〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~   作:すっごい性癖

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本日一話だけです
中編最終回です

また後書きにてご報告があります


おしまい

 

 ――私のかぐやへのこの想いが結局、愛情なのか恋なのか、親愛なのか友愛なのか、母性なのかなんなのか。それについての結論はやっぱりついていない。

 

 だけれども、今はもうそれでいい。

 

 私はかぐやと一緒に居たい。もっとかぐやと一緒に生きていきたい。一緒に笑って、一緒に遊んで、一緒にご飯を食べて、一緒に眠って。そんな何気ない日々を過ごしたいって言うのは、私にとっての間違いない真実なのだ。

 

 かぐや。月から来たかぐや。最初は常識知らず差にイラっとさせてきたかぐや。いつからか一緒に居ることが苦にならなくなったかぐや。月に帰ると聞いて私の心を苦しくしたかぐや。紆余曲折あった末に一緒にまた暮らせるようになったかぐや。

 

 全てをひっくるめて……、私の大切な、かぐやだ。

 

 私のかぐや。

 

 今はそれでいい。どう思ってるか、は後の話だ。今じゃない。今大切なことは一つだけ。

 

 かぐやが私にとって、かけがえのない存在で……。大切な人であるってことだけだから。

 

「――ッ!」

 

 全速力で走り抜ける。武器はもう持っていない。適当にどこかへと投げ捨てた。

 

 そもそもいくら攻撃したところでチートを使われてはダメージ何て入らないのだ。ならば持っているだけで邪魔と言うもの。豆鉄砲にもならないデカブツなど無用の長物もいいところだ。

 

 今必要なのは、攻撃力なんかじゃない。それを私はずっと勘違いしていた。効かない攻撃のための武器なんかに固執して。本当、私は昔っからへんなところで頭が固い。

 

 お母さんの言葉にもずっと固執して、自分で自分の視野を狭めて。自分に選択肢なんかないだなんて思いこんで、無数とは言わないまでも、決して一つではない道を一つだけだと決めつけて。

 

 本来私たちは、自由であると言うのに。そんな人間にとっての当たり前を、他ならぬかぐやに教えてもらったと言うのに。

 

 私は本当にどうしようもない。

 

「ハッ――!!」

 

 駆ける、駆ける、地を駆ける。

 

 今私に必要なのは偏に、速度だけだから。だから邪魔な重みは捨て去ったし、攻撃何て無駄な選択肢も頭から追い出した。

 

 きっと傍から見たら変な状況だろう。デカブツ相手に素手で駆けるだなんて、自殺行為にもほどがある。酔狂、なんて話じゃない。ただの阿呆だ、そんなのは。

 

 光の様な速度、爆撃の様な攻撃、金剛の様な硬さに無尽蔵の体力。そんな怪物を相手にただでさえ力が及ばない人間が素手で向かうだなんて言うのは冗談にしても面白くはない。

 

 だけれども……

 

「別に私は……、かぐやを倒したいわけじゃない!」

 

 そうだ。それを私は忘れていた。あの強靭な力と、巨大な体躯に戸惑わされたが、当たり前と言えば当たり前のこと。

 

 どんな姿になったからって、あれは敵なんかじゃない。かぐやは、かぐやだ。私が攻撃する理由だなんてない。

 

 あの愛らしい笑顔を切り刻みたいわけでも、細く美しい首を絞めたいわけでも、無防備な胴体を潰したいわけでも、すらりとした足を捻じ曲げたいわけでもない。そんな倒錯的な趣味など持ってはいないのだ。

 

 私は武器を捨てて獲得した素早さでかぐやの足元へとすべり入る。そしてそのまま跳躍をして……

 

「――ッ!!」

 

 そんな私の跳躍を、チャンスだと思ったのかかぐやが攻撃を仕掛けてくる。空中ならば回避など不可能だろうと言う、浅はかながらも的確な判断だ。事実、いかに電脳世界と言えど、空間跳躍だなんて離れ業は〈ツクヨミ〉では管理人であるヤチヨくらいしか許されない御業だ。

 

 私には不可能。だから当然、その攻撃は回避不可能の無防備な姿で空中に取り残された私の胴体を貫いて……

 

「……なんて、ね?」

 

 かぐやの攻撃モーションの興りを目にした瞬間、私は手に握っていた糸を手繰る。

 

 瞬間、私は脚で獲得した跳躍エネルギーが一瞬で霧散し、重力が何倍にもなったかのように地へと向けて落下していく。

 

 なんてことはない。別にチートを使ったとか、そんな話でもない。小学生でも知っているような、そんな物理現象の話だ。

 

 作用・反作用の法則、その応用。引っ張った分だけ引っ張り返される力のつり合いは、例えば前方の壁に固定した縄を引っ張って、逆に身体が引っ張られるような力を感じるアレ。それを使って上向きに跳躍していた私の身体を無理矢理、下方向へと落下させただけのこと。

 

「ガッ、――アァッ!?」

「ん? 何でこの攻撃がわかったって……? そんなの、恥ずかしいから何回も言わせないでよね」

 

 布石はあらかじめ撒いておくもの。今回だって、いつかのKASSENの時のように、愛用のブレードを投げて適当な地面に刺しておいただけ。適当に投げて、適当にさして、適当に引っ張った。緻密な計算とか、そんなものは一切ない。

 

 だって、私が隙を晒したらかぐやなら、こう攻撃してくるってわかってたから。

 

「かぐやの考えていることくらい……。わかってるっつーの!」

 

 そう言って地に堕ちていた私は再度跳躍を開始する。さきほど、十秒前の再演だ。難しいことは何もない。

 

 ただ唯一違うのは……

 

「可愛い顔が、よく見えんじゃん!」

 

 攻撃の為に拳を振りぬいた体勢で止まっているせいで、先ほどよりも頭の位置が下がっていること。

 

 本来ならば五メートルも上にある頭が、今では三メートル付近にある。たった二メートルの差でしかないが、この場ではこの二メートルが勝負を分ける。

 

 かぐやのチートの展開は高速だ。それこそ一瞬の神業と言っていい。攻撃の為に一瞬でチートでバフを盛った後、すぐさま防御にチートを移して、と代わる代わる、あれこれと入れ替える。

 

 まさしく無敵の権能であった。私もイロも、散々苦汁を舐めさせられた。

 

 しかし、そんな無敵の権能も一つだけ弱点がある。それは〈ツクヨミ〉での戦闘からの違和感であったのだが……。

 

 かぐやは一度に複数のチートを使えない。ずっとわざわざ攻撃、防御、速度とチートを入れ替えて用いている。本来ならばチートによるバフなど、一度掛けたらずっと掛け続けていればいいものだというのに、入れ替えて、入れ替えて。

 

 そうはしないということは……、つまりはそういうことだ。

 

 今、かぐやは私の攻撃のために攻撃へのチートを展開している。そして再度飛び上がった私を視認して、防御、もしくは回避のための速度へのチートを展開しようとするだろう。

 

 だが……、遅い。一手、遅れている。いや、正確には……、二メートルだけ下すぎる。

 

 無論、かぐやの頭が、だ。

 

 五メートルの跳躍と、三メートルの跳躍に必要な跳躍時間の僅かな時間差が、この場において決定的な差となってしまった。

 

 攻撃するために下げた頭の位置が、もう少し上だったらきっとこの私の作戦も詰んでいただろう。三メートルではなく、四メートルの位置に頭があったら、跳躍時間差一メートルでは命運を分けるには不十分であったはずだ。

 

 しかしそんなイフはここにはない。ここにあるのは絶対的な二メートルの差であり、それは変わりようがないのだ。

 

 だから、遅れる。私の次の行動を避けるためのチート展開が間に合わず、私は彼女の頭部まで到達し……、そしてその巨体に跨るようにして乗り掛かる。

 

 仮面は……すでに割れている。〈ツクヨミ〉で一度イロが割っていたが、その後に再度付け替えていたことを思うと、つい先ほどまでの戦闘でイロがもう一度割って行ってくれたのだろう。

 

 あぁ、やっぱり恥ずかしい。わざわざこんな風にお膳立てをしていったということは、イロは私なんかよりも先に気が付いていたのだろう。このかぐやに対してすべきことを。

気付いていなかったのは私だけであったと言うことの確かな証拠だ。恥ずかしい、恥ずかしい。

 

 仮面の下に瞳を閉じた美しい少女の顔がある。その表情には何の感情も浮かんでおらず、無そのもの。私は彼女のそんな表情を見た途端、胸がぎゅう、と苦しくなった。

 

 いつも楽しそうに笑っていた、眠っている時でさえ喧しかったお姫様が、こんな顔をして居るだなんて。そんなことがたまらなく悲しい。

 

 私は、しかし、そんなことで止まっている訳にもいかないのはわかっているから。

 

「――」

 

 右手を彼女の頬に宛がい、仮面の下の顔を少し動かし、位置を調整して……

 

 

 

 

「大好きだよ、かぐや……。だから――」

 

 

 

 

 戻っておいで。

 

 

 

 

 私は眠るかぐやの唇に、自身の唇をゆっくりと重ねた。

 

 

 

 

「い……、ろ、は?」

「ごめんね。今の私は、かぐやを月に置いていくしかない。けど……」

「ん……。いい、の。いつか、ぜったい……ちきゅうに、かえるから……。だから……」

「うん、そうだね……かぐや。いつか、絶対、地球で。待ってる……ってのは、ちょっと違うかもだけど。それでも、待ってるから」

 

 

 

 だから、また、きっと。会おうね、って。

 

 

 私たちはそんな曖昧な約束をして、笑いあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「調子どうすか、っと、かぐやさん? なんて、ね。ちょっとカッコつけすぎかな?」

「……んーん。彩葉はいっつもカッコイイから、カッコつけすぎなんてことはなかったよ」

 

 戦場から少し離れた洞穴の様な場所にやって来た私は、よっこいしょと、そこに居た先客の横に腰を下ろす。

 

「ここ、いいよね。絶対に見つからない」

「え~~? 彩葉ってば、ここ知ってたの?」

「うん。前に来た時にちょっと、寄ったことがあってね」

 

 それは昔の様ですごく最近の話。少なくとも八千年以上あった人生の中では近代も近代。

 

 あれは……、お姉ちゃんの裏側に隠れながら月へとやってきて、月人と単身戦争をしていた時のこと。

 

「あの時、実はちょっとミスっちゃってさ。月人からの攻撃を一発、受けちゃって。当たり所が悪かったのかそれだけで気絶しちゃってね。……で、目が覚めたらここで隠れてたって感じ」

「それって……」

 

 そう言ってはっと、何かに気が付いた様な表情をするかぐや。すごいな。大した情報を出したつもりはなかったけども、それでもタネに気が付いてくるとか、やっぱり八千年の付き合いは伊達ではないと言うことか。

 

「うん……。ほんと、妹想いの姉をもったよ。記憶なんて、なにも無かっただろうに」

 

 羽衣を被ったことで地球での記憶をすべて失ったのに。

 

 気を失って一時的に裏側へと戻ってしまった私に代わり、表の人格であったお姉ちゃんが目を覚まして……。

 

 それで、何も覚えてなんていないだろうに。無意識でこの場所まで身を移し、隠れていてくれたのだと。事実は確かめようがないけれども、私はそうなのだろうとなぜだか確信している。

 

「ちょっと……。良い話風に終わらせようとしてるけど、彩葉ってば今回はひっどいよ? 事件の発端もそうだし、知らないトコロで実は死にかけてたとか言うし、そんでもって何の準備もしないですぐに月に乗り込んで来ちゃって。全部、こうして丸くおさまった今だから笑えるけど」

「……実はそこを突かれると何も言えなかったり」

「もう、反省してよね?」

 

 そう言いながら、コテリ、と彼女は自身の頭を私の肩へと乗せる。口では「しょーがないなぁ」と言いながら、しかし声色は嬉しそうに。

 

「ねぇ、かぐや?」

「なぁに、彩葉」

 

 私はそんな彼女の頭に手を伸ばして、まるで宝物に触れる様な繊細な手つきで髪を梳き、撫で始める。かつての金髪ではなく、最初の茶髪でもなく、電子の歌姫の白い髪。絹の様な美しい長い髪。

 

 感触だとか、温度だとかは当然ない。けれども心が満たされていく。

 

 だって八千年一緒に旅をしていた間はこうして触れることだって無理だったのだ。ウミウシの身体の中に居た彼女の頭を撫でる、など不可能。それを想えば、進歩も進歩というもの。

 

 私は次第にゆっくりと頭を撫でる手を遅め、今度は自身の頭をコツンと彼女の頭に重ね合わせる。まるで頭の中を共有するように、繋げ合わせたかのように二人だけの世界が広がる。

 

 狭い洞穴の中だと言うのに、まるで二人きりの宇宙空間に居るようであった。

 

 私はそんな錯覚の中、瞳を閉じて……

 

「愛してるよ、かぐや」

 

 万感の思いを込めて、自身の想いを告げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、んぅ……」

 

 久しぶりに現実世界の眼を開く。

 

 月から戻ってきた私たちは〈ツクヨミ〉まで全員で帰還し、そうして地球へとようやく帰ってきた。

 

 芦花や真美が居たことにも大変驚いたが、まさかBlack OnyXの面々も手伝ってくれただなんて。彼女たち全員に対してもそうだけど、いろいろとFUSHIには迷惑をかけてしまった。あの時冷静さを失ったがために、大勢の人を巻き込んだのは私たち全員の失態だろう。

 

 私はすぐさま近くのベッドで寝ているはずのかぐやに眼を向けて……

 

「え……?」

 

 そして気が付いた。ベッドで寝ているはずのかぐやが居ないと言うことに。

 

「なんで……ッ!?」

 

 私は急ぎ部屋を出て廊下に躍り出る。そして周囲を見渡して、消えたかぐやの姿を探して……

 

「この匂いは……」

 

 そして廊下に出た瞬間に、下の階から漂ってくる良い匂いに鼻を鳴らした。その匂いに釣られて、くぅ、と情けない音をお腹から出してしまう。

 

 私はもしかして、と高鳴る鼓動のまま、期待を胸にして階段を下る。そこには……

 

「これって」

 

 机の上に丁寧に並べられた三人分の食事。つい先ほど盛りつけられたようで、ほかほかと湯気を立てている。匂いの元はここであったのか。再度きゅう、とお腹が鳴る。

 

 メニューは……。

 

 トウモロコシのポタージュと、ごぼうとアスパラガスのカリカリサラダ、そして……。

 

「メインはトマト煮込みハンバーグ! ズッキーニのソテーをそ・え・て♪」

「かっ、かぐっ――」

 

 たった数か月前の話だと言うのに、酷く懐かしいメニューを前にして固まっていた私の横から飛びつき、抱き着いてきた人影を、怪我しないように抱きとめる。

 

 私は今にも泣きそうになってしまって……。しかし、私たちに必要なのは涙なんかじゃなくて、笑顔だって、とっくに知っているから堪えて、口角を上げる。

 

 ぎゅう、と抱きしめる。もう二度と失いたくない、失うものかと相手が痛がらない一歩手前までの力を込めて、両腕で。彼女も私と同じようにその両腕を私の身体へと巻き付ける。

 

 二人で一人かのように、一体化したみたいに強くくっつきあう。

 

 そうして暫く抱きしめ合って、今この瞬間を噛みしめて……

 

 彼女は顔をゆっくりと上げて、こちらを覗き込みだす。

 

 目と目が合う。彼女の銀河の様な瞳が私の瞳を掴んで離さない。私はまるで魅入られたみたいに……、否。とっくのとうにその瞳に魅入られていた私は、その視線から逃げず、こちらも見つめ返す。

 

 そして互いの距離がゼロへと近づき始め……

 

 

 

「彩葉……。大好き」

「私も、好きだよ……。おかえり、かぐや」

 

 

 

 そして私たちは真の意味で、再開を祝福しあった。

 

 




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〈お知らせ〉
皆様の応援のおかげで投稿開始から一か月ほど、止まらず更新させていただいた本作ですが今話を持ちまして毎日投稿を終了させていただきます

理由といたしましてはオリ主『酒寄結葉』の物語が本編で終わり、原作主人公『酒寄彩葉』の物語が中編で終わったため、です

今後は不定期に、ネタが思いついたり急に書きたくなったら投稿させていただきたく思います

短い間ですが皆さま、ご付き合いくださり誠にありがとうございました
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