TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面   作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。

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7枚目:お店

 私が用心棒を務めているカードショップ『フィロソフィー』の従業員は店長、ヨシコちゃん、私の3人しかいない。元々は個人でやっていた店だったそうだが、色々とあって中規模にまで拡大したそうだ。

 ヨシコちゃんは扶養内で働いているので入れられる時間も限られている。だから、彼女がいないときは私が店の手伝いをしたりもするし、電話対応もしたりするのだが。

 

『テルアキさん。助けてくれ!!』

 

 なんか取りたくない電話を取ってしまった。とりあえず、店長に取り次いだ。何やら神妙な面持ちでうなずき、コチラを見ている。

 

「連盟の連中は……そうか。あいつら、個人経営店がどうなろうが知ったこっちゃねぇからな。こっちから腕利きを向かわせる。名前は『ヒジリ』だ」

「あの。私は接客担当で営業は担当していないんだけれど」

『本当か! ヒジリちゃんだな!? 待っているよ!』

 

 電話をオンフックにして、相手の切実な嘆願を聞かせるのはやめてほしい。これで断れる奴がいたら見てみたい物だ。電話は切られた。……仕方あるまい。

 

「事情を説明して欲しい」

「後輩の店に、シマ取りの連中が現れた」

「用心棒は?」

「それがあの野郎。経営が上手く行っていないからって、連中の提案を飲んじまったらしい。んで、今頃になってヤバさに気づいたってよ」

 

 顔を覆った。世界中で『メイガス・インヴェイション』が流行っているからと言って、カードショップを開いたとしても安泰という訳ではない。むしろ、日夜激しい競合が起きているレッド・オーシャンの世界でもある。

 経営困難に陥る店が出てくることなんて珍しいことではないし、閉店した店は数え切れない。だから、私は疑問に思った。

 

「で。仮に、シマを取ったグループを私が追い出したとして。そのあとは? 私は用心棒ではあるけれど、コンサルタントじゃないよ? まさか、そのあとは全部が好転するなんて考えてないだろうね?」

 

 私が取り戻した後で閉店。となったら、後味が悪い。だが、追い出した所で経営が回復するとは思えない。いや、むしろトドメになるとしか思えない。

 

「そん通りだ。連中を追い出して、あいつの店に引導渡してやりてぇんだ。これ以上、生かしていても業界のガンにしかならねぇからな」

「それは店主から言われたのかい?」

「いや。そいつの息子からだ」

 

 同じ店主として。店を立ち上げる苦労も、積み上げてきた物も知っているだろうに。店長の心中や如何ほどか。

そして、最も近くで見てきた息子から頼まれるんだから、おそらく。取り返しの付かない所まで行っているんだろう。

 

「了解。行ってくる。今日はシマ取りの対応受けないでね」

「わかっている」

 

 店長から紹介状を貰って店から出る前に、シュウ君達に一声掛けていくことにした。炸裂団のメンバーに混じって楽しそうにしている。

 どんなデッキと戦っているのだろうか。シュウ君の盤面は更地。対戦相手の盤面は効果無効モンスターが4体に伏せカードが3枚。

 

「加減という言葉をご存じない?」

「あ、ヒジリさん。違うんです。コレは僕からお願いしたんです。現在の環境デッキがどれだけ強いかを知りたくて……」

「少年。幾らなんでもドM過ぎるぞ。全く、可愛がりも程々にな。サクタ君、少しの間。シュウ君の面倒を見ていてくれたまえ」

「何処かに行くのか?」

「ちょっと……」

 

 辛い仕事にね。と、お茶を濁そうかと思ったが。コレから行く場所には例のグループみたいな物が存在するかもしれない。

 その場合、サクタ君がいたら話が通じる可能性もある。この話は店長個人だけではなく、界隈の問題にもなりかねないのだ。店長を見た。

 

「サクタ君か。少し、話を良いかい?」

 

 私の思惑を汲み取ってくれたのか、店長がサクタ君を招いて事情を説明した。少し苦々しい顔をしていたが、彼は頷いた。

 

「分かりました。我で良ければ、同行しよう」

「ありがとう。コレは業務にも関係するから、後で個人的なお礼を渡す」

 

 これで彼の同行も決まった。後は取り巻きの人達にシュウ君の面倒を見て貰おう。そう思っていたのだが。

 

「……!」

 

 めっちゃ、目をキラキラさせていた。大人の世界に興味があるのだろうか? いやいや。私達は仕事をしに行くんだ。

 

「シュウ君。私達は仕事に行くから、お兄さん達と仲良くするんだぞ」

「何の仕事ですか?」

「企業秘密だよ。良いかい? 私は仕事に行くんだ。遊びに行く訳じゃないからね?」

「用心棒の仕事ってことは勝負しに行くんですよね? ……見に行っちゃダメですか?」

 

 この子。普段は控えめなんだけれど、いざという時にはものすごい頑固だから困る。店長、さすがにコレは無理ですよね? と言わんばかりに視線を向けた。1つ頷いて、手招きをした。

 

「シュウ君。コチラに来なさい」

「はい」

 

 ここは大人として、しっかり注意してほしい。そんな期待をしていると、シュウ君にお駄賃が渡されていた。

 

「電車代だ。ウチのアホがサボらないから、しっかり見張っといてくれ」

「はい!」

「私の信用度は小学生レベルだったらしい」

「ストレージの前面を『虚無』で埋めるバカをやる奴が小学生レベルじゃなくて、なんて言うんだ?」

 

 どうやら、私の親切心はシッカリと店長の堪忍袋を刺激していたらしい。と、小粋なジョークを飛ばしていたが、フッと真面目な表情になった。

 

「それに。あの子のこと。気にかけてんだろ? ちょっとはカッコいい所を見せてやれよ」

 

 今回は防衛戦と違って、後攻を強いられる戦いになるだろう。

 捲り用のデッキでも良いのだが、それを見込んで相手が先攻を譲るというパターンもあり得る。私は店の奥に入り、金庫を開けて、デッキケースを取り出した。中身を見て、抜けが無いかを確認して。バッグに入れた。

 

「よし。じゃあ、行こうか」

「頼んだぞ」

 

 準備を終えて、私達は店を出た。シュウ君は何が起きるか楽しみでワクワクしている反面、サクタ君の表情には緊張が走っている。だが、現場に着いたら2人は何を思うだろうか?

 先日はカードショップの素晴らしい所を語った。……きっと、これから先にあるのはカードショップの負の側面だ。私も覚悟を決めねばならない。私達は切符を買って、改札を潜った。

 

――

 

「あの。グループが店をシマにすることのメリットって何があるんでしょうか? 拠点が欲しいとか。そう言うことですか?」

「それもある。拠点を持っているということは、それだけでネームバリューが生まれるからね」

「ネームバリューが生まれれば、新しいプレイヤーが加入し、人が増えればできることも増える」

 

 カードの入手、身内で回すことによる練度の向上、結束の強化。……と、ここまでは表面的にも問題はない。

 

「だが、逆を言えば。グループ内の人間以外はショップを利用することができなくなる可能性もある。周りのことも考えず、身内臭が極端に強い場所に作り替えたら、既存客や新規が来れなくなる。その場合、店側はどうなる?」

「利用しているグループに下手に出なくちゃいけなくなる。か」

 

 既存の客を追い出し、新規を遠ざけられたら、もはや命綱を渡したも同然だ。客に店が支配される様な状態になるかもしれない。

 

「アレ? でも、サクタ君。ウチのショップをシマにしようとしていなかった?」

「ルールは設けるつもりだった。と言っても、説得力はあるまいな」

「今は、お客さんとしてマナーを守っていますから」

 

 とは言え、本人達の行儀が良くても特定の集団が固まっていたら、敬遠する客さんも少なくはないだろう。

 電車が停まったので降りる。改札口を通り抜けた所で、連絡をくれたと思しき高校生位の男子がいた。

 

「あなたがヒジリさんですか? 横にいる人達は……」

「社会科見学の為に連れて来た子達だよ。改めて、名前を聞かせて貰える?」

「自分は『シゲマツ』と言います。……説明は道中で」

 

 人通りはあまり多くはない。カードショップの経営において立地は非常に重要で、近くに学校や職場などが無い場所でやって行くのは少しばかり厳しい。

 

「お父さんの店はどんな状況で?」

「表面上は経営できています。でも、実際はグループの。『HU-MAN』の奴らの言いなりになってしまっています」

「ひゅーまん?」

「いえ。フーマンと読むようです」

 

 不満? だろうか。一体、何が気に食わないというのだろうか。

 

「『HU-MAN』の連中か。確かに奴らなら、乗っ取り位はするやもしれん」

「サクタさん。連中はどんな奴らなんですか?」

「見れば分かるだろう。店に着いた様だ」

 

 店に着いた。店舗入り口にはピッシリと自転車やら何やらが停まっている。店舗に入る。客の視線が一堂に注がれる。代表と思しき少年が出て来た。

 

「始めまして。私、『カズマ』と申します。今は『HU-MAN』の調整中ですので。バトルスペースのご利用は控えて頂けると助かります」

 

 カウンターの向こうには遜った様子の中年の男。店内には笑みの一つすら浮かべない男子達。なるほど、思ったよりもかなり重症なようだ。私はするべきことをする為に、用件を切り出すことにした。

 

「単刀直入に言おう。この店から手を引いてくれ。君達の存在は業界にとって害悪でしかない」

 

 それは、彼らに対する宣戦布告だ。カズマがニヤリと笑った。

 

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