TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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GWが終わってから建て直し中……。皆さまは如何お過ごしでしたか?


46枚目:幕開け

 ヒナコちゃんからグループの会議に呼び出された翌日。きっと、向こうにも準備やら何やらがあるだろうと。猶予期間を期待していた時の事である。

 

『予想通りというか。グループの連中、新弾が規制される前に、構想を終わらせようとして『フィロソフィー』への挑戦権を解放したわ。これはもう、海老には海老を握るしかない。ここまで言えば、分かるわね?』

「うんうん。私も海老フライのロール寿司は好きだよ。生の海老はちょっと苦手」

 

 毒を以て毒を制す。というのは、カードゲームにはよくある話で、環境に対抗できるのはやはり環境。ということはよくある話だ。

 と。いうか。あの会議の翌日で規制解除するなんて、行動が早すぎるだろう。恐らく、アレは最終確認でしかなかったのか。

 

『暢気なことを言っている場合? 4大グループだけじゃなくて、これを機会にシマを手放した残党達が一発逆転を狙って、そっちに挑戦しに来るかもしれないのよ?』

「大げさだなぁ。まだ、診断が出てから日は経っていないし、あんな声明が出たからって、回し慣れていないデッキで挑んで来る奴らなんて」

 

 と、バックルームで通話していると。ヨシコちゃんがパタパタと駆けこんで来た。伏線回収早すぎるだろう。

 

「久々にグループが!!」

『言ったでしょ?』

 

 最近の私は単なる一スタッフと化していたが、本来の仕事に戻る時が来たようだ。通話を打ち切り、表に出る。グループ特有の団体でのお出ましだった。

 

「俺達の名は『シーウィード』! 公式のあからさまな海鮮差別に辟易していたが、潮流は変わった! コレからは俺達の時代だ! まずは、ここをシマにして、俺達が大航海する為の橋頭堡にさせて貰おう! 勿論、支配した暁にはメンバー1人につき、1000円の買い物を義務付ける!」

「大航海が大後悔にならないようにね」

 

いつも通り、先攻を取りデッキをシャッフルして、相手にカットを入れて貰って。5枚ドローする。……揃った手札を見て溜息を吐いた。

 

「どうかしたかぁ? 手札事故かァ?」

「ボーダー・コントローラーを召喚。一点集中を発動、先鋭化を発動。カードを1枚伏せて、奈落の借財を発動」

「は?」

 

 積み込みでもしたんじゃないかって初手だったが、カットを入れたのは相手なので何も言えない。やって来た手札3枚が何だったかと言えば。

 

「ヴォイド・マンを召喚。カードを2枚伏せて、ターンエンド」

「嘗めるなよ! この盤面を打ち崩してこその伝説だ! ドロー! よし!! 『豪嵐の一掃』を発動! 相手フィールドのバックを全破壊する!」

「では、私は『質実剛健牢』を発動。このカードがフィールド上に表側で存在する限り、自分フィールドのカードは効果で破壊されない。ただし、自分は特殊召喚ができない」

 

 フッと相手が笑った。だが、私はこういったパターンでのドヤ顔を飽きる位に見ている。こういう時に飛んで来るカードは大抵決まっている。

 

「MPを半分払って『強制停止』を発動! スペルの発動を無効化して、そのままカードをセットする。更に、お前はデッキから好きなスペルをフィールドにセットできる。その代わり、この効果の発動後。お前は新たにスペルを発動させることができない!」

「神告で無効にします」

「……え?」

「神告で『強制停止』を無効化にするよ。あ、私は『先鋭化』のスペルを適用してあるからMPを払わないけれど」

『手札を2枚も切って、MPを半分も払った挙句。こっちのセットスペルを1枚使わせただけなんて。カワウソ……』

 

 とは言え、こっちには伏せカードが残り1枚ある位なので、相手に回答札があった場合は崩れかねない。割と危うい状況ではある。特殊召喚もモンスターの効果の発動もできないけれど。

 

「俺は! 『TEN・PULA―KISS』を召喚して、装備スペル! SOYユニットを装備! このカードは装備モンスターのATKを+200にして、相手はこのモンスターしか攻撃・効果対象にしかできなくなる!」

「なるほど。『Show You』ってことか」

 

 消化試合になりそうだったので、私が激うまジョークで場を盛り上げようとしたが誰も失笑すらしてくれなかった。醤油なのに不味いことになってしまったぞ。

 チラリとシュウ君の方に視線をやってみたが、やんわりと逸らされた。もう駄目だ。目の前の海藻(シーウィード)をボコボコにして恥ずかしさを隠すしかない。

 

「いけ! KISS! コントローラーを破壊しろ!」

「セットしていた仕込み武器を発動。装備されたモンスターの攻撃力は、戦闘を行う相手モンスターのATKより100高い数値になる」

 

 キスに仕込み武器が突き刺さり、あっけなく撃破された。相手フィールドは空になり、特に発動できるスペルも無かったらしい。

 

「た、ターン終了で」

「私のターン。『一点集中』の効果で2枚ドロー。コントローラーとヴォイド・マンで攻撃。その後、カードを1枚伏せて。手札から『奈落の借財』を発動。このカードの発動後の効果に、相手に与えるダメージは0になるけれど、もうダメージを与えた後だから関係ない。引いた3枚のカードを伏せてターンエンド。どうする?」

「まだだ! 俺達は海藻の如く! 逞しく、粘り強い存在! ここでお前を倒して、一発逆転して成り上がる!」

 

 逞しく、粘り強い存在の割には随分と短絡的な考え方だが、最後まで諦めない姿勢は好感が持てる。

 

「ドロー!! ……モンスターを1枚セットして、ターンエンド」

「私のターン。2枚ドロー。2枚目のヴォイド・マンとボーダー・コントローラーを召喚して、仕込み武器を付けた1枚目のボーダー・コントローラーで攻撃。残り3体でダイレクトアタック」

「投了で」

 

 全然粘り強くないじゃないか。ちなみに伏せていたカードは『神告』『暗殺』『虚無(ヴォイド)だったので、向こうが頑張って何かをしようとした所でどうにもならなかったのだが。

 海藻達がスリーブやらサプライを買い漁っている中、私が定位置に戻るとシュウ君達が駆け寄って来た。

 

「ヒジリさん。暫く、シマ取りは行われないって」

「どうやら、新弾が全力を出せる内に取りに来たらしいね。いや、随分と都合の良い協定だとは思うけれど」

「その割にはあまり慌てておらんように見えるが。既に通達が?」

「さっき、ハルカからね」

 

 正直に言うなら、昨日の会談の時点で知らされていたのだが、そこは置いておくとして。最近は柄にも無く展開やら遣り取りをするデッキを使っていたが、やはりメタビは楽しい。

 

『私は憂いています。このインヴェの環境を。カードゲームの未来を』

「私は、この多様性の無い環境と増長したインヴェプレイヤーを憂いているよ。全く、嘆かわしいことだ」

 

 あまりに楽しみ過ぎて、思考レベルが『ヴォイド・マン』とシンクロしていた。

 

「多様性の全てを否定するデッキを使っている、ヒジリ殿が言っても何も説得力が無いのであるな」

「酷い。だが、こうして。私がメタビを使って撃退することは、増長したグループやプレイヤーに警鐘を鳴らしているのであってだね」

「その割には、ヒジリさん。滅茶苦茶楽しそうにしていた様な」

 

 まさか、シュウ君にもそう見えていたとは。隣ではナギサちゃんも言葉にはしていないが、同じ様な顔をしている。

 

「シュウ君。それは誤解だ。見なさい、このダウナーお姉さんを。そんな、相手をメタってはしゃぐ人間に見えるかい?」

「はい。いつも僕と対戦している時は微笑んだり、難しそうな顔をしているんですけれど、さっきの試合はなんて言うかその……ネズミを追い回す猫みたいな」

「酷いにゃん」

 

 自分が思ったよりもハイテンションになっているのか、普段なら絶対にやらないことをしている気がする。シュウ君も苦笑いしていると、再びドアがガーッと開いた。もしやと思ってみれば、数人の女子。先頭には赤毛の女子。

 

「オラーッ! シマ取りや! ここを取って、その功績でウチらが『リリウム・サンクチュアリ』の新女王(ニュークイーン)として輝くんや!!」

「アラ。どうかされました? サユリさんにはキチンとワンちゃんの躾をしておくように、申し付けなくてはなりませんか?」

「ヒジリさん……?」

 

 シュウ君も戸惑っている。私だって、数日で色々と起き過ぎていて若干パニックになっているのだから、コレ位は勘弁して欲しい。

 

「あの毛虫が気に入るだけあって、ウチとは合わなさそうなやっちゃな。シマ取りや! 負けた暁には、1人に付き3000円は落したるさかい!」

「いや、そんな物は要らないから。君のことをコレから『ニュークイーン()』と呼ばせて貰うことにするからね。ヒナコちゃんにも知らせて、負けたら1週間くらい。皆に『ニュークイーン』って読んでもらうことにするね」

「アホ抜かせ! ウチが負けるわけないやろ!」

 

 リリウム・サンクチュアリにも野蛮人はいるんだなぁ。さっきの勝負から間を置かずの二連戦だが、緊張はしていない。私はデッキをシャッフルして、相手にカットを頼んだ。

 

「……ヒジリさん。楽しそうだなぁ」

「最近、忘れていたが。ヒジリ殿が自分の使いたいデッキを使う。ということも少なかったからな」

 

 相手に合わせたり、レギュレーションの為だったり、尋常な勝負の為だったり。やはり、カードゲームは使いたいデッキを回せると気が一番楽しい。皮肉なことに環境があれている今だからこそ、私は強く実感できていた。

 

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