TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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28枚目:因果応報

「店長。コレは用心棒としての試合じゃ無いんだから、遊んでいるってことになるんじゃ?」

 

 ヨシコちゃんが素朴な疑問をしていたが、もはや今更と言う気もする。そもそも、業務らしい業務もあんまりしていないが。

 

「俺もそう思うけど。ギャラリーが集まっている手前、中止にもできねぇんだ」

 

 ここの客達もすっかりトラブルに慣れてしまって、野次馬根性が骨の髄まで染み込んでしまっている。もはやイベントみたいな物だと思われている節がある。

 

「今日はメタビ使わないんだってさ!」

「マジかよ。伏せパカで強い用心棒じゃない試合が見られるのか」

「前みたいに、レギオンデッキとか使うのかな?」

 

 ギャラリーが好き勝手に予想を立てているし、後ろの方ではシュウ君がほんのり期待している。彼の期待を裏切る様で悪いが、私のデッキは金に物を言わせた環境デッキだ。

 

「(シュウ君を誘致しようとする不埒物には金と環境の力でボコボコにしてやる)」

「何時になくヒジリさんがゲスい表情をしている」

 

 サクタ君がまだ来ていないので、今日はヨシコちゃんに審判をして貰っている。彼女も一応はインヴェのルールを理解してはいる。

 

「じゃあ、僕は裏で」

「私は表で」

 

 この処理も卓の機能に備わっているのだが、やっぱり指で弾いて欲しいという変な拘りがある。ヨシコちゃんがコインを弾いた。

 

「裏です!」

「じゃあ、僕から先攻だね。手札から『凪禽―風見のハヤブサ―』を召喚。更に手札から永続のスペル『風殺結界』を発動。このカードがフィールド上に存在する限り、1ターンに1回。『凪禽』モンスターの効果が発動した場合、相手は手札を1枚ランダムで公開する」

 

 フィールドに渦が立ち込める。『凪禽』が得意とする狩場が形成され、この場に迷い込んでしまった獲物(ハンド)は容赦なく狩り取られる。

 

「手札から『共餌者のカラス』の効果を発動。このカードは『凪禽』モンスターがフィールドにいる場合、手札から特殊召喚できる。ハヤブサとカラスをコネクシオン。『凪禽―黒智の渡鴉(レイヴン)―』を特殊召喚」

 

 勇壮な猛禽類が舞うフィールドに1羽。漆黒の羽を揺らめかせて、狩場を俯瞰する様に飛び回っている。

 

「このモンスターがフィールドに出ている限り『凪禽』モンスターは効果で破壊されない。それと、起動効果でデッキから『凪禽』モンスターをサーチできる。僕は『凪禽―夜梟のノクティス―』をサーチ。更に、凪禽の効果が発動したから『封殺結界』の効果によってランダムで1枚。手札を公開して貰う。右から2番目」

「手札を公開するよ」

 

 相手にカードを公開する。手札が1枚公開される。ということは、それに連なるデッキの構築やテーマもバレるということであり、持っていかれる情報アドバンテージは相当な物だ。

 公開されたのが『速攻の猟犬』の様な汎用札なら良いが(それでも、セメタリーに送られる可能性があるが)、良くないパターンとしては。

 

「『虚無領域(ヴォイド)・スペクター』か。普段、メタビートを使っているって聞いていたけれど、ちゃんと環境最前線のデッキも持っているじゃないか。どうして、普段からそっちを使わないのかな?」

 

 ギャラリーからは驚きの声が上がっていた。コレで私のデッキが『虚無領域』であることがバレてしまった。

 実の所『虚無領域』のカードはセメタリーに送られると弱い。何故なら、彼女らの効果は『モルグ』でしか使えないからだ。

 

「環境デッキの相手と戦える場所。なんて思って欲しくないからだよ。用心棒が良い試合なんてしたら、挑戦者が増えるだろう?」

「それはそうだ。それと。夜梟のノクティスはドロー以外の方法でデッキから手札に加わった場合、特殊召喚できる。このカードは特殊召喚された場合、相手の手札をランダムで1枚公開する。既に公開されているカードが選ばれた場合、セメタリーへと送る」

 

 パチパチ。2枚しかないカードでシャカパチをしている。まるで舌なめずりをしている様にも見えるが、なるほどそう言うことか。ヨシコちゃんが手を上げた。

 

「あの、ヒジリさん。既に手札が公開されている場合にランダムで選ぶ。というのは無理なんじゃないんですか? だって、手札が公開されている訳ですし」

 

 既に見えている物をランダムで選べ。というのは無理だというのは道理だ。見えているなら、それを選ぶに決まっている。じゃあ、どうするか?

 

「こうするんだよ」

 

 私も左手に5枚のカードを持って、親指で弾いて右手スライドさせていく。トップに、ボトムに、間にランダムに置いて行く。ハンド・シャッフルだ。暫く、私もシャカシャカして、一番上のカードが手に見えない様にして手で覆い隠した。

 

「さぁ。何枚目を公開させる?」

「上から2枚目」

「……正解だ」

 

 公開したカードは『虚無領域(ヴォイド)・スペクター』だ。初動札を抜かれたのは非常に痛い。周りのギャラリーも言葉を失っていた。堪らず、ナギサちゃんが尋ねた。

 

「お兄ちゃん。どうしてわかったの?」

「カードの擦れ方や弾き方の『音』で手札(ハンド)がどこに入ったかは分かる。……なんてね」

 

 まさか、プレイング以外の武器を使ってくるとは思わなかった。ハッタリかどうかは分からないにしても『謝花八』のトップを名乗るだけにある。

 

「更に! 凪禽モンスターの効果で手札を捨てさせることに成功したので『従影獣・フォクス』を特殊召喚! このカードが召喚・特殊召喚された場合。セメタリーから凪禽モンスターを蘇生できる。ハヤブサを拾ってから2体でコネクシオン。駆けろ! 『地平を裂く(レンド・ザ・ホライズン)・戦友(ヴォルフ)』!」

 

 凪禽。というだけに鳥獣をモチーフにしたデッキかと思いきや、狐とハヤブサから狼が現れた。だが、これは不自然なことではない。

 

「ヴォルフの効果。このカードが特殊召喚された場合。デッキから『凪禽』モンスターを手札に加える。フィールドに『黒智のレイヴン』がいる場合『凪禽』カードを手札に加えても良い。僕は永続スペル『凪禽の狩場』をサーチ。そして、発動。このカードの発動時の処理として『凪禽』モンスターを手札に加える」

 

 最近のテーマは永続スペルの発動ついでにカードをサーチして来るんだから、タチが悪い。どれだけ効果を内包しているんだ。

 

「僕は『凪禽の草払鳥—ヒバリ‐』をサーチ。このカードはコネクシオンされた凪禽モンスターがいる場合のみに使え、相手フィールドのモンスター1体を指定して効果を無効化した後、特殊召喚する。」

 

 まずは手札誘発を確保しておいて、ついでに他の永続スペルを起動させる準備も整ったという訳か

 

「そして、『凪禽の狩場』の効果は自分が『凪禽』モンスターの召喚・特殊召喚に成功した場合。フィールドのカードを破壊する。……ターンエンド」

「お兄ちゃん。凪禽の狩場には1ターンに1回。の制約は付いていないの?」

「そうだよ。凪禽のパワー元とも言えるすごいカードだよ。ナギサのデッキにも入れているハズだけれど……」

 

 相手は2枚のカードを持ってターンエンドを宣言した。

 片方は手札から捨てる誘発効果持ちだとして、もう片方をセットしないということは、恐らくは……。いや、吐かせるとしよう。

 

「では、ターン終了前に。君のフィールドにモンスターがいるので、手札から『アビス・ニーズヘグ』の効果を発動。セメタリーのスペクターをモルグへ送って特殊召喚。ターンエンド時に『アビス』モンスターをサーチする効果が発動。同時にスペクターがモルグに送られたのでMPを払って特殊召喚。効果の発動はありますか?」」

 

 相手のターン終了時に、私のフィールドに2体のモンスターが特殊召喚された。

 アビスがいない時にスペクターがセメタリーに送られるとしんどいが、私の手札には『アビス』モンスターがあったので問題ない。

 

「効果の発動は無いよ」

「じゃあ、私は『アビス・ファーヴニル』をサーチする。そして、スペクターの着地効果で『虚無領域』スペルを直接セットします。効果の発動は?」

「セットを終えた段階で効果を発動します。手札からスピードスペル『ホーク・アイ』を発動。このカードは相手がセットした場合に発動できる。そのカードを破壊して、1枚ドローする。相手は、この効果に対してセットしたカードの効果を発動できない」

 

 この事を見込んで、スピードスペルをセットしなかったのは当然と言うべき洞察力だ。セットしたカードは発動することもできずに割られてしまった。次の展開に繋がる『虚無領域・マイニング』だっただけに残念だ。

 

「……なるほどね。改めて。ターンエンド」

「では、私のターン。ドロー。虚無領域の探索者(ヴォイド・レコーダー)を召喚! 効果で『虚無領域』モンスターをサーチする。効果の発動は?」

「手札からヒバリを捨てて効果を発動。レコーダーの効果を無効化する。その後、『風殺結界』と『凪禽の狩場』の効果も発動。レコーダーを破壊して、手札をランダムに1枚公開して貰うよ」

 

 無効化した上、破壊とピーピングまでして来るのが何ともいやらしい。だが、問題なのは相手のフィールドにいるカードだ。手札をよくシャッフルして。

 

「更に。ヴォルフの効果を適用。このカードはフィールドに『レイヴン』が存在する場合、自分が発動した『手札を公開する』という効果に『公開された手札をセメタリーに送る』という効果を加える。ランダムに1枚。捨てて貰おうかな」

 

 即時のハンデスだ。この効果にチェーンしてアビスを使って出したとしても、他のカードが捨てられるだけだ。……だが。

 

「私は手札から『アビス・ファーヴニル』を発動する。効果の発動は?」

「逃げないでくれるかな? 僕は手札から『凪禽―葬送のヴァルチャー―』を捨てて効果を発動。このターン中。お互い、モルグにカードを送れない」

 

 冷汗が出た。古来よりヴァルチャーことハゲワシは魂を天に還す存在として知られているが、彼らは無闇に墓を荒らすことを許さないということか。どうやら、さっきのホーク・アイのドローで引き込んだ様だ。

 

「普段からメタっている側として、メタられる気持ちはどうかな?」

「やられたね。ファーヴニルの効果は不発に終わり、君はランダムに1枚。私の手札を捨てさせることができる」

「じゃあ、左端のカード」

「……アビス・ファーヴニルだ。セメタリーに送る」

 

 『ヴァルチャー』は特定のカードのメタになる。ということで、凪禽でなくても使われる位に採用率がある。特に環境に『虚無領域』がいる以上、積んでいるプレイヤーも少なくはないだろう。

 

「ヒジリさん。ここからどう展開してくれる?」

 

 普段、メタビートなんて使っている私がメタられるなんて。因果応報と言うしかないが、その程度で動けなくなるような柔なデッキをハルカが用意する訳がない。

 

「じゃあ、見せて上げようか。私の盟友と共に編み込んだデッキの真髄を」

 

――

 

「なんか。嬉しいこと言われている気がする!!」

「ど、どうしたんですか。ハルカさん。今日も変ですよ」

 

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