TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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高評価ありがとうございます! もしかしたら、1000ptも夢じゃないかもと思うとワクワクして来ました!!


30枚目:僕らの主義主張

 現在、私は店長と共に連盟の周回に参加していた。前に見た時よりも参加者が少ないのは、グループの連中に食われたか、あるいは廃業したか。

 

「ここ数ヶ月のグループの動きです」

 

 スクリーンに映し出されたのは連盟の本拠地を中心とした地図だが、徐々にズームアウトしていく毎に周辺の色が変わっていく。

 特定の色が頒布図を拡げたかと思えば、また別の地区から拡がった色が互いに食い合い、押したり、引いたりの一進後退を繰り広げて、あるいは消滅して。地図に残ったのは特定の色のみとなった。

 

「現在、台頭している勢力は『HU-MAN』『リリウム・サンクチュアリ』『謝花八』『フュージ・ドラゴンズ』の4つ。後の勢力は泡沫の様なものです」

 

 進行役が淡々と説明をしている。今、言った4つの勢力はサクタ君も行っていた有力候補達だった。この内の3つのトップと会合しているのは何の運命か。

 

「後は、フュージ・ドラゴンズだけね」

 

 極当たり前の様にハルカが隣のポジにいた。この調子で行ったら『フュージ・ドラゴンズ』のトップとも会う羽目になりそうだが、たかが用心棒にそんな任務を背負わせないで欲しい。

 

「それぞれの勢力から声明が出ており『メイガス・インヴェイション』を取り巻く環境にモノ申したいそうだ。今から、動画を流します」

 

 大の大人が顔を突き合わせて、子供の声明を拝聴するなんてシュールな光景だ。もっと毅然として欲しい所だが。

 

『私は『HU-MAN』のトップ。カズマと申します。単刀直入に言いましょう。現存するカードショップを大手チェーン店のフランチャイズ傘下において欲しい。『ライジング・スター』『カード研究所』『ドトウ・カード』辺りに』

 

 カズマが上げたカードショップはいわゆる『大手』と呼ばれる所だ。品揃えも、シングルなどの流動も良く、界隈において欠かせない存在と言える。

 

『個人店や小規模店などがあってもカードの流通が止まり、客の流動も鈍くなり停滞を招く。そう、私達は新陳代謝を求めています。ロートルやニワカが管を巻く溜まり場は必要ありません。なにとぞ、よろしくお願いします』

 

 慇懃無礼に捲し立てて『HU-MAN』の声明は終えた。実に若造らしい、急進派と言った所か。周りからは失笑しかなかったが。

 

「どうも、彼らは個人店や小規模店が嫌いみたいだね」

「マナーが悪い連中と店舗があることは否定しないけれど、これだけバチバチやっといて最後は大手様にお願い。って所が情けない」

 

 そこまで言わんでも。と言いたいが、店の立ち上げ資金や経営などの苦労も知らずに大手が管理しろ。なんて、主張は一笑に付してしまうレベルの物だ。

 

「(もう少し賢いと思っていたけれど)」

 

 所詮は子供か。と見縊りたくなってしまう。あるいは、そう思わせることが向こう側の狙いなのかもしれないが。次の映像が再生された。

 

『ワタクシ。サユリと申します。リリウム・サンクチュアリの申し入れはただ一つ。『メイガス・インヴェイション』の女性人口拡大の為にも専門店を設けて欲しいという物です。運営側の皆さまならご存じでしょうが、カードショップは臭くて、男が多くて、臭って、叫び声と煽りが響き渡り、異臭がする上、女性が入りにくいことが問題になっております』

 

 誰もが目を背けた。分かるよ。ウチの客層は若い子が多いからギリ大丈夫だけれど、それでも夏場は苦しいのだ。当店でも消臭剤と空気清浄機君が頑張ってくれている。後、若い子の衛生意識が素晴らしい。

 本格的にカードゲームに勤しむ大学生位の男性達がミチミチに詰まったら、それはもうすごい。消臭剤が何本あっても足りない。

 

『今、問題意識を臭いだけに向けていませんでしたか? 単純にマナーの悪い男性客の存在も嫌という話をちゃんと拾っていますか?』

「まさか。サユリちゃんは画面越しに思考が読めるのか?」

 

 唯一女性になって良かったと思う点は、臭いがマシになったことか。横を見れば、私のことをスンスンと嗅いでいる奴がいる。

 

「臭くないけれど」

「嗅ぐな」

『間口の広さは良いことですが、何時までも門戸を広げるのはおよしなさい。私達『リリウム・サンクチュアリ』はシマで試用運転を行い、その成果を連盟の皆さまにお届けすることで、新しいコンセプトとして提案させていただくつもりです。どうか、ご一考くださいませ』

 

 ここで映像は終わっている。サユリちゃん達はカズマ達と違って、どうにも経営側の人間との繋がりを持っている節がある。

 これに関しては連盟の人間や経営側の人間も一考の余地はあると考えたのか、騒めいていた。

 

「コレは私達も視察に行かないとね」

「うん。行っておいで」

「なんで他人事なの?」

「なんで、私の方を見て自分事みたいに言っているんだい?」

 

 最近、コイツの距離の詰め方がバグっているのが怖い。自分が気に入ったからって、好意を押し付けるような真似をしてはいけない。

 

「貴方がいう?」

「何も言っていないけど」

 

 口に出ていたのかもしれない。さて、次の声明発表が再生される。『謝花八』だからナギトか。正直、前者2人より大分ヤバそうな印象はある。

 

『初めまして。『謝花八』のトップで『ナギト』と申します。僕のお願いは1つ。それは『メイガス・インヴェイション』を家族や皆で一緒に遊ぶこと』

 

 とても素朴な願いだった。このお願いを否定する奴はいない。プレイ人口が増えることを否定する意味がない。

 

『だからですね。僕はショップ側にも入り口を作って欲しいんです。試遊デッキの貸し出しや年齢を絞った大会とかね。どうにも、色々なカードショップを見て来たら大人向けの物が多くて』

 

 妹想いの彼らしい発想だ。とは言え、ショップだって慈善でやっている訳ではない。直接的な利益をもたらしてくれるのはやはり大人がメインである訳で。

 子供達もなけなしの小遣いからシングルやカードサプライヤーを購入してくれるのはありがたいが、やはり即物的な物を求めるのは仕方がない。

 

『僕らがシマ取りをしているのはそう言うこと。大人だけの空間にしないことをお願いしたいね。将来のお客様でスタッフになるかもしれない子達なんだから』

 

 主張は悪くないのに。どうして、そこでシマ取りなんてことをやってしまうのか。とは言え、店側も牽引するだけの体力が無いと言われたら、そこまでなんだけれど、やはり商売と文化というのは中々に難しい。

 

「もっと穏当に。あるいは、シマ取りなんてしないでホームにしているカドショだけで慎ましくしていれば、波風も立たなかったでしょうに」

「あるいは立てざるを得ない状況に追い込まれていたのかもね」

 

 客は客。店は店。両者には埋まらない隔たりがある。

 さて、最後は『フュージ・ドラゴンズ』の声明だ。このグループに関しては一切の情報が無いのだが、どんな連中なんだろうか?

 

『どーもー!! 『フュージ・ドラゴンズ』でーす!! 自分トップの『タツヤ』です! 堅苦しくて、お行儀の良い皆さんお元気ですかー!!』

「やべぇ」

 

 古に置いて来た空気を未だに捨てていない連中だ。偏見にはなるが、コイツらはグループとかじゃなくて半グレとかじゃないだろうか。

 

『最近のプレイヤーはもやしっ子が増えましたねぇ! ちょっといっただけで、直ぐにSNSでお気持ち表明? プロレスは華ですから! 煽ってこその対戦ゲーでしょ! 遠慮したコミュとかね。ガッコと職場だけで十分ですから! そんじゃ! 連盟の皆さんよろしくぅ! タツヤでーす!!』

 

 ブツっ。……マジで皆が押し黙った。『HU-MAN』の時の様な失笑すらない。言葉を失うという表現がしっくり来る。そんな衝撃があった。

 

「でも、彼らは恐らく一番強い」

「それはおそらく」

 

 『HU-MAN』『リリウム・サンクチュアリ』『謝花八』の連中はお互いに求める所に違いはあれど、飲み込める部分もあるハズだ。なので、手を出し合ったりはしていないが『フュージ・ドラゴンズ』は異質だ。

 

「彼らは混沌を求めている」

「そんな大仰な言い方しなくても動物園を作りたいだけだろ」

 

 あんな奴らが台頭したら、インヴェは終わりだ。というか、どうしてこんな奴らの誕生を止められなかったんだ。責任者は何処だ。

 

「彼らの主張を見て貰いましたが。一部は検討の価値もありますが、まるで話にならない者達もいましたね」

 

 『リリウム・サンクチュアリ』と『謝花八』の意見は聞く価値のある物だったが『HU-MAN』は子供の我がままで、『フュージ・ドラゴンズ』は話にならない。

 

「我々は連盟として毅然とした対応が求められます。通常の経営に支障をきたす様な打診が来た場合は直ちに連絡をお願いします。また、彼らがシマと呼んでいる該当店舗の情報を持っている方達は提供をお願いします」

 

 一先ずは、情報共有という形で皆に台頭しているグループの特徴は分かって貰えたことだろうが、既に出あった3人は良いとして『フュージ・ドラゴンズ』には会いたくない。荷物をまとめて帰ろうとした所で。ハルカに腕を掴まれた。

 

「じゃあ、フュージ・ドラゴンズのシマに行きましょうか」

「そうなんだ。行ってらっしゃい。店長、早く店に戻ろう」

 

 全てを無かったことにして、通常業務に戻ろうとしたがガッシリと腕を掴まれている。ハルカの方が体格も良いので振り解けない。

 

「私達は大人として、彼らに抱かれた偏見や疑念を払拭するために実際に会いに行く必要があると思うの」

「私が行く必要ある?」

「何を言っているの。チャレンジャー達の元へ足を運ぶのは防衛者としてのマナーでしょう。店長さん、彼女を借りて行ってもいいかしら?」

 

 チラリと店長を見た。頼む。いつもみたいにぶっきらぼうに『バカ言うんじゃねぇ』って言ってくれ! と思っていると、連盟の人間となんか話していた。

 

「どうぞ。コチラ、有名温泉施設の優待券です。世界各国の温泉を取り入れ、岩盤浴サウナもガチ。また、館内には飲食施設からレジャー施設まで幅広く取り揃えており、割引料金でご利用いただけます。ご利用期限は本日限りです」

「………………今日は店休むって看板出して、HPにも出しておくわ」

 

 畜生! という気持ちよりも。店長も1日中立ちっぱで荷物持ったり、屈んだりして大変だもんね。偶には休みたいよね。という労りの気持ちが湧いて来たので責める気も起きなかった。

 起きなかったということは、連行されるということだ。温泉と動物園。天国と地獄とはこの事か。ならば、最後に聞くことは。

 

「私の分も優待券があると嬉しいなー……」

「貴方が温泉施設に行っていい訳無いでしょ!!」

 

 で。ハルカからお叱りを受けた。忘れていたけれど、私って元・男なんだよな。何も得られないまま、私はハルカと共に『フュージ・ドラゴンズ』のシマへと向かう羽目になった。

 

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