TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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16枚目:順風満喫な日々。いつまでも続く物だと思っていました……。

「バカな。この俺が……」

 

 某小規模店舗。1人の用心棒がスマホに表示されている己のMPを見て絶句していた。彼は敗北したのだ。

 

「元・プロプレイヤーと言っても、この程度ですか。まぁ、運動と違って回し方や経験さえ積めば、私達だって対抗できる世界ですからね。今日から、ここは『HU-MAN』のシマとなります」

 

 メンバーも喜び勇むということは無く、契約金替わりと言わんばかりにカードサプライヤーやシングルカードを買っていく。さながら、店舗自体を品定めしているようでもあった。

 用心棒以外にも反対していた常連客なども勝負を仕掛けていたが、いずれも『HU-MAN』のメンバーが退けていた。

 

「そんな!」

「環境デッキを握って、力に酔いしれているんですか。ケアから何までお粗末ですね」

 

 その中にはアリスの姿もあった。常連客達が出て行き、一部の者が残る中。今度は新たな集団が現れた。

 

「我々は『酔虎会』。ここのシマは我々も狙っていたが」

「既に、我々の物となりました。お引き取りを」

「否。インヴェプレイヤーの決定は勝負でのみ決まる。真の支配者になるのは我々だ!」

 

 酔虎会と呼ばれたメンバーが卓に着き、再び勝負が始まる。シマを狙うのはグループだけではなく、また別のグループが島を取る戦国時代めいた様相になっていた。

 

――

 

 今更だが『メイガス・インヴェイション』が流行っているからって『用心棒』なんて仕事が成り立つのは、すごい社会だと思っている。

 一プレイヤーに過ぎない自分が、インヴェの影響力がどれほどの物かを推し量る術は持たないが、一つ言えるのは。

 

「『ヴォイド・マン』『ボーダー・コントローラー』を召喚。1枚のカードをセットした後、奈落の借財で引いた3枚を伏せて、私はターンエンドだ」

「なんで的確に引けるんだよ! 積み込みしているだろ!」

「カットをしたのは君だから、君のせいでーす」

 

 今は滅茶苦茶楽しいということだ。

 今日も今日とてグループの連中を追い返しているが、周りの客もすっかりと調教されたのか、敗者の負け惜しみをBGMにする位の余裕は持っていた。

 シゲマツ君の店舗みたいに支配されたりする店舗もある中、この店は上手に立ち回れていると言えるだろう。ただ、弊害もある。

 

「店長! ハードスリーブ品切れです! 後、魔法少女(コントラクター)のキャラスリとオーバースリーブも!!」

「この間、入れたばっかりだぞ!!」

 

 ヨシコちゃんと店長が悲鳴を上げていた。グループの連中は勝負に来た際、勝敗に関わらず、商品を結構購入して行ってくれる。ここら辺の律義さだけは本当に感心している。安くもない額だろうに。

 最近は挑戦するグループも多く、店内のシングルカードからパックまでガンガン買われて行っている。

 特に、スリーブなどを始めとしたカードサプライヤーなんて幾らでも必要だし、スリーブを飾る為のキャラスリーブを保護する為のスリーブもガンガン買われるので、在庫の減りが滅茶苦茶早かった。

 

「フム。さながら、私は商売繁盛、福の神って所だね」

「加えて言うなら、誰かが買っている所を見ると。無くなるかもと思って、常連さんも買っていますからね」

 

 グループの連中はどういう訳か金を持っている。例のよく分からない資金源だ。何処とも分からないスポンサー様がウチに投資してくれている。と思うと、迷惑と思う反面。ありがたや。と両手を合わせてしまいそうになる。

 今日だけで3,4戦位グループの連中を追い払ったが、まだまだ来るかもしれないので、彼らの後方で師匠面をして待機している。と、見たことのある顔が入って来た。シュウ君が立ち上がった。

 

「アリスさん!」

「お久しぶりです。元気にしていましたか?」

 

 かつて、店長の後輩が経営する店舗を実効支配していたグループ『HU-MAN』のメンバーであり、シュウ君とも対戦したことがある彼がやって来たのは遊びに来た。という訳ではないのだろう。

 

「おかげで商売繁盛だよ」

「それはよろしいことで。ですが、他の店舗は違います」

 

 あまり、SNS等を見ないのでライジング・スター等の大型店舗を除く他店舗がどうなっているかは分からなかったのだが、アリスはスマホの画面を見せつけて来た。

 

 

『これから、この店舗は牙獣連合のシマだ! ここをホームとするぞ!』

 

『おじいちゃん。そろそろ、辛くなって来ただろう。俺達『焼却(バーン)同盟』が手伝うからよ。なんでって? へへっ。俺、昔爺ちゃん子だったんで』

 

『え? 店長のヘルニアが悪化したから閉めるって? そんな! この店を楽しみにしているキッズ達もいるんですよ! バイトしている子を臨時の店長にして、俺達『爆爆爆爆爆・爆ー爆爆(ボンバー)グループが店を支えます!』

 

 

 どうやら、順風満喫だったのはウチだけだったらしく。割と小規模店舗だと用心棒が倒されたり、実効支配を受けたりというパターンも多いらしい。

 

「そうだろうか。我の目には牙獣連合以外は人情劇をやっているようにしか思えんのだが……」

「特殊なパターンは映像に残されやすいですからね。それに、こういう人らならシマにされても。という情報戦略の一面もあるんですよ」

 

 ちょっとした広報みたいな物か。こういった環境の中で生き残っていることを考えたら、ウチの店舗は幸運なのだろうが。

 

「でも、店舗の数は限られているから。このままだとグループが支配したシマを別のグループが取ったりすることになりそうだね」

「そうです。ですが、シマの取り合いは望ましくはありません。そんなことをしたら店の寿命が尽きるのが早くなってしまいます」

 

 グループによって管理方法とかお店への接し方が違うのだろう。全部が『HU-MAN』めいてキッチリと管理されている訳じゃないだろうし。

 

「それを言うなら、シマ取りなんてやめて欲しいけれどね。で、なんで私の所に来たの?」

「こうなったら、一番強いグループがシマを束ねる。ということに持って行こうと思うのですが、グループのトップ同士が争ったら、もっと尾を引きかねないので」

 

 サクタ君の方を見た。頷いた。彼らの勢力図は私が思うよりも煩雑な物だろうか。インヴェプレイヤーと言うことで誤魔化されている面はあるけれど、ちょっとした『族』みたいな面もあるだろうし。

 

「付け加えて言うなら。チンピラの様なプレイヤーは幾らでもいる。束ねるグループの権威が無くなれば、魍魎跋扈の世が来るだろう」

「なんで、ルールとマナーを守って楽しく遊べないんだ」

「半端な覚悟でインヴェの世界に入って来るな。ということです」

 

 アリスは見た目が可愛いので誤解されがちだが、気性はインヴェプレイヤーの申し子と言わんばかりにトゲトゲしている。

 

「なるほど。要するにグループの体裁は守りたいから、お互いの強弱は着けたくないってことね。で、なんで私に?」

「実は一定以上のシマを確保したグループは、ヒジリさんへの挑戦権を得るという形にしようと思いまして。通達に来ました」

 

 コレには私だけでなくシュウ君とサクタ君も開いた口が塞がらなかった。私はボスキャラじゃないんだぞ。

 

「ちょっと待って欲しい。なんで私?」

「アレだけ大量のグループを撃退しておきながら、なんでは無いでしょう。今、グループ内で最もヘイトと撃退率が高いのがヒジリさんなんですよ」

 

 撃退率が高いというのはまぁいい。用心棒、冥利に尽きる。ただ、ヘイト率が高いというのはどういうことだろう。

 

「もしかしなくとも。私の戦い方、嫌われている?」

「滅茶苦茶嫌われていますね。意見に関しては……いや。見せるのは止めておきましょう」

 

 逆にすごい気になる。いや、やっぱりロクでもないから気にしない方が良いが、気になるので気を逸らすことにしよう。

 

「私に拒否権は?」

「拒否権も何も。用心棒ですから、勝負を受ける他無いでしょう。という訳で、暫く挑戦が止むということ。それに合わせた発注などをして貰うために通達に来ました」

 

 そこは一応、気遣ってくれるんだな。ただ、通達が遅かったせいで今日だけで3,4件位撃退させられていたが。

 アリスがしてくれた話は店長も聞いていたが訝し気な顔をするばかりだった。というのも。

 

「働いたこともねぇガキに店がどうこう心配して貰う必要はねぇよ。バカな真似してねぇで普通に遊べ」

「ご忠告ありがとうございます。でも、全部が全部。この店みたいに素敵なカドショばかりではありませんから」

 

 スッと立ち上がって、アリスもカードサプライヤーを探していたが。

 

「魔法少女(コントラクター)のキャラスリは品切れしているんだ。ごめんよ」

「あら。でも、売り切れているってことはワタシ以外にもファンの人が沢山いるってことだから、少し嬉しいかも。じゃあ、パーツ抜き用にストラクチャーデッキを貰うことにしますわ。それでは」

 

 パーツ抜き用にストラクチャーを買って、アリスは去って行った。なんて、碌でもない! と思っていると。店内の電話がジリリと鳴った。

 

「はい。こちら、フィロソフィー。……え? 連盟が? ちょっと待って下さい。おい、ヒジリ」

「拒否しちゃ駄目ですか?」

 

 首を横に振られた。そりゃ、応えない訳にはいかないよな。ほぼ予想はできていたが、それでも電話を取らざるを得なかった。

 

『ヒジリ君ですか。私です。連盟の会長です。単刀直入に申します。グループから申し出のあった、小中規模店舗最強の用心棒として貴方を取り立てたいと思っています。話を詰めたいので、お越しになって貰って良いですか?』

 

 この申し込みを断れる奴が居る訳がない。私はショボショボした顔で頷くしかなかった。何が福の神だ。私に厄を押し付けているだけじゃないかと、先程までの自画自賛を呪った。

 

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