TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面 作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。
「先攻は譲るよ」
「駄目。恐らくだけれど、サクタ君は君のデッキを知っているんだよね?」
タツヤのデッキが後手用のデッキだった場合。捲りデッキは突破力こそ長けている物の、制圧力が高くないということは往々にしてある。
そう言った情報アドバンテージを得ている状態なら、コイントスで優先を獲得した場合、敢えて自分が後攻を取るというのも選択に入るからだ。
「ウム。公平にコイントスで決めよう」
「相変わらず杓子定規だねぇ。お姉さん、コイントスお願いします。俺は裏で」
コインを指で弾く。クルクルと回転してテーブルの上に落ちた。出た面は表だ。
「では、我が先攻で行こう」
「そう来なくっちゃあ」
タツヤのデッキを知っていながら、敢えて先攻を取ったと言うことは、現在のタツヤのデッキは先攻も行けるデッキなのか。それとも。
「(私が勝手に捲りデッキだと思っているだけで普通のデッキを使うのかもしれないしね。別に、デスパをバイブルにしているだけで使うデッキは別ってパターンもあるだろうし)」
むしろ、そっちの方が自然か。グループの抗争やシマ取りのことを考えて上位に行くほどの実力があるなら、そんなリスキーなデッキを使っているとは思えないし。でも、敢えて後攻を取ろうとしたのが気になる。
「(やはり、『牌九』デッキの可能性もあるか?)」
少し型落ちしてしまっているが、それでも手札(ハンド)が揃った時の突破力はすさまじい物がある。もしくは、私も想像が付かない捲り用のデッキを使うのかもしれない。対する、サクタ君はと言えば。
「我のターン! 偵察ドローンを手札から捨てて効果を発動! 『ドローン』カードをサーチする! 我がサーチするカードは『リペアドローン』だ! 効果の発動はあるか?」
安定と信頼のドローンデッキだ。後攻をとっても動くことができ、展開、制圧、突破力とバランスの良いデッキだ。
「無いよ」
「では、このまま『リペアドローン』の効果を発動。セメタリーにある偵察ドローンとこのカードをフィールドに特殊召喚する。そのまま、コネクシオン。『マザー・ドローン』を召喚! このカードは自分・相手ターン中にドローンカードをサーチできる! 我は『自爆ドローン』をサーチする! 効果の発動は?」
「無いない」
まだ、召喚権すら使っていないのにフィールドにはドローンの供給源『マザー・ドローン』。サクタ君の手札(ハンド)は減ってすらいない。
「手札からコマンド・ドローンを召喚。効果を発動。手札からドローンモンスターを特殊召喚する。デコイ・ドローンを特殊召喚。そして、2体でコネクシオン。『スウォーム・ドローン』を特殊召喚! 着地時の効果で、素材に使った2体をフィールドに特殊召喚して、デッキからドローンカードをサーチする。効果の発動は?」
「無いよ。存分に展開しちゃってよ」
タツヤに動きはない。手札誘発すら持っていないのは奇妙な感じもするが、後攻捲り用のデッキとしてはあまりに動きが少ない。
「我はジャマードローンをサーチした後、カードを2枚伏せる。ターンのエンド時に『マザー・ドローン』のもう一つの効果を発動。このターン中、効果の発動の為に手札から捨てたドローンカードを1枚、セメタリーから手札に加える。我は『偵察ドローン』を回収する。帰投せよ!」
前に、ハルカとやった時には効果を発動していなかった気がするが……忘れていたのか。敢えて発動させなかったのか。1ターンキルされたから、あんまり関係なかったが。
ただ、盤面はかなり整っている。サクタ君の手札には『ジャマー』『自爆』『偵察』の3枚。フィールドには2枚の伏せカード。更には相手ターン中にドローンカードをサーチできるとなれば。
「(盤面は固いんだけれど、実質的な無効持ちが『スウォーム・ドローン』位だからなぁ。突破されそうな気がするんだよね)」
手札から飛んで来る奇襲性がドローンテーマの持ち味なので、なんでもかんでも無効化という盤面じゃない所は、ゲーム性を想定してのことか。あるいは手札誘発の豊富性故に、敢えて設けられなかったか。
「じゃあ、俺のターンね。ドロー! ……サクタちゃん。俺ってね、勝負で肝心なことは楽しむことだと思うんだよね。皆して、無効、無効、無効ってね。そんなに勝ちたいかって思うんだよね」
「詭弁だな。共に『勝利』という目的に向かっての遣り取りがあるからこそ、勝負に価値が生まれる。やりたい動きをしたいだけなら、それこそDCGなどでNPC相手にでもやっていればいい」
サクタ君にしたら滅茶苦茶きつい。普段の彼なら想像もつかない言葉だが、何処となく。この言動にはハルカを彷彿とさせる物があった。
「いーや? 俺はサクタちゃんみたいな相手にやって、勝ちたいんだよね。俺は手札から永続スペル『殺戮恐怖虐殺死遊園地(ジェノサイド・テラー・カルネージ・デスパーク)』を発動!!」
「やっぱり出た!!」
正直に言うと、ちょっと期待していた所はあったので不思議と嬉しい気持ちはあった。そんな私の内心を察したかのようにタツヤが笑っている。
「分かっているよお姉さん。このテーマがどう動くか見たくて仕方ないんでしょ? デスパ2の上映会もして欲しいんでしょ?」
「サクタ君。ぶっ飛ばしてやって」
2ってなんだ。アレに続編があるのか。配給会社は何を考えているんだ。次回作はインヴェが関わっていないことを祈るしか出来ない。
「デスパの発動時の効果処理としてデッキから『デッド・エスケーパー』を特殊召喚する。それと、デスパの効果と発動は無効化されず、他のカードの効果は受けない」
「もしかして、このカードの商品化に当たって、関係者は映画監督から莫大なワイロでも貰った?」
何が何でもフィールド上でデスパを発動させるという強い意志を感じる設計だった。ただ、肝心の効果は何なのか。テキストを読んでみる。
「(1つ目の効果は発動時の効果処理でデッド・エスケーパーを特殊召喚。2つ目の効果は、バトルする際に互いにサイコロを振る。出た目の数によって、以下の効果を適用する)」
1・2:モンスターのATKを半分する。
3・4・5:モンスターのATKを500アップさせる。
6:モンスターのATKを倍にする。
「(なるほど。エスケーパーを戦闘破壊しようとしても、この効果のおかげでワンチャン生き残るのか。つまり抵抗の余地があると)」
ちょうど、映画で教授と助手がインヴェで対抗していた様に。エスケーパーも無慈悲に殺されるだけではないということか。
「そして、3つ目の効果。フィールドのカードがセメタリーに送られる度に、デスパークカウンターを置く(最大5つまで)。4つ目の効果はデスパークカウンターを3つ取り除くことで『デスパーク』モンスターをサーチする。まだ、効果があるのか」
1つのカードに効果を盛りすぎだろう。と次の効果で最後であるようだが。
「5つ目。このカードが発動してから4ターン後以降に発動できる。デスパークカウンターを5つ取り除いて、永続スペル『ラスト・ステージ』を手札・デッキから相手のフィールドに置く。か」
「そう。ステージを乗り越えた先にね。まず『デッド・エスケーパー』の着地時の効果を発動! このカードが召喚・特殊召喚された場合。セメタリー・デッキから『デスパーク』カードを手札に加える! 効果の発動は!?」
「我のはジャマードローンを手札から捨てて効果を発動! デスケーパーを指定して効果を無効化にする!」
デッド・エスケーパーではなく、デスケーパーと言う略し方から、きっと。何度か手合わせして来たんだろうなと言う経緯が垣間見える。
「デスケーパーの効果を発動! 相手がこのカードを指定してきた場合、または効果と発動を無効化するカードをチェーンしてきた場合、サイコロを振る。出た目の数値によって、以下の効果を適用する!」
・1:このカードは破壊される。
・2・3:ターン終了時まで、このカードは相手によって破壊されない。
・4・5:相手が発動した効果を無効化する。
・6:相手が発動した効果を無効化し、破壊する。
「アレ? ダイス勝負はしないの?」
「多分、サイコロフィクションするにしてもテンポが悪くなるから調整したんだと思うよ。発動の度に、お互いにサイコロ振っていたら時間掛かるでしょ?」
それはそう。というか、デスパがあんなに長くなった理由が互いにサイコロを振りまくっていたことを自覚して、ちゃんと調整したのか。
だったら、調整した方を劇中で使えようとか言ったら、そのままデスパ2を視聴させられそうなので、黙っていることにした。
「じゃあ、俺はダイスを……って思ったけれど、お姉さん。代りに振って貰える?」
「公平性って奴かい?」
「そうそう。知っている? ダイスの出目ってね。結構簡単に操作できるんだよ。例えばだけれど、俺は今から6を出すね」
手からカランとダイスを転がした。本当に自然な所作にしか見えなかったけれど、出た目は6だった。何処で何をしたかまるで分らない。
「アプリでやるのは駄目かい?」
「アプリでも良いんだけれど、ソフトは細工のやりようがあり過ぎて信用できないんだよね。それなら、お姉さんがやってくれた方が信用できるでしょ?」
カードの中にはコイントスやサイコロによって効果が変わる物がある。
ハイリスク・ハイリターンな物もあれば、逆に全てがメリットであるが好きな効果が使えない等、不便と引き換えに強力な物が多い。
そう言った物を意図的に操作できない様に、大会などではアプリによる判定するのが一般的とはなっているが、タツヤの言う通り。不正が潜む可能性は幾らでもある。私はサイコロを取り出した。
「サクタ君も良いかい?」
「ウム。決して、文句は言わぬ」
サイコロを転がす。言っておくが、私はどちらを贔屓するつもりもない。出た目は……4だ。サクタ君のジャマードローンの効果は無効化された。
「俺がサーチするのは『デスパークの狂気—キラー・ピッチャー―』! このカードを手札に加える!」
おお。映画で見たカードだ。あの時は普通に撃破されて、ド派手に血を噴き出して死んでいたが、カード化したらどんな風になったのだろうか。
「このカードはフィールドに『殺戮恐怖虐殺死遊園地(ジェノサイド・テラー・カルネージ・デスパーク)』のスペルが存在する場合、相手フィールドのカードを1体リリースして、相手フィールドに特殊召喚できる! 俺はスウォーム・ドローンをリリースして、サクタちゃんのフィールドに『キラー・ピッチャー』を特殊召喚!」
効果の発動を介さない強制リリース。ともなれば、無効化が挟まる隙間が無い。サクタ君のフィールドにいた無効化モンスターはあっけなく、セメタリーに送られてしまった。
「デスパークにカウンターを1つ乗せる。デスピッチャーの効果は相手ターン中にも発動できて、フィールドのデスパークカウンターを3つ取り除いて発動できる。発動または効果を無効化するカードが発動された場合、サイコロを振って以下の効果を適用する」
・1・2:このカードは破壊される。
・3・4:相手が発動した効果を無効化し、破壊する。
・5・6:相手が発動した効果を無効化し、相手フィールドのカードを2枚破壊する。
「殺意が溢れすぎだろ。このカード」
変な所で劇中を再現しないで欲しい。それと、このカードのポイントはフィールドのデスパークカウンターを使う。という所にあるのだろう。つまり。
「我にも演者になれということか」
「そうだよ。デスパークは皆で楽しまないとね!」
相手にもデスパークに強制参加させるとは。だが、このデッキは安定感が欠けるなんて物じゃない。ギャンブルデッキとしか言いようがない。
こんなデッキでグループに台頭して来たなんて信じられないが、それを回せるだけの強運があるのか。あるいはプレイングがあるのか。今、分かることは。
「こんなデッキが流行る訳もないか……」
「ちなみに入手経路は映像ソフトの特典だけだからね。しかも、ランダム封入って言う!!」
「それを集めてデッキを作る君は、この作品にどれだけの思い入れが?」
特典商法だとしても悪質すぎる。頭教授パパかよ。特典目当てに買ったら、ギャンブルカードを握らされたキッズ達のことを思うと、涙を禁じ得ない。
この盤面からどう動いて行くか。私にも分からないが、手の中にあるサイコロによって決まるのだと考えると、審判ながらも妙な緊張感を感じていた。