TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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18枚目:大変だぁっ! 俺達のトップが!!

 連盟から崇高な使命と高価なデッキを受け取り、焼肉弁当と言う対価を受け取ったが、彼らの期待に応えるつもりはない。

 現在の私には、このメタビートがあるからだ。ちょっと気になって調べてみたが、案の定。通販などでは『ヴォイド・マン』が1000円位していた。

 

「もしかして、私は『ヴォイド・マン』のプロデューサーなのかもしれない」

「局所的なプロデューサーですね……」

 

 現在、私はシュウ君と対戦していた。というのも、どういう訳か常連集団と言える『炸裂団』が最近、店に来ないからだ。という訳で、私がストラクチャーデッキ辺りで彼と遊ぼうと思っていたのだが。

 

『ヒジリさんのメタビと戦ってみたいです』

 

 と、本人きっての希望で私はいつものデッキを使っている。

 防衛線とは違い、先攻後攻はコイントスで決まるのだが、メタビの脅威を見せつけろ。と言わんばかりに先攻を引いたので、存分に回していた。

 

「スペル『無限の強欲』を発動。このカードは手札が3枚以上あるときに使えて、1枚ドローできる。ターン終了後、手札をすべて捨てる。ドロー。再び『無限の強欲』を発動。ドロー。『ボーダー・コントローラー』を召喚。手札を3枚伏せてターンエンド」

「僕のターン! ドロー!」

 

 捨てる手札が残っていないので、私はハンドレスなのだが『ボーダー・コントローラー』がいる限り、展開も満足にできないだろう。

 

「レギオン・アクィリフェルを召喚! 効果の発動は?」

「無いよ」

「では、そのままバトルに入ります。アクィリフェルで『ボーダー・コントローラー』攻撃!」

「セットスペル発動。『仕込み武器』を発動。このカードは発動後、装備スペルとなって装備される。装備したモンスターのATKは相手モンスターの100高い数値になる」

 

 勇ましく、アクィリフェルが突っ込んで来たが『ボーダー・コントローラー』の仕込み武器によって返り討ちに遭っていた。

 

「う……」

「難しいよね。排除しなきゃ展開はできないけれど、召喚したら何が飛んで来るか、攻撃しても何が飛んで来るか。相手のやることを徹底的にメタるから『メタビート』なんだよね」

 

 特殊召喚をしようにも効果の発動を介する必要があるし、実質。特殊召喚を封じたも同然だ。

 

「僕はスペルを2枚伏せて終わりです。ターンエンド」

「では、私のターン。ドローした『一点集中』を発動。この試合中、私の召喚権が1つ増え、ドロー枚数も2枚に増える。『ボーダー・コントローラー』で攻撃」

 

 チクチク。派手さもなければ、展開や複雑な戦略もない。相手を沼に引きずり込んで、藻掻けば、藻掻くほど溺れる場所に引きずり込んで行く。

 

「ターンエンド」

「僕のターン。……ドローしたレギオンを場に出してターンエンド」

「私のターン。2枚ドローする。『ヴォイド・マン』を召喚。2体で攻撃した後、カードを1枚セットしてエンド」

 

 変化もほとんどない穏やかで緩い試合だ。私が初めてカードを触った時の頃を思い出す。あの時は少しずつアドバンテージを広げて行って、というアドバンテージがあって楽しかった。

 

「僕のターン……すいません。投了で」

「ウム。ちなみに伏せていたセットカードはこんなんだったよ」

 

・神告

・質実剛健牢

・消滅(ヴァニッシュ)

 

「これ。先攻以外で回るんですか?」

「ほぼ無理だね。気合で回せなくはないけれど、そんなことするなら普通に環境デッキを回した方が良いよ」

 

 基本的にメタビデッキは後攻を取ったらゲームセットみたいな所がある。封じることはできても突破することは不可能だからだ。

 

「どうして、ヒジリさんはそんなデッキを?」

「現代のインヴェがあまり好きじゃないからだよ。展開だのルートだの疲れたんだ。そう言う難しいことを止めてポン出しで済ませられるからね」

 

 カードショップの店員として言うべきではないのだろうが『メイガス・インヴェイション』も商品である以上、利益を上げなくてはいけない訳で。

 となれば必然的に、購入意欲を煽る様な強力なカードがどんどん発売されて行く。その度に環境が刷新され、また新しいデッキを構築する必要が出て来るというサイクルに付き合いきれなくなった。

 

「なんか、ちょっともったいない気もしますけれど」

「その残念さは自分で環境を握って晴らしてみようか。……で、そういう話をするならサクタ君が一番なんだけれど、本当に来ないね。シュウ君、何か連絡は?」

「いいえ。何も」

 

 基本、ほぼ毎日顔を出しているし、彼がいなくても団員達が出入りしているハズだが、今日は団員の顔すら見ない。一体何が? と思っていると、店内に駆け込んでくる人間が1人。炸裂団のメンバーだ。

 

「ヒジリさん! シュウ君! 大変だぁ! サクタさんが。サクタさんが!」

 

 心臓が跳ね上がる。まさか、サクタ君の身に何かあったのだろうか。彼に続きを促した。

 

「サクタさんが――ハーレムに入れられたんだぁ!!」

「「……」」

 

 きっと、チベットスナギツネみたいな顔になったのは私とシュウ君だけじゃない。このカドショにいる者達全員が似たような顔をしていただろう。……気は進まないが、事情を聞くことにした。

 

――

 

「実は俺達、有力なグループの情報を探してカドショ巡りしているんですよ。それで、数日前に寄った店舗でのことです。そのシマは女子グループの管轄下にあったんですけれど」

 

 女性プレイヤーは割と珍しい。インヴェが有名だとしても、やはりカードゲームということで女子が敬遠する要素は幾らでもあるからだ。

 

「見学だけして帰るつもりだったんですけれど、追い出された用心棒が復讐に来やがったんですよ。しかも、ソイツらもメタビ使いでさァ! ヒジリさんの猿真似するだなんて、ふてぇ野郎だと思いませんか?」

「……ソウダネ」

 

 もしかして、ソイツの顔は見たことがあるかもしれない。いや、そんなことはどうでもよくて。

 

「んで、その女子グループがメタビに雁字搦めにされて奪い返されそうになった時です。そこはウチのトップ。サクタさんですよ! 『猿真似が』って言ってね。その場で叩き潰したんですよ! そりゃあ、俺達が感心するんですよ。助けられた側としては、当然興味持つ訳じゃないですか!」

 

 長い。話が長い。事実に対する感想の割合が多すぎて、思ったよりも情報量が少ない。私もシュウ君も苦笑いを浮かべるばかりだった。

 

「そもそも。シマを奪っている側に加担するのはどうなんだい?」

「まぁ、一旦置いといてください。んで、後は女子グループに指導だの何だので捕まってサクタさんは該当の店舗に拘束されているって訳でさァ。このままじゃ、俺達の活動に支障が出る! ヒジリの姐さん! 助けに行きましょうや!」

「え? なんで?」

 

 話を聞いている限り、件の女子グループに脅されたりという感じでもなさそうだし、サクタ君が自分の意思で指導しているって言うんなら、私が出る幕ではなさそうだが。

 

「サクタさんが、この店に来なくなっても良いって言うんですか!?」

「いや。それを決めるのはサクタ君だろう? 仮に行って欲しくないっていうんなら、まずは君達が交渉するべきだと思うが……」

 

 店としては太客なので、サクタ君達を離したくはないのだが、あくまで店と客と言う関係なので強制することはできない。

 恐らく、コレで付いて来てくれると思っていたのか。団員君は狼狽えていた。しかし、土壇場で何かを思いついたらしい。私ではなく、シュウ君を見た。

 

「シュウ君も、サクタさんがいなくなったら困るよな?」

「え? あ、はい」

 

 将を射んとする者はまず馬を射よというが、今度はシュウ君に狙いを変えて来たか。実際に、彼は炸裂団から多くの恩恵をあずかっている。

 

「だったら、一緒に説得に来てくれよ。な? あ、でも。保護者も一緒にいてくれると良いんだけれど……」

 

 なんでバカそうなのに変な所で頭が回るんだ。……一応、シマ取りは来ないという話になっているが、店長の方を見た。難しそうな顔をしている。

 

「行ってこい。何かあったら、間に入ってやれ」

「アザーッス!」

「なんか、私。保護者みたいな扱いになっているね」

 

 今回は討ち入りに行く話ではないので『獣騎兵(レギオン)』のデッキを持って行く必要はないが、先日貰ったデッキを持って行くことにしよう。

 

「シュウ君。嫌なら、嫌だって言いなよ?」

「……でも、炸裂団の皆さんにはお世話になっていますし。やっぱり、サクタさんがお店に来てくれないと寂しいですよ」

 

 ふぅん、天使族と言う訳か。例の団員も目頭を押さえていた。

 どうにも最近はカドショだけじゃなくて界隈だのグループだの口を挟む箇所が増えすぎて行っている様な気もするが、とりあえず。彼らの言うお店に向かうことにした。

 

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