TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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11枚目:トップは光る

「僕のターン。ドロー!」

 

 クリムゾン・ドラゴンの効果は無効にされているので、彼女の要とも言えるサーチ効果は使えない。今、引き当てたカードは私にも見えない。

 相手の場には『グランド・スプリーム』が1体。セットカードは『反応術式』。そして、先程のターンにサーチした『ウィント』が1枚。

 

「(決して、安心できる状況ではない)」

 

 魔法少女(コントラクター)シリーズは召喚権を切る必要こそあるが、次々と後続を引っ張って来るのが厄介だ。

 彼女達が『四季』をモチーフにしていることからも分かる様に。季節は巡るということで、冬の次には再び春が訪れる……だけではない。

 

「バトルに入ります! 跋扈するレギオンで『グランド・スプリーム』にアタック! デッキにバウンスします!」

「くっ……」

 

 幾ら、大型スタッツで破壊耐性を持っていようともバウンスを前にしてはどうしようもない。しかも、召喚方法も脱法気味なので再度フィールドに降り立つことは無いと思ってもいいだろう。

 

「そのまま、クラウディアスで攻撃!」

 

 再び、歌声の様な咆哮と共にアリスのMPを一気に削った。決着の時は近い。それは、両者にとって。だ。

 

「ワタシのターン。ドロー! ……季節は巡る。春に始まり、夏を経て、秋を過ぎ、終わり行く季節へ。『魔法少女(コントラクター)・ウィント』を召喚!」

 

 フィールドに降り立ったのは、今までに見て来た3体の『魔法少女(コントラクター)』とは一線を画す存在『ウィント』だった。

 

「この子は、試合中にプリマヴェーラ、サミー、オタム3人の召喚に成功している場合のみ召喚できる。デッキから『眷属C・ローズ』をサーチ。特殊召喚。『契約成立(ファミリアライズ)』をサルベージ。そのまま、効果を発動!」

 

 物語的に。ウィントは最後に出会う『魔法少女(コントラクター)』であり、『冬』という閉ざされた絶望の世界において、彼女は最後の希望として他の3人と比べて抜きんでた力を持っている。

 

「閉ざされた世界を抜け出して、全てを救って。白き希望! 『魔法少女(コントラクター)・ホワイト・メサイア』! 彼女の着地効果にはサーチ効果はない。その代わり、この試合中にスプリーム、ソルフレイア、紅葉の特殊召喚に成功していた場合。デッキ、セメタリー、モルグから特殊召喚できる! ただし、この効果で特殊召喚されたモンスター達は、このターン。直接攻撃ができない」

「マジか」

 

 現代の環境は高速化が進み、魔法少女(コントラクター)が全員フィールドに降り立つことなく終わることも珍しくはない。オタムが着地で来たら御の字って位だ。

 今、アリスのフィールドには4人の少女達が揃った。そして、伏せてあるカードが開かれた。

 

「反応術式! 場にいる魔法少女(コントラクター)の種類によって、発動する効果を適用する! 全員いる場合! 全ての効果の発動に加えて――このカードに対して効果の発動はできない」

「そんな」

「スプリームの効果! ワタシのフィールドのカード全てに破壊耐性! ソルフレイアの効果! 場にいるモンスター全員のATKをバンプ! 紅葉の効果! 相手のフィールドのカードを全て無効化! そして、メサイアの効果! 相手フィールドのカードを全て破壊する!」

 

 盤面がひっくり返る。シュウ君のフィールドは更地にされ、相手には強化された魔法少女達が勝負を決めんと構えている。

 苦境と劣勢からの逆転。敵ながらあっぱれと言わざるを得ない程のドラマティックな展開が、私の心をくすぐる。恋焦がれていた熱い戦いがある。

 

「ホワイト・メサイア!」

 

 振り上げた魔杖から大量のダイヤモンド・ダストが降り注いだ。

 シュウ君のMPは残り僅か。次ターンには相手モンスターの制約も解除されて、一気にフィニッシュまでもっていかれる。

 

「ターンエンド。さぁ、貴方のラストターンですよ」

「僕のターン。ドロー!」

 

 あまり奇跡ばかりに凭れ掛かりたくはないが、それでもあるのだから仕方ない。

 このバトルがもしもドラマやアニメなどで描かれていたら、きっと。こう言われるだろう。ご都合主義だと。

 

「ドローした『オリンピア召集(インヴィタティオ)』を発動! 発動した時の処理時に『クリムゾン』を含むカードをサーチ! 『拍手と喝采(アプラウスス・レストゥイト)』を持ってきます! このカードはオリンピアのカードがフィールドに出ている時に発動と処理が可能で、セメタリーかモルグからクリムゾンを含むカードをサルベージ! 当然、この舞台に必要なのは彼女だ!」

 

 観客の拍手喝采にいてもたってもいられず、死した女帝が再び姿を現した。復活したクリムゾン・ドラゴンがチラリとシュウ君の方を見た気がした。

 

『さぁ、行きましょう。マスター』

「……え?」

「貴方にも見えたんですね。『相棒』となるカードが」

 

 インヴェに使われているカードはただの情報ではない。

 プレイヤーの意思と信じる心が一定に達した時、例え。フィールドの補助装置などがなくとも、カードの方が語り掛けて来るという。

 

「クリムゾンカードをサーチ! 『紅き女王の勅命(クイーンズ・クリムゾン・オーダー)』を手札に加え! 効果を発動! ロッソ・バイパーをフィールドに! そのまま2体でコネクシオン!!」

 

 紅き女帝に毒蛇が絡みつき、フィールドに7つの頭と10の角を持つ冒涜的な存在『クリムゾン・マザーロット・ドラゴン』が顕現していた。

 

「マザーロット・ドラゴンの効果を発動! デッキからクリムゾンカードをサーチ! クリムゾン・オリンピアを手札に加え、発動! セメタリーから任意の数だけ『レギオン』モンスターをモルグへと送り、その分だけ『クリムゾン』モンスターのATKをバンプ! に加え……」

 

 相手フィールドに、1体のモンスターが特殊召喚された。『観客トークン』と言う名のモンスターはATKが0であるにも関わらず棒立ちしている。

 

「同じ数だけの観客トークンを相手フィールドに特殊召喚する。……知っています? クラウディアスって名前を持つ某皇帝ってオリンピアで優勝したことがあるんですよ。――不正でしたけど」

「ハッ」

 

 魔法少女(コントラクター)モンスターと戦闘をしても、返すターンで相手に破壊されてしまうだけだ。だが、彼女達の効果は仲間以外には及ばない。

 そう。あの観客トークンは、彼女がオリンピアで優勝したという不正を再現するかのような存在で共犯者なのだ。

 

「マザーロット・ドラゴン! 観客トークンを攻撃!」

『悪いわね。お嬢ちゃん達。次は別の機会に戦いましょう』

 

 強敵を避けて、何の罪もない観客トークンが葬られ、マザーロット・ドラゴンの攻撃がそのままアリスへと通ってMPが0になった。勝負は着いた。

 

「そこまで! 勝者! シュウ!」

 

 現実に行われている試合では拍手喝采は無い。代りに対戦した者同士で固い握手が結ばれていた。

 

「素晴らしいバトルでした。貴方とカードの信頼を感じました」

「僕も、アリスさんから大切なことを教えて貰いました。ありがとうございます」

 

 最初に手を叩いたのは誰だったか。2人の健闘を称える様にして、カードショップ内には拍手の音が響いていた。カズマが歩み寄って来た。

 

「良い試合でした。アリスにも良い影響を与えてくれたと思います。なるほど、言われていた通り。貴方には影響力がある様だ」

「言われていた通り?」

「約束は守りましょう。お前達、このショップからは引き揚げますよ。店長さん、シゲマツ君。努々、営業努力を怠らない様に」

 

 カズマは仲間達を引き連れて店から出て行った。えらくあっさりと引き下がったこともそうだが、やはりあの言葉が引っ掛かる。

 

「シゲマツ君、サクタ君。私のことはカズマ君達に話したかい?」

「話すも何も。我はヒジリ殿のことをまだよく分からぬ」

「俺に至っては、本当に今日であったばかりだし。テルアキ店長からも匿に聞いたりはしていない」

 

 だったら、誰に言われたんだろうか? ……またの機会に問うことにして。問題はこれからだ。

 

「店長。彼らは潔く引き下がってくれましたが、今後の展望はあるんですか?」

 

 店長は言葉を発せずにいた。支配されることを良しとして、自分から営業努力を放棄していたのだ。再起の芽があるとは思えないが。

 

「親父。今のバトルを見ていて、何とも思わなかったのか?」

「え?」

「……正直、カズマ達のことは気に食わねぇ。でも、アイツらが真面目にやっていたことは知っている。ストレージも使いやすいし、シングルカードも流行のモンを入れて手に取り易くしていたってのも知っている」

 

 実際、カズマ達はこのカードショップを占領していたが、使いやすくしていたのも事実だ。何故なら、プレイヤー目線で改善ができるからだ。

 どうしても個人ショップでは店と客側で意識がずれることが起きてしまうが、彼らの場合は合同で考えていた故、上手に作れていたのだろう。

 

「でも、それは俺達がやらなきゃダメなことなんだよ。俺達でこういうショップを作って、シュウ君やアリスがやっていた様な試合ができる場所を。作って行かなきゃダメなんだよ。……食わせて貰っている身で言うのはアレだけれど」

 

 最後はシゲマツ君もしりすぼみになっていた。理想と現実は違う。

 店長が店を営業していく上で背負っている苦労は一従業員でしかない私や、他の皆にも分かることではない。でも、言わずにはいられなかったのだろう。

 

「……お前に言われなくても分かっているよ。でも、減って行く売り上げを見たら、やって行けるかどうか不安で。そうしたら、渡りに船だった」

 

 その不安は誰もが抱く物だろう。雇われている身で、雇い主の苦労を理解できるなんてことは、とてもではないが言えない。

 

「このまま、ずっといてくれたらって思う反面。もしも、別の店にシマを移したらって考えはいつもあった。そうだよな、生かされるんじゃなくて。自分で生きて行かなきゃいけなかったんだよな」

「親父、それじゃあ……」

 

「まずは、連盟に連絡を入れて、やり直すことにするよ。このまま、本当に死に体になる位ならな」

 

 正直、望みは薄い。連盟は界隈で起きる問題には対処してくれるが、経営状況の改善などに関しては、アドバイス程度に留まることが多い。それでも、何かしらの紹介などはしてくれるが。

 

「ヒジリさん。今日は色々と世話になったね」

「店長に頼まれたからね。それじゃあ、私達も引き上げることにしよう」

 

 ここから客さんが来るかどうかは店長やシゲマツ君に掛かっている所だ。

 こんな話をしたけれど、数か月後には閉店していることだってあり得る。私達が動いたのは、店長と界隈のことを考えてのことであって親子の行く末を考えてのことではない。

 

「その前に、ちょっと。ショップを見て行って良いですか?」

 

 さっきまでバトルに夢中だったが、この店もまたカードショップである。

 ホームである『フィロソフィー』との違いも気になるだろう。私は対戦用のスペースにある椅子に腰掛けた。

 

「そのまま帰っても手伝いさせられるからね。もう少しゆっくりしていこうか。店長、構わないよね?」

「もちろんです。それと――いらっしゃいませ」

 

 ストレージの中身やシングルカードを漁るサクタ君を傍目に、私は使うことの無かったデッキを確認していた。下級の多くは『レギオン』を使い回しているが、エースモンスターこと相棒は違う。

 

「(結局、今日は出番が無かったね。もうしばらく、寝ておいてくれ)」

 

 エースモンスターはドラゴンではない。子羊の角を生やした妖しい獣。彼女こそが、このデッキのエースである。右手と額には666の文字が刻まれていた。

 

 

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