TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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14枚目:暴獣顕現

「店長。ヒジリさん、バックルームに入ったきりですね」

 

 シュウが心配する傍ら、『フィロソフィー』の店内は賑わっていた。

 先程のプレイを見て、自分も「雷電」デッキを回したいという者から、あのような試合運びになった場合。自分ならどう動いていたかというケアと実践など。

 プロと呼ばれる選手達には周りを沸かすだけの熱がある。通常、店舗に招待してイベントなどを開いた場合、少なくない料金が掛かるのだが、今回の件は『ライドウ』が勝手にやったことだ。

 

「心配するな。何かあった時の為にサクタ君に行って貰った。本当はお客さんにどうこうして貰うのはよくねぇんだが、アイツらは2人きりにさせちゃいけねぇ」

 

 常識的に考えれば、客に店舗の鍵を預けるなんて行為は、余程の事態でない限りは行われないことだ。それをしたということはつまり。

 

「ヒジリさんとライドウさんって、どういう関係なんですか?」

 

 彼女が店先にやって来た時に尋ねてみたが、あの時は有耶無耶にされてしまった。つまり、あまり知られたくはない関係なのだろう。そこまで理解しているなら、シュウも返ってくる答えは分かっていた。

 

「それは、俺の口から言うことじゃねぇ。アイツの口から聞いてくれ」

「すいませーん! 店長! ストレージの前面が『インヴィテーション・マッチ』で埋められているから、まだ招待選手が来るのかって!」

「なんで、あのバカ以外にそう言うことする奴がいるんだよ!!」

 

 スタッフのヨシコが悲鳴を上げ、店長が事情説明のためにストレージコーナーに向かった。シュウも店内に居続ける為に、サクタのグループに混じって練習をしているが、いつもより団員達の熱量も高かった。

 

「まさか、プロの生試合を見られるなんて思ってもいなかった」

「やっぱ、ここをホームにしたサクタさんは『持って』いるよな」

 

 プロプレイヤー。それは『メイガス・インヴェイション』をやっている者達なら誰もが憧れて、現実と折り合いをつけて、諦めて行く物だ。

 遊びでやっている分には好きなカードを触っていれば良いが、実績を求められてから楽しいことが苦痛になるなんてことは大いにあり得る。引退した選手も数知れないし、シュウが尊敬している『サカズキ』もそうだった。

 

「(今も走り続けている『ライドウ』さんはすごいなぁ)」

 

 サカズキを追っかけていたら、好敵手である彼女の存在に辿り着くのは必然だった。『紅炎』と『蒼電』の対峙に胸を躍らせたことは一度や二度では無い。

 彼女は今も最前線に立っているが、再び好敵手と呼べるほどの相手とは巡り会っていない様だった。女性プレイヤーにそういった相手がいる。というのが風評に関わる故、公言していないだけかもしれないが。

 

「(そんな人と知り合いだなんて。ヒジリさんって、何者なんだろう?)」

 

――

 

「先攻・後攻を譲り合うなんて下らないことは言わない。サクタ君。コイントスを頼めるか? 私は表だ」

「じゃあ、私は裏ね」

「承知」

 

 サクタ君がコインを指で弾いた。テーブルの上に落ちる。裏面だった。

 

「先攻よ。私のターン『女王の召集』を発動。レギオンモンスターをサーチするけれど、効果の発動は?」

「ない。続けてどうぞ」

「私は『跋扈するレギオン』をサーチして、召喚。効果は言わなくても分かるでしょう? 効果の発動はある?」

「無い。なんなら、ペイル・ライダーの特殊召喚まで端折って良いぞ」

「釣れないこと言わないで。相手の効果に誘発しないタイプの展開もあるんだから見て行ってよ。フィールドにいる3体の跋扈するレギオンをコネクシオンして『黙示の子羊』を特殊召喚」

 

 召喚素材は『レギオン』モンスター3体と重いが『レギオン』デッキを実戦級に引き上げた立役者であり、私にとっては忌むべき中継地点のカードである。

 

「このカードは着地時に『ライダー』モンスターをサーチ。私は『レッド・ライダー』をサーチ。また、このカードを生贄に捧げることでデッキから『ライダー』カードを特殊召喚できる。効果の発動は?」

「無い」

「なら、そのまま『ホワイト・ライダー』を特殊召喚。着地時の効果で『ブラック・ライダー』をサーチ。そして、手札からスペル『聖なる号令』を発動! このカードはデッキ、手札から『号令の天騎兵(レギオン)』を特殊召喚できる! 更に、着地時の効果で、『天騎兵(レギオン)』モンスターを特殊召喚できる!」

 

 現れたのはワイルドで野蛮なレギオンとは違い、白く聖なる甲冑を纏った軍団(レギオン)。プレイヤー達からは『白レギオン』と呼ばれている、天使側のレギオン達だ。……私はコイツらがあまり好きではない。

 

「この効果を使ったターン! 自分が『レギオン』モンスターを特殊召喚する場合は『天騎兵(レギオン)』でなくてはならない! デッキから『聖列する天騎兵(レギオン)』を特殊召喚! このカードが『天騎兵』の効果で特殊召喚された場合、同名カードを特殊召喚できる!」

 

 盤面に『聖列する天騎兵(レギオン)』が並ぶ。申し訳程度に制約が付いているが、私が使っていたレギオンと言うインフラを使いながら、自分達だけは有利になる様なカードを使うコイツらが嫌いだ。

 

「スペルカード『天上に捧げる供物』を発動! フィールドの『天騎兵』モンスターをセメタリーに送り、送った数だけ手札から『ライダー』モンスターを特殊召喚する! 聖列する天騎兵2体をセメタリーに送り、レッド・ライダー、ホワイト・ライダーを特殊召喚! さらには、ライダー3体を素材にコネクシオン! ペイル・ライダー!」

 

 ペイル・ライダーが特殊召喚され、他の3騎士もセメタリーから引っ張って来られる。盤面には5体のモンスターが並んでいるのに、相手の手札には2枚。

 

「私はカードを2枚セットしてターンエンド。さぁ、どう返す?」

 

 『レッド・ライダー』により、1ターンに1回。モンスター効果は無効化され、その上『ブラック・ライダー』の効果で手札の枚数が3枚以下の場合は、手札からモンスター効果が発動できなくなる。そして、2枚の伏せカードも気になる。

 

「(予想は着くがな)」

 

 4騎士がいるなら『アレ』だっているハズだ。何より、号令の天騎兵と言う笛吹がいることが証左だ。制圧もできれば、捲りも強い。レギオンの新時代を切り開いたデッキ。それが、4騎士を中心とした『天騎兵(レギオン)』デッキだ。

 

「俺のターン。ドロー。手札から『レギオン』を生贄に、相手フィールドの『ブラック・ライダー』を生贄に送って『暴食の獣騎兵(レギオン)』を手札から特殊召喚。このカードの特殊召喚は1ターンに1度しか出来ない。この方法で特殊召喚したターン。自分が特殊召喚する『レギオン』は『獣騎兵(レギオン)』でなくてはならない」

「ヒジリ殿。そのデッキは……」

 

 サクタ君が驚いている一方、ハルカは心底嬉しそうにしていた。

 向こうが『白レギオン』なら、獣騎兵は『黒レギオン』と呼ばれており、全身を黒色の甲冑で包んだ、獣めいた狂乱の戦士達だ。

 

「そうだよ。やっぱり、使うなら強いカードを使わないと。カードに使われてこそのプレイヤーなんだから」

「……サクタ君。私のモンスター達の効果発動、生贄に送った数を数えておいて。ブラック・ライダーがいなくなったので、手札から『支配する獣騎兵(ルーラー・ザ・レギオン)』を生贄扱いとしてセメタリーに送って効果を発動。『獣騎兵(レギオン)』カードをサーチする。効果の発動は?」

「無い。好きなカードを持って来て」

「『浸食の獣騎兵(レギオン)』をサーチする。このカードは相手フィールドのモンスター1体を指定して発動できる。手札から装備スペル扱いとしてモンスターに装備し、コントロールを得る。俺はレッド・ライダーを指定する」

「効果を無効化で」」

 

 無効化効果を使わせることができた。十分だ。本命は別に打ちたかっただろうが、使わなければ無効効果を持ったモンスターが奪われるんだから、使わざるを得なかった。だが、吐き出させたら簡単。

 

「俺は『獣騎兵(レギオン)・コア』を通常召喚する。起動効果で相手モンスター1体を『獣騎兵(レギオン)』装備スペル扱いで装備する。ホワイト・ライダーはモンスター効果を受けないので、ペイル・ライダーを指定する」

「そうはさせない。セットしていたスペル『終わりを告げる笛』を発動! このカードはフィールド、セメタリーの『ライダー』モンスター4体と『号令の天騎兵』をモルグへと送り、デッキから『終末の笛吹き(トランペッター)』を特殊召喚! 相手フィールドのカードを全て破壊する!」

 

 並んでいた獣騎兵(レギオン)達が全員破壊された。4騎士と言えば、トランペッターは欠かせない。私の盤面は更地。そして、召喚権も使い切って手札(ハンド)は3枚。……そして、トランペッターにはもう一つ効果がある。

 

「貴方なら知っていると思うけれど。トランペッターはモルグに送られた『ライダー』カードを2枚デッキに戻すことで、相手の発動した効果を無効化できる。ちなみに、ターン1は無いから」

 

 状況次第では1体で2妨害以上を構えることができる。少なくとも、コイツがフィールドに降りた地点でモルグには4体の『ライダー』モンスターがいるので2妨害は確定だが。

 

「スペル『共食いする獣騎兵』を発動。セメタリーからモルグに送った『獣騎兵』の数だけ、セメタリーから『獣騎兵』モンスターを特殊召喚する。効果の発動は?」

「トランペッターで効果を無効化する」

 

 モルグから2枚のライダーモンスターがデッキへと戻る。乗り越えるべき妨害はあと一つ。残されたカードを使う。

 

「『貪欲の獣騎兵(レギオン)』はデッキから『獣騎兵(レギオン)』モンスターを生贄扱いとしてセメタリーに送ることで特殊召喚できる。私は『不死身の獣騎兵(レギオン)』をセメタリーに送って、貪欲の獣騎兵を特殊召喚。着地時の効果で『獣騎兵(レギオン)』カードをサーチする」

「トランペッターで効果を無効化」

 

 モルグにいたライダーが再びデッキに戻った。

 相手ターンには再び、ライダー達が再度展開されるというリソースの回復にも繋がるコストだが、そんな物は関係ない。何故なら、このターンで終わらせるからだ。獣騎兵は、この程度で止まらない。

 

「セメタリーの『不死身の獣騎兵(レギオン)』の効果を発動。手札、フィールドから2体のレギオンモンスターをセメタリーに送ることで、フィールドに特殊召喚できる。私は手札から効果を無効化された『浸食の獣騎兵(レギオン)』をフィールドから貪欲の獣騎兵を2体セメタリーに送る。――サクタ君。効果の発動は6回、生贄に送った数は6体でちょうど良い?」

 

 暴食の獣騎兵、支配の獣騎兵、共食いする獣騎兵、貪欲の獣騎兵、不死身の獣騎兵だけが2体。合計6体の生贄。

 支配の獣騎兵、浸食の獣騎兵、獣騎兵・コア、共食いする獣騎兵、貪欲の獣騎兵、不死身の獣騎兵。で6回の効果発動。そして、セメタリーに6体のレギオンモンスター。

 

「カウントは間違えておらんが……」

「『獣騎兵(レギオン)』モンスターの召喚・特殊召喚を6回、効果の発動を6回、生贄に送った数が6体。いずれの条件を2つ満たした状態でセメタリーから6体のレギオンモンスターをデッキに戻す! デッキから『666の獣―マスターテリオン―』を特殊召喚!」

 

 店内の正式なフィールドでもないのに、カードのパワーが強すぎて。卓上でのしょっぱい勝負にも関わらず、マスターテリオンの意思が顕現していた。

 

『やっぱり、あんなアバズレよりもボクの方が良いよね? 女の子になった君も可愛いよ』

 

 子羊の角を生やし、横長の目をした少女が私に熱っぽい視線を向けていた。ハルカにも同じ物が見て取れた。――やはり、こっちの方が期待されているんだろうな。

 

「着地時の効果。相手フィールドのカードを無効化した後、全破壊! このカードの効果の発動に対して相手は効果の発動ができず、なおかつ。このターン中、相手は効果を発動できない! そして、このカードはデッキに戻した『獣騎兵(レギオン)モンスターの数だけATKがアップする」

 

 強いってのは分かっている。なんなら、ハルカも誘っていた節はある。

 でも、俺はこのカードがあまり好きじゃない。コイツが召喚できた時点で勝負は決したも同然だからだ。遣り取りじゃなくて、特定のカードを出すだけで勝てるゲームはカードゲームと呼べるのだろうか?

 

「私は今のインヴェが好きだ。昔は自分のやりたいことをする為に相手とのやり取りが必要だったけれど、今は自分のやりたい事だけをできる。サカズキのやりたいこと! 見せてよ!!」

「マスターテリオン!!」

『じゃあね』

 

 手足を縛られ、何もできない状態で吹き飛ばすんだから。受け止められる訳がない。ハルカのMPは一撃で削り切られた。

 

「勝者。ヒジリ殿でござる」

「対戦。ありがとうございました」

 

 必死こいて回した、私に対してライドウは涼し気な顔をしていた。彼女の顔は今ではどの媒体でも見たことが無い位に満足そうな物で、それは私がサカズキだった頃によく見ていた物だった。

 

「ハルカ。コレで満足しただろ。そいつを使うのは止めろ」

「ううん。逆に燃えて来たよ。どうしたら、そっちの『レギオン』を握ってくれるの?」

「こんな場末の用心棒に絡んでいる暇があるなら、お前は表舞台の方で活躍しといてくれ。私は、このデッキが好きじゃないんだ」

「制圧デッキだから? それとも『レギオン』で『クリムゾン・マザーロット・ドラゴン』を出すより『マスターテリオン』出した方が強いって思われているから?」

「ライドウ殿。お戯れは、この辺りで」

 

 見かねたのか。サクタ君が仲裁に入ってくれた。とは言っても、彼女は久々に楽しいバトルができて上機嫌だったのか、食い下がる真似はしなかった。

 

「じゃあね。ヒジリ、また遊ぼう」

「もう来ないでくれ」

 

 裏口から出て行く彼女を見送った後、私は先程まで使用していたデッキを金庫に仕舞って、バックルームの机に突っ伏した。

 

「店長殿には事情を説明しておく」

「ありがとうね」

 

 静かに出て行った。……年下の男子に気を遣われて恥ずかしい限りだけれど、緊張とストレスの反動で瞼が重くなって、私はそのまま眠りに落ちていた。

 

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