百合の間に挟まりたくない男はどうしたらいい 作:かぐいろ大好き侍
戦闘シーンがクッソムズい。それだけで、3日も試行錯誤して何度も書き直しました。
書きたい内容は決まってるのに、文字起こしが大変。頭の中のイメージをそのまんま出力できる語彙力が欲しい!
ツクヨミ内のバトルフィールドで100人規模のプレイヤーが相対している。方や3人チーム、方や112人チーム。実力差を鑑みても異常な偏りである。
しかし、100人超えのチームは本日初めて会う者同士。まともな連携を取れるはずも無いので、各々、覚悟が決まった者から挑み始めた。
「かぐや、操作方法は頭に入ってるよな?」
「うん!MUSOUでソロだけど遊んだよ!」
「私達、連携の練習とかしてないよ?」
「今回の対戦は練習も兼ねてるからな。かぐやをメインに添えていろPがバックアップ。俺は2人のフォローに回るから好きに動け」
既に戦闘は始まっているが、相手側はまだ3人の間合いに入っていない。
落ち着いて作戦を伝え、戦い方を決める。
「じゃあ、かぐやがドカーン!っとヤっちゃうから2人ともよろしく!」
宣言するやいなや、かぐやは武器の竹で出来たハンマー兼バズーカを構えて突っ込む。
大振りのハンマーは勢いのまま地面に叩きつけ、周囲8人のプレイヤーを宙に浮かせる。
「もう、突っ走りすぎ!」
浮いた駒を彩葉がブーメラン型の剣を投げ、円を描く様に楕円軌道で切り裂く。切られたプレイヤーは桜の花びらを散らし消えていく。
「いいぞ、2人とも。ハンマー職は圧倒的な突破力と攻撃範囲が売りだ。かぐやは難しく考えずにガンガン攻めてけ!」
「わかった!」
「いろPは、かぐやの攻撃で崩れた敵を切ってけ。それだけで雑魚は簡単に倒せる!」
「自分のリスナーを雑魚呼ばわりって大丈夫なの?」
尊も2人に指示を出しつつ、近づいて来たプレイヤーをバッサバサ切り伏せる。
2振りの双曲剣を逆手に持ち、身体を回転させながら舞踊の様に切る。
常に回っているので攻防一体。対戦相手達は尊に一撃を入れることすら出来ない。
「ドカーン!」
かぐやがハンマーのバズーカ機能でドジョウミサイルを発射。着弾地点は爆発し、相手プレイヤーに有効打を与えることは無かったが舞い上がった土煙で視界を奪う。
その隙を見逃さない尊と彩葉。すぐさま間合いを詰め、彩葉はブーメランを双剣に切り替え上段からの両袈裟斬り。1名撃破。
彩葉が切った隙に付け入ろうと攻撃体制に入った者も居たが、それを狙っていた尊は剣を投擲2本の双曲剣は相手プレイヤーの首を切断。2名撃破。
投げた剣はまるでブーメランの様に尊の元に戻ってきた。
「そんな事出来たんだ?」
「今まで、やる機会が無かったからお披露目は初だな。ジャグリングも出来るぞ?」
そう言って、更に2本の取り出し4本の剣でジャグリングを披露。
「……四刀流?」
「戦闘時は二刀流だけど、武器的には四刀流かな」
尊は見た目とは裏腹にジョブは曲芸師。4本の曲剣を自在に操り敵を翻弄する戦い方をする。
しかし、本人の性質的にガッツリ正面戦闘。ゴリゴリの近接タイプだ。彩葉の様に剣士にすれば良いのに武器がかっこいいと、安易な理由でこのジョブに就いている。完全に馬鹿。
そんなこんなで、雑談を挟みつつ3人で連携をしながら戦っていると、30分弱で112名の挑戦者を倒しきった。
「ヨッシャー!かぐや達の勝利〜!」
「意外とあっという間に終わった」
「やっぱ、3人がかりだとすぐだったな〜」
『やばーい、いろPもメチャ強〜』
『かぐやちゃんで相手を浮かせて、ミコトといろPで切り伏せる。初めての連携なのに息ぴったり!』
『¥49,999 全く、御祝儀です!お幸せに怒!』
『それ、まだやってる奴いるんだ』
『御祝儀はかぐやいろPチャンネルに送るんだゾ!』
感想戦でコメントを見てみると3人を賞賛するコメントの中に幾つか
「何度も言ってるけど、私とミコトはそういうんじゃないから!」
「そうだぞ〜、俺といろPはかぐやの翁であって夫婦ではないぞ〜」
「翁でも無い!」
「ねえねえ、ミコトおじぃちゃーん。かぐやこれ欲しい〜!」
¥12,980ヘッドホン
「しょうがないな〜、ポチ!」
¥12,980ヘッドホン、購入
尊がボケをかまし、彩葉がツッコミを入れる。かぐやは悪ノリでちょっとお高いヘッドホンを要求し、ふたつ返事で購入ボタンをクリック。相変わらず、かぐやのオネダリに戸惑いがない。
「甘やかすなって、言ってるでしょー!!」
彩葉、ついにキレる。
武器を構え尊に切りかかる。大振りの袈裟斬り。
「おっと、危ない危ない」
危うげなくひらりと躱し、尊も剣を構える。
「せっかくだし、エキシビションマッチ。いろPとタイマンバトル、勝者は負けた方に何でも1つ命令できるってのはどうだ?」
「上等、今までの黒星全部、利子つけて返してやるから!」
互いの同意をもってバトル開始。
彩葉は早速、双剣に持ち替え帰り回転しながら切り落とす。尊は剣を斜めに滑らせ勢いを殺し力の流れを横に逸らしカウンターで斬りかかる。
「くっ!」
ギリギリのところで躱すも刃先が腹に当たり、僅かにHPを削る。
「さあ、どうする?俺から行ってもいいが、それだといつも通りいろPは何も出来ずに終わっちまうけど?」
「そんなら、こっちから攻め続ける!」
片方の剣を尊に向け投擲。半身を翻すだけで躱され後方の岩山に突き刺さる。
「いいのか?双剣のメリットを潰すことになるが」
「言われなくても!」
残った剣で右薙に斬りかかる。尊は2本の剣で受け、そのまま弾く。
「パリィ成功。この一瞬のスタンは致命的だぞ?」
パリィにより彩葉はワンフレームのスタンがかかる。それを見逃す尊ではない。一瞬で都合5度の剣戟を行う。
受けたダメージは微々たるものだが、バトル開始から常に一方的に攻撃を受け続けてる彩葉。互いのHPの残量は、尊が100%なのに対し彩葉は80%。
彩葉も決して弱くわない。なんなら、プロとも戦闘を成立させられる程度には強い。
しかし、尊は公式戦でプロゲーマーと互角。相性によっては白星を上げられるほどの実力だ。現在も曲芸師の戦い方ではなく、彩葉と同じ剣士として戦っているのでハンデを負ってもらっている。それなのに一撃も浴びせられない。彼我の差は歴然。
(やっぱり、強い。啖呵切ったけど、正直勝てる見込みなんてサラサラない。でも、勝ちたい!)
彩葉は彼に唯一勝てているのは勉学だけであるが、それも結局の所運が良かっただけ。
純粋な知識量なら尊の方が遥かに上。ケアレスミスや時事問題に躓く程度のうっかりミス。それを潰せる注意力があればあっさり抜かれているだろう。
彩葉が尊の気迫に尻込んでいると、
「いろは〜、がんばれー!」
「かぐや、……Pを付けなさい!でも、ありがと」
かぐやからの声援が届く。相変わらず、本名を呼ぶが今はそれが心地よい。
「本当に、勝ったら私の命令聞いてくれるの?」
「もちろん」
彩葉は走った。正面からは確実に避けられる、なら素直に挑みはしない。
剣からワイヤーを飛ばし立体的に移動。周囲の地形を利用し隠れながら準備を整える。周囲のオブジェ、木や岩を切り尊にぶん投げる。
「撹乱か?」
もちろん、簡単に避けられるが本命はそれではない。投げたオブジェに隠れてブレードも飛ばす。
「ッ、危な!」
オブジェの影に隠れ飛ばされたブレードは速度差の影響で岩を穿ち尊に突き刺さらん勢いだ。寸での所で避けはしたが体勢を崩す。
そこにワイヤーを巻き取り近ずく彩葉。後ろに仰け反り反撃の余地はない。
「はああーー!」
掴んだ剣を勢いよく振り下ろす。
「っく!」
ギリギリだが、両手の曲剣で防ぐ。防御に成功するも、彩葉の猛攻は終わらない。剣を離し後ろ回し蹴りを繰り出す。
「うおっ?!」
攻撃としては弱いが相手の意表を突くには十分だ。尊も滅多に無い攻撃で守りが疎かになりモロに食らう。
互いの間合いが広がり、少し睨み合う。
尊も受けに回ってばかりでは視聴者を楽しませられないので攻撃を始める。
「初めて見せる四刀流だ、楽しめよ?」
4本の曲剣を巧みに操りジャグリングを始める。すると内2本の曲剣を彩葉投げつける。
「っ!」
もちろん、距離があるので少し屈めば簡単に避けられる。そんな事お構い無しに尊は突進。残った2本で彩葉に斬りかかる。8度斬りかかるがその全てを防御。
「なんか、安直じゃない?」
「そうか?そう思ってもらえるなら、狙い通りだ」
戦い方が普通の二刀流と変わらない。本来、多刀流の強みは変幻自在な戦術が強み。剣数が増えればその分だけ相手の警戒心は分散せざるを得ない。なのに尊はわかりやすい攻撃方法しかしてこない。
両手袈裟斬り、左右の袈裟斬り、突きとどれと避けやすい。
まるで、これくらいは守れよ、と言われているようだ。
「まさか?!」
「曲剣の特徴はブーメランの様に戻ってくるところだ。後方にも注意しないと簡単に負けるぞ?」
不自然なまでの、安易な攻撃方法で周囲に警戒を向けると後ろから投げた曲剣が戻ってくる。
「くっ!」
バク転で避ける。紙一重で避けるが後ろからの攻撃を避けても正面には、2本の曲剣をもう一度投げつける尊がいる。
「こっちも避けろよ?」
元々持っていた2本を投げ、戻ってきた2本を掴む。投げつけた剣を追うように走り4本同時の剣戟。
「何回、耐えられるかな?」
袈裟斬り、右切上、飛んできた2本の首と足への回転斬り。
「上等!」
飛んできた2本は首を傾け足を上げ避ける。袈裟斬りは剣で受け、切上は尊の腕を掴み抑える。
「まず、1回」
尊の動きを封じても、飛んでくる2本は主の元に帰還しようと回転しながら戻ってくる。
「クッソ!」
「後方注意〜」
直ぐさま離れ姿勢を落とす、頭上と手元の真横を通り過ぎる。
「意趣返しだ!」
頭の下がった彩葉の顔面に蹴りを入れる。
「ガッ?!」
蹴り上げた勢いでバク宙。そのまま、持っていた剣を投げ次の攻撃の下準備。着地し戻ってきた剣を掴み腕をクロスさせ、彩葉の首をハサミのように切り裂こうとする。
「負けるっか!」
剣を立て受ける。首への攻撃はこれで防げるが、後ろの攻撃は無慈悲にも迫ってくる。
「後ろはどうする?」
「それなら、こうする!」
尊の手首を掴み、足を払い後ろに倒れ込みながら尊を蹴り上げようとする。
「うおっ?!」
巴投げ。彩葉の後方に飛ばされ今度は自分の攻撃に晒される。
「やるな〜」
危うげなく剣を弾き、再びジャグリングを始める。
「でも、2度も通じる避け方じゃないな」
「わかってる」
「3度目の攻撃を始めるがそろそろ攻略法を見つけてくれよ?」
言い終わると直ぐ2本の曲剣を投げつける。
「ッチ!」
避けるので手一杯で反撃ができない。このままでは削り続けられジリ貧で負ける。
「いろはー!落として!」
「は?……あっ、そっか!」
かぐやの声援。突然のアドバイスに理解が遅れたが、攻略法に気づく。
キンッキンッ!
飛んでくる2本の剣を弾き落とす。
「正解。根比べで勝てる程甘くわないぞ?」
飛んでくる2本が邪魔なら撃ち落とす。至って単純であるが、直面している者は簡単には気付けない。かぐやからの声援は渡りに船。致命的になる前に気付くことができたのは僥倖である。
「でも、ミコトは2本でも私に勝てるって言いたいんでしょ?」
「まあな。ってか、今までも2本で俺の全勝だったんだから何も悲観する事態じゃないな」
そう、尊と彩葉はKASSENをやり込んでよく対戦もする。彩葉が勝てた事は1度もない。
「そうだね。でも、こっちの準備は整ったから勝たせてもらうよ!」
彩葉の持つブレードからキイイーンっとワイヤーを巻き取る音が聞こえる。
「ん?何か引き寄せてるのk…うおっ?!」
突然、尊の身体をワイヤーが巻き付く。
「そうか、最初の撹乱の時に岩の影にワイヤーを隠してたのか!」
今までは剣1本で戦っていた彩葉。撹乱時に剣を投げつけ、ワイヤーをオブジェに引っ掛けていた。それを巻き取る時に尊を拘束できる場所まで誘導する事が、彩葉の勝利条件であった。
「これで、動けないでしょ!」
身動きの取れなくなった尊に飛びかかる。
如何に実力がかけ離れていようと、避ける可能性を潰してしまえば一方的に攻撃が通る。
彩葉は千載一遇のチャンスを無駄にしない為に、一撃で仕留めるために尊の首を狙う。振りかぶった剣は寸分違わず尊の首を飛ばす。
「……お見事」
彩葉、初勝利。
「…はあはあ、勝った?」
「いろは〜!すっごい!勝ったよ!」
「ちょっと、抱きつかないでよ」
彩葉の勝利を称え、かぐやは飛びつく。
コメントにといろPを称える文言に埋め尽くされてる。
『いろP凄いじゃん!』
『イケメンの生首、大好物デスッ!』
『スパチャしたけど、ここじゃあいろPに入らなしいなあ』
『いろPもプロ並みやん!』
1部、変なコメントもあるが凡そ好意的である。
「いや〜、舐めプしてたらいろPが剣1本だった事を忘れてたわ〜」
「ミコトも凄いね〜、あんな複雑な戦い方できるなんて」
「面白いだろ?昔のアニメのキャラを参考に完成させたんだ」
かぐやを交えて感想戦。彩葉は狐の着ぐるみを着ながら当たり判定が大きいハンデを負いながら健闘。
「それで?いろPはどんな命令を下すんだ?」
「え?本気?」
「自分で言ったんだ。撤回なんてしないよ」
「いろPせっかくだし、ちゃんと命令しなよ〜。こんなチャンス滅多にないよ〜」
かぐやも何やら楽しそうである。
『そうだぞ!いろPも頑張ったんだからエグい命令しちまえよ〜!』
『エグい命令……ジュルリ』
『BANされるぞ』
コメントに変態が現れるが、それらは無視。
「あんま、考てなかったな〜。あっ、それじゃあさミコトの事教えてよ」
「俺の事?」
「ミコトって何でもできるじゃん?何か出来ない事とかないのかなって」
「かぐやも気になる〜。今までミコトって何でもかぐやのお願い叶えてくれてるし、苦手な事とかあるの?」
『それは気になるな〜』
『俺たちの知ってるミコトって完璧超人ってイメージがあるからな』
コメント欄にも尊の常人離れした人物像に慄く者も多い。
「俺の苦手な事か〜、結構あるぞ?」
「ホント?」
「教えて教えて!」
「まず、運動神経がいいって言われてるけどそんな事ない。身体能力が高いのは正しいけど、センスが無いのか全然思った通りの結果が出ないし」
「えっ?でも体力テストの成績満点じゃん」
「教本通りの動きを再現するのは出来るから、強い人間が勝つ競技は成績がいいけど、状況に合わせて戦う
これから尊は自分について語り続けた。それらは、今までの尊のイメージを損なうような内容であるが、皆の反応に否定的なものはなかった。
『意外だ。ミコトって結構出来ないことが多いんだな』
『球技が苦手って事は、学校の体育の授業殆どダメじゃん』
「もちろん、練習してるから無様は晒さないさ。上手く立ち回って下手に見えないようにもしてるし」
尊は体育の授業で苦手な内容がある時は事前に練習して、人並み程度には形にし後は上手に立ち回り下手な姿を隠してる。
例えば、サッカーの授業があればゴールキーパーを志願し、一球も通さなかったり。バレーボールであれば防御に専念し、1点も入れさせない。
直接攻めたりせず、ボールコントロールが下手である事を露見させない様にしている。
「あと、結構好き嫌いが多いぞ?ピーマンが嫌いだし、アボカドなんて触るのも嫌だ。子供舌だから味が濃いのが好きだし、甘い物に目がないし」
尊の話を聞けば聞くほど、彼が人間であることを痛感する。
(なんだ、天野も結構人らしいところあったんだ)
彩葉は少し安堵する。人間離れした能力の持ち主で不安になっていたが、自分と同じただの人であったのだ。
「ってか、お前ら俺の事なんだと思ってたんだよ」
『新人類』
『異世界人』
『人生100周目』
『人工生命体』
「人扱いしてない事はわかった。さて、もういい時間だし今日の配信はここまで、じゃあな〜」
「おっ、みんな〜またね〜」
「ありがとうございました」
午後4時
配信が終わり、ツクヨミからログアウトする。
「ふう、2人ともお疲れ様」
「いや〜、楽しかったね〜」
「勝利がこんなに嬉しいのは初めてだよ」
尊の部屋で行われたコラボ配信。
夏なので外の気温は35度。室温も同じ程高くなるのでエアコンを起動させ冷房が効き、とても涼しい。
「って、もうこんな時間じゃん!1時間だけのつもりだったのに」
「おお、結構長かったもんな」
予定より1時間長く配信を行ってた事実に項垂れる彩葉。
「晩飯の準備は俺とかぐやでやろうか?」
「彩葉は勉強しててもいいよ?」
かぐやは彩葉を慮り本日の夕食当番を変わろうと提案する。
「う〜ん、お願いしていい?」
人を頼る事を覚えた彩葉は2人の提案を受け、勉強を始める。
尊とかぐやは夕飯の準備を始める。
「今日は何作るの〜?」
「本日の献立はサバの味噌煮とほうれん草のお浸しだ。俺がサバをやるから、かぐやはほうれん草を頼む」
「は〜い!」
2人で分担し、夕飯の準備を進めていく。
(親子って言うか、兄妹?夫婦?)
彩葉は勉強をしながら2人の様子を確認する。
その後ろ姿から、兄妹の様にも見えるし、夫婦が共同作業をしてる様にも見える。
(……、)モヤァ
彩葉はそれに言語化出来ない感情を抱く。楽しそうに料理をするかぐやを見て、本当ならそこに自分が居た事を思い夢想する。
(……いやいや、これじゃあ私か天野の事好きみたいじゃん。そんなんじゃないから、ただ、かぐやに当番を代わってもらった事を申し訳ないと思ってるだけだから)
誰に聞かれてる訳でもないのに、心の中で言い訳を並べる。それが既に答えだということに疑う余地はないが、彩葉は自らの気持ちに蓋をし勉強に集中する。
「彩葉〜、ご飯出来たよ〜!」
「えっ、もう?」
集中していたのか既に1時間以上経っていた。
かぐやの呼び掛けに応え、机を片付ける。ちゃぶ台の上に並べられる食事。
「本日の夕食はサバの味噌煮とほうれん草のお浸しだ。足りなかったら言ってくれ、まだ1枚残ってるから」
「大丈夫、いただきます」
「いただきまーす!」
3人で食卓を囲む。半月前まで1人だけだったのに賑やかになった。尊のお節介も流石に家の中まではなかったが、かぐやが来てからは毎日一緒にいる。
彩葉にはこの時間がとても心地よい。ひとり暮らしは口うるさい母が居ないので、延び延びと過ごせるが時折寂しさを感じる時があった。ツクヨミに行けば友人と遊べるが、ログアウトした時の喪失感は筆舌に尽くし難い。
「……ありがとね、2人とも」
「うん?美味いか?それなら良かった」
「えへへ、尊の教え方上手だからね〜、すぐに上達できたよ〜!」
2人は料理に対する感想だと思ったのか、感謝を受け取る。彩葉も料理に対する感謝もあった。それ以上にこの環境を提供してくれてることに対する気持ちを表明していた。
「うん、かぐやホントに上手だね」
しかし、恥ずかしいのか素直に言えなかった。
食後はかぐやが片付けを担当した。
尊は夏休みの課題を進め、彩葉も勉強の続きをする。
「……ねえ、天野ここ教えて」
「ああ、ここはなあ___」
互いの得意分野は文系と理系で別れており、教え合う。
かぐやの家事の音をBGMに2人は集中力を高める。
だがしかし、そんな事お構い無しのフリーダムがちょっかいを掛ける。
「ねえねえ尊〜、これ何?」
かぐやが部屋を漁り何かを取り出し、尊に尋ねる。
「ん〜?おお、懐かしいな高一の頃作ったプロトタイプ」
「うわっ、懐かし。双六じゃん」
尊が1年の秋頃に作った『ドキドキ☆ハッピーライフ』のプロトタイプ。
テストプレイに芦花達を巻き込み、波乱万丈の人生を過ごした思い出深いゲームである。
「へぇ、じゃあ今はツクヨミも実装されてるの?」
「一応な、参加人数が5人以上で始められるパーティーゲームだ。人数が足りなければヤチヨの分身が参加してくれるから、1部のプレイヤーはそれ目当てでプレイしてるな」チラッ
「……、」プイッ
もちろん、その1部のプレイヤーに彩葉も含まれております。
「面白そ〜。ねえ、今からやろ〜」
「今は勉強中!明日遊んであげるから、今日はダメ」
「えぇぇ、尊〜ダメ?」
「諦めろ、俺も課題を進めないといけないしな」
「ぶう〜。じゃあ、明日芦花と真実も誘って遊ぼう!」
「はいはい、わかったから今日は大人しくしてなさい。ポテチあげるから」
かぐやを言いくるめ、ポテチを取り出す彩葉。それは尊の部屋に隠された秘蔵品である。
「あっ!期間限定のすき焼き味、隠してたのに」
「隠してたって、机の下に置いてただけじゃない。床に座れば丸見えよ」
「わあ〜い。いっただっきまーす!」
尊が制止する前に袋を開け、頬張るかぐや。とても美味しそうに食べるので尊も何も言えない。
「まったく。それじゃあ、俺達は勉強を続けるか」
「そうね」
今度こそ、邪魔も入らず集中して取り組める。
午後8時
「そろそろ、終わるか」
「だね、明日に備えて休まないと」
集中し約2時間、勉強を行っていた。
明日は2人ともバイトが朝からあるので、日付が変わる前に就寝せねばならない。
「じゃあ、また明日。おやすみ」
「おやすみ〜!」
「おう、おやすみ」
尊の部屋を出て、自分達の部屋に戻る彩葉とかぐや。
部屋に1人残った尊は少々物思いに耽ける。
(……やっぱり、1人だと静かだな。狭い部屋なのに広く感じる)
毎日、かぐやが突撃し彩葉の部屋に引っ張られたり、一緒に配信したり、彩葉と勉強したり。かぐやが来てから毎日が賑やかだ。
(心地良いな。出来ることならこれからもずっと一緒に居たいな……そうか、そういう事か。俺、2人が好きなんだ)
ついに、自身の気持ちに気付く。同時に2人の女性に好意を抱くなど不誠実極まりないが、元々の感性がズレてるのでそれを問題視する男では無い。
(告白はヤチヨカップが終わってからで良いか。その方が2人も今に集中できるだろ)
この男、自分が振られる事は微塵も考えていない。
実際、彩葉も無自覚ながら尊に好意を寄せてるし、かぐやも産まれたばかりで精神が育ちきってはいないが尊に対して大きな感情を抱いている。
「そうと決まれば、尚のこと2人をヤチヨカップ優勝させてやらないとな。それが俺に出来る最初のプレゼントだ」
尊は決意を胸に準備を進める為パソコンを起動する。
午後11時
「しまった、熱中しすぎた。でも、雛形は完成したし、後は丈夫なパソコンにアップグレードすれば動かせるな」
パソコンの電源を落とし、シャワーを浴びる。
「ふう、さっぱりした」
入浴を終え、身体を乾かす。既に上の階に音がしないので2人とも寝ているのだろう。迷惑にならないよう、ドライヤーで髪を乾かすのは止め外に出て夜風に当たる。
「晴天だが、やっぱり都会だと星が見えないな〜。そこだけは田舎が羨ましい」
夜空を見上げ、星が見えない事に残念がる。都会では地上の光が強すぎるので夜空の星の光が霞む。地元の夜空は晴れていれば満天の星空が見られる。田舎を離れ、その地の魅力を再認識する。
「この辺のハズだ、この辺りのアパートにかぐやちゃんが」
「ん?」
何らや怪しい人影を目撃。かぐやの名前を呟いていたようだが、一体何者であろうか。
「…あれは、なるほど。ついに現れたか」
尊は携帯をポケットにしまい怪しい人影の方に歩いていく。
午前7時
『昨夜、動画配信者の自宅を特定し押しかけたとして、警察はストーカー行為を繰り返していたとみられる男を逮捕しました。』
「物騒ね」
「うわ〜、こういうのってホントにいるんだ〜」
「2人とも他人事じゃないぞ?お前らも立派な配信者なんだからな」
翌朝、3人で朝食を取っているとニュースにストーカーの報道が流れた。
彩葉とかぐやは他人事の様に流していたが、尊は注意するように促す。かぐやは当然として、彩葉も顔出ししてないとはいえ動画に出ている。
これからは、より一層の警戒心を持って行動するべきだと尊から教えられる。
主人公紹介(現在公開可能な情報)
名前:天野あまの尊みこと
生年月日:2013年4月2日
身長:178cm
体重:70kg
イメージCV:石○陽彩
身体能力は高いが、運動神経が良い訳でない。特に球技が苦手。
彩葉に頼られる存在になりたかったので、影で滅茶苦茶努力し、下手な所を隠せる程度には上達している。
学校の選択科目で情報、音楽、美術、書道の4科目から選ぶことがあったが、尊は迷わず情報と書道を選んだ。芸術センスが皆無で音楽は歌う事は出来るが曲を奏でる事が出来ず、美術は絵を描く事が出来ないので速攻で除外した。
むしろ、出来ない事が露呈した方が親しみやすさが出るのでそういった一面を見せた方がいいが、完璧主義の親の元で育った彩葉の横に立つには尊も完璧を演じなければならないと迷走。結果、友人にはなれたが頼ってもらえる様になったのはかぐやが来てからだったので完全に無意味であった。
やっぱり、有名になってくるとこう言った人間が現れても不思議は無いと思うんだよね〜。
原作では描写はなかったから、ヤチヨが上手く隠してたか、そういった心無い人間が現れる前に引越しが行われたかの2択だと思ったんだよね