TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面 作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。
「手を引くとはどういうことですか? 私達は騒いだりもしていなければ、近隣に迷惑を掛けている訳でもない。なおかつ、場所の利用がてらにはパック、カードサプライヤーも購入しています。何か、問題が?」
「何を言ってやがる! お前らが集団で利用するから他のお客さん達が怖がって、寄り付かなくなったんだろうが!」
シゲマツが捲し立てているが、現時点でカズマ達を悪者にすることは難しい。何故なら、彼らは集団で場所を占領している以外に悪いことはしていない。
「おや、シゲマツ君じゃないですか。店長、これは貴方の意思と言うことで良いですか?」
「いや、そんなつもりは……」
シゲマツのお父さんだろうか。優しそうだが、気弱な印象は拭えない。
サラッと店内を見回す。床にはゴミも落ちていないし、軽くストレージを見ればモンスターやスペルのカードがキチンとエキスパンション毎に揃えられている。
「素晴らしいね。こんなキレイに整頓されていたら利用もし易いよ。店もゴミが落ちていなくて、清潔だ。君達が手伝ったのかい?」
「えぇ。私達は集団で利用させて貰っていますのでね。店先や店内の掃除くらいはお手伝いさせて貰いますし、ストレージに関しても当然です」
心掛けだけなら素晴らしいと言いたい。一見、店と常連客としては理想的な関係な様に見える。
「ここまで至れり尽くせりだったら、店長さんも何も言えないだろうね。優良客って言葉以外が見当たらない」
「ヒジリさん!?」
「よく分かっているじゃないですか。シゲマツ君、自分の仕事を私達に取られたからって、因縁を吹っかけて来るのは止めて下さいよ。みっともない」
ここに来て、始めて真顔だった連中が嘲笑を浮かべていた。サクタ君は察して黙っているし、シュウ君は不安そうにしている。そして、私は発言を促した。
「店長。こんな状況で、客の揉め事に何一つ口を挟まないんですか?」
「え……」
「ここはシゲマツ君のお店でも無ければ、カズマ君達のお店でもない。貴方が城主なんですよ?」
あたふたとしている。店の問題を毅然とした態度で収めるのが店長の役目だ。それこそサクタ君やシュウ君を諭していた、テルアキ店長の様に。
「今は何も起きていないか。あるいはもうすでに起きているかもしれませんが、貴方が店長としての責務をカズマ君達に放り出すなら、貴方には主としての資格が無い。『連盟』の方に訴えさせてもらいますよ?」
「ま、待ってくれ! 俺は何も悪いことをしちゃいない! 新弾の横流しや、景品とかの……」
「店長」
カズマが威圧するように呼んだ。よく、推理物などで犯人が焦って余計なことを口走る。みたいな展開をバカだと思っていたが、アレは案外リアリティのある表現なのだ。
何故なら、悪行に走る人間は概ね追い詰められていることが多く、抱えた罪悪感が膨れ上がっていることが多いので、少しでも漏れる場所を作ったら一気に噴き出てしまうのだ。
「カズマ。貴様、まさか。そんなことを」
「酷い誤解だ。店長、今のはやってはいけない例として挙げただけですよね?」
「そ、そうだ」
「ですって。揚げ足取りは良くないですね。シゲマツ君は、お父さんのお店を潰したいんですか? 君を育てて、飯を食わせてやっているお父さんの生業を潰したいんですか?」
学生の癖にねちっこい聞き方をする奴だ。コレにはシゲマツ君も怯むかと思いきや。
「自分が好きだった親父の店は、カードに初めて触る人もベテランの人も楽しめる小汚い場所だった。こんな! インヴェをやりこんでいるプレイヤーの滞在しか認められない様な店じゃない!」
カズマ達も驚いていたが、一番驚いていたのは店長だ。まさか、自分の息子からこんな風に思われていたとは。
「カードに初めて触る奴? そんな奴は量販店で買って、身内で回していれば良いんですよ。本当にインヴェに取り組んでいる奴だけが来たら良い。店も回っているし、問題はないでしょう?」
ここに来て初めてカズマと言う少年に感情らしい色が見えた。そこはかとなく、彼の意思が見えたような気がする。
「でも、この店の情報を連盟に伝えない訳にはいかないんだよね。こういう前例を作って、共有されちゃうと店が乗っ取られちゃうからね」
「待ってくれ! そしたら、店はどうなるんだ!?」
「指導は入るだろうね。その後、どうなるかは私も知らない」
店長が慌てている。この太客達が離れた後にどうなるかなんて想像するまでも無いが。コレを切っ掛けにガキの自尊心を肥大化させるわけにはいかない。
「さっきから可能性の話ばかりをしまして。今の所、私達がどうこうしている訳じゃないでしょう? ――それに。貴女は、私達にどうこう言える位にはインヴェ関係者なんですか?」
「試してあげようか?」
問題が起きたら決闘で解決。なんて、西部開拓時代めいているが、インヴェプレイヤーは勝負で解決したがるんだから仕方がない。カズマも応じようとした所で、今まで無言で見守っていたメンバーの一人が立ち上がった。
「カズマさん。今、デッキの調整中でしょう。こんな奴、俺が相手にしてやりますよ」
「いえ、君では無理です。何となくですけれど、強い人の雰囲気って分かるんですよ。サクタ君が強いのは言わずもがなですけれど、この方も大層強い」
「それは私も同感だ。君も相当強いだろ」
実はさっき、店内の様子を見て回った時。練習している子達のデッキも見たのだが、いずれも環境のトップやメタを想定した練習をしていた。
「私も大会に出る前に手の内を漏らす様な真似はしたくありません。……では、ヒジリさんと言いましたか。貴女の隣にいる少年。彼に戦って貰いましょうか」
まさか、自分が指名されるとは思っていなかったのかシュウ君も驚いていた。私やサクタ君に勝てないと踏んでのことだろうか。
「彼は始めて日が浅いんだ。初心者と戦って、勝てたとして嬉しいかい?」
「だとしたら、猶更です。その子が貴女の弟かどうかは分かりませんが、連れて来た。ということは、少なからず貴方と関係があるんでしょう。貴女が周りにどれだけ影響を与えられている人物か。というのを見たいんですよ」
ふむ。私個人だけが強いとしても、ただ強いだけのプレイヤーでしかない。
この店の問題に介入するなら、私自身がどれだけ周囲に影響を与えられているか。というのを、シュウ君を通して見せてみろ。ということか。
「仮に戦うとしたら、誰が相手をする?」
「私達も新人を出します。アリス。アリスはいますか」
挙手した少年が1人。メンバーの中ではかなり小柄で華奢な為、女性と見間違わんばかりだが、男性用の学ランを着ているので多分男だ。
「ワタシの出番?」
「はい。お願いしますよ」
声変りをしていないのか、高いままだった。本当は女子が男装しているだけかもしれないと思ったが、それは一旦置いとくとして。
こんな勝負に乗らずにさっさと連盟に通報しても良いのだが、それでは禍根を残すし、後々になってどういう形で巡って来るか分からない。……ならば。
「ヒジリさん。どうしますか?」
「悪いけれど、出て貰える。……こういう時、私が何をいうか想像できる?」
「『負けても良い。なんて言わない。勝て』。ですか?」
「正解」
それが分かっているなら、彼に出て貰うとしよう。勝負の世界に保険を掛けて出て行く奴なんていない。負けても良い、なんて言うのは勝つつもりで出た奴が全力を賭した末に言って良い言葉だ。
「君。シュウ君って言うんだ。ワタシ、アリスって言うの。男だよ」
「よろしくお願いします」
自己申告する必要があるということは、それだけ誤解されているんだろうか。互いにデッキをシャッフルした後、カットをする為に。相手に山札を差し出した。……持って来たデッキを使わずに済んで、私はちょっとだけ安堵していた。
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