TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面 作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。
「この場にいるのはヒジリ殿であって、サカズキ殿ではない。もしや、苗字がそうなのか?」
「……いや。違うよ」
私は『ヒジリ』であってサカズキでは無い。少なくとも、この場において彼と私を結びつける物はない。
「そう。貴方は捨てたのね。……サクタ君だっけ。少しだけ、私の好敵手だった選手の話をしてもいいかしら?」
「その前に。ライドウ殿の試合のこともあり表が騒がしい。店長とヨシコ殿の2人では人手が足りぬ故、ヒジリ殿も向かわせて良いか?」
年下の男子に気を使われる位なのだから、今の私は余程酷い顔色をしているのだろう。……だからこそ。
「いや。サクタ君。気を遣ってくれなくても良い。それじゃあ、意味がないから」
「……心得た。然らば、聞かせて貰えぬか?」
彼女を置いて逃げ出したんだから、その怒りは受け止めなくちゃいけない。最も、私の選択は彼女を苛立たせただけだったが。
「一般的には、サカズキは環境について行けなくなってプロの世界から降りたって言われているけれど、実際は違う」
「では、どのような理由で?」
スッとライドウがデッキを取り出した。いつも彼女が使っている『雷電』デッキのスリーブじゃない。全く、別のデッキだ。
「このデッキと勝負してみれば理由は分かると思う。どんなデッキで来ても良いよ。貴方も強いでしょ?」
「分かった。では、ドローンデッキを使わせて貰う」
「ドローンデッキか。機械デッキ使いなら『エクゼキューショナー』の方を使うと思っていたんだけれど」
「誠に恥ずかしいことながら、シングルが買い揃えられんのだ」
「なら、プロキシ使っても良いよ」
プロキシ。とは、所持していないカードを何かしらの方法で代替した物である。
当然、公式では使えないし仲間内でも使用の是非は別れる所だが、学生が揃えるにはキツイカードだってあるし、実際に回してみないと枚数の調整もし辛いので、使ったことがある人間は多いだろうが。
「いや。戯れとは言え、プロプレイヤーと相対するのだから胸を張って挑ませて欲しい」
「へぇ。グループを作る奴にロクなのはいないと思っていたけれど、結構骨があるね。先攻はそっちに上げるわ」
猛烈に嫌な予感がする。『ソルジャー』デッキと違い、ドローンデッキはあらゆる方法で盤面を固めることを得意としているし、フィールドのカードを後手で破壊するつもりでも、妨害手段を手札に温存しておけるからかなり捲り難いハズだ。
「では、我のターンから。手札から『偵察ドローン』を捨てて効果を発動。デッキから『リペアドローン』をサーチ。効果の発動は?」
「無い」
「では、そのまま『リペアドローン』の効果を発動。セメタリーにある偵察ドローンを釣り上げて、フィールドに2体を特殊召喚。そのままコネクシオン! 『マザー・ドローン』を特殊召喚! このモンスターは自分・相手ターンに1度。デッキから『ドローン』カードを手札に加えることができる!」
以前、私との戦いでは短期決戦と言うこともあって、大型モンスターの『マシンテッド・ドローン』を特殊召喚していたが、ドローンデッキで誰もが太鼓判を押すモンスターと言えば『マザー・ドローン』だろう。何せ、後続兼手札誘発を毎ターン供給するのだから。
「召喚権を使って、我はコマンド・ドローンを召喚! このカードがフィールドにいる限り、ドローンカードは破壊されない。更に、モンスター効果で1ターンに1度、手札からドローンカードを特殊召喚できる! 効果を使って、手札から『デコイ・ドローン』を特殊召喚! このカードが場にある限り、相手はこのカードしか指定できなくなる!」
ドローンカードは手札誘発としても強いが、フィールドに出しても強いカードが多数存在する。状況に合わせて、どのドローンを使うか。
また、コネクシオン以外にも結合(ユナイト)召喚と言う特殊召喚方法でコネクシオンするよりも強力なモンスターを召喚できるので、足回りの良さと突破力の高さ。何よりも無効化し辛いという、環境に食い込むのも頷けるデッキだ。
「更に、この2体でコネクシオン! 『ドローン・スウォーム』を特殊召喚! このカードが特殊召喚された際、コネクシオンする際にセメタリーに送ったドローンモンスターをフィールドに蘇生した後、デッキからドローンカードを手札に加える! 我はスペルカード。『ピンポイント・ドローン・コントロール』をサーチ。カードを伏せて、ターンエンドだ!
ぶん回っている。今、サクタ君のフィールドにはモンスターが4体。
毎ターンドローンを供給する『マザー・ドローン』。効果破壊を防ぐ『コマンド・ドローン』に相手の指定を妨害する『デコイ・ドローン』。
そして、コネクシオンに使ったモンスターを蘇生して、サーチもできる『スウォーム・ドローン』だが、効果はもう一つ。
「……そして、ライドウ殿に言う必要はないと思うが。スウォーム・ドローンは場にあるドローンカードをセメタリーに送ることで、フィールドのカードを指定して効果を無効化できるということも言っておこう」
サーチ、蘇生、無効化という。ドローンデッキにおける制圧札の1枚だ。
そして、コレだけ動いたというのにサクタ君には3枚の手札(ハンド)がある。ソルジャーデッキとは比べ物にならない程の制圧力を、ライドウはどうやって返すつもりなんだろうか?
「ドロー。私のターン。手札から跋扈するレギオンを召喚!」
「!?」
「ほぅ。何のデッキかと思えば『クリムゾン・ドラゴン』デッキか。インヴェ・プレイヤーは好敵手のデッキも扱えると聞くが。だが、残念だったな! 速攻の猟犬を発動!」
心がざわつく。跋扈するレギオンは初動としてあまりに細く、速攻の猟犬で簡単に止められてしまった。この後、一体なにをするつもりなのか。ライドウに止まる気配はない。
「私は手札のモンスターの効果を発動する。モンスターの効果がモンスターの効果で止められた場合、このカードを特殊召喚できる。行きなさい。『レッド・ライダー』! 更に! 召喚・特殊召喚時にデッキから『レギオン』を特殊召喚する!」
「させん! ジャマー・ドローン! 『レッド・ライダー』を指定!」
レッド・ライダーを指定したが、ハルカも予想していたのだろう。直ぐに、切り替えして来た。
「レッド・ライダーの効果! 1ターンに1度! 相手がモンスターの効果を発動した場合! それを無効にする!」
「ならば、我はセットしていた『ピンポイント・ドローン・コントロール』を発動! このカードを発動したターン中! ドローンカードの効果指定を+1体まで増やせる! そして! 効果の発動に続けて、『スウォーム・ドローン』の効果を発動! 表側になっている『ピンポイント・コントロール・ドローン』をコストで送り、レッド・ライダーの効果を無効化!」
上手い。スペルを使いながら、同時にコストに変換している無駄のない動きだ。レッド・ライダーの動きは止められてしまった。
ただし、既に無効化されているモンスターを無効化することはできない為、ジャマー・ドローンの効果は不発に終わったのだが。
「相手のモンスター効果が無効化、または不発に終わった場合。手札から、このモンスターを特殊召喚できる。相手の思惑を上回り、勝利した暁に姿を見せなさい。『ホワイト・ライダー』! 着地時の効果で『ライダー』モンスターをサーチ! 勝利を司る、このモンスターは相手のモンスターカードの効果を受けない。私は『ブラック・ライダー』をサーチする」
強烈に。強烈に既視感のあるデッキだ。私が『レギオン』デッキ。いや『クリムゾン・ドラゴン』を握らなくなった理由を見せつけているのだ。
初動が細いレギオンで頑張って出している中、こうも簡単に展開できるんだよ。と。――最終盤面にクリムゾン・ドラゴンを使う理由がない。と。
「『ブラック・ライダー』は相手の手札が3枚以下の場合、特殊召喚できる。この条件で特殊召喚された場合、相手は手札からモンスターカードを発動できない。そろそろ、リソースも尽きて来たんじゃない?」
場に3騎士が揃ったが、知っている者なら思うだろう。後、1騎足りないと。
「私は、この3体でコネクシオン。出でよ、この勝負を終わらせる死の化身――」
3体を生贄にして、青褪めた馬に乗った騎士が1人。死と病の化身である。
「ペイルライダー! このカードは、レッド・ライダー、ホワイト・ライダー、ブラック・ライダーの3体を特殊召喚し、彼らを素材にした場合のみに特殊召喚できる! 着地時の効果は素材にした3騎を特殊召喚し、相手フィールド全てのモンスターのATKを0にし、効果を無効化にする! 吹き飛べ! アポカリプス!!」
ATKが0になったということは直接攻撃を食らうという意味であって。黙示録の4騎士が一斉に相手ドローンを破壊して、僅か1ターンで相手のMPを削り切っていた。
「お見事」
「正直、言うと。私もドローンデッキ相手にメタっちゃって大人げない所はあったと思うわ。でも、いい試合だった」
2人して固く握手をしていた。良い光景だ。だが、これは私のいや。俺に対する当てつけでもある。
「我も『レギオン』はあまり研究していなかったが、シュウ君が使うデッキと違って制圧・無効方面で強かった。現代的な強さだったが……」
「そう。このデッキにクリムゾン・ドラゴンのスペースは無いの。だって、そうでしょ? 一々、テーマカードをデッキに入れていたら圧迫されるからね。そもそも、相手の行動を妨害するのにリソースを消費するなんてことがナンセンスなのよ。なら、毎ターン無効化できる制圧札やロック・カードを入れた方が強いでしょ? レギオンデッキを上手く使うなら、これ以外ありえないから」
サクタ君が顔を歪めた。プレイヤーにとって相棒と言えるカードを要らない。と言われる屈辱が如何ほどの物か、プロであるコイツが理解していない訳がない。私は金庫を開けて、デッキを取り出した。
「おい、ハルカ。1戦だけやってやる。『俺』から、レギオンまで取るなんて嘗めた真似しやがるなら、お前でも許さない」
サクタ君が戸惑い、ハルカが獰猛な笑みを浮かべていた。表の賑わいとは裏腹に、バックルームの対面は氷点下もかくたるやと言わんばかりに冷え込んでいた。
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