〈完結〉超かぐや姫Z!~もうちょっとだけハッピーなエンドを~   作:すっごい性癖

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多分今日も二話投稿になります


知人がライバーと知るとなんかそわそわする

 

 ヤチヨカップ、なるものが私が途中離脱したあの夜、ヤチヨのライブにて発表されたらしい。

 

 そのルールは簡単で単純明快で、期間中に最も新規のファンを獲得したライバーが超人気ライバーである月見ヤチヨとのコラボライブを行える権利がもらえるというものだそうで。

 

 ヤチヨはこれまでに配信でのコラボはあったものの、ライブは基本単独で行っていたためインターネットはお祭り騒ぎになっているとか。

 

 どうやら伝聞では、その発表現場にて身内がそれはそれは目立っていたらしいけれども、それは置いておこう。ホント、全然嫌いってわけじゃないし、なんなら好きなんだけれども。好きだからこそ直視に耐えがたい光景ってモノがある。

 

 ……で、ヤチヨカップはそのルールからわかる通り、参加資格としてライバーであることが条件となっている。まぁその言い方は因果の逆転と言いますか、受験に参加する人間は受験生である的な言葉の関係性であるとも思うけれども。

 

 とにかく、ライバーのみが参加者である以上、ヤチヨカップというものに関係している人間は私の知り合いの中では一人だけ。

 

 ……の、はずだったんだけれども。

 

「いやぁ、かぐやちゃんの行動力にはホント驚かされるねぇ」

「えっへへ。それほどでも?」

 

 ここにもう一人、そのイベントへの参加権を獲得した知り合いが現れた。

 

『かぐやもライバー始めたから見に来てよ!』

 

 そんな感じのメッセージと一緒に送られてきた謎のURL。送り主は彩葉でありながら、その短い文体からでもありありと浮かぶ送り主の顔。

 

 その時はヤチヨカップのことなど知らない私であったから、また新しいことを始めたのかな? だなんて思っていた私であったが、拒否する理由もなく言われるままにアドレスをタップし、動画配信サイトを開いたのだけれども。

 

『お……、おぅ?』

 

 それは、なんというか……。そう。悲惨。

 

 悲惨としか形容しようがない惨状であった。

 

 形式こそおそらくどこかしらのフリー素材を用いたライブ画面だが、その画面中央で陣取る配信主の姿は子供の描いた絵の様な人物像。複数枚の差分が超低クオリティのアニメーションのように入れ替わることでかろうじて手を振ったり、笑っているように錯覚させなくもない演出。

 

 子供が母の日、父の日で描いて両親に感動を届けるクレヨン製の絵が動いている、と言えばイメージしやすいだろうか。

 

 残酷ながら当然、その見た目だけでもほとんどの人間がブラウザバックするであろう光景であったのだけれども……。

 

 極めつけにBGMも、それはそれは酷かった。

 

 私自身、そこまで詳しいと言う訳ではないけれども、それでもかつての杵柄というか、音楽を構成する上でのコード等の重要性は知っている。

 

 人間に感動を与えるのも、驚愕を与えるのも、怒りを与えるのも。それらはまず原点としてコードと進行が存在していて、それらをパッチワークのように積み重ねて音楽の卵は産み落とされるのが基本。

 

 けれどもおそらくオリジナルであろう配信上のBGMは、そういった人間の文化歴史が積み重ねた理論を持ち合わせず、ランダムに、つまりは適当に鍵盤を叩いたかのような不協和音でしかなかった。

 

 とある言説によっては、猿にタイプライターを渡して適当に打たせれば、超低確率であるがシェイクスピアを書きあげる、だなんていうものもあるが、それで言えば今回はベートーベンもバッハもモーツァルトも降臨してはくれなかったということなのかもしれない。

 

 総評としては、酷い配信であった。

 

 辛口評価になってしまうが、それでもそう言うしかないほどにはボロボロで、アレを褒めるのならば間接的に他ライバーを貶していることと同義になると私はそう思う。

 

 とりあえず、そんな感想を抱きながら件の配信主の初投稿を目にした私であったが、当然困惑。

 

 それもそうだろう。急にライバーを始めた、と言われて送られてきたURLを踏んだらまるでダークウェブに上がっていそうな現代の日本人には早すぎる先鋭的すぎるものが映し出されたのだから。

 

 何かのSOSか何かなのでは、だなんてバカみたいな勘違いをした私は、急ぎ彩葉の部屋に向かい事情を聞いてやっとある程度の納得いったのだけれども……。

 

「私は止めたからね。こんなの、最初から誰が勝つのか決まっているんだって」

「む~、彩葉ってばまたそんなイジワル言って~」

 

 ポカポカポカ、と軽く両手で彩葉の背中を叩くかぐやちゃん。彩葉は「あ~、もうちょっと上の方お願い……」なんて気持ちよさそうにしている。

 

 あっ、かぐやちゃんも言われた通り肩たたきをはじめちゃったよ。「お客さん、凝ってますね~」って、どこで知ったのそんな台詞を。

 

 ふふっ、とそんな二人の様子を見て笑いが漏れ出る。なんか、日に日に相性が良くなっていっている気がする。

 

 なんて、そんな仲睦まじいことはよきかな、なんですけどもね。すこし、気になることがあるんですが。

 

「……ところでさ。かぐやちゃん?」

「ん? なぁに、結葉。結葉もかぐやマッサージのお客さんになりたいの~?」

「いやいや、それも魅力的だけどね? ちょっと気になったんだけど、その髪色、どしたの?」

 

 私の記憶の中ではかぐやちゃんの髪色って、もっと灰色と栗色との中間みたいな感じだった気がするんだが。モンブランのクリームみたいな、そんな可愛らしい髪色で、内心ちょっとうらやましかったんだけど。

 

 でも今は、なんというか、完璧な金髪というか。もう、それはそれはギャルギャルしている感じ。ちょうど、かぐやちゃんの〈ツクヨミ〉でのアバターの様な髪色だ。

 

「染めたの?」

 

 でも染めたにしてはムラがなさすぎるし、髪も全然傷んでいない。キューティクルそのままで完璧染めとか、お高い美容院でも出来ないとこ少なくないのに。

 

「ん、これ? これはね、こんな感じで変えたの。やっぱこれしかないっしょ!、ってさ。似合うっしょ?」

 

 そう言った彼女は何でもないかのようにこちらを振り向くと、

 

「ひぇっ!?」

 

 たん、たん、とリズミカルにその髪色と肌色とを自由自在に変色させてみせた。髪は金から赤、緑、青と、肌も白から茶、黒、みたいに。

 

 その変貌一回ごとにまるで別人化のように彼女は印象を変え、その総てが彼女によく似合っている。

 

 きっとそこで驚愕すべきなのだろう。人間離れしたその御業に恐れおののくのが人間として当然の反応なのだろう。

 

 けども、私はそんなことを考えられない。もっと別の想いしか湧いてこない。

 

 いや、きっと私だけではない。彼女のこの能力を目の当たりにすれば、きっと大勢の人間が。

 

 それこそ、コスプレイヤーと。

 

 そんでもって全女子はみんな共感してくれるはずだ。

 

「え、めちゃくちゃ羨ましい……」

「お姉ちゃん!?」

 

 それは、本当に心の底からの言葉であった。

 

 真に美味しいモノを食べたときの感嘆、真に美しいモノを見たときの感動、真に素晴らしいことに直面した時の礼賛。

 

 それと同じような、自分自身の感情が全て込められた本当の想い。

 

 彩葉はそんな私の様子に驚いたのか、こちらを信じられない! みたいな目でみてくるけれども。

 

 でも、よく考えてほしい。これ以上に欲しい能力が果たして存在すると言うのか? と。

 

「だって彩葉! あの能力があったらコスプレの時、ウィッグや髪染め無しで完璧な髪色再現ができるんだよ!?」

 

 常人にはきっとわからない。いや、オタクならもしかしたらわかってくれるかもしれないけど、それでも完璧にはコスプレイヤーにしかきっと共感してもらえないだろう話。

 

「アニメ風の髪色って一番難しいんだよ!」

 

 レイヤーをやってて一番文句を言われる部分ってどこだ、って言われたら私はまず第一に髪色を挙げる。それくらいに髪色は重要だ。

 

「デジタルイラストのカラーをそのまま使ったらリアルだと完全に浮くし、実際その通りの髪色を使うと『日本人顔にこの髪色は似合わなすぎw』とか言われるし、じゃあそれを考慮してリアルに適した似た色を使うと『コスプレしているのに髪色すら似てなくて草』とか言われるの」

 

 いったいどうしろというのか。普通に考えて絵具の原色一色の髪塗りとか、浮くに決まっているのに。だから個人的な解釈として、リアルに再現するなら、を行えば原作への愛が無いと言われて。

 

「顔や体型に文句を言うのは憚られるからさ、みんな髪色や衣装のクオリティで叩くんだよ……」

 

 あくまで原作への愛が私にはあります。あなたのコスプレには愛が無いみたいなので指摘させてもらいます。これは愛の鞭なのです。

 

 そういうのがいっぱいなんだ、インターネットには。私は知ってる。

 

「うぅ……」

「おぉ、結葉が落ち込んでるの初めて見た~。おもろ~」

「お姉ちゃん、コスプレはじめたばかりの頃のアンチコメントが未だにトラウマなんだよね」

 

 ごめんなさい、ごめんなさい。

 

 愛はあるつもりなんです。愛があるから、そのキャラクターになってみたくなったんです。私も何かになりたかったんです。

 

 アニメ見ました。マンガも読みました。グッズも買ってます。今度発売の円盤も予約済みです。

 

 ……あじゃぱぁ。

 

「あっ、結葉が溶けた!」

「ほっとくと治るよ。たまにあーなる」

「え゛っ!? たまにって結葉、かぐやより宇宙人みたいじゃん!」

 

 

 

 ごめんなさい。そのうちメンタル取り戻すんで、お待ちください。

 

 

 




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〈彩葉とかぐやの待ち時間〉
「コスプレか~。かぐやもやってみようかな?」
「やめときなよ。かぐやがコスプレしても、絶対そのキャラクターっぽく振舞うとかしないでしょ?」
「そんなことないよ! 完璧な演技で本物以上に変! 身! する!」
「変身って、ヒーローじゃあるまいに……」
「なんなら彩葉、かぐやがヤチヨになってあげても……?」
「ダメ。絶対ダメ」
「なんで!?」
「かぐやがヤチヨって、ムリって言うか、イメージ損失というか、名誉棄損というか」
「彩葉はかぐやを何だと思ってるの!?」
「陽キャでわがままなエイリアン」
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