TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面 作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。
そ! し! て! 新たに高評価! ありがとうございます!!
電話を貰った翌日。午前中に用件を済ませて、午後から出勤しようと思ったのだが、店長曰く『働き過ぎだ』ということで強制的に休まされた。
……いや、ヒナコちゃんからの誘いだから、インヴェやグループ関係の話なので、これも仕事みたいなものだが。
「お姉さん。こっち~」
待ち合わせの場所に行ってみれば、ヒナコちゃんがいた。会議と聞いていたが、緊張した雰囲気などは無さそうだ。隣には、サユえもんもいる。
「ワタクシのこと。お世話係みたいに思っていませんか?」
「違うの?」
「サユえも~ん。トップに解決札が来る道具出して~」
「そんなモンがあれば、ワタクシが欲しい位です!!」
茶番はそこそこに。彼女達が歩き出すのに合わせて、私も付いて行く。何処に向かっているかは分からない。歩いている間に幾つか質問をしていく。
「サユリちゃん。今回の話は『グループ』として? それとも。インヴェって言う『界隈』側としての物?」
「『グループ』の方だね。長い目で見れば『界隈』の話にもなるだろうけれど」
インヴェの話をする以上、回り回って界隈に関係して来る。現状『グループ』の存在だって、カドショを始めとして色々な所に波及しているのだから。
「結構気になっていたんだけれどさ。グループにとって、私って目の上のタンコブなんだろう? ヒナコちゃん達はこんなに頻繁に接触して大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。少なくとも『リリウム・サンクチュアリ』はお姉さんのことを好意的に見ているし、アタシもお姉さんのことは気に入っているよ」
グループの中でも『リリウム・サンクチュアリ』は特殊なので、私に与する機会はあるんだろうけれど。
「ヒナコちゃんは私の何をそんなに気に入って?」
「え? 好きになるのに理由なんて必要?」
何も言えなくなった。コレにはサユリちゃんも口元を覆っている。
そうだよね。好きになるのに理由なんて必要ないよね。インヴェだってカードパワーとか、カードデザインとかイラストとか。色々とあるけれど、何が好きか。言葉にするのが野暮な時もある。きっと、LIKEだ。ワザとらしく、咳払いしといた。
「じゃあ、グループの話だとすると。『リリウム・サンクチュアリ』内で何か起きたとか? イーグルスクリームめいて『リリウム・サンクチュアリのニューリーダーは私よ!』みたいな?」
「うん。良い勘しているね。そんな感じだよ」
マジかよ。『リリウム・サンクチュアリ』は女子がメインと聞いていたので、そこら辺は上手くやっているかと思ったが、やはりインヴェプレイヤーの魂胆は男女で変わりないというのか。
「サユリちゃんが何とかするべきでは?」
「いや、事態がもっとややこしいというか」
「とりあえず、この問題はお姉さんじゃないと解決できないんだ。着いたよ」
ヒナコちゃんが指差した先には1棟のビル。案内板にはカードショップの名前も入っている。極ありふれた建物だ。『リリウム・サンクチュアリ』が拠点とする場所とは思えないが。
「もしかして、ここはシマ取りで?」
「ううん。基本、ウチはビルに入っているカドショは取らない。雰囲気が良くないし、臭いが籠るから」
「じゃあ、なんでここに?」
エレベーターがやって来た。乗り込んで、何処に向かうかと思いきや。ヒナコちゃんは胸元から取り出したカードを押し当てていた。
『認証』
という短いメッセージと共に。1階にあるハズのエレベーターは下に向かって言った。何が起きているのか分からないが、1つ確認しておくことがある。
「(スマホは圏外か)」
この先で何かが起こったとしたら、私はそのまま行方不明扱いになりうる訳で。一気に話が怪しくなって来た。
「大丈夫だよ。ただ、今から見る物を外に持ち出して欲しくないだけ。あ、そうだ。それとコレ。この仮面付けといて」
ポンと何かを渡された。顔全体をすっぽりと覆い隠す黒いマスク。何となくカラスを彷彿とさせる。いわゆる『ペストマスク』という奴だ。
「え? なんで?」
「一応秘密の会議なんで。アタシ達はコレを付けるか」
ヒナコちゃんとサユリちゃんは何となくオシャレなマスクを付けていた。
私もそっちの方が良かったのだが、仕方なく装着しておく。視界があまり良くないのは、会議の参加者の姿を認識させない様にするという意味も含めているのかもしれない。
「エレベーター、そろそろ到着するよ」
チンと言う音と共に何処とも分からない場所に着いた。真ん中にポツンと卓があるだけの部屋。自分達が最後だったのか、他の者達は既に着席している。
「オィーッス! 君らも早く座ってよー!」
聞き覚えのある軽薄な声を見れば、キラーピッチャーの仮面を被った男が1人。多分、中身はアレだ。
「(タツヤがここにいる。ということは恐らく……)」
他の参加者を見る。視認性が良くはないが、他には椅子に座っている者が2人。それぞれ、傍らに立つ付き人が2人。
「遅いですよ」
「ごめん。でも、件の人物は誘えたよ」
視線が注がれる。本当を言うと、この仮面を取りたくて仕方がないのだが、郷に入れば郷に従え。ということで、小さく頷いた。
「用件は詳しく聞いていないけれどね」
「構いません。今から、話すことですので。早速議題に入りましょうか。――先日、新弾で確認された『TEN・PULA』出張セットについてです」
やはり話の内容も『TEN・PULA』についてと言うことらしい。
まさか、グループで顔を突き合わせるレベルの問題に発展していたのか。司会をしている男性の声は聞き覚えがあるが、確証は持てない。
「過去、数回。出張セット問題はありました。だが、いずれも妨害を増やしたり、展開を伸ばす。という程度でした。だが、今回のセットは出張セット自体に制約が無く『天弓のサジタリウス』を立てられる等。露払い用の大型モンスターにまでアクセスできるレベルで展開力が桁違いです」
ここら辺までは既にSNS等でも触れている話だ。現状、小海老先兵も2枚で良いのではないのか? と、更に出張セットのコンパクト化が研究されている。グループで何が問題になっているのだろうか?
「この出張ギミックを手にした増長から、研究が整う前に他のグループに攻め込めと。グループ内で勇み足立つ者が増えています。コレは望ましいことではありません。理由はお分かりですね?」
「敵対しているグループが無くなれば、今度は内部争いに発展しかねないから。だよね?」
この絡みつく様なねっとりとした声質は間違いなく『ナギト』だ。だとすれば、司会進行をしているのは、恐らく『カズマ』だろうか? あるいは全くの別人と言う可能性もあるが。
「それもあります。ですが、インヴェプレイヤーを成長させるのは対抗心に他ならない。敵対する勢力が早期に潰れてしまえば、弛緩するのも無理からぬこと。故に、我々は現状の拮抗状態を崩したくない。小海老出張セットは遠からず、必ず規制されるからです」
それは頷く。にしても、グループと言うのは統一すれば良いという単純な話でもない。というのは、歴史を紐解けば分かる話か。敵対する勢力を滅ぼして統一。した後には、内部での対立や腐敗で崩壊していくというのは何度も繰り返して来たのだから。
この、舞い降りた大かき揚げ時代に翻弄されて、グループの長達は自分達の組織が腐るのを防ぎたいということか。問題はあるだろうが。
「ちょっと待ってくれよ~。司会サン。こんな楽しいデッキを使わず様子見していろ。って方が、メンバーの皆に不満溜め込んじゃうでしょ? そうして、回せない内に規制される方が問題っしょ!」
タツヤの意見に頷いた。折角、天下を取れるかもしれないチャンスをみすみす見逃した。となれば、トップとしての求心力に著しい影響が出ることは避けられない。だが、現在の状態でぶつかれば勢力図に大きな変化が起きるだろう。
「一番良いのはさ。小海老出張セットも入れたガチのデッキを使ったけれど、やっぱり負けた。って実績だよね? グループの大局に影響を及ぼさなかったって」
「ほぅ。貴女達が言いますか。今回の騒動で一番摺り潰される可能性が高いというのに」
恐らくだが、この4大グループで『リリウム・サンクチュアリ』がインヴェプレイヤー的には一番弱いのだろう。
経済的とか関係各所との繋がりとかそういう面は置いといて、どうしても女性グループは人口が少ないから強い選手が出て来る確率が低い。
「だから。この人を連れて来たんだよ。―――あのさ、小海老が規制されるまでの間。『フィロソフィー』への停戦協定、いったん解除しない?」
「……うん?」
この娘。今、聞き捨てならないことを言った気がする。今、なんて? 私の平穏をぶち壊す発言していなかった?
「貴女。正気ですか? もしや、自分達のメンバーが『フィロソフィー』を。例の用心棒を落とせるとでも思っているのですか?」
「落とせないと思っているから提案しているんだよ。チマチマと手垢の付いたシマを取り合うよりさ、この機会にトップを狙うチャンスがあったら。皆、そっちを狙うでしょ? 余計なこと。考えなくて済むじゃん」
「君は何を言っているんだい?」
と。言ったが、言っていることは理解できる。手持ちが最強である内にデカイターゲットを狙うというのは合理的ではある。……あるのだが。
「僕は賛成だね。だって、他グループとやり合うな。って言うなら、彼らを説得できるだけの材料が必要だ。それは、数多あるグループを退け、不可侵のシマと呼ばれ、幼気な少年少女を誑かす用心棒に打ち勝つことに他ならない」
「君の私怨。大分入っているよね?」
なんだか、断れない雰囲気が積み重なっている。私に死の宣告を突き付ける為だけに呼んだのか。ふざけんな。
「なんか楽しそうだから、俺も混ざって良いっすかぁ?」
「一緒にデスパ2を見て上げるから勘弁してくれ」
「アザーッス!」
私の休日が浪費されることが確定した瞬間だった。コレにはカズマも少し考えた後、頷いた。
「馬鹿げている。とは言い難いですね。合理的なのは事実です。むしろ、完成度が低い内に鼻っ柱をへし折ってやれば、気勢を削げる可能性はあります。ゲストさん、構いませんね?」
「嫌です……」
「決定だね!」
私の意見は無視され、全自動小海老のかき揚げ完食プレイヤーとしての立ち位置を強制される羽目になった。何か色々と取り決められていたが、私はしょんぼりせざるを得なかった。
『FOO↑ コレから海老のかき揚げに、海老のチリソース、ガーリックシュリンプって選り取りみどりですよ。HEY。HEY!!』
唯一、持って来たメタビデッキの主人こと『ヴォイド・マン』だけがハイテンションになっていた。何がそんなに楽しいのだろうかと思いつつ、細かい取り決めを馬耳東風していた。