TS・ダウナーお姉さんによる後方師匠面 作:何が何でもダウナーお姉さんを出したい。
「今回は新人同士の戦いと言うことで助言は禁止とさせて貰います。先攻・後攻はコイントスで決める。ジャッジは、この私。カズマが務めさせて貰います」
皆が頷いた。今回はサクタ君も私も助言はしない。シュウ君が何処までやれるのか。ただ、環境使いが相手だとさすがにキツイだろう。
「(だとしても。食らい付いて貰う。それに、環境を握らない選択をしたのはシュウ君だからな)」
ホームにいた時は師匠面をして色々と話していたが、見守ることしかできないことの何ともどかしいことだろう。
互いにスマホのアプリを立ち上げる。ダメージ計算や効果処理などのログを残して置ける、インヴェイション専用のアプリで公式大会でも使われている位に由緒正しい物だ。
「では、コインの裏か表を選択してくれ」
「ワタシは表で」
「僕は裏で」
カズマがコインを指で弾いた。クルクルと回って、テーブルの上に落ちる。……コインは表だ。
「では、私が先攻を貰います。手札から『契約(コントラクト)』のスペルを発動。このカードはデッキから『魔法少女(コントラクター)』と名のついたカードをサーチします。効果の発動はありますか?」
「……いえ。無いです」
思考が入った。ということは、シュウ君は手札に『速攻の猟犬』を握っているのだろう。ヒソヒソとサクタが耳打ちをして来た。
「ヒジリ殿。魔法少女(コントラクター)デッキはどちらかと言うと、ファンデッキやカジュアル側のテーマ。ガチが基本のカズマが採用する人材とは思えん」
「……まだわからないよ」
インヴェイションには大量のカード群が存在しており、細かく分けて行くとテーマとして分類することができる。
その中でも『魔法少女(コントラクター)』のテーマはいわゆる美少女デッキでイラストアドは高く、定期的に新規を貰えているが環境に台頭したことはない。
「(それでも。『クリムゾン』デッキよりは新規を貰えているけれどね)」
「サーチしたモンスター『魔法少女(コントラクター)・プリマヴェーラ』を召喚。着地時の効果で『式』カードをサーチ。効果の発動はありますか?」
「『速攻の猟犬』を発動します」
「(上手い)」
アリスがサーチしようとしたのは恐らく。『魔法少女(コントラクター)』テーマきってのぶっ壊れカード『式・織々』だろう。
フィールドにいない属性の『魔法少女(コントラクター)』をフィールド・手札消費無しでサーチする、テーマ内でも規格外のパワーを持つカードだ。
ちょうど『クラウディアス・クリムゾン・ドラゴン』が持っている起動効果の様な物だ。……こっちはコネクシオンを頑張らないと使えないのに、向こうは普通に持って来るんだから困る。
「では、場にプリマヴェーラがいるので手札から『眷属C・ブロッサム』を特殊召喚。着地時の効果でデッキ、セメタリーからスペル『契約成立(ファミリアライズ)』を持って来られる! そして、場のプリマヴェーラとブロッサムを素材にして使用!」
フィールドの光景が目に浮かんで来る。春を象徴する魔法少女が桜の妖精と契約を交わし、周囲に慈愛をもたらす存在として進化する光景が。
「零れる日差し、木々の芽吹き、フィールドを優しさで覆い尽くして! 『魔法少女(コントラクター)・スプリーム!』」
フィールドに春風が吹いた様な気がした。使い魔のC・ブロッサムと共に魔法少女として成長した姿がスプリームだ。
「スプリームの着地効果。特殊召喚に成功した時、デッキから『魔法少女(コントラクター)』カードをサーチする。私は『魔法少女(コントラクター)・サミー』をサーチする。他にも、彼女が場に出ている間は『魔法少女(コントラクター)』モンスターは破壊されない」
「サーチと耐性付与ですか。可愛いし、強いだなんて」
「でしょ? ワタシは、この娘達と一緒に強くなるって決めたの。さぁ、君の相棒を見せて! スペルを2枚伏せて、ターンエンド!」
こんだけサーチして動き回っても環境には通じないんだから、やはり魔境過ぎる。……効果無効がならんでいないのはせめてもの救いだろうか。
「僕のターン! ドロー! レギオン・アクィリフェルを召喚!」
フィールドに現れたのは鷲が描かれた軍旗を持つ兵士の姿だった。旗持ち達の中でもベテランの存在で、軍団(レギオン)の士気に関わる重要な存在だ。
「起動効果発動。このカードはレギオンと名の付くモンスターを手札から特殊召喚できる。何か、効果の発動はありますか?」
「ありませんわ」
「『レギオン・軽装兵(ウェリテス)』と『レギオン・伝令(テッセラリウス)』を特殊召喚。テッセラリウスの効果でフィールドにセットされたスペルをピーピングします」
セットされた2枚のカードが露わになった。
片方は『防御術式』。場に魔法少女(コントラクター)モンスターがいる場合に発動でき、フィールのカードが破壊されなくなる。バック破壊に備えてだろう。
もう一つは『反応術式』だ。このスペルはフィールドにいる『魔法少女(コントラクター)』モンスターの種類によって使える効果が違う。
「全員いたら全部使える上、更に追加でもう一つ使えるが、実戦で使っている奴を見たことが無い」
「大体、秋が出たら勝負終わるからね」
と。隣にいるサクタ君とボソボソ声で話している傍ら。シュウ君はテキストに目を通していた。スプリームがいる場合に使える効果は。
「このターン中、スプリームは相手の効果を受けず、戦闘破壊されず、ダメージを受けない。か……」
「そう。スプリームの優しさは全てを包み込むの。その前には、どんな攻撃も通じないよ」
ガチガチに守りに特化したスペルだ。そもそも、スタッツとしても協力でレギオンで突破できる相手ではない。ただ、勝機はある。
「じゃあ、包み切れない程の軍団(レギオン)を! 女王の召集を発動! レギオンをサーチ! 場に3体以上のモンスターがいるのでレギオンを特殊召喚! 『軽装兵(ウェリテス)』と『伝令(テッセラリウス)』でコネクシオン! ロッソ・バイパー!」
もはや、このデッキに欠かせない過労死中継枠の赤蛇君だ。セメタリーに落ちた、ウェリテスを拾い上げると。場には4体のモンスター。
「今、サルベージしたウェリテスとロッソ・バイパーをコネクシオン! 現れろ! 毒蛇纏いし紅蓮の暴君! クラウディアス・クリムゾン・ドラゴン!」
今の所、何の妨害も入っていない。魔法少女(コントラクター)デッキは秋まで行かないと破壊手段に乏しいので展開を止めることはできない。このまま見ているだけだろうか?
「クラウディアスの効果でクリムゾンカードをサーチ! 僕はクリムゾン・ガードをサーチ! バそして、クラウディアスに装備スペル『クリムゾン・ブレイク』を装備! このカードを装備したモンスターがバトルを行う際、フィールドのカードを1枚破壊できる!」
「なるほどね。セットしていたスペル『防御式』を発動させる!」
コレで反応術式は破壊されず、スプリームを破壊することもできない。
ただ、相手に貴重な防御手段を使わせた。ということは大きい。後ほどに大きな一発を食らわせる布石にはなり得る。
「バトル!」
レギオン達では敵わないので、クラウディアスだけが戦闘を仕掛ける。
まるで歌声の様な咆哮と共に紅蓮の炎を吐き出した。スプリームが焼き尽くされることは無かったが、多少のダメージは入った。
「ワタシの残りMPは9000。ゲームは始まったばかりよ」
「だね。僕はカードを伏せてターンエンド!」
今の所、妨害らしい妨害も無いまま。伸び伸びとしたデュエルが行われているという印象だ。カジュアルらしい試合だ。
「(さっきの練習光景を鑑みるに。『クリムゾン』デッキのカードパワーなら制圧されて、何もできない様にする。というのもできていた気がするのだが)」
現代の環境は相手に先攻を渡しても動けるし、何なら展開できるし妨害も立てられる滅茶苦茶なデッキが多い。
そんなことを考えている様子が伝わったのだろうか。近くにいたカズマ軍団(仮)の1人が話し掛けて来た。
「アンタ。意外に思っているだろ。俺達の中に『魔法少女(コントラクター)』デッキなんてカジュアルなモン使う奴が居たってことに」
「そうだね。てっきり、全員環境やガチかと思っていたけれど。カードパワーを合わせてくれたのかな?」
「違ェよ。アリスは特別だ。カズマさんが唯一認めたファンデッカーだからな。俺達は基本、ガチしかとらねぇ」
ファンデッカー。カードパワー等を抜きにして、特定のテーマやカードを好んで用いつつ、勝利を目指すプレイヤー群のことを指しているが。環境などを用いるガチ勢とは、しばしば対立が起きやすい。
「そんな君達がどうして彼女……いや、えーっと。彼か」
「アイツの前で彼女って言うなよ。アリスはファンデッカーの中でも熱い奴なんだ」
それはどういう意味だろうか? 現状の盤面を見るに、アリスの旗色は悪い。
このターンを防いだとしても、打開できるカードを引き当てられなければクリムゾンのパワーで押し切られるだけだ。
「ワタシのターン! ドロー! ……私はドローした『並行世界流入(パラレルエクスポート』を発動します! このカードはフィールドに出ている『魔法少女(コントラクター)』モンスターの『魔法少女』部分を除く名称を含むモンスターをデッキから特殊召喚します! 私は『魔法少女(コントラクター)スプリーム』を指定」
「つまり『スプリーム』モンスターを召喚できるってことですか?」
「その通り!」
魔法少女(コントラクター)はイラストの人気からバージョン違いも多い。
アリスが場に出している魔法少女は最も基本的な物で、更に歳を重ねて偉大な魔術士となった『魔術師スプリーム』もいればIF世界線の闇落ちした『支配の魔術師スプリーム』という存在もいる。
ここから攻撃に転じる為のカードを出すというのは、スプリームに足りない攻撃力を補うという点では頷けるところだ。彼女が繰り出すのは。
「ワタシはデッキから機構の魔神! 『グランド・スプリーム』を特殊召喚します!」
並行世界からやって来たスプリームちゃんは、超巨大合体メカでえげつない攻撃力を持っていた。
コレにはシュウ君も呆気に取られていた。多分、大人になったスプリームだとかIFの彼女を想像していたら、とんでもない物が出てきたのだから。
「ちょっと。ねぇ、コレ良いんですか!?」
「シュウ君。見たまえ。彼女は『魔法少女(コントラクター)・スプリーム』。この超大型モンスターは『グランド・スプリーム』。ホラ、ちゃんとスプリームだろう?」
カズマが律儀に説明していた。恐本来のスプリームちゃんは春(spring)の魔法少女が眷属と共に成長して至高の(supreme)存在となったということで、掛け言葉的に名前が決まったんだろうが。スプリーム成分が多すぎた。
「ちなみに私からも言うけれど。裁定的には可能だよ」
「魔法少女の力! 何処に!?」
「強い魔法少女が強いロボットに乗れば最強よ! 更に! 私は魔法少女サミーを召喚! 着地時の効果で『眷属S・フラワー』をサーチ! 特殊召喚! 眷属の共通効果で『契約成立(ファミリアライズ)』をサルベージ! そして、発動!」
ヒマワリをモチーフにした眷属と小麦肌の活発そうな少女の力が重なり合い、夏に煌めく生命力を感じさせる溌溂とした魔法少女が現れていた。
「思い出の匂い、煌めく一時。青春の粋を命に載せて! 『魔法少女(コントラクター)・ソルフレイア』! 着地時の効果で魔法少女(コントラクター)オタムをサーチ! ついでに言うと、彼女には魔法少女(コントラクター)モンスターに戦闘破壊耐性を付与します! そして、3体で一気に攻撃! まず、グランド・クラッシャー!」
スプリームちゃんの横でグランド・スプリームが腹部から巨大なビーム砲を発射された。クラウディアスドラゴンは墓地からロッソ・バイパーを除外することで破壊されずに済んだが、ウェリテスとアクィリフェルの2体は撃破された。
「残りMPが6000になったけれど、なんか納得いかない……」
「ちなみにグランド・スプリームには効果破壊耐性が付いていますわ。本来の召喚方法であるユナイトで出て来た場合は、相手フィールドのカードを全破壊するのですが、こちらは残念ながら使えません」
出来たら、さすがに無法すぎる。コレにはメカデッキ使いのサクタ君も渋い顔をしていた。
「あのロマンカードをグッドスタッフ的に使われるのはどうにも好かんな」
「そう言うのを発見するのもまた楽しみだから……」
だが、こんな形で大型モンスターが召喚されるとは思っていなかっただろう。
『グランド・スプリーム』と魔法少女達には破壊耐性が付いているので、クリムゾン・ブレイクでもどかせない。
「(妨害札を引けなければ、シュウ君が負けるな)」
向こうは魔法少女が魔法少女を呼んで来るのに対し、こっちはクラウディアスが頑張るしかないのだか非常に危うい。
対するアリスは次にオタムを召喚して、再びファミリアライズを使うつもりだろう。こうなったら、魔法少女達の盤面を破れなくなる。
「(加えて。ソルフレイアの効果で戦闘破壊もできなくなっている。シュウ君、ここから打開する手段はデッキに眠っているぞ)」
魔法少女デッキに欠けていたとスタッツと言う排除手段を用意して、ジワジワと盤面を詰めていく彼女にどう対抗するか。助言したい気持ちを抑えて、私はシュウ君の選択を見守ることにした。