TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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54枚目:その後で

 某所。仰々しい仮面を被った面々はモニタに映し出された映像に注目していた。ライジング・スター本店にて行われている防衛戦の様子だ。

 

「昨日は『リリウム・サンクチュアリ』の幹部が先走って、彼女が指導している少年を挑戦者に仕立て上げていたようだな」

「いや、マジで意味が分からなくて。止めようがなかった。申し訳ない」

 

 『リリウム・サンクチュアリ』の2番手『アカネ』の策略により、用心棒としてのヒジリは始めて黒星を付けられた。

 彼女も無敵のインヴェプレイヤーと言う訳ではないので、フリー対戦や非公式のバトルでは負けることもあるが、彼女に悉く有利な『防衛戦』というルールで負けたのは、これが初めてだった。

 

「となれば。同じ様なデッキアセンブルで挑む挑戦者が増えるのは当然のことだよね。僕の所の跳ねっ返りも挑んではいるけれど」

 

 映像には、挑戦者がやり場のない焦燥感をハンドシャッフル。俗に言うシャカパチで紛らわせようとしていたが、盤面はどうしようもない位に固められていた。

 

『俺は海老艦を召か――』

『神告』

 

 『ヴォイド・マン』と『ボーダー・コントローラー』により盤面は固められ、バックには破壊を防ぐ為の『質実剛健牢』と『神告』以外にも3枚の伏せカード。

 先日の防衛戦で見せた引きとは打って変わって、相手の全てを拒否するかの様な強固な布陣だった。

 

「あの少年に負けて以来、彼女の引きは神掛かっている。いや、もはやインヴェの鬼と言っても差支えが無い。図らずも、彼女のレベルを上げる手伝いをしたようだ」

「レベルが上がるとどうなんの? インヴェの試合が有利に運ぶようになるとか? オカルトで手札(ハンド)操作ができる様になるとか?」

 

 薄暗い陰気な場所には到底そぐわないヘラヘラした声色だった。

 

「そんな下らない物ではない。カードの声を聞き、力を引き出せれば。今はTCGの範疇で収まっているが、その先へと行ける筈だ。その暁には『アセッション計画』も進むことだろう」

 

 司会をしている男の言葉に、参加者の一人が深く頷いた。先程、軽薄に質問を飛ばした男性がタブレットを叩いている。

 

「『アセッション計画』って大仰に言っているけれどさ。世界をカードで支配するとか、アニメ漫画の世界じゃないんだから。こんなコスプレして集まって、マジになんなくても良いと思うんだけれどね」

「……どうにも。お前はグループのリーダーとしての自覚が足りんようだな」

「それでも参加しているんだから、良いでしょ」

 

 彼のふてぶてしい態度に司会の男は不快感を露わにしていた。場を収める様に手を叩いたのは、この会議に出席している中で唯一の女性である彼女だった。

 

「スタンスはそれぞれで良いよ。大切なのはアタシ達の目的を進めること。今回はウチのがトラブル起こしちゃったけれど、塞翁が馬。計画の進みもちょっとは早くなったかもしれないし、前向きに行こう」

「……そうだな」

 

 モニタに映し出されている映像では防衛戦が続いているが、先日までとは一変して『叩きのめす』と言った光景が繰り広げられていた。

 

――

 

 昨日の敗北から1日。私が敗北した光景を見て、好機と捉えた連中が大量に挑戦して来たが、全員返り討ちにしていた。

 ただ、いつもより余裕がない位に叩きのめしていたことが災いしてか、挑戦がピタリと止んで暇をしていた。

 

『シュウ君に負けたこと。ショックでしたか?』

 

 プレイ用の卓を通して映し出された『ヴォイド・マン』がニヤニヤとしていた。

 気のせいでなければ、いつもより質感や声が鮮明になっている気がするし、渦巻いていて見えないハズの部分が何となく見える気がする。

 

「1つ、防衛戦ってルールで私が環境に後れを取るとは思わなかった。2つ、シュウ君が環境デッキを握って挑んで来るとは思わなかった。3つ、私がお前を初手に引き込めないとは思わなかった。あり得ない」

『ガチショック受けていますね』

 

 師匠を超えることを恩返し。と言うらしいが、私は超えられて嬉しいなんて一つも思っちゃいない。というか、滅茶苦茶イライラしている。

 

「これが『レギオン』デッキを使った上で打ち破って来たなら、私も悔しくはあるが納得はできたよ。でも、昨今流行の環境を使われて負けるとか。こんな悔しいことある??? ファンデッカーボーイが環境にNTRたんだ。こんな腹立つことがある???」

『めっちゃ早口ですやん』

 

 シュウ君は私が諦めた『レギオン』を使って環境に食い込むための運命力やら何やらを手にして、勝ちあがって行くのを後方から見守るつもりだったのに。

 

『いぇーい。君の大好きなシュウ君は『TEN・PULA』艦に乗船してハニムーン予定でぇーす。僕達の旅行記レターを見ながら、メタビートシコシコ回しといてくださ~~い』

「ン”ン”!」

 

 腹が立ったので卓上から『ヴォイド・マン』を回収してショットガン・シャッフルをすることにした。『ギャアアアアアアアアア』というアホの悲鳴をBGMにしていると、私の向かい側に座る奴が1人。挑戦者ではない。ハルカだ。

 

「見なよ。現代インヴェの最先端『TEN・PULA』を。コレはもう組むしかないわね」

「初手、PRを仕掛けて来るカードショップ提携プレイヤーの鑑」

 

 肘を着いて『TEN・PULA』特集がされているショーケースを親指で指している貫禄は正にプロのインヴェプレイヤー。

 

「負けた私を笑いに来たのかい?」

「そうよ。笑いに来たの」

 

 嘲笑も蔑む様子もない自然体の笑顔だ。不思議と不快感は無い。

 

「そんなに面白い?」

「うん。だって、負けて悔しそうにしているんだもの。それが嬉しいのよ」

「……どういうこと?」

「貴女、最近。負けた覚えはある?」

 

 思い返してみる。……ほとんどない。負けるとしても、フリーでの対戦とかそう言うので稀に。という位だ。

 

「お前に負けた位かな」

「でしょ? そう言う時の貴女ね。仕方ない。みたいな顔をしていて、諦めているのが気に食わなかった」

 

 ハルカの雷電デッキのカードパワーは元より、コイツは高確率で初手に解決札を握っていることが多いので、私でも盤面を固めきれないことが多い。故に、ある程度の諦めは付いているのだが、何がそんなに悪いのか。

 

「お前になら。と思われているのが気に食わない?」

「えぇ。だって、インヴェプレイヤーにとって勝利は何よりも尊い物。そう思っている相手に勝つから意味がある。貴女にもまだ残っているって分かったから」

 

 用心棒やらグループやら色々と巻き込まれて、インヴェが手段であり社会的立ち位置みたいになっていたけれど、もっと下らない。子供じみた考えで遊ぶことは暫く忘れていたかもしれない。

 

「そうだな。私は――」

「だから、貴女も『TEN・PULA』を握ってリベンジよ。ここは経験の差で圧倒して、相手を怖がらせましょう」

「それは遠慮しておくよ」

 

 隙あらば環境に引きずり出そうとするのは止めて欲しい。周りに気付かれる前に、彼女は立ち上がった。

 

「貴女に悔しいって言う感情があるなら。晴らしてみてもいいんじゃない? 大人気ないことができるのは大人の特権よ」

「お前が言うとすごい説得力だ」

 

 彼女はそのまま店から出て行った。再び話し相手もいなくなったので、卓に『ヴォイド・マン』をセットしたが、腕組みをしてそっぽ向いた状態で出現していた。

 

『なんですか? 今、全身バチバチされて痛いんですけれど??』

「悪かったって」

 

 卓上に表示されているホログラムの頬を突いてみる仕草をする。当然、映像なので空振りするだけだが、フニッと感触があった。

 

「うん?」

『え?』

 

 試しにもう一度突いてみる。渦巻き状の顔を突いてみると不思議な感触があった。ホログラムに過ぎないのに。

 

『え? なんで、触れるんですか?』

「……さぁ?」

 

 もう少し試してみたかったが、ここは衆人の目もあるし一旦は止めておくことにした。先日の敗北は想像以上に私に多くの影響を与えていたらしい。

 

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