TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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3枚目:勝負!!

 店側が勝負を申し込まれた時、基本的には挑戦者側が後攻となる。

 前の奴は格好つけて先攻を譲ると言って来ていたが、勝負を受けてやっている手前。こちら側が有利な条件で叩くのは当然のことだ。故にメタビートを使っていたのだが。

 

「(懐かしいカード群だねぇ)」

「シマ戦において互いのMPは5000で始まる。これはショップ内での業務を妨害し過ぎない為に短期決戦用の特別ルールである。承認するか?」

「承認します。同時に、制限時間内に同MPで勝負が決まらなかった場合、防衛側の勝利となる。承認するかい?」

「承認した」

 

 現役時代に使っていた物に加えて、現代向きにリメイクされた物と強化パーツも入っているが、それでも現代環境のパワーには追い付いていない。

 そもそも『クリムゾン・マザーロット・ドラゴン』はビートダウンがメインで妨害や制圧をあまり得意としていない。先攻を渡されても困る。とりあえず、基本展開からして行こうと思う。

 

「『跋扈するレギオン』を召喚。このカードが召喚に成功した時、デッキから同名カードを任意の数だけ特殊召喚できる。2体召喚して、計3体だ」

「『マザゴン』デッキか。用心棒にしては随分とカジュアル向けなデッキを使うな。でも、ソイツらのビートダウンは嫌いじゃあないぜ」

「何か、効果の発動はあるかい?」

 

 首を横に振った。えらい芝居掛った奴だが、ギャラリーは目を輝かせている。

 炸裂団の取り巻きは良いとして、どうしてキッズ達まで盛り上がっているんだろうか。君らの場所を守ろうとしているんだが。

 

「すげー! いつもクソみたいなデッキを使っている姉ちゃんが、普通のデッキ使っている!」

「すごい! 普通のデッキだ! ちゃんと遣り取りしている!」

 

 こんな声援を掛けられたのは始めてだ。一つも嬉しくない。店を利用しているキッズ達はいつも何を思っていたんだ。

 

「フィールドに3体以上モンスターがいるとき『レギオン』を手札から特殊召喚できる。『レギオン』と『跋扈するレギオン』をコネクシオン。現れろ! ロッソ・バイパー!」

「ほぅ。随分と古いモンスターを」

 

 2体のレギオンをセメタリーに送って現れたのは、張り裂けんばかりの咆哮を上げる赤黒色の体表を持つ大蛇だった。

 

「更に! 特殊召喚した時の効果でセメタリーに落ちたレギオンを引き上げ……」

「我は手札からモンスター『ジャマードローン』を捨てて効果を発動! 指定したモンスターの効果を無効化する! 指定するのはロッソ・バイパー!」

 

 対策するカードを持っていなかったので、サルベージは無効化された。だが、おかげで相手のデッキが見えた。

 

「更に! 『ジャマードローン』が効果の発動に成功した場合! デッキから『ドローン』カードをサーチする! ただし、同名カードの効果はターンに1回しか発動できない! 我は『自爆ドローン』をサーチ! このカード名の効果はターンに1回だけ使える! 手札から捨てて効果を発動! フィールドの指定したモンスターを破壊する! 我が指定するのはロッソ・バイパー!」

「おっと。そうはいかないよ。スピードスペル『挺身』を発動。バイパーの代わりに跋扈するレギオンをセメタリーに送る」

 

 自爆ドローンからカリグラを庇って、跋扈するレギオンが破壊され、セメタリーへと送られた。流石、現代のカードパワーだ。どっちが先攻か分かったモンじゃない。展開の軸を潰され、非常に苦しい。

 

「カードを2枚セットして。ターンエンドだ」

「我のターン! ドロー! 手札から『偵察ドローン』を捨てて『ドローン』カードをサーチする! 『リペアドローン』をサーチ! 効果を発動! セメタリーにあるドローンモンスターを指定することで、自身を特殊召喚しながら指定したモンスターをフィールドに召喚する! 我はジャマードローンを指定する!」

「そうはいかないよ。セットカード、バイパー・スラッシュを発動。着地した2体を破壊する!」

 

 ロッソ・バイパーが自らの尾を剣の様に振り抜いて、2体のドローンを破壊した。だが、サクタの表情は崩れない。

 

「『増産』のスペルを発動。このターン、セメタリーに送られたドローンの数まで500MPを払い、セメタリーから『ドローン』カードを手札に加えることができる。1500MPを払い、『偵察』『ジャマー』『自爆』を加え、我は2枚のカードをセットしてエンドだ」

「手札が減ってない……」

 

 私の隣で見ていたシュウ君が息を飲んでいた。ちょうど良い。これもレッスンだということにしよう。

 

「シュウ君。コレが現代のカードパワーだよ。相手ターンにも動けて、効果を使ってリソースを消費したら、また別のリソースを拾ってくる。更に言えば妨害をされてもケア手段も豊富に用意している。ごらん。展開用の札が破壊されたら、手札に戻して再び妨害手段として構えている」

 

 昔のカードは1枚使って、別の1枚を獲得する。あるいは相手のカードを1,2枚交換してアドを稼いでいくとか。積み重ねで差を開けて行く物だった。

 だが今のゲームはそんなチンタラしていない。1枚が3枚、5枚へと変わっていく位のハイスピードだ。

 

「ドロー! ……手札から『ニコイチ』のスペルを発動! セメタリーに2枚以上同名モンスターカードがあれば発動が可能! その内の1枚をフィールドへと特殊召喚し、残りは全てモルグへ送る」

 

 『跋扈するレギオン』が戻って来たが、相手の手札にはジャマーも自爆も入っている。だが、撃って来ない。

 

「ヒジリさん。どうして、相手はロッソ・バイパーに自爆ドローンを打たないの?」

「この先の展開を見込んでのことさ。私がロッソ・バイパーを軸にコネクシオンをしたモンスターを出した方が場を更地にできるからね。仮に、このまま攻撃されようとも、バトルに入る前に撃てばいい。向こうの方が圧倒的に有利なんだよ」

 

 対策としては破壊耐性のあるモンスターをコネクシオンすればいいのだが、このデッキにそんなモンスターはいない。

 

「そんな! じゃあ、詰みってことじゃ……」

「いや。突っ切るよ。ロッソ・バイパーと跋扈するレギオンをコネクシオン! 現れろ! 毒蛇纏いし、女王! 暴賢龍! クラウディアス・クリムゾンドラゴン!」

 

 全身にロッソ・バイパーを巻き付けた、赤色の体表と王冠の様に入る黄金の角が特徴的なドラゴンが現れた。と、同時にサクタは効果を発動させていた。

 

「自爆ドローンを捨てて効果を発動!」

「クリムゾンモンスターが破壊される際、代りにセメタリーにあるロッソ・バイパーをモルグへと送ることができる」

「何ッ。そんな隠された効果が……」

「いや。テキストを読めばわかるんじゃ?」

 

 シュウ君から至極真っ当なツッコミが入るが、私は決してサクタ君をバカにしない。何故なら、興味が無いモンスターや古すぎるテーマカードの効果なんていちいち覚えていないし、確認もしないからだ。

 

「クラウディアス・クリムゾンドラゴン! 起動効果! クリムゾンカードをサーチする!」

「『ジャマードローン』を捨てて効果を発動! クリムゾン・ドラゴンの発動した効果を無効化する!」

「セットしていたカウンタースペルを発動! クリムゾン・ガード! クリムゾンモンスターの効果にチェーンして発動した効果を無効化する!」

 

 ここに来て、サクタに動揺が走った。

 『ジャマードローン』は効果の発動を成功させなければ、後続をサーチすることができない。2枚のハンドを切らせることができた。

 

「私がサーチしたクリムゾンカードはクリムゾン・ディフェンダーだ。使用したターンはクリムゾンモンスターは戦闘・効果破壊されなくなる。バトルに入る! クリムゾン・ドラゴン! 攻撃!」

「そうはいくか! 我は手札から『ガード・ドローン』を捨てて効果を発動! このカードは相手の攻撃宣言時に手札から捨てて発動できる! そのバトルを無効化する!」

「ならば、残りの跋扈するレギオンで攻撃!」

 

 2枚目は持っていなかったので、跋扈するレギオンの攻撃は通ったが与えたダメージは微々たる物で、サクタの残りMPは3000まで削れていた。

 

「よっし。次のターン、偵察ドローンで自爆ドローンをサーチして使われたとしても、ディフェンダーがあるからクリムゾン・ドラゴンは破壊されない! 返しでサクタさんがカードを引けていなかったら、ヒジリさんの勝ちだ!」

「少年。フラグを立てるのは止めたまへ。ターンエンドだ」

 

 典型的な逆転フラグである。他にセットカードは無く、私はハンドレス。相手はセメタリーに潤沢なリソースを蓄えているし、嫌な予感しかしない。

 

「我のターン! ドロー! ……フッ」

「おぉ! サクタさん! やるんですね!」

 

 彼の取り巻きが囃し立てる。コレはもう逆転されるフラグがビンビンに立っている。冷汗が流れると同時に何をやってくれるんだ? という好奇心も同時に湧き上がっていた。

 

「偵察ドローンを捨て、ドローンカードをサーチ! 我はリペアドローンをサーチしてジャマードローンをサルベージ! 2体をコネクシオン! 出でよ! 機構の芸術者! 『リマジネーション・ドローン』!」

 

 偵察ドローンとジャマードローンが一旦分解されたかと思えば、再び組み上がり。まるで製造マシーンの様な姿になっていた。

 

「このカードは! 手札、フィールドにある『ドローン』モンスターを結合(ユナイト)させ、特殊召喚できる。だが、我は今引いたスペルを発動させる! 『スクラップ・リサイクラー』! このターン中のみ! セメタリーからモルグへと送ることでユナイトの素材にすることができる! ドローンモンスターを全て送る!!」

 

 自爆、偵察、ジャマー、リペア、ガード、そして。リマジネーションだけはセメタリーに送られ、巨大な機体が出現していた。

 

「出撃だ! マシンテッド・ドローン!」

『繋ぐ想いが力になる! マシンテッド・ドローン! ただいま、参上!』

 

 雄々しい掛け声と共に。フィールドに巨大な機体が降り立った。

 

「ヒジリさん。この声は」

「おや。シュウ君は見るのは初めてかい? 真剣勝負の『インヴェイション』フィールドでのみ、エースモンスターは自らの意思を持つんだ」

 

 と言っても、ステータスが変わったり、効果が追加されたりということは無い。雰囲気的な奴だ。

 

「炸裂せよ! マシンガン・ボルト!!」

『GO! BURST!!』

「クリムゾン・ディフェンダー! 発動!」

 

 マシンテッド・ドローンの拳から放たれた炸裂ボルトがクリムゾン・ドラゴンを打ち抜く。撃破こそはされないが、相殺しきれなかった威力で私のMPがガリガリと削られた。

 

「ヒジリさんの残りMPが4000に!」

「それだけじゃない! マシンテッドが攻撃して相手のMPにダメージを与えた時! フィールドのカードを1枚破壊する! 跋扈するレギオンを破壊! ターンエンドだ!」

 

 横に立っていたレギオンが粉砕された。次の相手ターンにはディフェンダーの効果も切れる。スタッツ的にもクリムゾン・ドラゴンでは撃破できない。ならば。

 

「ドロー」

 

 トップで解決するしかない。引いたカードを見た。忘れていた熱が、全身を駆け巡った。

 

「紅き女王の勅命(クリムゾン・クイーンズ・オーダー)。場にクリムゾンモンスターがいるときに発動可能なスピードスペルだ。クリムゾンというテキストが含まれたモンスターをセメタリー、モルグから特殊召喚する。私はロッソ・バイパーをモルグから特殊召喚。2体をコネクシオン」

 

 このカードは数少ない現代カードだ。モルグから帰還したロッソ・バイパーがクリムゾン・ドラゴンの体に纏わりついて行く。

 巨大なドラゴンの体躯は7つの頭部に分かれて、10の角を持つ強大な存在へと変貌していた。そして、彼女は言う。

 

『――今更、何の用だい?』

「頼む。勝たせてくれ。見栄を張りたいんだ」

『アンタは変わらないね!』

 

 シュウ君やキッズ達。サクタの取り巻き達は分かっていなかったようだが、直接の対戦相手にだけ伝わる物はあったらしい。

 

「『クリムゾン・マザーロット・ドラゴン』! その様子! まさか、貴様は担い手の!!」

「さらに! クリムゾンカードをサーチ! 私がサーチするのは『クリムゾン・ストライク』! このスペルはクリムゾンモンスターが戦闘で破壊したモンスターの元々のATK分のダメージを与える!! バトル!!」

 

 互いのエースモンスターが激突する。マシンテッド・ドローンの拳が激しく振動する。マザーロット・ドラゴンから7つの頭部が大きく口を開ける。

 

「マシンガン・ボルト!」

「アンクリア・ブレス!」

 

 マザゴンが吐いた不浄のブレスをマシンテッドの炸裂ボルトが打ち払っていく。ブレスを貫通して、頭部を一つ、また一つと潰していく。

 如何にドラマチックな演出に見えようと。どうなるかはATKの自動計算で行われる物だとしても。私は叫ばずにはいられなかった。それは相手も同じだった。

 

「勝って!」

『誰に口きいているんだい!!』

「勝て!」

『もちろんだ! サクタ!!』

 

 プレイヤー、モンスター、ギャラリーが混然一体と化する瞬間。ここには敵も味方もない勝負の行方だけがある。

 マザゴンの頭部を3つほど潰した時点で、マシンテッドの腕が吹っ飛んだが、もう片方の腕で同じ様に炸裂ボルトを打ちこんでいた。

 熾烈な勝負の末、やがてフィールドに静寂が訪れた。全ての頭を潰されたマザゴンは崩れ落ち、同時に。上半身を吹き飛ばされたマシンテッドも倒れたと、同時にサクタに特大のダメージが降り注いだ。

 

「……我の。負けだ!」

「ヒジリさん!」

 

 抱き着いて来たシュウ君の頭を撫でながら、久しく覚えた興奮と余韻に浸っていると。サクタから手を差し出されていた。

 

「良いゲームだった。巷で聞く評価など、まるで当てにならんな。また、勝負して貰えるか?」

「シマを取り合うとかの話じゃ無ければね」

 

 差し出された手を握り返した。久方ぶりに握手したが、思ったよりも相手の手がゴツゴツした物の様に思えた。……サクタは妙にドギマギしていた。

 

「(あ。そうか)」

 

 今の私は女であるから。こういうスキンシップも異性との物になるのか。だからと言って、そんなに恥ずかしがらなくてもとは思うが。

 

「次! 俺とやって貰って良いですか!?」

「分かった。じゃあ、次はいつものデッキで」

「「「「「それはやめろ」」」」」

 

 私と勝負したいという癖に普段のデッキは嫌がるなんて贅沢な奴らだ。

 この日は私達の健闘を称賛するかのようにショップはいつも以上の活気に包まれていた。

 

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