TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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高評価ありがとうございます!


53枚目:敗北

 シュウ君はドローしたカードとセメタリーを見比べている。

 もしや、サルベージ系のカードを引いたのか? 私が記憶している『TEN・PULA』カテゴリのカードを思い返してみる。

 現代インヴェにおいてテーマ内での蘇生カードは珍しくも何ともないが、それなら態々見る必要はないハズだ。

 

「(仮に大型モンスターを蘇生しても効果は使えないし、戦闘破壊はできない。態々、見る必要があるのか?)」

 

 だとしたら、蘇生札ではないがセメタリーを参照にするカードを引きこんだ可能性がある。……それとなく探ってみようか。

 

「君は天ぷらが好きかい?」

「デッキの話ですか? 料理の話ですか?」

「料理の方だよ。私も結構天ぷらが好きでね。小海老のかき揚げとかが好きなんだけれど、思ったより量ができて食べきれないこともあってね」

 

 自分で作ることもあるが、基本的にあまりやりたくはない料理だ。面倒臭いし、油が綺麗な時にしか作れないし、思ったよりも量ができる。

 

「そういう時はどうするんですか?」

「翌日『二度揚げ』するんだよね。バリバリのガリガリになるけれど、ベチャッとするよりはマシだからね。君は二度揚げした物でも気にしないタイプ?」

「……結構気にしますね」

 

 スッと手札を隠す様な真似をした。恐らくだが、あそこにあるカードは『TEN・PULA―二度揚げ航程』だ。

 セメタリーにある『TEN・PULA』モンスターをデッキに戻して、4枚戻すごとにフィールドのカードを1枚バウンスするというリソースを回復するついでに除去もして行くカードだ。出張セットでは使えないのであまり注目はされていなかったが。

 

「(純構築なら十分に採用できるカードだ。さっさとリーサルを取らないと、一気に捲られる。が、ATKが足りない)」

 

 仕込み武器は相手のATKを必ず100上回るが、どれだけ装備モンスターのATKが高くても100しか上回らないので、KASトークンみたいな貧弱スタッツでも上からダメージを与えることができない。

 

「ターン終了です」

「では、私のターン。ドロー」

 

 引いたカードを見る。もしも、シュウ君が引いたカードが『二度揚げ』だとしたら、手札を温存している暇がない。

 

『さっきの借財を止められたのが痛すぎましたね』

「だから、お前にも働いてもう。私は『ヴォイド・マン』を召喚する。バトルに移る。ヴォイド・マンでトークンに攻撃、ボダコンでダイレクトアタック」

 

 忘れがちだが、コレは防衛戦。通常のマッチとは違って、互いのMPは通常の半分しかないので、下級モンスターの攻撃でもかなりのダメージになる。

 

「ターンエンド」

『ひりついて来ましたね』

 

 現代インヴェは超が着くほど高速であり、2,3ターンで決着が着くことも珍しくはない。故に相手のドローにひりつくという展開は少ない。

 ギャラリーも息を呑んでいる。お互いがデッキトップに全てを託してターンを回している。メタビートと現代インヴェの最新テーマでありながら、やっていることはクラシックめいている。若い子達よりもベテランのプレイヤー達の方が興味深そうに見守っている。

 

「ボクのターン。ドロー!」

 

 何を引いたか。モンスターか。あるいは……と思いながら、私は彼のフィールドに1枚だけポツンと残っている永続スペルを見た。

 『天麺航路』。発動時の効果処理として『KASユニット』を持って来るという物で、ATKのバンプをしたり、蘇生したりサルベージしたりという効果もない。

 出張セット時にもKASユニットを引っ張って来たら、後はコストとしてセメタリーに送られがちだが、隠された効果……と言うか、使われていない効果が一つ。

 

「ボクは手札から『TEN・PULA―プラットフォーム・UDON』を召喚。このカードの攻撃力は装備された『TEN・PULA』モンスターのATKの合計分上昇します。そして、天麺航路の効果でセメタリーの『TEN・PULA』モンスターを装備スペル扱いで装備させます。ボクが装備させるのは『天麺』!」

 

 UDONに大型スタッツの攻撃力が乗る。だが、コレだけでは削り切れない。

 彼がもう1枚握っているのが『二度揚げ』だったら、かなり苦しくなるが次のトップで解決するしかない。

 

「手札から『御膳総本部』を発動します。このカードは『天丼甲板』か『天麺航路』と『TEN・PULA―超弩級艦天麺』が存在している場合に発動できる。フィールドの『TEN・PULA』モンスターに手札・セメタリー・モルグから任意の数だけ『TEN・PULA』カードを装備させることができます」

 

 私も思い上がっていたのだろう。幾ら環境テーマでも効果や特殊召喚を封じられたら、マトモに戦えないと。あるいは、私のドロー力があれば解決札を常に立てられると。

 

「『TEN・PULA―極麺戦艦ウドニア』と『TEN・PULA―火器揚艦』と『TEN・PULA―海老艦』をUDONに装備させます。バトル!」

 

 もしも、私が相手の特殊召喚を封じてしまえば良い。という安易な考えで『ヴォイド・マン』を出さなければ。いや、それ以前に彼が握っている札がバウンスだと思い込んでいなければ……、そんな想像に意味は無い。

 

「UDONで『ヴォイド・マン』に攻撃!」

『いやはや。まさか、私が敗因になるとは――』

 

 実質モンスター5体分の攻撃力で殴られたので、そのままMPを削り切られた。……私も負けることは往々にしてあるが、この防衛戦と言う超有利な環境で敗北したのは。

 

「……私の負けだ」

 

 シンと静寂が場を支配する。やがて、何が起きたかを理解して来たのかフツフツと店内にざわめきが拡がっていく。そして、ツカツカと歩み寄って来るニュークイーンちゃんが1人。

 

「皆! 見たかぁ! フィロソフィー最強の用心棒に勝ったんはなぁ! ウチら! 『リリウム・サンクチュアリ』の……」

「アカネ」

 

 彼女が振り向いてみれば、いつの間に潜んでいたのか。ヒナコちゃんがいた。ニッコリとしているが声のトーンからしてブチギレている。

 

「なんや。何か文句あるんか?」

「皆―。この子は、グループの子じゃなくてお姉さんの友達だからねー」

 

 スポっとシュウ君の被っていたウィッグを取っていた。分かっていたけれど、慌てて取り返して被り直していた。可愛い。

 

「ちょっと待ってくれよ。じゃあ、なんでグループを名乗って対戦をしたんだ?」

 

 ギャラリーから極当然の疑問が飛んで来た。想定済みの質問だったのか、ヒナコちゃんは言いよどむことなく答えていた。

 

「普段、お姉さんと遊んでいたけれど最近はこっちに出ずっぱりで寂しくなったから『私』の計らいでグループのメンバーと言う体で遊びに来たんだー。お騒がせして、ごめんねー」

 

 アカネちゃんの姿が消えている。連行されたのだろうか? ギャラリーの困惑も収まっていない。

 

「ちょっと待ってくれ。じゃあ、依然として。この用心棒に勝てば、グループの頂点ってことで良いんだよな?」

「そうだね」

 

 待ってくれ。私は負けたんだ。だけど、考えればグループ相手に負けた訳じゃないから、私は用心棒を降りるなんてことはできなくて。

 

「じゃあ、次は俺達だ!」

 

 店外に待機していたグループが入店してきた。シュウ君もコソコソと去っていく。手を伸ばすけれど、追いかけて席を立つ訳にもいかない。先程の敗北なんて無かったかのように防衛戦が始まる。

 

『マスター』

「八つ当たりに付き合ってくれ」

 

ドローする。先の対戦とは打って変わって完璧と言っても差支えの無い手札(ハンド)だった。次は自分がと意気込んでいる挑戦者の心を折る様なプレイングをしていた。

 

――

 

「なんでや! あのデッキ組んだんウチらやし、指導したんもウチやのに!」

「あのさぁ。アカネちゃん達が自力で勝つならいいけれど、他所から抱えた子でありならあらゆる問題が発生するの分かる???」

 

 店外ではアカネがヒナコからしばかれていた。コレには賛同してしまったシュウもおろおろとしていたが、サクタが首を横に振っていた。

 

「こういう諸事情について詳しく話さず勧誘したのは、アカネ殿の責任だ。シュウ君は気に病まなくていい」

「でも……」

「シュウ君も変なことに付き合わせてゴメンね。お詫びに、そのデッキ上げるから。使っても良いし、デッキを売っても良いよ」

「殺生な!!」

 

 ズルズルと引きずられて行くアカネを見送りながら、シュウ達はもう一度店内の様子を見た。勝負をしている光景は変わらなかったが。

 

「もう終わり?」

 

 対戦相手を見据えるヒジリの瞳はかつてない程に冷たかった。

 そして、何よりも特徴としてハッキリと現れていたのは。フィールドに出現している『ヴォイド・マン』が見たこともない位に鮮明に浮かび上がっていた。

 

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