百合の間に挟まりたくない男はどうしたらいい   作:かぐいろ大好き侍

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もと光る電柱なむ一筋ありける

 

 学校が終わり、バイトに勤しむ。今日は酒寄とシフトが同じで俺がキッチン、酒寄がホール。

 為人が良く美人の酒寄が店を駆け回れば、それだけで店の雰囲気が良くなる。そして、実家が農家で色んな食材に触れてきた俺は料理の腕がメキメキ上達。バイト初日でその実力を認められた俺は、キッチンを任された。

 俺が作るようになってからは、客足も増え店はウハウハ。でも、俺の時給は据え置き。なんでやねん。

 

「酒寄〜、これ3番テーブルに!」

「は〜い!」

 

 終業後のサラリーマンや夕食を食べに来た家族連れ、店はごった返しだで息付く暇もない。ここって喫茶店のはずなのに、ファストフード店並の盛況だ。

 キッチンは俺と店長の2人で回し、ホールは酒寄ともう1人の後輩バイトの子の四人体制で対応している。もうちょっと人数を増やして欲しいが、スペース的に無理である。

 

「いや〜、天野くんと酒寄さんが入る日は店が儲かるから助かるよ〜」

「そう思うのなら、俺や酒寄の時給上げてくれてもいいですよ」

「あっ、賄いは好きなように作ってくれてイイからね〜」

 

 はぐらかしたな。この店長、悪い人ではないがお金に関しては少々がめつい。シフトの融通が利くし、賄いは店の食材を好きに使っていいし、多少のミスは許してくれる。ドジっ娘の後輩ちゃんがレンジに金属製の鍋を入れて温めて1台壊しても、笑って許してくれる。

 でも、給料は上げてくれない。程々にバランスの取れたいい人だ。

 

「これで最後っと。2人とも、ラストオーダーの時間だから店閉めて、注文伺ってきて!」

「わかった〜」「わかりました!」

 

 20時半、店長の個人経営の店だから終わる時間が結構早い。いや、個人店の喫茶店にしては長い方だと思うが、ここは夜間はBARとして営業するらしいし。22時までに、喫茶店としての締め作業とBARの切り替えをしなければならないから、早い時間に切り上げるのは後々の負担が減る。

 

「追加注文はなしだって。締め作業やっちゃっていいよ」

「了解、それじゃあ店長。俺は洗い物やるんで油とゴミ出しお願いします」

「ええ、1番大変なやつじゃん」

「それを最低賃金のバイトにやらせるんですか?」

「ぷひゅ〜」

 

 鳴らない口笛をし、奥に消えてく。

 

「店長も相変わらずだね」

「酒寄と後藤(後輩ちゃん)はホールの清掃が終わったら先に帰っていいぞ?後はやっとく」

「え?いいの?」

「いいんですか?!」

「ああ、特に酒寄は今日ロクに寝てないんだろ?とっとと帰って休みな、賄いはそこのタッパーに用意してるから」

 

 ただでさえフラフラの酒寄を遅くまで残すのは流石に気が引ける。

 俺は注文の品を作りつつ、賄い料理も並行して用意していた。

 

「ありがと。それじゃあ、みおちゃんホールの清掃終わらせよっか」

「はい!今度はドジったりしない様に気を付けます!」

 


 

 バイトが終わり帰路に着く。

 しかし、寝不足とバイトの疲労で足が重い。何時もの半分の歩幅でしか歩けない。

 このままでは、家に着く前に限界を迎えてしまう。せめてヤチヨの歌を聴いて心を癒そう。何にしようかな。

 

『Remember』

 

 ヤチヨのデビュー曲。これを聴くとどんなに辛くても頑張れる。でも、今日はダメっぽい涙か溢れてくる。

 やっぱり限界だったんだなあ。天野に気を使わせちゃったし、今度埋め合わせしないとな。

 

「なにあれ!流れ星?!」

 

 通行人の声で空を見上げる。そこには一筋の光。流れ星と言うには少々遅いが、こうしていられない。願いを

 

「か、金、、、くぅ〜」

 

 ここで真っ先に出てくるのがお金のは、花の女子高生とは思えないな。

 


 

 フラフラの状態ながら何とかアパートまで帰ってこれた。今日はシャワーを浴びたら、復習してヤチヨの動画を見て寝よう。

 

 顔を下げて歩いていたが何故か目の前が明るい。

 視線を上げるとその先には七色に輝く電柱が見えた。

 

「ゲーミング電柱?…はは、過労で幻覚を見るようになったか『ブシュー!』っうお?!」

 

 自分の体調を気にしてたら突然ゲーミング電柱から湯気?煙?が吹き出し排熱した。するとゲーミング電柱が開かれようとして

 

 バンッ!

 

 私は閉めた。これ以上の負担は負いたくない。これが開けば絶対にロクなことにならない、今までの人生で履修した作品で沢山あった。

 閉じた事を確認してその場を離れようとしたが、また開き出した。もう一度閉めたが今度は力ずくでこじ開けられた。

 

「はあ?赤ちゃん?」

 

 なんとゲーミング電柱から何故か赤ん坊がいた。静かに寝息をたてていたが、外の空気に触れたせいか目を覚まし私を見て微笑んだ。

 

『開けたよね』

 

 開けてません、勝手に開いたんです。

 

『でも、触ったよね?』

 

 だから何、触ったから何よ。

 

 多分、普通の人が見ればこの状況は兎も角赤ん坊は可愛いと思って言葉にするのだろう。しかし私は、

 

「私、自分の事で精一杯ですので、ここはどうか会わなかったことに!」

「ふえっ、ふえ」

 

 ヤバい大声を出したせいか泣き出した。なんで、私なのよ。もう少し待っててくれれば面倒見の良い天野が帰ってくるよ、天野で良いじゃん。

 後ろ髪を頭皮ごと持ってかれそうになりながらも、心を鬼にして立ち去ろうとする

 

___もう、どうなってもいいんだ!

___キッキッー!

___ガッシャーン!

___カッー、カッー!

 

 と、酔っ払いの叫び声、車のブレーキ音、ガラスの割れる音、カラスの鳴き声。それらが矢継ぎ早に聞こえてきた。こんなに治安悪かったっけ?

 

「…流石に放置は気が引ける。どうやって持つんだっけ?」

 

 私は拙い動きで、赤ん坊を抱える。すると

 

『じゃっ、お願いしますね』

 

 ゲーミング電柱が自らの役割は終えたと言わんばかりに扉が締まり、暗くなっていく。

 

「ちょっ、ちょっと!お忘れですよ!」

 

 電柱を叩くが、うんともすんとも言わない。

 嘘でしょ?自分の事で手一杯の私に子供を育てろと?て言うかこの状況、私が誘拐したみたいに見えるんじゃ…

 

「酒寄?」

 


 

 バイトの締め作業が終わり、BARの段取りを済ませ夜勤の従業員に引き継ぎを済ませ、俺も帰路に着く。

 アパートが目の前に見えると、何やら七色に輝く電柱が見えた。その前で酒寄が何やら呻いてる。かと思えば電柱の光が引いて、その電柱を叩く。

 何をしてるんだ?

 

___ズキッ

___なんとそこには七色に輝く電柱に女の子が!

 

 なんだ?今、妙な頭痛と記憶か?

 治まった、フラッシュバックした記憶も上手く思い出せない。なんだったんだ?

 まあ、いいか。思い出せなって事はそこまで重要ではないのだろう。酒寄の事も気になるし。

 

「酒寄?」

「ヒッ、ヒャッイ!」

「うおっ?!」

 

 ビ、ビビった〜。何を驚いてるんだ?俺の声なんて聞き飽きてるだろ?

 

「なにしてんだ?こんな所に突っ立って、早く部屋に戻って休んだらどうだ?」

「い、いや〜、ちょっと野暮用がありまして」

 

 野暮用って、アパートの前まで来て何を思い出したのやら。

 

「そんなの明日に回して今日は早く寝ろよ」

「ソッ、ソダネ〜。ソウスルヨ〜」

 

 なんか、様子が変だな。頑なにこちらを向かないし、声が裏返ってるし。

 なんだ?何か隠してるのか?体勢からして何かを抱えてる?適当にカマかけてみるか。

 

「なんだ?まさか誘拐でもして身代金でも要求しようとしてるのか〜?」

 

 我ながらなんて現実味のないカマかけだ。いくら金に困ってるからってそこまで堕ちてはねえよ。ほら、酒寄さん「そんな訳あるか〜!」っと華麗なツッコミをお願いしますよ?

 

「……、……っ」

 

 ………っえ?

 いやいやいやいやいやいや、そんな訳無いですよね酒寄さん?!なんなら右ストレートも受け付けてますから、否定を!

 

「あ、天野〜」

 

 半泣きの酒寄がこちらに振り向く。

 その両腕には生後数ヶ月くらいの赤さんが。

 


 

「酒寄?」

「ヒッ、ヒャッイ!」

「うおっ?!」

 

 さっ、最悪だ!このタイミングて帰ってきた!オマケに声も裏返った。

 

「なにしてんだ?こんな所に突っ立って、早く部屋に戻って休んだらどうだ?」

「い、いや〜、ちょっと野暮用がありまして」

 

 何によ!野暮用って!こんな夜更けに部屋の前まで来て済ませなきゃ行けない用事って?!

 

「そんなの明日に回して今日は早く寝ろよ」

「ソッ、ソダネ〜。ソウスルヨ〜」

 

 天野の至極真っ当な指摘に、声が上擦る。

 どうする、赤ん坊を抱えてるから迂闊に動けば、また泣き出すかもしれないし、こんな姿を見られれば誤解は必至!言い訳を考えねば!

 

「なんだ?まさか誘拐でもして身代金でも要求しようとしてるのか〜?」

 

 ……多分、冗談のカマかけで私を振り返らせようとしているのだろうけど、それは今の私にクリティカルヒットだった。

 

「……、……っ」

 

 ……ダメだ、何も言い訳が思いつかない。なんなら限界すぎて涙が出てきた。

 

「あ、天野〜」

 

 私は情けない声色で、天野の名を呼び目尻に涙を浮かべ振り向く。

 天野は私の抱えている赤ん坊を見て顔は、今まで見たこともないほどに血の気の引いた蒼顔だった。

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