TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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 本日! 高評価入っていました! ありがとうございます!


42枚目:わくわくの前日

「シュウ君、ナギサちゃん。昨日、君達のお母さんに会ったよ」

 

 ゆっくりと休みを取った翌日。いつも通り、シュウ君達が紙をシバいている様を後ろで観察しながら、昨日の話をした。

 

「僕もお母さんから聞きました。物静かで、礼儀正しい方だった。って」

「まぁね。用心棒は店を表す存在だとも言えるからね。相応の気品が求められるのさ」

『カァス♡ カァス♡ シュウ君が欲しがりそうなレギオンスリーブかっさらって、普段からストレージをアホみたいに弄り倒して、ショタを眺めて悦に入るマスターに溢れるのはキ・ヒ・ンじゃなくて、ゲ・ヒ・ン♡』

 

 脳内でいらん声が響いて来たので、メタビデッキを取り出してショットガンシャッフルをしてみせた。バチバチと音を立てながら、カードが噛み合っていく。

 

『ギャアアアアアアア!!』

「ヒジリ殿。急にどうした?」

「ちょっと、ショットガンシャッフルの練習をしたくなっただけさ。今日は機嫌が良くてね」

 

 シュウ君とナギサちゃんは首を傾げているが、サクタ君はハッとしていた。スマホで確認していた。

 

「明日は新弾の日か」

「そう。既存テーマの強化以外にも『TEN・PULA』と『パティシエーラ』の新テーマが目玉だね」

 

 店内を観察してみれば分かるのだが、プロキシを入れて練習している子達も多い。ソワソワした空気が漂っている。

 

「どうして、皆。まだ発売されていないテーマを使っての練習ができるの?」

 

 と、ナギサちゃんから初心者らしい質問が来た。私は有志が作ったまとめサイトの情報を見せた。

 

「新弾のカードは発売前に情報が公開されるんだ。だから、発売前に代理(プロキシ)を使って練習して、使用心地や必要枚数の確認もできるんだよ」

「……面白そう!」

 

 ナギサちゃんが目をキラキラさせている。彼女はシュウ君やサクタ君と違って、まだ自分のデッキを固定させていないから、どんなテーマにでも染まれる。

 今は、ストラクチャーデッキの『姉妹探偵(システー・ディテクティブ)』を使っているが、新規を開拓していくのは良いことだ。……よし。

 

「試してみる?」

 

 彼女に差し出したのは『パティシエーラ』のプロキシだ。デッキのアセンブルは私と店長で考えた物で、この後の業務にも使う物だ。

 

「良いんですか?」

「うん。言ってみれば、これは営業だからね。もしも、コレで楽しいと思ってくれたり、自分も作りたい! って思ったら、お店の儲けになるからね」

 

 これは善意で貸し出す訳じゃない。彼女に対する営業も含んでいる。

 やはり、カードが欲しくなる最たる瞬間は使って『楽しい!』と思えるかどうかだからだ。回し方に関しては、さすがに初見で把握しろ。というのは無理が過ぎるだろう。故に。彼女の傍に着いた。

 

「ヒジリさん?」

「分からないことがあったら聞いて。今回だけは、サポートしてあげるから。出力の関係上、サクタ君に相手して貰おうかな」

「ウム。と言っても、新弾のカードの効果はまばらにしか把握しとらんが」

 

 シュウ君のデッキに対しては完全に不意打ち気味になるので、やられている側は楽しくないだろう。サクタ君とナギサちゃんと言う珍しい対面でのバトルが始まった。

 

「先攻はナギサちゃんに譲ろう。だが、しっかりと妨害もさせて貰う」

「は、はい! えっと……」

 

 ナギサちゃんが戸惑うのも無理はない。ストラクチャーデッキに入っている様な汎用札も混じっているが、殆ど見慣れないカードばかりなのだから。幸いなことに初動札がキチンと入っていた。……のだが。

 

「シスター・ディテクティブを動かしていた時みたいに、どうやって動かしてみるのか。考えてごらん。ちなみにコネクシオンやユナイトみたいな特殊召喚用のデッキの中身はこっちにあるよ。これとこれが……」

 

 どのカードにアクセスすれば良いのか位は軽く説明しておく。彼女も幾らか回しているので、大雑把な流れ位は分かると思う。故に、初動札も把握できたのだろう。彼女は迷うことなくモンスターを召喚した。

 

「私は『パティシエーラ・マテリアル・ファリーヌ』を召喚! このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合。『マテリアル』モンスターを手札・デッキから特殊召喚できる!」

「『ジャマードローン』を手札から捨てて、効果を発動。ファリーヌの効果を無効化にする」

 

 やはり、ドローンデッキか。後攻をとっても動けるというのが大きい。このまま無効化されては後続が確保できないので、こういう時にどんなカードを使うかと言われたら。

 

「スピードスペル! 『パティシエーラ・メランジェ』を発動! このカードはフィールドの『パティシエーラ・マテリアル』モンスターを2体までセメタリーに送ることで発動できる。デッキから、送ったモンスター以外の『パティシエーラ・マテリアル』モンスターを特殊召喚できる!」

「やはりそう来るか。速攻の猟犬!」

 

 こういったケアができる辺りはサクタ君と言った感じだ。

 シュクルの着地効果に猟犬を使っていたら、メランジェを通してしまう。故に、ドローンで無効にしつつ、今回の様な『サクリファイス・エスケープ』用にしっかりと猟犬を握っておくというのは大事なプレイングだ。だが、欠点があるとすれば。

 

「2枚目のスピードスペル『鏡面呪殺』を発動。デッキからカードをモルグへと送って、ターン終了時まで送ったカードと同名のカードの効果を無効化にします。私が送るのは速攻の猟犬!」

 

 現代インヴェでは汎用札の投入がほぼ必須なので、こういったカードが猛威を振るっている。以前までは3枚投入できたのだが、鏡面呪殺で鏡面呪殺を無効化するという事態が頻発したので、現在は1枚しか投入できなくなっている。

 速攻の猟犬が無効化されたので、別の『パティシエーラ・マテリアル』モンスターが特殊召喚された。

 

「『パティシエーラ・マテリアル・シュクル』を特殊召喚! このカードが召喚、特殊召喚された場合。デッキから『パティシエーラ』スペルカードを手札に加える。私は『パティシエーラ・アトリエ』を手札に加える! そのまま、効果を発動! このカードの発動時の処理として、デッキから『パティシエーラ・マテリアル』モンスターを手札に加える。私は『パティシエーラ・マテリアル・ウフ』を手札に加える。そして、このカードは1ターンに1度。『パティシエーラ・マテリアル』モンスターを追加で召喚できる! 私はウフを召喚! そして、効果でセメタリーにある『ファリーヌ』をフィールドに特殊召喚!」

 

 とんでもない展開力だ。現代らしい展開力は同時に、これまでのデッキを足切りする様なパワーを持っており、使って楽しいと思う反面。後ろ髪を引かれる思いもある。

 

「なんか。分かって来たかも! 小麦粉(ファリーヌ)と卵(ウフ)を素材にして、コネクシオン! 『パティシエーラ・ジェノワーズ』を特殊召喚! 効果で……」

 

 と、途中で止まった。何だろうと思い、周りを見ればいつの間にかギャラリーができていた。きっと、自分達と同じ様に明日発売される新弾を楽しみにしている連中なのだろうが。

 

「何だね、この集りは」

「いや。さっき、お姉さんがプロキシを渡していたから、どんなデッキ内容なのかとか。展開方法も見ておこうかなと思って」

「お姉さん。お姉さん。『TEN・PULA』の分は作って無いの?」

 

 忘れていたが、このカドショに集まっているのはシュウ君以外にもインヴェ好きのプレイヤー達ばかりなのだ。そりゃ、興味を持たれるに決まっている。

 突然、色々な人が集まって来たのでナギサちゃんも固まってしまった。こうなっては、マトモにプレイするのは難しいだろう。

 

「いったん、お預けにして。明日に本番とでも行こうか」

 

 サクタ君もデッキを片付け始めた。どっちにせよ、これ以上のプレイは不可能だろう。私もプロキシを回収しようとしたけれど。

 

「ちょっと待って。デッキの内容、コピーさせて貰っても良いですか?」

「良いよ」

 

 デッキレシピに特許がある訳でもないし、ナギサちゃんがデッキを組む時に参考にでもして貰えれば幸いだ。……ただ一つ問題がある。そして、それはシュウ君も気付いていたらしい。

 

「ナギサちゃん。でも、デッキの方は作れるかな?」

「……頑張って当てる!」

 

 明日はフィロソフィーはおろか全カードショップが盛り上がる日だろう。明日に到来するであろう忙しさを思い浮かべながら、今晩は店長と泊まり込みだろうとか考えているとスマホが鳴った。メッセージの送信相手はヒナコちゃんだった。

 

『お姉さん。明日は無理だろうから、明後日は付き合ってね』

 

 カード関係者だから、新弾関係で忙しくなるだろうことは当然だった。……とりあえず、ここ数日は滅茶苦茶頑張ろう。昨日、養った英気が費やされる予感がしていた。

 

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