百合の間に挟まりたくない男はどうしたらいい   作:かぐいろ大好き侍

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 本編の執筆に頭を抱えている矢先に公式から燃料を投下され、番外編を書き上げました。
 いいですね〜、紅葉さんの写真を撮るタイミングが悪かったせいで半目と歪なピースサインになった感じのロリ葉。


誕生日

 

「酒寄、誕生日おめでとう」

 

 この日は私の誕生日だ。

 だから、天野は私を祝ってくれたのだろう。でも、

 

「あ、ありがとう。ところで今、何時か知ってる?」

「深夜0時だろ?」

 

 あろう事か、この阿呆は日付が変わってすぐに戸を叩き、祝いの言葉を述べたのだ。

 

「寝てるとか考えなかったの?」

「お前、いっつもこの時間まで起きてるじゃん。俺もバイト行く時に伝えようと思ってたけど、折角起きてるならいの一番に伝えてやろうと思ってな」

 

 原因は私にあった。

 普段から、日付が変わっても勉強してるからそれでこんな時間に来たのか。

 

「そんじゃあ、おやすみ。今日は夕方のバイト終わりには、綾紬と諌山も呼んでサプライズパーティーの予定だから、楽しみにしとけよ」

「サプライズって、今言っちゃってるじゃん」

「おう、だから驚いただろ?」

 

 意味を履き違えてる訳ではなく、本当に私が驚いていると思ってるのだろう。

 いや、実際にこんな時間に祝われた事もサプライズパーティーがある事も驚いてはいるけど、なんか違う気がする。

 

「じゃな〜、明日に備えて早く寝ろよ〜」

 

 言うや否や、天野は自室に戻って行った。相変わらず嵐のような奴だ。

 

「はあ、今日はもう寝よ。パーティー開いてくれるのに寝不足じゃあ失礼だしね」

 

 鍵を閉め、布団に入る。

 去年はタイミングが悪くて、誕生日会とかは出来なかったから今年こそはって感じかな?

 祝われるのは素直に嬉しいな。何してくれるのかな。

 

 


 

 

 彩葉の誕生日の半月前。

 とある空き教室に三人の男女が真剣な面持ちで席に着いていた。

 

「それではこれより、『酒寄彩葉☆超ドッキドキ生まれてきて良かった!生誕祭』に関する会議を執り行う。会議の進行を務めます、天野尊です。よろしくお願いします」

「「よろしくお願いします」」

 

 相変わらずのネーミングセンスではあるが、誰もツッコミを入れない。

 この1年で尊のネーミングセンスがキレてる事を理解してる2人は何も言わない。

 

「では、2週間後に迫った酒寄の誕生日の祝い方。まずはプレゼントについて、何かご意見はありますか?」

「彩葉はあまり高価な物は受け取らないと思うんだよね。いや、貰ってくれはするだろうけど次の私たちの誕生日に同じくらいの物を用意しようとすると思う。だから贈るものは市販品じゃなくて手作りのが良いと思うの」

 

 参謀、綾紬芦花。

 彩葉の性格と思考を読み、彩葉の負担を最小限に抑えつつ自分たちの気持ちを最大限表現出来るプレゼントを考案。

 

「それならミサンガみたいな手作りアクセサリーとかはどうかな〜?時間もそれほど掛からず安価で想いを伝えられる、そんな物なら彩葉がお返しに悩んだりせずにすみそお〜」

 

 軍師、諌山真実。

 彩葉がお返しを考える事を先読みし、先手を打ち行動選択を絞る。名称である。

 

「なるほど、悪くない案だ。それならば酒寄に妙な考えに至らせる事もないだろう」

「やったね」

「イエイ!」

 

 芦花と真実はハイタッチを行う。

 

「だがしかしッ!」

 

 机を叩き立ち上がる尊。

 

「2人はそれで満足なのか?!」

「「?!」」

「それで、酒寄への気持ちは表現しきれるのか?」

「「!!」」

「俺はそんなまどろっこしい手段に逃げずにどストレートにプレゼントを用意しようと思う!」

 

 そう言いながら、カバンから何やら取り出した。

 

「俺が用意したプレゼントはこれだ!」

「「そっ、それは!!」」

 

 なんと、月見ヤチヨのアクリルスタンドの神棚であった。

 

「天野くんそれ買えたの?!」

「しかもそれって抽選販売の初期型の100個限定のじゃん!うわっ、シリアルナンバーも一桁台だ?!これネットオークションに出せば100万は下らないよ?!」

 

 なんと、そこにはヤチヨファンなら喉から手が出る程欲しい限定品。

 彩葉も抽選に応募はしたが、外れてしまい当たった尊を恨めしそうにしていたのは記憶に新しい。

 

「酒寄が応募に外れ俺が当たった。その時のあいつの顔の歪み用は筆舌に尽くし難い。だからこそ、これを受け取った酒寄の顔がどうなるのか正直、興味がある」

「それって、彩葉を祝う事よりも優先順位が高そうに聞こえるけど」

「天野っちって彩葉をいじめたいの?」

「何を言う。8:2で酒寄を祝福したいに決まってるだろ」

「……どっちが8?」

「好奇心」

 

 ドブカスである。

 

「まあ、喜ぶとは思うけど受け取ってくれるかな?」

「なに、いざとなったら酒寄の部屋に不法侵入してでも飾っておくから安心しろ」

「1、1、0っと」

「はい、没収しま〜す」

 

 警察に通報しようとす芦花の携帯ひったくる。

 

「ちょっと!」

「全く、ダメだぞ。友達を警察に突き出そうとするのは」

「友達だからこそ、過ちは正してあげるべきでしょ」

「2人とも〜、話が脱線してるよ〜」

 

 2人がふざけてる事を理解してる真実は、話を戻そうとする。

 実際、芦花は110番はせずに117番を押して、スマホからは時報が流れてる。

 

「それじゃあ、話を戻すとして2人はプレゼントどうするんだ?予定通り手作りアクセサリーにするのか?」

「うーん、天野くんみたいに明後日の方向に振り切った物には出来ないけど、彩葉が喜んでもらえる物を用意しようかな」

「そだね〜、高ければいい訳じゃないし。大事なのは気持ちだからね〜。市販品ではないけど、ちょっといい感じのやつを用意しよっかな〜」

 

 三人の話は纏まり、プレゼントについては終了。

 

「なら、次はパーティー会場についてだ。何処がいいと思う?」

「彩葉の誕生日は土曜日だし、当日はバイトがあるんだっけ?」

「ああ、相変わらず土曜日は丸一日。ガッツリ11時間、誕生日ぐらいゆっくりしろよって思ったよ」

 

 店長と共謀して彩葉のシフトを調整しているのに、学校が休みの日も労働な明け暮れるスーパーJK。フォローに入れるように尊もシフトに入っているが、誕生日会の準備があるので午前まで。

 

「なら、どこかのお店でって訳には行かないよね〜。少しでも長く休めるように彩葉の部屋か天野っちの部屋でやろうよ〜」

「それなら、俺の部屋でやるか。それなら片付けもパーティー後に俺一人で片付けられるし」

「いやいや、ちゃんと片付けは手伝うよ」

「いいって、いいって。パーティーの後は酒寄の、部屋でお泊まり会でもして二人で酒寄を癒してやれ」

「おお!それいいね。パジャマパーティーして彩葉を寝かしつけちゃおう!」

 

 そんなこんなで、彩葉誕生日パーティーの会議は深まっていく。

 

 


 

 

「じゃあ、お先に失礼しまーす!」

 

 誕生日当日の昼。バイトを終え、尊は帰路に着く。

 

「あっ、酒寄!」

「なに?」

「バイト終わったら、俺ん家集合な〜準備して待ってるから」

 

 彩葉に一言告げ去っていく。

 

「酒寄先輩!どういう事でしょうか?!」

「えっ?な、なにが?」

「仕事終わりに天野先輩のお部屋に行くなんて!それって、ソウイウコトですよね?!」

 

 尊の言葉に過剰反応するのは、後輩のミオちゃん。まだ入って間もない新人でミスの多いドジっ子であるが、彩葉と尊は可愛がっている。

 多感な時期で色恋の話には目がないのだろう。先の尊の思わせぶりな発言で2人の関係性に興味津々である。

 

「いやいや、違うから!そういうんじゃないから!」

「おっ?彩葉ちゃんついに尊くんとくっ付いたのかい?そりゃいい、店長!この店で一番高い奴を出してくれ!彩葉ちゃんのお祝いだ!」

「ハイよっ!」

 

 あらぬ誤解が店中に広まる。

 

「違いますから!ただ誕生日会を開いてくれるだけですから!」

「へっ?誕生日ってどなたのですか?」

「………わ、私の」

「そうだったんですね!すいません、変な勘違いしちゃって。先輩、誕生日おめでとうございます!」

「あ、ありがとう」

 

 ホールスタッフ故、ハキハキとした声が大きい。それは一瞬で店中に広まり、店はお祝いムード。

 

「店長!彩葉ちゃんの誕生日祝いに店一番のスイーツをお願いします!」

「じゃあ、俺は彩葉ちゃんに店一番の美味しい料理を!」

 

 常連客がワラワラと彩葉に誕生日プレゼントと称して注文を行う。

 

「わかりました〜。それじゃあ彩葉ちゃん、席について今から休憩にして注文されたもの用意するからね〜」

「先輩!ゆっくりしててくださいね!先輩が休憩中は私、頑張りますから!」

 

 店からの彩葉への誕生日プレゼントは、常連客からの祝いの注文と店長や後輩からの手厚いフォローが貰えた。

 

「みんな、ありがとうございます!」

 

 そんな彩葉の様子を伺う、窓の外にある4つの眼。

 

「よし、ちゃんと天野くんはお店でデカデカと宣言してくれたみたいね」

「彩葉もこの状況ならお返しなんて考えようとはしないよね〜」

 

 芦花と真実である。

 2人は彩葉がお返しを考えないようにする祝い方を考え、尊に引き金を引いてもらったのだ。

 客からの好意なら無碍にはしないだろうし、常連客なら状況を整えれば悪ノリをして彩葉に美味しい物を提供すると踏んでいたが、大成功であった。

 もちろん、尊から店長に根回しはされていて、その時の注文は3人が後ほど払うので、彩葉にそれが知られることはない。

 

「それじゃあ、私達も天野くんの家に行って準備を進めましょ」

「ケーキの用意は天野っちがしてくれるから、私たちは部屋の装飾を派手にしよっか!」

「料理を男の子に任せるのは、ちょっと複雑だけどね」

「いや〜、天野っちの料理の腕を知ってて、自分でやるとは言えないよ」

 

 尊の料理の腕前は2人も知るところ。以前食べさせてもらった手作り弁当は、自分たちの腕より遥か高みにあった。

 グルメインフルエンサーとし味に五月蝿い真実も諸手をあげる始末である。

 

 

 


 

 

「はあ、大変な目に遭った。

 天野の奴め〜、あんな大勢の前で勘違いされるような発言は控えて欲しいなあ。

 まあ、おかげてあんなに大勢に祝われたのは嬉しかったけど」

 

 帰りの道中、尊の愚痴を漏らす。

 

「天野の部屋でやるんだっけ?」トントン

 

 尊の部屋をノックし、返事を待つ。

 

「いらっしゃい、彩葉」

 

 出迎えたのは芦花、準備の最中だったのかエプロンをつけている。

 

「お邪魔します」

 

 パンッ!

 

 玄関を潜ると前後から3つのクラッカーの音が鳴り響く。

 

「「「彩葉(酒寄)誕生日おめでとう!」」」

 

 尊、芦花、真実の三人がそれぞれクラッカーを鳴らし祝いを述べる。

 

「ふふ、ありがとう。3人とも」

 

 笑顔を漏らしお礼を言う。

 

「さあ、入って入って。料理もケーキも用意してるから」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「お腹いっぱい食べてね〜、料理もたっくさん用意したから天野っちが」

「私たちじゃあ、料理で天野くんには逆立ちしても勝てないからね〜」

「でも、料理の案は2人が考えてくれたし、部屋の装飾は2人に任せっきりだったからな。こういったセンスは俺には無いわ」

 

 並べられた料理と大きなケーキ。チョコレートにはメッセージも施されている。

 

 4人です料理とケーキに舌鼓を打ち、楽しんである程度減ってきたら本日のメインイベント。

 

「それでは、誕生日プレゼントのお時間です!」

「まずは私ね。はい、どおぞ」

 

 芦花から小さな小箱を彩葉に渡す。

 

「ありがとう、開けるね?」

「うん、中身見て感想欲しいな」

 

 開けるとそこには、イヤリングがあった。芦花が付けている物と似た物である。

 

「うわあ、綺麗。これって芦花と同じヤツ?」

「そう、前に彩葉がこのピアスの事褒めてくれたでしょ?だから似たヤツの用意したの。本当はピアスにしょうと思ったけど、彩葉って穴ないでしょ?だから、イヤリングにしたの」

 

 芦花同じ意匠の片耳イヤリング。左の耳に付けるピアスには『男性性・同性愛』の要素を示すことが多い。

 芦花の彩葉に対する想い。それを隠しつつも密かに伝える。まさに夜のスナイパー。

 それを見た尊と真実は戦慄する。

 

(おいっ!あの百合っ子、なんつーもんを贈ってるんだ!あんなの告白と代わらんだろ!)ヒソヒソ

(いや〜、彩葉の鈍感ぶりならアレくらいなら平然と跳ね除けちゃうんじゃない?)ヒソヒソ

 

 器用に小声で叫ぶ尊。

 

「ありがとう芦花。付けてみるね」

 

 そう言って、髪を耳に掛け()()に付ける彩葉。

 

「どうかな?」

「…ええっ!とっても似合ってるわ!」

 

 右耳のみのピアスは反対に『女性性・異性愛』を示す場合が多い。つまり、彩葉は異性愛者を示す事を表している。

 

 もちろん、彩葉はその様な雑学は知らないので完全に偶然だし。本人も

 

(芦花が左に付けるなら、私は右の方が鏡合わせみたいで映えるよね〜)

 

 、と呑気に考えている。

 

(ちょっと諌山さん!綾紬が可哀想なんだけど?!見てらんないよ!)ヒソヒソ

(彩葉〜、これは擁護できないよ〜)ヒソヒソ

 

「さ、さあ〜!気を取り直して、今度は私のばーん!はい、どうぞ!」

「うわっ、大きいね。なんだろ」

 

 真実が用意した箱はそこそこ大きく、中には沢山のぬいぐるみが入っていた。

 

「これって、ヤチヨのぬいぐるみ!」

「ゲームセンターのUFOキャッチャーで沢山取れたんだ〜」

 

 とある、集合レジャー施設でツクヨミコラボが行われ、有名ライバーのグッズ展開がされており、そこには月見ヤチヨのぬいぐるみのUFOキャッチャーもあった。

 それを真実は尊にアドバイスをもらい大量にゲットしたのだ。

 

「でも、お金かかったんじゃ」

「と、思うじゃ〜ん。でもね、それだけ取っても3,000円行かなかったんだよね〜」

「マッジで?!」

 

(あれって天野くんがアドバイスしたのよね?)ヒソヒソ

(ああ。と言っても、アームに引っかかり易い場所を教えた程度で、殆どは諌山の独力だけどな)ヒソヒソ

(意外な才能ね)ヒソヒソ

 

 真実が受けたアドバイスは本当に些細なもので、大量入手に至ったのは本人の実力。

 しかし、本人は尊のアドバイスに従っただけなのでその事には気づいてない。

 

「スゴいな〜。私も今度やってみようかな」

 

 ちなみに、後日、尊を連れてUFOキャッチャーをプレイしたが、5,000円投資しても一つも取れずに泣いた彩葉が居たが、それはまた別のお話。

 

「それでは!最後の大トリはこの俺!」

「いや結構です」

「………なんでっ?!」

 

 尊がプレゼントを出す前に、待ったをかける。

 

「天野ってこういう時って絶対やばい物用意してるじゃん。受け取りたくない」

「なっ!俺の好意を無碍にするのか?!」

「だってあんた、この間の芦花の誕生日に15万の美顔器用意して、去年の真実の誕生日には30kgのマグロ用意して学校で解体してクラス皆に配ってたじゃん。怖いよ」

 

 なんとこの男、既に前科持ちであり。常人ならドン引きされるようなプレゼントを贈っていたのである。

 

「そういえば私たちも天野くんから馬鹿みたいに高いものプレゼントされてたわね」

「だね〜。あの時もマグロの解体ショーでお祭り騒ぎだったもんね〜」

 

 2人は感覚が麻痺してるのか、尊から贈られたプレゼントに何の疑問も覚えていなかった。

 

「安心しろ!今回の値段は良心的だ。2人の時のように何万もするような物は用意してない!」

「ほんと?」

「大丈夫よ彩葉、私たちもちゃんと確認してるから」

()()()の値段は彩葉でも手が届く価格帯だから」

「それなら………、ん?()()()?」

 

 真実の言葉に違和感を覚えながらも、尊から受け取った箱を開ける。そこには

 

「こ、これは?!」

「月見ヤチヨのアクリルスタンドの神棚だ!」

「無理無理無理無理無理!これは受け取れないよ!うわっ、やっぱりシリアルナンバーがある!」

 

 箱から出した後すぐに尊に突き返す。

 

「何言ってんだ、値段は良心的だろ?」

「アンタの購入時はね?!でも、今はプレミアが着いてるから100万は下らないでしょ?!そんなの受け取れるわけないでしょ!」

「やっぱり、返されたね〜」

「そりゃそうでしょ、私たちだって100万超の物プレゼントされたら、突き返すわよ」

 

 味方であった2人からも裏切られる始末である。

 だが、それも致し方ないことだ。元々考えは否定してない2人だがそれでも、値段を抑えてプレゼントを用意していたのだ。援護射撃は期待出来るはずもない。

 

「仕方ない。それならこっちにしょう」

 

 そう言って押し入れから何やら冊子を出した。

 

「これなら大丈夫だろ?」

「これって写真集?」

「そう、ヤチヨのライブの写真や配信の写真を編集して作った世界に一つしかない、月見ヤチヨ写真集だ。ん?画集の方が合ってるか?」

 

 十が一プレゼントを返された時用に準備していた、誕生日プレゼント。

 芸術センスゼロの尊が長年ヤチヨを追い続けて撮影した、写真を編集して作り上げたこの世に二つと無い唯一無二の写真集だ。

 

「これなら受け取ってくれるか?」

「うん、これなら大丈夫。ありがとう」

 

(ねえ、なんか私たちより良いもの贈ってない?)ヒソヒソ

(そうね、あんな自爆プレゼント贈ると宣言しながらちゃっかり真っ当な物用意してるなんて、強かよね〜)ヒソヒソ

 

 


 

「さて、もういい時間だしお開きにするか」

 

 プレゼントも終え、料理やケーキも食べ終えた頃には21時を越えようとしていた。

 

「うわ、もうこんな時間じゃん。天野、2人を家まで送ってこ?」

「ノンノンッ!私たちは今夜は帰らないのです」

「私たちはこのまま彩葉の家でパジャマパーティーをするのです」

 

 そう言って2人は着替えの入った手提げを掲げる。

 

「えっ?聞いてないけど」

「今、言ったからね〜」

「布団も自分の分しかないよ?」

「天野くんが貸してくれるから大丈夫よ」

「横に並べれば3人でも寝れるだろ?」

 

 押し入れから、干したてなのかふかふかの布団が出てきた。

 

「うわっ、スゴいふかふか」

「羽毛布団?天野くんって良い布団使ってるのね」

「ムカつく、私と同じ苦学生のハズなのに」

「睡眠は人生の1/3を占めるからな、寝具に妥協はしないさ」

「でも、布団借りたら天野はどうやって寝るの?」

「えっ?今夜は寝ないぞ?片付けと配信があるからな」

 

 普段から彩葉に休めと言い聞かせてる人間の発言とは思えない。

 

「いや、アンタのねえ「彩葉っ、行こっ!」って、ちょ、ちょっと?」

「天野くんの事はいいからここからは女子だけで楽しみましょ?」

「んじゃあ、おやすみ」

「「おやすみ〜」」

 

 彩葉を連れ部屋を出ていく芦花真実。彩葉は2人に捕まりなすがままである。

 

「さて、片付けしますか」

 

 僅かに聞こえる上の階の女子会をBGMに尊は片付けと配信を続けた。

 

 


 

 陽の光に当てられ目を覚ます。

 芦花と真実が居る?あっ、そうだ。昨日はお泊まり会だった。楽しかったな〜。

 

「2人とも朝だよ〜」

「う〜ん、あと5分」

「むにゃむにゃ、もう食べられないよ〜」

 

 なんてベタな寝言だ。全くもう、朝ごはん作ってあげますか。

 私は重たい体を持ち上げ、キッチンに向かう。途中視界の端に何か見覚えのある物が映ったが気にしない。そこには何故か3人分のお弁当箱が有った。

 

「なにこれ?」

 

 弁当箱のひとつに手紙が挟まっていた。

 

『おはよう、昨日は楽しめたようで何よりだが、寝る前にちゃんと鍵は閉めろよ。安全の為に酒寄部屋から鍵を借りて閉めて郵便受けに入れといたから。

 PS:3人分の朝食用意しておいたから食べてけよ?おやすみ』

 

 マジか、鍵かけ忘れるとか不用心すぎでしょ。

 あとで、お礼言わないとな〜。

 

「ふあぁぁ、おはよう彩葉」

「芦花、おはよう。寝癖スゴいね」

「彩葉もね〜」

「真実もおはよう。天野が朝ごはん用意してくれてたから食べよ?」

「おおっ!天野っちの朝ごはん!ちょっと期待してたんだよね〜」

 

 3人で食卓を囲む、朝から天野のご飯にありつけるとは、誕生日バンザイ。

 

「ところでさ、起きてから気になってたんだけど」

「ああ、私も気になってた〜」

「2人ともそれは幻覚。もしくはまだ夢の中に居るんだよ」

 

 そう、私の部屋に見覚えの無いものが有っても、寝起きだし寝ぼけてるだけ、絶対に気のせい。

 例え、天野からの誕生日プレゼント予定のヤチヨのアクリルスタンド神棚が鎮座してるてもそれは幻だ。

 

「……彩葉、誕生日おめでとう」

「……諦めよ〜、彩葉?」

「…………来年のアイツの誕生日、どうしよう」

 

 せっかく、気持ちのいい朝なのに私の頭は1年後の天野の誕生日のプレゼント内容に支配されていた。

 

 




 彩葉の部屋にあるヤチヨの神棚は主人公が彩葉に贈ったものにしました!
 彩葉の誕生日5月11日、『5+11=16(いろ)は』って事ですかね?
 ってか、彩葉っていちごを最後にに食べるんですね。解釈一致です。
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