TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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5枚目:懐かしい顔!

「えー。今日、カードショップを経営している方達に集まって貰ったのは他でもありません。昨今の『シマ問題』についてです」

 

 周りを見れば、カードショップの店長やスタッフ、中には私の様な用心棒達までいる。店を閉めれば、売り上げにも響くと言うのに態々集会を開いているんだから、結構な緊急事態である。

 

「皆さんのショップにも来たかもしれません。あるいは、既にシマにされてしまった店舗もあるかもしれません。ですが、基本的に彼らの要求には応えないで下さい。業界の信用に関わります」

 

 私を含め参加者達は頷いた。特定の集団に占拠された店舗の予後は基本的によくない。短期的に見れば収益は上がるかもしれないが、先細りしやすい。

 

「それと。乗り込んで来た集団が一様に金額を提示するのも気になります。若者達があんな金銭を用意できるとは思えませんし、バックに何かしらの組織が付いている可能性があります」

 

 それは私も気になっていた所だ。乗り込んで来た連中が一様に所定金額以上の買い物をすると宣言しているが、何処から資金を引っ張り出して来ているのだろうか? 学生にとっちゃ1000円でも大金のハズだ。

 この考えは共通の疑問だったらしく、皆が騒めく中。代表する様に1人の男が挙手をしていた。マイクを渡される。

 

「ライジング・スターの社長『ニシダ』と申します。だとすれば、連中の狙いは何だと思いますか?」

 

『ライジング・スター』と言えば、ウチとは比べ物にならない程の大型店だ。

多くのチェーン店やフランチャイズを持っているので、目下の問題はさっさと解決したいのだろう。

 

「分かりません。ハッキリとしたことが分かるまで、申し上げられることはありませんから。今回の事態を受けて、経営が困難になった店舗や営業が難しくなっている方は、我々『連盟』に相談してください。また、有益な情報をお持ちの方はご連絡を……」

 

 と、業務上必要な連絡を受けた後、店長と一緒に帰り支度をしている時のことである。私達を訪ねて来る者達がいた。

 

「『テルアキ』さん。お久しぶりです。儲かっていますか?」

「ぼちぼちって所だ。ニシダ、俺達に何の用だ?」

 

 極自然な動作で私を後ろに下がらせた後、店長は彼を睨んでいた。私としても彼は接したくなる相手ではない。

 

「いえ。先日、そちらの店舗で面白い勝負が行われていたとスタッフの子から言われましてね。ほら、この動画なんですけれど」

 

 それは正に、サクタの取り巻きが撮っていた物だった。クリムゾン・ドラゴンでフィニッシュしたシーンを見て、ニシダに付き従っている女は言う。

 

「『サカズキ』を思い出すよ」

「(そりゃ、『ハルカ』なら思うよな)」

 

 『ライドウ ハルカ』。インヴェでは割と珍しい女性プレイヤーで、私が現役だった頃は鎬を削り合っていた仲だった。

 ……今となっては、彼女は大手に雇われ現在も活躍し続ける花形プレイヤー。対して、私は中規模店舗の用心棒。随分と差が付いた物だ。

 

「なんだ。引き抜くって言うのか? 悪ぃが、ヒジリを渡す気はねぇぞ」

「話しが飛躍し過ぎですよ。私は挨拶に来たのです。ヒジリさんですか。先日は良い試合をされていましたね」

「あ、ありがとうございます」

「業界が大変な今こそ! 店の大小に関わらず、結束を強めて行きましょう!」

 

 さわやかな社交辞令の様に思えるが、どちらが大か小かを分かった上で言っているとしたら嫌味ったらしい。大手を運営する人間に、その程度の気遣いが無い訳がないので意図的に言っているのだろう。

 

「はいよ。おい、帰るぞ」

「おい」

 

 ペコリと頭を下げて、足早に去ろうとした所でハルカに呼び止められた。

 店長はハンドジェスチャーだけで来いと指図しているが、私は動けない。ニシダは微笑んでいる。

 

「ちょっとした余興にお付き合い願えないでしょうか? 実は、ハルカさんがあの動画を見て手合わせをしたいと言っていましてね」

「なんで、ウチのが応えなきゃならねぇ?」

「もしも、受けて頂いた場合。コチラの在庫を幾らか融通させて頂きますよ?」

 

 暫しの沈黙。ウチの店舗の規模では取り揃えられないカードも多い。一方、相手は大手なのだから多少の融通は利くだろう。が。

 

「それじゃあ、お宅に何のメリットがあるんだ? コイツとの勝負に、そんな価値があるって言うのか?」

「私ではなく、ハルカさんがね」

「そう言うことだ。デッキは持って来ているな?」

 

 空いた卓上には、既にプレイマットや必要な物が取り揃えられている。無いのは観客と……私のやる気位か。

 

「悪いが、クリムゾン・ドラゴンのデッキは持ってきていない。アレは知り合いの子から済し崩し的に借りていた物でね。用心棒用のメタビならあるけれど」

「ならば、それで良い。勝敗に関しては心配しなくて良い。勝負を受けた時点で、そちらに在庫を融通する手筈は整えている」

 

 見れば、ニシダは何処かに連絡を入れている。店長の方を見る。好きにしろと言った具合だ。

 

「分かった。偶には用心棒以外の仕事もしようじゃないか」

「契約成立だな。先攻はそちらに譲ろう。好きなだけ回せ」

 

 メタビートは展開手段などに乏しい分、相手を封殺する上では『先攻』という条件が必須だ。予め、私がメタビを使うと宣言した上で渡して来たのだ。

 

「良いだろう。私は『一点集中』と『先鋭』を使う。ヴォイド・マンを出して、カードを2枚セットしてターンエンドだ」

「エンドフェイズ時。私は『先行する雷獣』を発動する。このカードは自分のフィールドにカードが無い場合のみ使える。フィールド上のカードを1枚破壊する」

 

 セットしたスペルはそのターン中に使えない。

 フィールドに雷光が散ったかと思った刹那、伏せていた『暗殺』のスペルが割られて、セメタリーに送られた。まだ、セーフだ。

 

「私のターン、ドロー。『電光蠅』を発動。相手フィールドのモンスター1体を指定して、効果を無効化する。更に、私はこのターン中に『電光』カードの効果を発動させたので、手札から『帯電する雷獣』を特殊召喚する。更に、このカードは召喚・特殊召喚成功時に『雷獣』カードをサーチする」

 

 現代のカードは妨害ですらテーマカードを運んできて、次の展開に繋げるんだから強いに決まっている。1ターンで何処まで行くんだ。

 

「私がサーチしたのは『風雨纏う雷獣』。このカードは『雷獣』モンスターが場にいれば、特殊召喚できる」

「まだ、召喚権も切っていないのによく動くねぇ」

 

 焦る気持ちはある。展開中にバックを割られる可能性もあるが、我慢だ。まだ、耐える時だ。

 

「2体の雷獣をコネクシオン。荒れ狂え『バエル!』」

 

 2体のモンスターが入り混じり、異形が出現した。

 両肩に猫とヒキガエルの頭部が生えており、真ん中にはしわがれた男性の顔がある。上半身だけでも異様だというのに、下半身は更に異形めいており、クモの様な下半身を持っていた――ここでカウンタースペルを発動する。

 

「私はMPを半分払い『神告』の効果を発動。バエルの特殊召喚を無効にして、破壊する」

 

 撃つとしたらここだ。記憶にある限りでは、雷獣テーマに蘇生札は無かったハズだ。だが、なんと心細いことか。

 

「(早く、ターンを渡してくれ)」

「私は蒼雷獣(ブルー・ザ・ビースト)」を召喚する。着地時の効果で『電光』カードをサーチする。私がサーチしたのは『電光鳥(ライトニング・バード)』だ。このカードはドロー以外の手段で加えられた場合、特殊召喚できる。更に、着地時の効果として『召雷』をサーチする」

 

 潰したはずの手数が新たな手勢をどんどん引き連れて来る。こうなっては、ヴォイド・マンが棒立ちしているだけになるのだが。

 

『やはり、本物には勝てないということですかね』

 

 ここは簡易的なバトルフィールドだというのに、ヴォイド・マンが話し掛けて来た。渦巻き状の頭部のどこから声を出しているかは分からないが、ニュアンス的には嘲笑めいたものを感じる。

 

「召雷のスペルを発動! コネクシオンに必要なモンスター1体をセメタリーから除外することができる! セメタリーのバエル! フィールドの蒼電獣! 電光鳥をモルグへと送る! 天地雷鳴! 現れろ! アームド・ブルー! ライトニング・ブルードラゴン!」

 

 先程のバエルとは違い、生えている3つの頭部はドラゴンの物になっていた。全身に蒼電を纏った、金色の覇者がいた。

 

『ガハハハ!! こんな猪口才な真似が効くか!』

「バエルを含む3体を素材にして召喚に成功した場合! 相手フィールドのモンスターを全破壊し、3回攻撃できる。ライブルのATKは3500」

 

 ヴォイド・マンが呆気なく撃破された。笑える。たった1ターン。相手に渡しただけでコレだ。

 

『ライトニング・ジャッジメント!』

 

 私、目掛けて3本の雷が降り注いだ。……と言うのはイメージに過ぎないが、それでも真に迫る程の迫力を感じたのは、圧倒されたことの証左に他ならない。

 勝負とすらいえない、一方的な蹂躙劇に私が脂汗を浮かべている中。ハルカは詰まらなさそうにしていた。

 

「下らないデッキだ。考えることを止めて、楽しむことを諦めて、しがみ付いているだけの紙束で私に勝てる訳がないだろう」

「ハルカさん。使うデッキは人それぞれですから。お相手していただきありがとうございます。在庫の方は後日、そちらにお届けしますので」

 

 ハルカとは対極的にニシダは営業スマイルを浮かべたまま、この場を去った。暫く、私は呆然としていたが『おい』という、店長の声を聴いて我に返った。

 

「今日は飯食って帰るぞ」

「え。でも」

「勝負を受けてくれた礼だ。それ位はさせてくれや」

 

 店長の厚意に甘えることにした。それにしても、あの様子だとハルカは変わっていない様に見えた。少しだけ安心したが、自分がいなくても特に何も思われていない様に思えて。僅かに寂しくも思った。

 

――

 

「ハルカさん。いい加減、スマホで愚痴を吐きまくるのを止めて下さい。スタッフの皆が応対に困っています」

「認めない! アイツがあんなメタカスになっているだなんて! 私は認めない!!」

 

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