。

 

 けども……!

 

「あぁもうっ、恥ずかしいこと言わせないでよねっ、もうっ!」

 

 しかし私は思い知ることになる。自身がどれだけ姉に想われているのか、ということを。

 

 そして自身がどれだけ内心、姉を舐めてしてしまっていたのかを。

 

「ココは私が食い止めるから……、さっさと行きなさい。彩葉!!」

「――ッ!!」

 

 私はその声を聴いて覚悟を決める。

 

「はぁ……。昔の私ってココまでアレだったっけ」

「うっさい……!」

 

 そんな私の様子を見て呆れた表情を隠そうともしないイロに言い返して共に駆ける。

 

 もう迷いはない。後ろを振り返ることもない。

 

(お姉ちゃん……、ありがとう)

 

 そう心の中で唱えながら、私たちは敵の円陣を抜け出した。

 




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