TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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日間オリジナルで86位に乗りました! PV数もすごいしメッチャ興奮しています! ありがとうございます!!


15枚目:日常風景

「結局、ヒジリさんとライドウさんはどういう関係なんですか?」

 

 平常運転に戻った店内にて、シュウ君から尋ねられた。昨日は有耶無耶にしたが、この子は変な所で頑固なので誤魔化すのは悪手だ。故に。

 

「実は、私と彼女はかつて競い合ったこともあるライバルだったのさ。いや、人気者は辛いね」

 

 こういう時は事実を言いながらも、変なことを言っている風を装うのが一番だ。ダウナーお姉さんの小粋なジョークとして、一笑いして貰おうかと思ったが。

 

「……」

「少年。ここはジョークですか? と、苦笑いしながらツッコミを入れる所だぞ」

 

 何故、私がセルフで茶化さなければならないのか。少しは疑って欲しい物である。仕方ない、私自身でケアをしよう。

 

「冷静に考えてもみたまえよ。サカズキ選手のファンなら、大なり小なり彼女のことも知っているだろう。彼女のインタビューを見れば分かるが、徒にライバルを作る様な奴じゃない」

「でも、ヒジリさんとはずっと前から知り合いだったような感じですし」

「彼女だってインヴェ関係以外の友人位はいるだろう」

 

 多分、いるハズ。やたらと粘着された記憶があるが、彼女にだって普通の友達位はいるに決まっている。

 

「じゃあ、どういう縁で知り合った友人なんです?」

「掘って来るじゃないか。だが、彼女にもプライバシーはあるからね。私が話せるのはここまでだよ」

 

 これ以上、深堀されたら現役時代の話がポロリと出て来そうなので打ち切ることにした。シュウ君も相手のプレミを誘発させられるようなタクティクスを学んでいるなら上々だ。

 だが、彼は納得行ってなさそうだ。それもそうか。だって、昨日は結局バックルームで気絶する様に寝てしまっていたらしいし。幸い、サクタ君が店長に事情を説明してくれたが。

 

「(さすがに面倒を掛けた手前。サクタ君にはある程度の事情を説明しないと。かな……)」

「じゃあ、昨日は店の奥に引っ込んだ後は何をしていたんですか?」

「質問攻めじゃないか。でも、これは業務に関わることだから話せないね。というか、アレだ。さっきからずっと君のターン! じゃないか。私にもターンを回してくれよ。展開はここで打ち止めだ」

 

 コレだけやられたんだから、私も捲って行かなければ。彼とカドショで知り合ってから、そこそこの時間が経つが意外と謎は多い。

 まず、彼が友人と来ている所を見たことが無い。以前にも聞いたが、彼の『クリムゾン・ドラゴン』デッキはパワーが高くないので、同級生とウマが合わないであろうことは知っていた。

 今でこそ、炸裂団のメンバーに混じって遊んではいるが、こうも頻繁に来ていて親御さんは何も言わないのだろうか?

 

「僕に聞きたいこと。ですか?」

「そうだよ。散々、私のプライベートに突っ込んで来たんだから。君のプライベートも聞こうじゃないか」

 

 インヴェ関係の話は散々聞いたし、かと言って家庭関係の話は結構センシティブな所もあるから触り難い。……意外と質問し辛いな。

 

「結構な頻度でウチに来ているけれど、お母さんは何か言ったりとかは?」

「特には。むしろ、家の中に1人でいる位なら、ヒジリさんやサクタさん達がいるこっちにいてくれた方が良いって」

 

 つまり、裏返せば。彼のお母さんは家に帰って来るのが遅いのだろう。

 現代では夫婦共働きなんて珍しくも何ともない。それよりも気になることがあるとスレば。

 

「もしかして、私達のことも話している?」

「はい。サクタさんのことを話したら、お母さんもお父さんもすごく喜んでくれたんですよ。そう言うことなら、仲良くしなさいって」

「私は?」

 

 サクタ君のことを話した時とは一転して、スーッと目を逸らした。

 話さないのは彼なりの気遣いだろうか。聞かない方が良いとは分かっているんだが、そういう条件だと逆に聞きたくなってしまう人の性はなんだろうか?

 

「えっと……カードショップの店員さんとだけ」

「他にも色々とあるだろう? ホラ、頼りがいがあるだとか。インヴェに詳しくて強くてユーモアがあるお姉さんだとか。ねぇ?」

「いや、その。こう、お母さん達からは変わった人だね。とだけ」

 

 酷い。なんて言う評価だ。きっとご両親は私を誤解している。こんなにシュウ君やカードショップのことを気に掛けているのに。

 

「きっと、紹介方法が悪かったんだ。カードショップで働いている女性って点で言うなら、ヨシコちゃんだってそうだし。もっと詳しく話してくれたら、誤解が解けるよ」

「いや、あの。ちゃんと話したんです」

 

 なんだ。シュウ君からも誤解を解くように話してくれたのか。きっと、変わった人と言うのは前振りだね。

 

「ストレージの前面に悪戯していて、迷惑客を追い出す用心棒として雇われていて、よく僕の相手をしてくれる人って」

「困ったな。最後以外は変な人としか言いようがない」

 

 なんなら最後の方が一番ヤバいかもしれない。そんな奴が可愛い息子さんに構いまくっているなら、親御さんも心配するだろう。……なんだか猛烈に悔しくなって来たぞ。

 

「ちょっと待って欲しい。それを言ったら、サクタ君なんてグループを作って、ウチにシマ取りにまで来ているし、一人称が我なのに。それは良いの?」

「え? ヒジリさん。サクタさんのこと聞いてないんですか?」

「え? ……もしかして、2人って」

 

 スッとスマホの画面を見せてくれた。そこには、サクタが作ったチャットルームが表示されていた。もちろん、シュウ君も参加しているのだろう。

 

「チャットしたり、スマホの配信機能を使ってバトルしていますけれど」

 

 絶句した。つまり、私が店内のストレージからせっせと『虚無』やら『埋蔵』のカードを探し当てて、前面に差し込んでいる間。彼らはチャットして、配信して交流を深めていたのだ。

 

「サクタ君め。私の知らない間に爆アド稼いでいるね。そう言った甲斐甲斐しさが、ご両親の好感度を稼いだのか」

「それもあるんですけれど」

 

 ガーッと自動ドアが開いた。集団であったが、彼らが炸裂団でないことは直ぐに分かった。

 

「俺達は『牙獣連合』! この店は『ライドウ ハルカ』が訪れる程の店であるらしいな! その上、賞金首の用心棒もいると来た! ここをシマにできれば、俺達の名も挙がる! シマにした暁には、利用の度に1人2000円以上は金を落とす!!」

 

 客達の視線が集まる。店長も『はよ処理しろ』みたいな顔をしている。

 最近は平和で忘れていたけれど、私の役目って元々こういうのだったよな。デッキケースにはいつものメタビデッキ。

 

「シュウ君、シュウ君。見ておきなさい。コレからの活躍を赤裸々に話せば、私の評価は変な人から物静かでクールなお姉さんに変わるハズだ」

「はぁ……」

 

 つかつか。ドスンと適当な卓に腰を下ろす。相手も私が用心棒だということを把握しているのか、同じ様に対面に座って来た。

 そして、デッキを取り出しシャッフル、カットを入れる。防衛側の私は無条件で先攻を取れる。

 

「フフフ。『HU-MAN』の連中は後れを取ったらしいが、俺達はそうはいかんぞ! 牙獣の素早さと攻撃力が、お前を徹底的に叩く!!」

「『一点集中』を発動。この試合中の召喚権が2回に増えて、ドローも2枚になる。手札のモンスターカードの効果は使えなくなる。『ボーダー・コントロール』を召喚。このカードは自分フィールドのモンスターの数が、相手フィールドのモンスターの数より多い場合。相手はモンスター効果を発動できなくなる」

「え?」

 

 手札(ハンド)が素晴らしい。こんだけガン回しできたら、クソ遅いメタビでも楽しいに決まっている。

 『ボーダー・コントローラー』がいるので速攻の猟犬も使えないし、ドローし放題だ。相手は呆然としていた。私のやる気に呼応してか『ヴォイド・マン』も姿を現していた。

 

『本当にカスみたいなマスターですね』

「そして、横に『ヴォイド・マン』を添えて、カードを2枚セットした後。『奈落の借財』を発動。発動したターン中は特殊召喚ができない。効果で3枚になる様にドローするけれど、ターンの終わりに全てセメタリーに送る。3枚伏せてエンド」

『相手が可哀想ですねぇ』

 

 2体の封殺モンスターに5枚のセット。本当に気持ちが良い。捲られる心配もなければ相手のなが~い、なが~い展開を見ることもなければ、息が詰まったりテーマの刷新や新規に心をすり減らすこともないオアシスみたいなデッキだ。

 

『相手に重税を課しているんですが』

「(私が楽しければいいんだよ)」

「まだだ! 俺は諦めない! この相棒達に誓って!! ドロー!!」

 

 フッと相手が微笑んだ。捲る札でも出てきたんだろうか。よくよく観察することにしよう。

 

「俺は手札から『豪嵐の一掃』を発動! バックのカードを全て破壊する!」

「セットしていた『質実剛健牢』を発動。このカードがフィールドに状にある限り。自分は特殊召喚が行えず、自分フィールドのカードは効果で破壊されない」

 

 3枚ドローで上振れ札も来てノリノリである。まだまだ、4枚のカードがあるから突破できる物なら、突破して欲しい。

 

「くっ! 行け! 『白銀の賢狼』! 更に、装備スペルを」

「あ。ちょっと待って。神告を発動。コストとしてMPを半分払って召喚を無効化」

 

 恐らく、彼はモンスターに装備スペルを付けて打点による突破を狙ったのだろうけれど、ワンチャンは実らず、ワンちゃんはセメタリーに送られた。

 

「……カードを伏せてエンド」

「私のターン。ドロー。『サイファー・ヴァニッシャ―』を召喚。このカードがフィールドにある限り、お互いに特殊召喚できない」

『私の友達ですね』

 

 今日は『ヴォイド・マン』が饒舌なので、私もガラに無く張り切っているのだろう。相手のセットカードが攻撃反応型かもしれないが、破壊出来ないので関係ないのか。一気に突っ込んだ。相手のMPが半分以上は減った。

 

「頼む、頼む……!」

 

 先程の熱血路線から祈る様な姿になっていたので、私は手元をモニョモニョさせていた。もしも、手札(ハンド)がキチンとあったらシャカシャカパチパチしていたことだろう。

 

「来た! 俺のターン! スペル『虚無(ヴォイド)』を発動! 相手モンスターの効果を無効化にする! 『ボーダー。コントローラー』を指定!! ……通りますか?」

「駄目ですぅ」

 

 ペラっとセットカードを開いた。コチラもまた『神告』。召喚・特殊召喚以外にもスペルの発動も封じられるが、MPがまたゴッソリと減ってしまった。

 

「もう、私のMPも1/4しか残っていないね」

『今日はいつになく上機嫌ですね。私も嬉しいですよ。相手の熱意が、勝利への渇望が、全て消えゆき、虚空(ヴォイド)に帰して行く姿が。ン“ッ”!!』

 

 気持ち悪いモンスターだなぁ。コレに比べたら、マスターテリオンやマザーロット・ドラゴンがどれだけ可愛いか。

 牙獣軍団は既スリーブやパックを買って帰る準備をしているし、店内のキッズ達も自分達の試合に戻り始めている。最後まで見て行かないか。

 

「お、俺は。密林タイガーを出してターンエン……」

「セットスペルの『消滅(ヴァニッシュ)』を使います。このカードは召喚された時に発動できて……」

「サレで」

 

 最後までやり切らない内に相手はカードを直してデッキケースに仕舞って、律儀に2000円以上落して帰って行った。周りも既に関心が無くなっている中、シュウ君の卓に戻った。

 

「私の試合どうだった?」

「変な人から嫌な人にランクダウンしそうでした……」

「ど う し て」

 

 こんなにもキッチリと店を守ったのに酷い。私が落ち込んでいると、再び店の扉が開いて、いつもの一団こと。炸裂団が入って来た。

 

「今しがた、集団とすれ違ったのだが。また、シマ取りが?」

「はい。ヒジリさんが撃退していました」

 

 炸裂団が入店するとキッズからちょっと年齢が上のお兄さん達まで歓迎するのだ。シマ取りより、よっぽどスマートに支配している。この手際の良さにシュウ君の御両親もやられたというのか。

 

「さすが、ヒジリ殿であるな。昨日の今日だというのに。見事な手際に候」

「サクタ君……」

 

 なるほど。ご両親が懐柔される訳だ。とりあえず、次の連中が来るまで……ストレージを漁って、豊作のスペルカードでも集めておこう。私は席を立った。

 

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