TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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 よく見たら、前回の高評価のおかげでついに評価バーが4本目になりました! このままだと本当にマックスまで行けるかも! 本当にありがとうございます! モチベメッチャ上がります!!


43枚目:絶叫の当日

 新弾の前日は店を閉めてからも忙しい。商品の入荷は確認した。予約分の取り置きもOK。一般販売分は……まぁ、期待しないでおこう。どうせ枯れる。

 

「(ライジング・スターならもっとドカっと入荷できるんだろうけれど)」

 

 ウチは個人店よりは大きいけれど、大型店よりは小さい。初回入荷分は大体60BOX位だ。予約分で30BOXは消えるとして、店頭で売る分もアタリを付けておいて、安全在庫として5BOX位は取っておく。残ったBOXはと言うと。

 

「よし。剥いて行くぞ」

 

 シングル用に剥く。現在『パティシエーラ』モンスター以外にも『TEN・PULA』も中々の性能をしているので、多めに当てておきたい。

 他にも有力な再録や、既存テーマの強化カードも入っているので、ここら辺も当てておきたい所だ。店長と一緒に傷などが付かない様に剥いて行く。

 

「……静かだね」

 

 当たり前だが、こんな時間帯に客や店員がいることなんて普段は無い。こういった時間に人がいるのは新弾発売前日だからこその光景だ。

 普段はインヴェプレイヤーの煽りや歓喜の声で賑わっているが、まるで別の世界に放り込まれたみたいだ。

 

「最近は、お前と周りも騒がしくなったからな」

「用心棒が騒ぎを持ってきちゃ、本末転倒だけどね」

 

 こうして、2人っきりでジックリと顔を合わせて離すことも久しぶりな気がする。

 営業時間中は店先に出ているから業務的な話をするだけだし、プライベートで関わることもあまりない。

 

「正直、お前を雇った時はよ。何も言わずに居なくなるんだろうなとは思っていた」

「当たっている。何も無かったら、グループ云々で店を狙われて、私がターゲットになった後なら、去っていたかな」

 

 この店は特例的にグループのシマ取りからは逃れているけれど、今でもバチバチやり合っているらしい。最も、取れるシマが無くなって来たのでグループ同士でのシマ取りになっているらしいが。

 

「今は違うのか?」

「当然さ。ここを出たら、シュウ君やサクタ君達と会えなくなるからね」

「そうか。じゃあ、しっかり働けよ。にしても、ファリーヌ出ねーな」

 

 話しながら剥いてはいるのだが、予想通り。ファリーヌの数が少ない。レアリティの設定も高いが、ある程度仕方ない。

 

「だって『パティシエーラ』の初動札で3枚必須レベルだからね。初動だから1200円位にして、買取とかで落ち着いたら700円位にしよう」

「まぁ、そんなモンか。TEN・PULAは……」

 

 『パティシエーラ』に目を奪われがちだが、こっちも中々に良いテーマだ。

 モチーフは見ての通り、天ぷらだが。『丼』と『うどん』をイメージした永続スペルを使い分けて戦うという風になっている。

 

「このモチーフで『軍艦』を合わせているのがすげぇよな」

 

 ネタっぽく見えるが、天ぷらを想起させつつ軍艦としてのデザインもまとまっている。やはり、インヴェには優秀なデザイナーがいるんだと感心するばかりだ。

 

「にしても。腹が減っている時に、このテーマを見るのは中々に危険だね」

「帰りに、うどん屋にでも寄るか」

 

 どうやら、我々のフィールドではうどん屋が勝利を収めたらしい。ちなみに効果は『丼』がビートダウンで『うどん』が妨害と蘇生のリソース回収力で戦う。

こっちのテーマカードは低レアリティの物が多く、カジュアルをイメージしているのだろう。さすがにエースカードは高レアだが。

 

「こっちは早めに値下がりしそうだから、とりあえず見せておく価格として1000円位は付けとくか」

「他にも面白いカードもあるよね。この『TEN・PULA―KASユニット』ってスペルとか。『TEN・PULA』モンスターがセメタリーに送られる度に『TEN・PULA・KAS』トークン1体を生成するだって。フィールドを埋め尽くして、使い難そうだなぁ」

 

 明日の混み具合や忙しさを考えると喜んでばかりもいられないが、そう言った物を想像するのもまた楽しみである。

 一通り、剥き終えて価格設定もした頃にはとっぷりと日も暮れていた。当然、明日も仕事があるので、早々に帰らねばならないのだが。

 

「で。うどん屋には連れて行ってくれるのかい?」

「なんで、当たり前のように自分も食えると思ってやがんだ?」

 

 と言いつつ、一緒にチェーン店へと向かった。店長はきつねうどんというシンプルな物を頼んでいたが、私が頼んだ物は。

 

「ぶっかけうどんにとり天、ちくわ天、カボチャ天と小海老のかき揚げをトッピングして、明太子おにぎりを付けて、うどんドーナツをお願いします」

「遠慮って知っているか?」

「知らない効果処理だね」

 

 ドン! と、コレでも盛られた物があら不思議。女性は小食というイメージがあるが、アレは全てに当てはまるワケではない。私はガツガツ食える。

 

「こんだけ食ったんだから、明日はショップ店員としてビシバシ働けよ」

「さすがに新弾の日は遊んでいる余裕なんか無いからね。小海老のかき揚げが美味い美味い」

 

 販売から買い取りまで普段とは比べ物にならない位に忙しくなるので気合をいれないとね。既に完食した店長が私の方をじっと見ていた。

 

「私の顔に何か?」

「いや。俺もうどんドーナツ食ってみようかなって」

「しょうがないな。1個上げよう」

「誰が金出したと思っているんだ」

 

 と言いつつ、1個つまんでいた。嵐の前日はこうして、ゆっくりと過ぎて行った。

 

~~

 

「店長ゥー! 店長ゥー!」

 

 ヨシコちゃんがパニックっていた。案の定というか、翌日はお客さんがすごいことになっていた。というか、普段見ない客まで来ている。

 いったい、何が起きているというのか? シングルカードを見れば『パティシエーラ』は下馬評通り。大型スタッツ&美少女テーマと言うことで爆発的に売れている。……と言うワケではなかった。

 

「すいません! 『TEN・PULA』の『TEN・PULA―KASユニット』はありますか? それと! 『TEN・PULA・小海老先兵』を3枚と!!」

「無いですぅううう!!」

 

 ヨシコちゃんが狂乱状態になりながら断っていた。何が起きたのか?

 私達は昨日、パックを剥いている時に見逃してしまっていた。いや、もはや当たり前の様に思っていて、自然とそう言ったテキストになっていると思い込んでいたのだ。だが、そうではなかった。そう『TEN・PULA―KASユニット』は。

 

「(なんで『フィールドからセメタリー』にも。『このターン中『TEN・PULA』モンスターしか特殊召喚出来ない』も書かれていないんだ!?)」

 

 そう。このカードは現代インヴェが枕詞の様に設けている『フィールドからセメタリー』もテーマモンスターしか特殊召喚出来ないという制約も書かれていなかったのだ。

 更に、他のカードで悪い奴がいた。 『TEN・PULA・小海老先兵』だ。『小海老』と言うだけにあって、おそらくかき揚げを彷彿とさせるモンスターだったのだろう。

 コイツは手札のモンスターを1枚セメタリーに送って特殊召喚できるのだが、かき揚げと言うだけにあって他のTEN・PULAモンスターと一緒に揚がることを意識してか。召喚・特殊召喚・セメタリーに送られた場合。手札・デッキから他の『TEN・PULA』モンスターをセメタリーに送るのだが。これもどういう訳か。

 

「(なんで、コイツは同名モンスターも送れるんだよ!? そもそも、セメタリーに送られても効果を発動するな!)」

 

 こういった設計のカードで同名モンスターも送れたら、3積が可能になってしまう。かき揚げとしてはどうかと思うが、別に小海老だけのかき揚げなんて普通なんだから。だって昨日食べていたし。更に悪いことにして、このタイプのモンスターはセメタリーに送る方法が多い。

 でも、ここまでならセーフだった。結局、KASユニットを発動させなければ意味が無いんだから。……が、そこはテーマカード。

 

「永続スペルの『天麵航路』はありますか!?」

 

 恐らく、本来は『うどん』型で運用する際の永続スペルにしか過ぎなかったのだろうが、うどんには天かすが必須だ。コイツは発動時の効果処理でKASをサーチできる。……できてしまうんだ。

 そして、コイツは永続スペルなので触る方法が多い。あっと言う間に天ぷら出張セットが出来上がってしまった。

 

「うぉおおお! 小海老をセメタリーに送って、デッキから小海老をセメタリーに送る! KASトークンを2体特殊召喚! この2体でコネクシオン!!」

「なんで、召喚権も使って無いのにコネクシオンモンスターが並ぶんだ!」

 

 世は大天ぷら時代。私と店長は急いで該当のカードを回収して、バカみたいな値段を付けたが一瞬で売れた。コレには店長も冷や汗を流していた。

 

「ヤバいな。小海老兵に1200円だぞ? ノーマルカードだぞ? なんで、こんなに売れるんだ?」

「今、ちらっとネット見たけれどSNSでも大トレンドだね。ついでに、便乗して天ぷらチェーン店やうどんチェーン店がイベントを開催しているよ」

 

 バタフライエフェクト過ぎる。インヴェが黄金色にジュワっと揚がって行く音が聞こえた気がした。

 

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